最終更新:ID:r78Kj3gCUw 2023年01月01日(日) 01:37:00履歴
139無題Nameとしあき 20/10/03(土)02:58:31No.13590342そうだねx11
彼女は今更、実家で合わせる顔がないと言った。
では彼女は一体どこで暮らしていたのだろうか?
「鈴瑚トプスの肉を食べてたわ。」
八橋は真顔で言った。 本当か? トプスだぞ?
「トプスって寝ている時にそっとお腹を揉むとね…
プチッて千切れるのよ。 お肉が。」
それはもう追及しないとして、味はどうなのか。
「牛肉っぽいけど、柔らかすぎて変な感じ。
焼いたら硬くなるけど。 チーズみたいな。」
「…その、トプス肉をどのぐらい食べ続けた?」
「もうわかんないよ。 四季とかないし。」
俺は撮影車にある携帯端末を渡すと、それが
現在時であるという事を彼女に理解してもらった。
「あぁ… まだ半年も経ってないわ。
体感ではもう何年も過ごしてた気で居たのに。」
140無題Nameとしあき 20/10/03(土)02:58:56No.13590344そうだねx11
八橋は、実家で何があったのだろう? 本来なら
無名のカメラマンである俺が口を利いていいような
立場の女性ではないはずだが、今はもう彼女は俺の…
「何があったのか、教えてくれないか?」
「…啖呵切って、家出してきただけよ。 私にもう
これ以上、似たような絵を描かせても無意味だって。」
笑ってしまいたくなるような、子供じみた話だった。
「…もう絵は描かないのかい?」
「いや、もう売れる絵は描きたくないだけよ。
交尾とか死体とか暴力とか汚物とか、もうウンザリ。」
俺はかつて、彼女がジュラシックの死体の絵の下書きを
見せてくれた事を思い出した。 そうだったのか。
「女性作家がそういうショッキングな絵を描いたら、
紳士が関心持ってくれるのよね。 だから売れるの。」
彼女は俺を見つめていやらしく、ニヤリと笑った。
141無題Nameとしあき 20/10/03(土)02:59:16No.13590346そうだねx14
「…そんなに儲けられたのかい?」
「末端の額は知らない。 でも私は正直お金に困ってないし。
お金儲け出来て嬉しい人が喜んだだけよ。 それだけ。」
八橋は酷くドライに、絵画の業界を見つめていたようだ。
「その為だけに私の絵が存在するなんて、イヤだよ。」
俺はその言葉で、ドライな目と心で世界を見つめていた彼女が
本当はそんな事を受け入れたくないという潤いを持っていると
すぐに理解できてしまった。 そして、そっと抱き寄せる。
「八橋。 本当は、今でも絵を描くのが好きなんだろう?」
俺が見つめると、彼女は目を逸らした。 そして呟いた。
「ええ、大好きよ。 今でもね。」
「…そんなに私に、何か描いて欲しい?」
「当たり前だろう! あの九十九八橋様なんだから!」
俺が熱弁すると、彼女は満足そうに微笑んだ。
「それじゃあ、何を描いて欲しいの?」(終)
彼女は今更、実家で合わせる顔がないと言った。
では彼女は一体どこで暮らしていたのだろうか?
「鈴瑚トプスの肉を食べてたわ。」
八橋は真顔で言った。 本当か? トプスだぞ?
「トプスって寝ている時にそっとお腹を揉むとね…
プチッて千切れるのよ。 お肉が。」
それはもう追及しないとして、味はどうなのか。
「牛肉っぽいけど、柔らかすぎて変な感じ。
焼いたら硬くなるけど。 チーズみたいな。」
「…その、トプス肉をどのぐらい食べ続けた?」
「もうわかんないよ。 四季とかないし。」
俺は撮影車にある携帯端末を渡すと、それが
現在時であるという事を彼女に理解してもらった。
「あぁ… まだ半年も経ってないわ。
体感ではもう何年も過ごしてた気で居たのに。」
140無題Nameとしあき 20/10/03(土)02:58:56No.13590344そうだねx11
八橋は、実家で何があったのだろう? 本来なら
無名のカメラマンである俺が口を利いていいような
立場の女性ではないはずだが、今はもう彼女は俺の…
「何があったのか、教えてくれないか?」
「…啖呵切って、家出してきただけよ。 私にもう
これ以上、似たような絵を描かせても無意味だって。」
笑ってしまいたくなるような、子供じみた話だった。
「…もう絵は描かないのかい?」
「いや、もう売れる絵は描きたくないだけよ。
交尾とか死体とか暴力とか汚物とか、もうウンザリ。」
俺はかつて、彼女がジュラシックの死体の絵の下書きを
見せてくれた事を思い出した。 そうだったのか。
「女性作家がそういうショッキングな絵を描いたら、
紳士が関心持ってくれるのよね。 だから売れるの。」
彼女は俺を見つめていやらしく、ニヤリと笑った。
141無題Nameとしあき 20/10/03(土)02:59:16No.13590346そうだねx14
「…そんなに儲けられたのかい?」
「末端の額は知らない。 でも私は正直お金に困ってないし。
お金儲け出来て嬉しい人が喜んだだけよ。 それだけ。」
八橋は酷くドライに、絵画の業界を見つめていたようだ。
「その為だけに私の絵が存在するなんて、イヤだよ。」
俺はその言葉で、ドライな目と心で世界を見つめていた彼女が
本当はそんな事を受け入れたくないという潤いを持っていると
すぐに理解できてしまった。 そして、そっと抱き寄せる。
「八橋。 本当は、今でも絵を描くのが好きなんだろう?」
俺が見つめると、彼女は目を逸らした。 そして呟いた。
「ええ、大好きよ。 今でもね。」
「…そんなに私に、何か描いて欲しい?」
「当たり前だろう! あの九十九八橋様なんだから!」
俺が熱弁すると、彼女は満足そうに微笑んだ。
「それじゃあ、何を描いて欲しいの?」(終)
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