20. 無題 Name としあき 2018/06/09 00:11:40 No.10510180
「キュイー!!!!」
静かな商店街にラプトル清蘭の悲鳴がこだまする。見れば歩行者天国の真ん中で一匹のラプトルが頭を抱えてのたうちまわっているではないか。実はこのラプトル、かれこれ小一時間ばかり「三年目の浮気」の「三年目の浮気ぐらい大目に見ろよ」「開き直るその態度が気に入らないのよ」の部分が延々とリピートし続けているのである。
「キュイー!!!!」
もう許してあげて! と必死に泣き叫ぶが頭の中ではフレーズがループし続ける。このままでは発狂し廃ジュラシックになるか、ストレスに耐えかねて衰弱死してしまう。道行く人々は後期の視線を向けるだけで誰も救いの手を差し伸べようとはしない。もはやラプトルのバッドジュラシックは避けられぬ運命なのか。

21. 無題 Name としあき 2018/06/09 00:12:13 No.10510183
「だからなんなんだよその態度は! なんで不服そうなんだよ!」
不意に目の前の店先から怒号が上がった。八百屋の店主が一頭の鈴瑚トプスを前に目を吊り上げている。どうやらこのトプス、店先のyasaiやkudamonoを食べてしまったらしい。しかし当のトプスはなぜ自分が怒られているのか全く分かっていなかった。自分はただ美味しそうなyasaiがあったから食べただけなのに、どうして怒られなければならないのか。この人も食べたかったのなら先に食べればよかったのに。
ともあれ相手を宥めようとトプスは店先のバナナを一つ房からもぎ取るとそれを店主に差し出した。当然店主はブチ切れた。
「てめえもう許さんからな! 土下座したって許さん! そもそもお前四足歩行だし! いや立つな立つな! そういうこと言ってんじゃねえんだよ! 両手をついて謝ったって許してあげない! おらぁ!」

---- 22. 無題 Name としあき 2018/06/09 00:12:37 No.10510185
その言葉はラプトルの脳内に電流のように迸った。あまりの衝撃に一瞬死にかけたが、ギリギリのところで踏みとどまる。そうだ、そのフレーズだ。ややもすると強引に見える店主の言葉から続きの歌詞を得たラプトルはようやくループ地獄から抜け出すことができた。助けてくれたのは店主、いや店主から言葉を引き出したトプスだ。トプスはやはりラプトルの味方なんだ。ラプトルは鼓動の高鳴りを覚えた。これは恋か、子孫を残さんとする生物の本能か。どちらにせよこのトプスをラプトルは伴侶と見定めたのだった。
一方トプスはというとブチ切れ過ぎて店の奥に引っ込んだ店主からようやく解放されたところに、頬を赤く染めたラプトルが近寄ってきたので大いに驚いた。一体全体何がどうしてこうなったのかさっぱり理解は追いつかなかったが、美味しいyasaiも食べれたし、つがいの相手も見つかったので今日はいい日だなと思った。それだけ。

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