- バアル
不俱戴天の敵、相容れぬ存在。存在意義にして仇敵。
彼を否定するために創造された悪魔であるベルゼブブだが、彼に抱くのは食欲ではなく、ましてや憎悪ですらない。
……何もない。理性でも欲望でもなく、命に刻まれた本能に従い、ただそうあれかしと望まれたが故に彼に戦いを挑む。
「貶められたバアル」であるベルゼブブは、純粋な能力ではバアルに勝てない。蠅の群れは雷光で焼き尽くされ、魔力侵蝕も通用しない。
一方で「バアルを貶めるもの」として、宝具の特攻効果が最大限に発揮され、命中すれば確実に倒せるという、奇妙な力関係にある。
闘争本能さえ収まれば、バアルへの態度は極めて温厚なものになる。仇敵ではあるが嫌っている訳ではなく、むしろその在り方は好ましい。
血を分けた兄弟、双子のような関係性を築いており、戦闘後は
神と
悪魔が互いに腹を割って談笑するという奇妙な光景が広げられている。
基本的に相手を「君」と呼ぶ彼が唯一「お前」と呼ぶ存在でもあり、誰よりも気の置けない「友人」と呼べる相手なのかもしれない。
……ちなみに、彼を取り巻く
妹妻事情及び博愛気質に関しては肯定的であり、彼の惚気話を望んで聞きに行く剛の者でもある。
「糞糞糞糞糞ォ!!!!!バアル、バアルゥ……やはり私たちは切っても切れぬ縁で結ばれてるみたいだなァ……?」
「出会ってしまった以上、最早抑えることなんてできないよなァ……私に喰われる覚悟は、できてるってことだよなァ!!!!!」
「優柔不断?私はそうは思わないが……バアル、お前に全員
キッチリ満足させてやれる甲斐性があれば、何も問題はないんだよ」
- アナト
宿敵バアルの妹にして妻、ということで幾分か面識のある相手。
殺戮衝動のままに鮮血の海を作りながらも決してブレない強烈な愛を貫くその在り方に、愛という感情の凄まじさを改めて考えさせられる。
また、そんな彼女を宿し得る器となった
少女の人間性も気に入っており、できれば彼女の経歴について聞きたいところ。
……バアルを貶めた存在である自分が彼女の前に現れればどうなるかは目に見えているので、現状はバアルとの惚気を遠くから眺める程度。
バアルでも受け止め切れていない暴走状態の彼女が手に負える訳もなく、いざ戦うとなれば面倒なので少しばかり敬遠している。
「しかし……君の器となったその少女といい、
彼女といい、現代には随分と業深い人間が多いな。悪魔としては喜ぶべき、なのか……?」
「愛、怖いなァ!?……とは言わないさ。私はあれよりも悍ましく理解しがたい、無償の愛とやらを知っているからな」
「確かに私はその特性上非常に死に難いがな、それでも痛覚は残っている。……アレは、そういう痛いところを的確に抉るタイプだからな」
- アスタルテ
宿敵バアルの妹にして妻、ということで幾分か面識のある相手。
バアルの模造品として創造されたからか、彼と同じく、数多の信仰が混在する彼女の内から
アスタルテを見抜くことができる。
また、万象を嘲笑する存在である彼が彼女に向ける感情は“食欲”ではなく“憐憫”であり、出会う度に気遣うような、彼らしくない態度を取る。
……
ベルゼブブと、彼女に重ねられた悪魔アスタロトには、ルシファーと並ぶ地獄の支配者、そして邪悪の樹に宿る悪徳を司る者という関連性がある。
故に本物を知る彼は、決して彼女をアスタロトとは呼ばず、また同僚が迷惑をかけたとして何かと彼女に気を利かせているようだ。
「あぁ、アスタルテか。どうした?君の愛しいバアルは彼方にいるが……何だ、遠くから眺めているだけで満足できるのか?」
「しかし……どうして君とアスタロトが同一視されたのか、今でも疑問だとも。似ているのは名前だけで他はどう見ても違うのだが……」
「特にその胸、彼女には決して見せないほうがいい。神に胸囲で負けてると知ったらどうなるか分からないからなァ……」
- ニコール・オブリー
自身の存在の確立、その犠牲となった哀れな少女。
彼の第二宝具は彼女に関する逸話が元となっており、少なくとも彼が一連の悪魔憑きに関わっていたことは間違いない。
しかし、実際に彼女の身に宿ったのがベルゼブブだったのか、バアルだったのか。或いは彼女の存在そのものが作り話だったのか……
真相を知る筈の彼は、決してそれを口にしない。……まるで、語ることを何者かによって禁じられているかのように。
彼から教えられる事実はたった一つ。_____
自分は、君の信じた
神ではない。
「ク、ハハハハハハハハハハ!!!!!誰かと思えば君が!まさか君が召喚されているとは思わなかったぞニコール・オブリー!」
「おいおいどうした、そんなに顔を曇らせて!一体何に懺悔しているんだ!……そんな君に朗報だ。実はな、私は_____」
「_____ああ、いい顔になったなニコール!そうだ、憎悪の炎を滾らせろ!そうでなければニベルコルも浮かばれないからなァ」
- ニンジェルシフェル
正直よくわからん。君は本当にあのルシフェルなのか?
自分で変わったと発言してはいるが、どう見ても変わったとかそういうレベルじゃない。変化というか最早変態では?
……だがまあ、どれ程の変貌を遂げていようと彼と自分の間に結ばれた友情が切れる訳ではないし、彼を軽視することなど決してない。
むしろ、地獄より再起を誓った戦友である彼が、傲慢の罪を背負う悪魔らしく信ずる道を邁進している様に、安堵さえ覚える。
また肩を並べ、共に戦える日が来たことを純粋に喜んではいるようだ。……ところで、作風とかは合わせたほうがいいのだろうか。
「正直ニンジェルについては良く知らないからな……だがまあ君の頼みだ、付き合ってやるさ」
「何、私の肉体は無数の蠅で構成されているからな。変わり身とか分身ぐらいなら普通にできる。存分に頼って欲しい」
「……君に合わせて、私もニンジェルゼブブとでも名乗ったほうがいいか?」