73 無題 Name としあき 16/06/25(土)21:34:20 No.6966908
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よそ者が静かな海岸を歩いている
海岸には銅像があった
道から外れ周りには何もない静かな海岸にその銅像は佇んでいた
銅像の周りにラプトル達が集う
ラプトル達は悲しみに暮れている
銅像が喜びの象徴ではないことは通りがかったよそ者でもすぐ分かる
「キュイー…」
一匹のラプトルが抑えきれず声を上げた
「「「キュゥゥゥゥ」」」
皆が堪えていた声を上げ始める
想いを伝えたくても伝える事の出来ない悲しい泣き声
よそ者は銅像のモデルが既に死んでいる事に気付く
これは勇敢な2匹のトプスの物語

74 無題 Name としあき 16/06/25(土)21:34:58 No.6966910
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物語は海岸に古いボートが流れ着いた所から始まる
海岸で遊んでいたラプトルたちがボートに気付く
好奇心旺盛なラプトルたちは見慣れぬ人間の道具で遊び始める
ボートに夢中で潮が満ちるのに気づかない
やがて静かにボートは浜から離れてゆく
暖かい日差しと心地よい揺れについラプトルたちはウトウトしてしまった
気付いた頃には子供の小さな手足では戻れないところまで流されていた

77 無題 Name としあき 16/06/25(土)21:35:21 No.6966917
1466858121196.png-(645861 B) サムネ表示

戸惑うラプトルたちの頭上に突然暗雲が立ち込めた
海が荒れ始め波が白くなる
子供たちは船にしがみ付くしかなく哀れな鳴き声を上げていた
助けはないかのように見えた

80 無題 Name としあき 16/06/25(土)21:36:26 No.6966930
1466858186458.jpg-(788083 B) サムネ表示

だがその時到底聞こえないはずの声を聞きつけトプスが2匹駆け付けた
トプスとまめトプの2匹は親友だ
まめトプはトプスの背に飛び乗りトプスは海に飛び込んだ

81 無題 Name としあき 16/06/25(土)21:37:16 No.6966936
1466858236482.png-(661771 B) サムネ表示

トプスが海に飛び込むと同時に古いボートが2つに裂ける
あっという間に海に投げ出されるラプトルたち
恐怖に満ちた叫び声を聞いたトプスは恐怖と怒りを身に感じる
ラプトルが死んじゃう!
それだけは避けないといけない
ラプトルが死ぬと考えただけで恐怖で体中から力が抜ける
トプスは元々泳ぎが得意ではないので顔はほとんど水面下だ
だがラプトルを死なせていけないと考えると空気の足りない肺の痛みも無視できた

82 無題 Name としあき 16/06/25(土)21:38:30 No.6966944
1466858310152.png-(656544 B) サムネ表示

まめトプが小さな声帯を震わせトプスに方向を示す
あっという間に3匹を助け上げまめトプがトプスの背に引き上げる
だが1匹が見つからない
2匹は必死に声を上げ辺りを見渡すがしがみ付くラプトルはもう限界だ
トプスは自分を掴む力が急激に弱っていくのを感じると大急ぎで浜へ戻る
3匹のラプトルを浜に降ろすとトプスはまた海へ飛び込んだ

83 無題 Name としあき 16/06/25(土)21:39:26 No.6966950
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トプスはもう目がかすみほとんど見えていない限界を超えた肺は水と血を吐き出す
トプスの限界を間近で感じるまめトプだが制止の声は掛けない
2匹は何よりもラプトルの命を優先しなければならないのだ
「フギィィィィィィ!!」
お願いラプトル返事をして
2匹の頭を悪夢がよぎる
手足をバタつかせて気泡をまき散らしながら沈んでいくラプトル
そんなのはダメだイヤだ
「……キュッ……キュッ!」
まめトプが微かな声を聞く少し離れた波間でほとんど沈んでいるラプトルの頭が見えた
トプスが血をまき散らせながらラプトルを咥えまめトプが引き上げようとする
引き上げる間もトプスは浜を目指し必死に足掻いた
その時2匹は浜のラプトルが叫んでいるのが聞こえた何か注意を呼びかけている

84 無題 Name としあき 16/06/25(土)21:39:55 No.6966958
1466858395535.png-(932518 B) サムネ表示

まめトプが巨大な波が迫っているのに気付いたがもう選択肢はなかった
「フギ!」
トプスは一言で理解する
2匹は最後の力を振り絞りラプトルを浜へ投げる
ラプトルの体が空中を舞ったかと思うと2匹の姿は見えなくなっていた

85 無題 Name としあき 16/06/25(土)21:40:29 No.6966966
これが2匹のトプスの物語
この日から4匹のラプトルは海に向かって泣き続けている
帰ってきて欲しいから
トプスに謝ってお礼を言いたいから
おいしいdangoを一杯食べてほしいのだ
大好きなトプスが死んだなんて…
家族たちはトプスに死なれたラプトルの悲しみを癒す方法を知らないので途方にくれた
そこで銅像を建て2匹は天国に行ったと説明しこの物語を終わらせようとした
だがよそ者は思う
この物語はまだ終わっていない
2匹はまだ海にいる

86 無題 Name としあき 16/06/25(土)21:41:52 No.6966979
1466858512681.png-(711385 B) サムネ表示

よそ者は旅ラプトル
つがいも巣も作らずフラフラと旅をする変わり者
銅像の話を聞いた旅ラプトルは夜を待ちます
悲しみに暮れる生き残った4匹のラプトルは日没と同時に家族に引きずられるように帰っていきました
この様子だとまた明日も銅像の前で一日を過ごすでしょう
こんな結果を2匹のトプスは望んでいないのです
夜になり旅ラプトルが銅像に近づくと誰もいないはずなのに声がします
少し離れた海の上にぼんやりと影が浮かびます銅像とそっくりの2匹のトプス
旅ラプトルも幽霊は初めてですがトプスの幽霊だからかちっとも怖くありません
「僕たちの声が聞こえるんだね随分と待ったよ」
2匹のトプスは静かな声で「物語」のその後を語ります
助かった4匹は目の前でトプスを「死なせて」しまったせいで心を病んでしまったというのです
一日中海を眺めて過ごしあの日のように波が荒れるとトプスを助けようと海に飛び込もうとするのです
その為に家族は銅像を建て2匹の物語を作り2匹の死を強調したのです
…2匹のトプスは海にはいない…この銅像が2匹のお墓…

89 無題 Name としあき 16/06/25(土)21:42:33 No.6966987
それ以降ラプトルたちはなんとか2匹の死を乗り越えようとするのですがふと気付くと足は海に向かいます
大好きなトプスに会いたくてしょうがないのです
そのため2匹は死にきれずにこうして誰かに助けを求めていたのです
旅ラプトルはどうすればよいか尋ねます
「ここから少し潜ったところにまめトプの襟飾りが落ちてるんだ」
「それが今の僕たちの拠り所なんだ」
ラプトルたちは実際に海にいるトプスを感じ取り海に引き寄せられたのです
「襟飾りを海から引き上げてどこかに埋めてほしいんだ」

92 無題 Name としあき 16/06/25(土)21:43:22 No.6967000

旅ラプトルは朝日を待ち海に飛び込みます
襟飾りはトプスたちの言った通りの場所に沈んでいました
旅ラプトルは襟飾りを拾い上げラプトルたちの村が見える丘に埋めました
ラプトルたちはその日から海を眺めても前ほど悲しい気持ちにはなりませんでした
そこにトプスがいないから…
時々海に来ては銅像の前でトプスに想いを馳せます
ごめんなさい…ありがとう…
ようやく前を見て進み始めたラプトルたちを2匹のトプスが丘から眺めています
これでいいんだよ少し悲しい思いをしたけどこれで大丈夫
2匹のトプスはお礼を言い旅ラプトルは村を後にしました

94 無題 Name としあき 16/06/25(土)21:43:58 No.6967007
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数年後旅ラプトルが再び村を訪れました
静かな海岸には相変わらず2匹のトプスの銅像が佇んでいます
ところが話を聞くと銅像の物語は旅ラプトルが村を去った後も続いていたようです
生き残った4匹のラプトルの内の3匹は今も村にいます
ですが1匹のラプトルは襟飾りを引き上げた後もその悲しみが引くことがなかったらしいのです
そのラプトルは旅ラプトルがいなくなった直後に行方不明になり遂に見つかりませんでした
数日後誰も通らない寂れた丘でラプトルが見つかりました
村の皆はラプトルが海に飛び込んだと思い込み海ばかり調べていたのです
ラプトルは丘に一つだけある石の傍で息絶えていたといいます
その様子はまるでトプスに寄り添うラプトルのようだったそうです
見つかったラプトルは4匹の中で最後に助けられたラプトルでした
一番深く悲しんでいたそのラプトルを村の皆は石の隣に埋めました

95 無題 Name としあき 16/06/25(土)21:45:00 No.6967016
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話を聞き一泊した旅ラプトルは旅立つことにしました
村から遠ざかる時に旅ラプトルは一度だけ足を止め丘の方を見ます
丘の上で2匹のトプスと1匹のラプトルが村と海を眺めていました
きっとラプトルはたくさん謝ってたくさんお礼を言ったのに違いありません
その様子に悲しみは見られませんでした
これからはのんびりと3匹だけの時間を過ごすのでしょう
ラプトルとトプスは一緒が一番
片方がいなくなるのはとっても悲しい
旅ラプトルは銅像の物語が本当に終わったのが分かると再び歩き始めました
今度はどっちに行こうかな…

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