JURASSIC THREAD STORAGE

9 無題 Name としあき 18/12/23(日)22:43:06 No.11203324 del
無菌ラプトルに名前はない
個体の判別はケージの番号と尻尾のマークのみで記され 餌と水と徹底した無菌環境により生かされ続ける
対照群と暴露群にランダムに振り分けられた無菌ラプトルは 日々の様々な検査や投与を行われつつも健やかに育ち やがて
解剖にまわされる それがサグメ研の日常だ

今泉教授は頭を抱えた
何らかの手違いにより 搬入したものの実験が行われなかった8匹の無菌ラプトル 通常なら1ヶ月で解剖されるところ もう1年も何もされず ただ生かされ続けていた

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彼らはこのサグメ研で最も長齢で 最もストレスフリーな無菌ラプトルだ
10 無題 Name としあき 18/12/23(日)22:44:12 No.11203332 del
「無駄なラプトルは 早く殺しなさい」
上司の言葉に 今泉教授は小さく呻いた
これまで数多の無菌ラプトルを飼い 解剖し その研究を世に公表してきた
これまで殺した無菌ラプトルは一頭たりとも無駄死にではない 無菌ラプトルの命を糧に この世界は進歩している 今泉教授はそう信じていた
ただ 彼らはそうではない 生きる意義も価値もなく ただのんべんだらりと毎日を過ごし 餌を貪る 彼らの命に意味はない

だから殺せと⁉︎
無菌ラプトルに名前はない 無菌ラプトルに愛着が湧くと 研究者は実験に耐えられないからだ
今泉教授は徹底して冷徹に無菌ラプトルを解剖し続けた それも全ては研究の為 そして世の為だと信じたからこその行動だ
だが 彼らは殺せない 彼らの命に価値はなくとも ただ餌を貪り食う邪魔な存在であっても 今泉教授は彼らを殺せない

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11 無題 Name としあき 18/12/23(日)22:45:05 No.11203337 del
エアシャワーが止まり 無菌室の扉が開く
「…おはよう 清蘭」
今泉教授はケージを開くと いつもの体重測定にとりかかった
おわり

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