12 無題 Name としあき 18/12/23(日)23:13:05 No.11203481 del
すっかり晴れた空を見て、足元のまめトプが騒ぎだす。
トプスは別に散歩が必要な訳ではないはずだが、うちのまめトプは別だ。
仕方無いからドアを開けて誰に言うまでもなく「行ってきます」と口にして外に出る。
まめトプは滑り込むようにしてドアの隙間から飛び出た。ドアが閉められるのを律儀に待っている。
外に出ると言っても大した用事は無い…。普段行ってない路地とか入ってみようか。
当ても無い散歩も偶にはいいかもしれない。鍵を閉めて振り返るとまめトプは駆け出した。
スマホの地図を開きながら慌てて追いかける、お互い迷子になりやすいのだ。
とりあえず地図に無い道を歩いて行こう、今日はそんな気分になった。

13 無題 Name としあき 18/12/23(日)23:13:26 No.11203484 del
なんとかまめトプを落ち着かせながら歩いて行くと見覚えのある岐路へ辿り着いた。
確か右に曲がれれば駅に着くはずだ。左は…行ったことないな。どっちへ行こう?
一度か二度、通ったきりだから前と同じ道でも新しい発見があるかもしれない。
個人的には知ってる道だし右に行きたいのだがまめトプは左を見ている。
そんな時は占いに限る。本格的なものじゃない、落ちてた枝を立てて倒れた方に行く。
丁度、その場には二本の枝が落ちていた。一本拾って地面に立てる。
それを見たまめトプがおぼつかないながらも二本足で立って私の真似をする。

14 無題 Name としあき 18/12/23(日)23:14:02 No.11203487 del
「いくよ?せーのっ」
言葉と共に手を離す。私の枝は右を指した、当然だ、ちょっと押したから。
まめトプのを見る。枝は左を指している…。こいつも押したな。
もう一回だ!と言う前にまめトプは左の道を進もうとした。
やっぱり押したな!慌ててまめトプを抱え上げると暴れ出した。
私が押したのも知ってるなこいつ…。でもこうして抱えれば私の勝ちなのだ。
引き返して右の道を進もうとすると腕をするりと抜け出して左の道へまめトプが走る。
すんでの所で捕まえて抑えつける!元はトプスだけあってすごい力だこいつ…!

15 無題 Name としあき 18/12/23(日)23:14:35 No.11203489 del
状況が膠着状態に陥ると、ぴちゃっと頬に水滴が落ちた。
いつにも増して暗い路地の空はいつの間にか灰色に染まり、あっという間に雨が降り出した。
私が雨に気を取られていると、まめトプはまたしても手をすり抜けて左の道へ走った。
「あっ…!もう!知らないっ!!」
元はあいつの我が儘で外に出てしまったのだ。こんな雨に降られる予定は無かった。
そう考えたら苛立ちが先に来て、思わず走って、今まで来た道を引き返した。
傘を持ってこなかったせいか、走っているせいなのか、雨の量はいつもより多い気がする。
何てことはない喧嘩だ、すぐ仲直り出来る。心の中でそう思っていながら、振り返ってしまう。
まめトプの姿は無かった。それを見て私の足に力が入る、さっさと帰って鍵をかけてやる。

16 無題 Name としあき 18/12/23(日)23:15:10 No.11203493 del
「……ただいま」
いつもの様に帰る。鍵を開けても、ドアを開けても、何の返事も無い。
やっぱり一人は寂しい…かな。今すぐにでもまめトプを探しに行って…。
でも、それだと何か…負けた様な…変な意地が出てしまう。
…分かった、最後に振り返って、いなかったら今日は探さない。
変な理論だと思うが私の中でそう納得したからそうなのだ。私は静かに振り返った。
――こんな時に限って、あいつはいた。雨の中、座り込んで私を見ていた。
一つ溜息を吐いたら気持ちが落ち着いた。急いでまめトプを抱えると、家に向かって走った。
今度はまったく抵抗せずに抱えられた。ごめんねの気持ちを込めて少しきつく抱いていた。

17 無題 Name としあき 18/12/23(日)23:15:33 No.11203494 del
「行ってきまーす!」
すっかり晴れた次の日。今日も団子屋の仕事へと旅立つ、まめトプと一緒に。
いつもと違う道を進み、知らない道を通り過ぎるとあの岐路に辿り着いた。
「左、行こうか」
フイ!と元気よく返事したまめトプは走り出すことなく、私の後ろを着いていく。
何だかそれが可笑しくて思わず私は走りだした、するとまめトプも走り出す。
小さな小路に足音二つ、駆け抜ける。
雨上がりの路地、ビルとビルの間に虹の橋がかかっているような気がした。

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