80無題Nameとしあき 23/03/10(金)00:11:41No.16117808そうだねx6
ある日マタラプトルの元に招待状が届いた。見れば「ラプトル総会」とやらへの案内状だ。どうやら年に一回ラプトル種が集まる総会が開かれており、それに自分は招待されたらしい。まだまだジュラスレでは新参者だし、ここは挨拶もかねて参加しようとマタラプトルは会場へ向かった。
会場となったのはジュラスレ市にある第7バンテリンドーム。入場手続きを済ませると既に多くのラプトル種たちが集まっていた。文ラプトルはちょこまかと走り回っては参加者にインタビューをし、早苗ラプトルはミカン箱の上で何やら演説をしている。ラプトル娘々はこそこそと暗躍し、ラプトル鈴瑚はトプスの廃絶ビラを配っている。ヘカプトルはダサい。自分もこの仲間に入ったのかとマタラプトルは感動し、周りの先輩たちへ挨拶して回った。先輩ラプトル達は皆優しく、またラプトルを受け入れ、あれやこれやとジュラスレのアドバイスをしてくれる。そうこうしているうちに総会開催の時間となった。
壇上に上がるのは議長でもあるラプトル清蘭。手押しカートの上に乗りダブルピースのまま運ばれてくる。ステージの中央に立つとマイクを受け取り、両手を上げた。

81無題Nameとしあき 23/03/10(金)00:12:00No.16117809そうだねx6
「キュー!」
「「「「「キュー!」」」」」
ラプトルのコールにレスポンスが返される。突然部屋の照明が暗くなったかと思うと色とりどりのライトが動き出し、音楽が鳴り響く。開会あいさつのラップが始まったのだ。
「キュキュキュイキィキュイキュイ! キュイキュイキュッキュ! キューキュキュキュキュッキュキュー!」
ターンテーブルをまわすのはゲスト参加のまゆマジロ。昔からターンテーブルをまわすのはマジロと決まっている。ラプトルのリリックがさく裂し、会場は大盛り上がり。参加者のほとんどが何言ってるかよくわかっていないがとにかく盛り上がった。
「はい、それでは次に昨年度の活動報告を事務局の方からお願いするキュイ」
議題が進行して一気にトーンが下がる会場。その後は会計報告や今年度の予定、役員の更新と活動予定などが粛々と話し合われた。
始めた参加した総会であったが、マタラプトルは充実した気持ちでいっぱいだった。自分もラプトル種の一員として認められた、そんな高揚感に包まれる。そうして浮かれた気持であったためだろうか、マタラプトルは気が付かなかった。周囲のラプトル種たちの顔色がだんだんと悪くなっていることに。

82無題Nameとしあき 23/03/10(金)00:12:35No.16117810そうだねx6
「キュ。それでは最後に進行を深めるレクリエーションを行うキュイ」
それはスケジュールに書かれていた中で唯一何かよくわからなかったことだった。他の予定には大まかな開始・終了時刻が書かれているのに、この項目だけは何もない。またレリエーションの内容も一切不明だった。一体何をやるのか周囲に聞こうとしたマタラプトルはその時初めて周りの異様な雰囲気に気が付いた。先ほどまで和気あいあいと話し込んでいたラプトル種たちは誰もみな沈んだ顔でため息をついている。あまりの変わりように声をかけられずにいるマタラプトルの元にレクリエーションの道具が配られた。

83無題Nameとしあき 23/03/10(金)00:12:50No.16117811そうだねx7
ルドー。そうルドーだ。ラプトルと言ったらこれだ。マタラプトルも話には聞いていたが本当にやるのかと驚いた。ラプトルのルドー好きというのも一種の設定というか、パフォーマンスみたいなものだと思っていたからだ。そして同時に周囲の反応の理由も理解した。ルドーが好きなのはラプトル種の中でもラプトル清蘭だけ。他のラプトル種は付き合わされるだけで億劫なのだ。それでもマタラプトルは後輩として、新入りとして積極的にゲームに参加した。サイコロの出目一つで一喜一憂し、他の参加者のコマの動きにもリアクションを取る。ただそうやって盛り上げるよう努めるのにも限界があった。無。あまりにも無。ただただ時間ばかりが進んでいくが一向にゲームは終わらない。周囲の義務のようにこなすプレイスタイルも相まってマタラプトルもすっかり大人しくなった。今まで怪文書で知ってはいたが、読むとやるとでは大違い。こんなに苦痛だとは思わなかった。もう嫌だ、なんでこんな苦行に突き合わされなければならないんだ。
「…やめよう」
「キュイ?」
「もうやめよう! こんなのもうたくさんだ!」

84無題Nameとしあき 23/03/10(金)00:13:48No.16117812そうだねx6
ついにマタラプトルは立ち上がり声を上げた。周囲のラプトル種たちが驚いた眼を向けてくる。
「こんなことして何になるっていうんだ。やりたいなら好きなものだけやればいい。無理やり全員付き合わせる必要などないだろう」

それが新参者として出過ぎた発言だとはわかっていた。それでも、ここはあえて空気を読まない若手の立場を生かすべきだと判断した。先輩ラプトル種たちも気持ちは同じはずだ。自分が切り込めば、きっとみんな賛同してくれる。そう信じたマタラプトルは周囲を見渡す。けれど自分に続いて立ち上がるものはいなかった。その場の誰もが目をそらし、あるいは憐みの目を向けてくる。予想外の反応に戸惑うマタラプトルの背後に、気づけばラプトル清蘭が立っていた。

85無題Nameとしあき 23/03/10(金)00:14:22No.16117813そうだねx6
「マタラプトルはルドーの面白さがわからないキュイ?」
「わ…わからない! こんなもの何が面白いんだ!」
「それじゃあわかるまで続ければいいキュイ」
「え?」

どこかで誰かが逃げろと叫ぶのが聞こえた。それが誰か認めるより早く、マタラプトルの視界は暗転し、何もない空間に立っていた。目の前に置かれたのはルドー。既に二匹のラプトル清蘭が卓につきじっとこちらを見据えている。どちらともなくラプトルが口を開き語り掛けてきた。

86無題Nameとしあき 23/03/10(金)00:15:05No.16117814そうだねx7
「一回やってわからなければ、もう一回やればいいキュイ」
「それでもわからなければ、もう一回やればいいキュイ」
「それでもわからなければ、もう一回やればいいキュイ」
「それでもわからなければ、もう一回やればいいキュイ」
「それでもわからなければ、もう一回やればいいキュイ」
「それでもわからなければ、もう一回やればいいキュイ」
「それでもわからなければ、もう一回やればいいキュイ」
「それでもわからなければ、もう一回やればいいキュイ」
「それでもわからなければ、もう一回やればいいキュイ」
「それでもわからなければ、もう一回やればいいキュイ」
「それでもわからなければ、もう一回やればいいキュイ」
「それでもわからなければ、もう一回やればいいキュイ」
「う、うわぁあああああああああああああああ!!!11!!」

2023年度ラプトル総会が閉会したのはそれから2週間後のことだった。

■ SEARCH

■ JURASSICS BIRTHDAY

■ SHELTER

■ OMAKE ver.2024

どなたでも編集できます