8 : 無題 2018/07/22 20:56:44 No.10679140
広大な山々が連なるオッキー山脈。標高1500メートル付近は酸素も薄く、わずかな地衣類が生える程度の乾いた岩場が広がっている。吹き荒れる強風から身を隠す場所などなく、空を飛ぶものは岩壁へ叩きつけられ地を這うものは容赦なく突き落とされる。
そんな苛酷な環境の中を生き抜くラプトルがいる。イワハダラプトルと呼ばれるこの種は保護色となる赤茶色の皮膚とところどころに荒い毛を生やしているのが特徴で岩の上の地衣類などを食べて生活している。

9 : 無題 2018/07/22 20:57:10 No.10679144 2
何故イワハダラプトルはこの環境下で生きていけるのか。ちょうど一匹のケツァールベンベンがラプトルを狙い空から襲い掛かった。この怪文書ではベンベンは肉食なのだ。イワハダラプトル達は不安定な足場のため素早く逃げ回ることができない。万事休す、と思われた次の瞬間、イワハダラプトル達は一斉に身を伏せ岩壁に張り付いた。遅れて唸り声を上げて突風が周囲をめちゃくちゃに荒らし回った。風に揉まれたベンベンは岩にぶつかり、そのまま滑落してしまった。
何故イワハダラプトルは強風が吹くことを予測出来たのだろうか。答えはイワハダラプトルの皮膚に生える毛にある。イワハダラプトルの外皮に一定間隔で生えるこの毛は猫のヒゲのような感覚器官になっている。この毛を使いイワハダラプトルは微細な空気の流れを感知し突風を予測するのである。

10 : 無題 2018/07/22 20:58:32 No.10679152 1
独自の進化を遂げし厳しい環境を生き抜くイワハダラプトル。そんな彼らは今絶滅の危機に瀕している。原因は観光客の持ち込んだゴミだ。その中の一冊、とあるファッション雑誌に書かれたコピーにイワハダラプトルは衝撃を受けた。
『ムダ毛を処理してメチャモテライフ!』
『夏を乗り切るキーワードは清潔感!』
『渋谷女子に聞いたよムダ毛がNGな10の理由!』
イワハダラプトルに剃毛ブーム襲来。ファッション誌の言葉を真に受けたイワハダラプトル達はこぞって自分たちの感覚毛を処理し始めた。当然空気の流れを読むことができなくなり、風に吹き飛ばされる個体が増えたがその生き様もロックだと異性から持て囃された。中には毛を剃らない個体もいたが異性からの評価は低く子孫を残すことはできない。みるみるうちにイワハダラプトルはその数を減らしていった。

11 : 無題 2018/07/22 20:59:05 No.10679156
現在ジュラシック学会はイワハダラプトルの保護を目的とした研究チームを結成。あるがままの姿で自然に生きることをよしとする価値観を根付かせるため、毛深いことがオシャレとするファッション雑誌を投下するという通称マンダムプロジェクトを始動した。この作戦は一定の効果を上げ一部の群れでは剃毛ブームが収束しつつある。しかし広範囲に少数の群れを散らす生態から全体への普及には及ばず、また行き過ぎた剛毛ブームからアフロヘアにし始める個体も現れ新たな問題となっている。
研究員たちの奮闘は今なお続いている。

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