83無題Nameとしあき 21/09/02(木)00:16:49No.14595570そうだねx13
桜咲く頃、雲ひとつない青空の日を「ラプトル日和」と呼ぶ。

春は曙、やうやう白くなりゆく山際を研究室で2度過ごした私、今泉影狼はようやく安息の時を得た。二徹で作り上げたものは論文ではなく学生向けパワーポイント。ラプトルの構造色についてわかりやすく説明した自信作である。明日の講義ではこれに加え実際のラプトルを用意し、一気に新入生たちの心を掴むのだ。
ラプトルはサグメ研から一番毛並みの良いやつを借り、昨日から慣らしている。おっと、今朝のごはんをあげなくては。
_いねえし

84無題Nameとしあき 21/09/02(木)00:17:29No.14595572そうだねx13
全身の汗が吹き出すと同時に、私は研究室を飛び出した。脱兎、脱走。研究者として絶対にあってはならないことだ。大丈夫、まだ近くにいるはずだ。

「ラプトルの体表はこのように、美しい青色をしています。この青色をどうにかして染め物に使えないかと、古くからラプトルの色素を取り出す研究が行われていました。しかし不思議なことに、いくらラプトルの皮膚を調べても、青色の色素は見当たらなかったのです。」
先程まで作成していた講義を反芻しながら、特徴あるラプトルブルーを探して大学内を駆け巡る。

85無題Nameとしあき 21/09/02(木)00:17:48No.14595573そうだねx15
_いた、ようやく見つけた。
全力疾走で探し回ったこちらの気も知らず、借り物ラプトルは大学の外れの草むらで、すいよすいよとうたた寝していた。気持ちよさそうな寝顔を見た安堵からか、二徹明けの疲労がどっと出て、たまらず膝から崩れ落ちた。
もういいや。私はラプトルの真横で大の字に寝そべった。青草の香りがツンと刺し、土の寝心地の良さに驚く。こんな風に地面に直で寝るのは子供のとき以来だ。悪くない。

上を見るとそこには、雲一つない青空が広がっていた。秋の空の、吸い込まれそうな天高い群青色とは違う、のっぺりとした浅葱色。春の空特有の光の散乱が生み出すこの色は、体表の微細な凸凹が作り出す構造色、ラプトルブルーとほぼ同じであった。

ああ_これがラプトル日和か。

春の陽気に包まれ、いつのまにか浅葱色を抱えていた私は、ラプトル日和についても講義に付け加えようかなと考えたが、しばしの春眠を優先とした。(完)

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