あの人にまた会った。 十代目絵師の、九十九八橋。

無題 Name としあき 19/08/17(土)04:45:41 No.11975131 del そうだねx4
「ギュイイイイ! ギュイイイイイイ!!」
と、衣を引き裂くようなラプトルの悲鳴が聞こえた。
俺が撮影車を走らせて悲鳴の方に行くと、また
あの人に出会ってしまった。 こんな形で再会を
したいと誰が思うだろうか? 彼女は九十九八橋だ。
彼女は、雑な木の棒を振り回してラプトルの巣を踏み、
卵を割って、ラプトルの全てを否定していた。
俺は全ての毛と神経が逆立つような感覚に身を任せ
その狂った女を自分の撮影車に引っ張って投げ込んだ。
まるで幼女を誘拐して犯す、レイプ魔のように。
「…あはは、どうしたの? おじさん。」
その狂った女は、思ったよりまともな言葉を紡いだ。
「俺は味方だ。 敵じゃない。 信じろ。」
一言彼女にそう言って、俺はトプスに襲われないか
ヒヤヒヤしながらひたすら車を走らせ続けた。

無題 Name としあき 19/08/17(土)04:46:06 No.11975132 del そうだねx1
「おじさんは死ぬのが怖い?」
その突然の投げかけに、俺は反射的に怒鳴りそうになる。
「怖いよ。 だから俺は殺さないでくれ。」
「大丈夫、貴方は殺さない。」
そう言って、狂った女は俺とドライブを楽しみはじめた。
「あんなとこで生きててもムダなんだよね。
 あそこはケツァールべんべんの繁殖地だもの。」
俺は何も言い返せなかった。 彼女はラプトルの
人生を全否定する言葉をどんどん積み重ねていった。
「…おじさんはレイプした事ある?」
彼女が無邪気な顔でそう聞いてきた時、俺はブレーキを
踏んだ。 そこそこ長距離、逃げたと判断したのと、
涙で視界がぼやけたまま運転するのは危ないと判断した。
「楽しいよ? レイプ。」
俺はその場で号泣してしまった。 狂った女の前で。

無題 Name としあき 19/08/17(土)04:46:28 No.11975133 del そうだねx1
「…泣かないで。 折角の男前が台無しよ。」
俺は泣く以外の行動を彼女の前で選べなかった。
「いい子、いい子。」
十代目、九十九八橋は一方的に俺の頭を撫でていた。
「これで会ったのは、三度目だっけな。」
泣き飽きた俺が、彼女に人間的な会話を仕掛けた。
「もちろん、覚えてるわよ。 イケメンだから。」
「そいつは光栄だ。 でも俺は、既婚なんだ。」
「あら、それは残念。 ホントに。」
目を合わさずに彼女とそんな会話した。
「おじさん、私とエッチしたくない?」
「……。」
ここで、自分を大切にしろなどと言ってしまいたくなる
自分のボキャブラリーの無さに失望してしまう。
「どうせバレないよ。 ここなら人なんかいない。」

無題 Name としあき 19/08/17(土)04:46:52 No.11975134 del そうだねx1
結論から言うと、俺は彼女を抱いた。 と言っても
イン・アウトはしていない。 あいつは裏切れん。
「首、絞めて欲しいな。」
彼女がそう言った時、俺は軽く平手打ちをしてしまった。
「死んで何になる。」
俺が必死で長時間考え続けて出た、説得の言葉はこれだった。
「私はもう、自分の人生に未練がないの。」
彼女はハッキリと言った。 決して自暴自棄な意思ではない。
「おじさんは、生きている楽しみってあるでしょ。
 こんな車で、遠くから純狐サウルスのおケツを盗撮して。」
ヘラヘラと彼女は笑った。 俺も愛想笑いしてしまう。
「でも、もう何千枚撮ったの? まだ気が済まないの?」
「……。」
「もし気が済んだら、どうなると思う?」
俺は彼女が言いたい事が全てわかってしまった。

無題 Name としあき 19/08/17(土)04:47:23 No.11975135 del そうだねx2
「ねえ、お願いがあるの。」
「…なんだい?」
「私の事を、好きって言って。」
俺は既にそれを何十回も言ったのに。 彼女は欲張りだ。
「…既婚者に言わせる言葉じゃねえよ。」
「だよねぇ。」
彼女は力なく笑った。 そして天を仰いだ。
「私もう、絵描くの止めるの。」
「…そうか。」
彼女は名家の絵師だ。 それがどんな事かはわかっている。
「…ここでおじさんが、独身だったらねぇ? あははは。」
「本当にそうだな。」
「…でも別れたくない。」
彼女は俺に縋った。 そして、彼女と一晩を過ごした。
名残惜しかった。 それでも俺は彼女を慰み者にはしなかった。

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