泥新宿に、ネッシーと共に現界したバーサーカー、メアリー・アニング。
彼女はバーサーカーでありながら正常な思考を保っており、
しかし『突然うわ言を呟き始める』『殺してほしいと言い出す』『竜種を守ろうとする』など、不可解な行動が見られた。
その理由は彼女と融合した『もう一つの存在』にある。
『ビッグファイヴ』――『生物の大量絶滅』。その現象そのものであり、概念の総称であり、
生きとし生きるものはいずれ滅ぶという運命の具現。終わりを齎す存在。
ビーストが人類が滅ぼす悪、人類への愛によって人類を滅ぼす人類悪とするならば、
オーメンは星が滅ぼす悪。星全体への愛によって、あるいは人類を除いた星への愛によって人類を、星そのものを滅ぼす悪。
単なる
災害ではなく、人類を愛する
獣性でもなく、
人の敵ではあっても星の敵ではないため
大敵ではない。
星の意思、あるいは愛であるがゆえに、人としての――生命体としての確固たる姿を持たないため、現界することが出来ない。
よって、『縁』を……たとえわずかなものであっても、『縁』をたどって召喚可能な英霊に結び付き、現界を果たす。
『ビッグファイヴ』の場合は『生物の絶滅を証明した』という縁から『メアリー・アニング』と結びついている。
……ただし、彼女もただで結びつかれるわけではない。
『人類を滅ぼす星の意思』に憑りつかれた英霊は、アラヤの抑止力の後押しを受け、『その星の意思』を封印する役割を担う。
クラススキルによって性能を抑え込み、スキルや宝具によって性質を封じる。
彼女の場合はバーサーカーの狂化によってその性能の大半を封印し、
“絶滅”という性質を自身の宝具と結びつけることで、対象を“再現した恐竜たち”に変更している。
彼女が幼女の姿で現界するのも、ほぼすべてのステータスが低ランクなのも、
全て“弱く”なることで自身に憑りつく『ビッグファイヴ』を打倒しやすくするためであり、
竜種が全滅しないようにするのも、万が一封印が解けてしまった際に、“絶滅”の矛先を人類ではなく竜に向けるため。
ありとあらゆる手を尽くして『ビッグファイヴ』の脅威を防ごうとしているが、
以下の条件を全て満たした場合のみ、それは人類に対し猛威を振るう。
ひとつ、泥新宿に存在する竜種の全滅。
ふたつ、それを彼女が知らないこと。
みっつ、メアリー・アニングの生存。
よっつ、彼女が疲弊しきっていること。
いつつ、彼女の“発作”が起こっている――すなわち封印が緩んでいる状態での、
泥新宿のアークエネミーの消滅、すなわち特異点の解決。
彼女が気付かぬうちに竜種が全滅し、彼女が生き残ってしまったうえで、彼女が肉体的にも精神的にも疲れ果てている状態で、
封印が緩んでいる瞬間に、特異点が解決する――一瞬の安堵が起こるという、ごくわずかな可能性においてのみ。
『ビッグファイヴ』は封印を撥ね退け、表層へと現れる。
星への愛、星の意思による“滅び”が現れる際、必ず現界可能なサーヴァントに結合して現れる。
多くの場合そのサーヴァントはアラヤ側であり、滅びを防ごうと、封じようとする。
アークエネミーやビーストと同じく滅びを齎す存在でありながら、
滅びを良しとしない者を伴わなければならず、先に表層にあるのはそちらとなる。
故に、こういったサーヴァントのクラスは『
凶兆』と名付けられた。
最後に、仮説上の恒星、周期的に起こる大量絶滅を説明するために考案されたもの、ネメシス。
由来を同じくする
ニビルと異なり、特定の概念がネメシスの名を借りた存在ではなく、
“大量絶滅の原因の一つ”たる架空恒星ネメシスの幻霊。
奇しくも泥新宿を滅ぼさんとする黒幕が召喚したアークエネミーの宝具名と同じ名を持つこの幻霊は、
そのアークエネミーがいたからこそ泥新宿に引き寄せられたと言え、
そしてこの幻霊が引き寄せられたからこそ、その結果たる『大量絶滅』も必然的に引き寄せられた。
本来であればこの幻霊に結び付いて現界を果たすつもりであったが、
幻霊の霊基では現界するのに足りず、召喚不可能な『大量絶滅』では、霊基の底上げもできない。
故にメアリー・アニングと結びついたのである。