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17 無題 Name としあき 18/02/12(月)23:42:11 No.10073351
はいこんにちは。ジュラシックの心は私にお任せ、古明地さとりよ。
心の病みの原因は千差万別。合わない職場、家庭内不和、荒れた生活習慣などなど。
でも、もし原因に心当たりが無いのに気分が落ち込むならば、それはジュラシックの仕業かもしれないわね。

今日、私はヨウヨーム地方のとある街に来ているわ。目的はこの街で起きている異変を解決すること。
そういうわけで、まずは状況を確認するために街中を歩いているのだけれど…
これはひどい有様ね。それなりに栄えている様子の街なのに、人が誰もいない。

この街を蝕む異変。それはほぼすべての住人がひどい鬱状態になってしまうという恐ろしい異変よ。
もはや人々は外に出る気力もなく、都市機能の多くは停止してしまった。
他の地方から派遣された支援部隊もこの地にしばらくいるだけで鬱になってしまい、もはや打つ手立てがない。
そこでこの怪奇現象の原因を探るべく、心の専門家である私が呼ばれたというわけ。

18 無題 Name としあき 18/02/12(月)23:42:33 No.10073353
このような現象は聞いたことが無いけれど、犯人の目星はある程度ついている。
鬱の音を奏でるジュラシック、タルナサの仕業に違いないわ。
タルナサの尻尾にあるヴァイオリンのような発音器官が発する音を聞くと、あらゆる生き物は鬱状態になってしまう。
ちなみに、私はタルナサの発する音をシャットアウトできる高級耳栓を装備しているから平気よ。
聴覚が使えなくても心が読めるから調査に支障は無い。

しかし、調査を始めてみると、思っていたほど事態は単純ではないことが分かったわ。
タルナサが発する鬱の音の効果範囲と比べ、異変の範囲があまりに広すぎる。
この規模の街の住人を丸ごと鬱にするには、そこら中にタルナサがひしめき合っていない限り不可能だわ。
ところが街のどこを探しても、タルナサの影も形も見つからない。
音波の分析装置も持ってきたけれど、タルナサの放つ音の波長は一切捕えていない。
タルナサの痕跡が無いにもかかわらず、鬱という現象だけは確かに起きている。これは難事件だわ。

19 無題 Name としあき 18/02/12(月)23:43:48 No.10073361
まずはデータをもっと集める必要があるわね。事前に受け取った資料によると、辛うじて都市機能を保っている地区もあるみたいだわ。行ってみましょう。

というわけで、鬱被害の小さい海辺地方にやってきたわ。
確かに人影はちらほらと見かけるし、一部の店舗は営業しているみたいね。
どの人もゾンビみたいな足取りでふらふらと歩いているけれど。
さっそく聞き取り調査を始めましょう。そこの交番に死んだ目をした警官がいるわね。
ちょうどいい、話を聞いてみましょう。

「すみません、少しお話を伺いたいのですが。この辺一帯を覆う鬱被害の調査を行っている古明地さとりと申します。被害が小さいのはこの辺だけなのですか?」
「ああ…調査に来てくれたのかい…そうだな…被害が小さいのは海岸沿いだけだよ…鬱は樹海の近くから始まって…海に向けて広がって行ったんだ…この辺ももうすぐ完全に鬱に呑まれる…逃げるなら今のうちだよ…」
「なるほど。ありがとうございます。」

20 無題 Name としあき 18/02/12(月)23:44:36 No.10073365
異変は樹海から広まっていったのね。これは有力情報だわ。
暗くてジメッとした樹海のような環境はタルナサの好みにぴったりと当てはまる。
樹海に住むタルナサが異変のカギを握っているとみて間違いない。

次に目指すべきは樹海だけど、その前に海岸に行ってみましょう。
きっと海岸には彼女たちがいる。

ゴツゴツとした岩礁に激しく波が打ちつける、通称プリズムジュラー海岸。
そこに彼女たちはいたわ。躁の音を奏でるエクスメルボサウルスと幻想の音を奏でるアンハンリリカ。
そこにタルナサを加えた三匹組はプリズムジュラー三姉妹として有名ね。
エクスメルボサウルスは遠洋、アンハンリリカは海岸、タルナサは内陸と普段の生息場所はそれぞれ異なるけれど、定期的に海岸に集結してライブを開催しているわ。

21 無題 Name としあき 18/02/12(月)23:45:04 No.10073370
今日はエクスメルボサウルスとアンハンリリカが何頭か集まっているけど、そこにタルナサの姿は無いわね。
どうも落ち着きがないように見えるし、何かあったのかしら。彼女たちの心を読んでみましょう。

『ネエサンガコナイ!』『ネエサンガコナイ!』『ドウシヨウ!』『ドウシヨウ!』

姉さんが来ない?タルナサが何らかの原因で海岸に来られなくなっている?
タルナサの身に何か起きたのかしら?今日の調査はここまでにして、明日は樹海へ向かいましょう。

22 無題 Name としあき 18/02/12(月)23:45:42 No.10073377
さて、樹海にやって来たわ。巨木が太陽の光を遮るせいで昼なのに薄暗い。むせ返るような緑の匂いさえ無ければ、なかなか私好みの場所ね。
しばらく歩くと木々が切り倒され地面がほじくり返されている場所に出くわしたわ。
見たところ鉄道の線路を作っているみたいね。
しかも、ジュラシック侵入防止の柵が樹海から海岸へ向かうルートを遮る形でそびえ立っている。
このせいでタルナサは海岸に行けなくなってしまったのね。

しかし、そうなると謎は深まるわね。
仮にタルナサが樹海から出られなくなったとして、何故遠く離れた街が鬱に巻き込まれたの?
二つの現象がつながらないわ。
何はともあれ、タルナサを見つけましょう。謎の核心には確かに近付いている。

23 無題 Name としあき 18/02/12(月)23:47:21 No.10073384
柵に沿ってしばらく歩くと、ついにタルナサを見つけたわ。柵の向こうに行きたそうにうろうろしているわね。

『ドウシヨウ…ドウシヨウ…ウミニイケナイ…イモウトニアイタイ…』

可哀そうに。不安で心がだいぶ弱っている。
でもそれ以上に…タルナサの見た目が明らかに異常だわ。尻尾の発音器官が明らかに巨大化している。
タルナサの尻尾はヴァイオリンと形容されるけど、これはもはやコントラバスね。
いったい何が…

24 無題 Name としあき 18/02/12(月)23:47:54 No.10073387
『アイタイ…アイタイ…キヅイテ…キヅイテ…』

尻尾を海岸の方向に振り始めたわね。この動きは音を発するときに見られる動きだわ。
でも妙ね。音波分析装置のマイクが音を拾っていない。
もしかして、このマイクが拾うことができない波長の音を発している…?だとしたら…

『キヅイテ…キヅイテ…』

気付いて、か。なるほど。謎は解けた。

25 無題 Name としあき 18/02/12(月)23:48:38 No.10073389
今回の異変の原因。それはタルナサ、さらに元をたどれば建設会社が全ての元凶だったわ。
樹海に線路を作るに当たり、線路への立ち入りを防止するための長大な柵が築かれた。
この柵と周囲の山々によってタルナサは樹海に完全に閉じ込められてしまったのね。
そこでタルナサはエクスメルボサウルスとアンハンリリカに音でSOSを送ることにした。
ところがタルナサは妹たちの生息域まで届くような音は出せないわ。
妹たちに会いたい、音に気付いてほしいという思いがタルナサの心を焦がす。
そして心の動きは体に変化を及ぼした。
タルナサの心に答えるように、音を遠くに届けることができる形へと発音器官が自己進化したのよ。
障害物の妨害を受けずに遠くまで届く低い音を出せるように、ヴァイオリンからコントラバスへ。
この変化が樹海に囚われた全てのタルナサに起きていたわ。

26 無題 Name としあき 18/02/12(月)23:48:57 No.10073393
ところが進化した発音器官が出す音はあまりに低すぎた。
遠距離に届く代償として生物の可聴域をはずれてしまったのね。
樹海から海岸に向けて放たれるSOSは、エクスメルボサウルスにもアンハンリリカにも人間にも聞き取れなかった。
しかし、音として聞き取れなくても鬱をもたらす性質だけは残っていて、そのおかげで音波の通り道にある街の人々は鬱になってしまった。
音もなく街を包むタルナサのSOSメッセージ。これが異変の全容よ。

27 無題 Name としあき 18/02/12(月)23:49:28 No.10073395
異変の解決方法はシンプルね。柵を撤去してタルナサを妹たちに会わせてあげれば全ては丸く収まるわ。
線路の工事計画にも大幅な見直しが迫られるけど、これが一番の懸念材料ね。
線路工事を請け負っている建設会社は今までも、環境を無視したコスト最優先の工事で数々の問題を起こしてきた。
今回の件、果たして誠意ある対応を見せてくれるのか。正直期待できないわね。
でも、彼らは変わらなければならない。ジュラシックと人妖の共生のために。
タルナサと妹たちが過ごした不安な日々を、私は無駄にしないわ。

28 無題 Name としあき 18/02/12(月)23:49:53 No.10073398
というわけで問題の建設会社に来たわ。問題を根本から解決するためにね。

「こんにちは、社長さん。私は古明地さとり。よろしくね。この前のヨウヨーム地方の一件、後処理に苦労しているみたいね。そこで提案なんだけど、あなたの会社は私が買収させてもらうわ。」
「何を言っているんだ君は?正気かね?我が社を買収するなど、そんな大金出せるわけが…」
「これで足りるかしら?」
「えっ」
「まだ足りないかしら?それじゃあこれで足りるかしら?」
「いやまって」
「足りる!」
「…本気かね?」
「負けを認めたわね。あなたの会社は私の物よ。」

こうして古明地ホールディングス建築部門が誕生したわ。
何かを思い通りにしたければ、自分のものにしてしまえばいいのよ。
やっぱりお金はどれだけあってもいいわね。

29 無題 Name としあき 18/02/12(月)23:50:49 No.10073403
後日談
建設途中だった線路は私の監視の元、地下鉄として完成したわ。これならジュラシックの往来を妨げることは無い。
タルナサの尻尾もしばらくすると元の大きさに戻り、長射程の鬱の音を出すことは無くなったわ。
これで万事一件落着ね。

ところで、プリズムジュラー三姉妹に興味深い変化が観察されたので、それを紹介して締めとしましょう。
今回の件で発音器官のサイズによって音域が変わるという事実がプリズムジュラーたちに知れ渡り、発音器官の自己進化が一大ムーブメントを巻き起こしたわ。
あるエクスメルボサウルスはバズーカ砲のような口先から重低音を奏で、あるタルナサは小さな尻尾から美しい高音を奏でる様子が観察された。アンハンリリカも姉たちの音をまとめるために演奏技術に磨きがかかっていたわ。
音に多様性が生まれたおかげで、プリズムリジュラー海岸に響く音楽の音色は以前より深いものへと進化したわ。
この自由すぎる生態がジュラシック最大の魅力ではないかしら。
今回のお話はここまで。またどこかでお会いしましょう。

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