◆qqtckwrihのSSのまとめです。完結した作品および、新作告知、Wiki限定連載等を行っております(ハル SS Wiki)

【 エンドストーリー 】




……歴史に名を遺した英雄の最後は、

たった一人の魔法士によって看取られたものだった。



伝説の最後を見届けた魔法士は、2代目英雄剣士の志を引き継ぎ、

たった1人で孤独な旅へと赴いた。



…気が狂いそうな時間、流れゆく生命、消えていく友たち。



…………だが、その魔法士は決して己の心を見失わなかった。


愛した男、英雄の魂を受け継ぎ、彼を心の中で想いつづけていたから……。





………
……







……さて、どれくらいの時間がたっただろう。



魔法士は、魔界の戦いの果て、久方ぶりの休憩に、魔界から人間界へと降り立った。


人間界では、文明の発展と破滅が繰り返され、いつの間にか"魔法"という存在が失われていた。


時代は、現代……。


魔法士は、魔法と魔族、全てが失われた世界の前に、たった一言。



「…英雄たちが紡いだ世界は、文明の発展と平和で、今日も続いていますよ…」



魔法士は寂しそうに空を見上げると、ココは自分の居場所ではないと、

魔界へ戻ろうとした――――……


……だが。




「……っ!!」




その魔法士の前に、思いがけない光景が飛び込んできた。






3 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/09(土) 20:51:58 ID:so2HniNw
 
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――――【現代国・東都】


ガタンガタン…ガタンガタン…


真剣士「…」

…ポチポチ…カチャカチャ…

真剣士「あいつ…、早く連絡くらい寄こせよ…」


ドンッ!!!

真剣士「うわっ!」

4 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/09(土) 20:52:37 ID:so2HniNw
 
???「ほらぁ、きちんと前見ないと危ないよ!」


真剣士「いっつ…、黒髪乙女か…。さっきメール送った所だろうが!返事返せよ!」

黒髪乙女「あのね、あなたがメール打ってる時から、ずーっと私は声かけてたの」

真剣士「うそつけ!」

黒髪乙女「嘘じゃないし!」

真剣士「…まぁいいや。んで、何?」


黒髪乙女「今日の約束、覚えてる?」








「…青年剣士…さん?」

「ま、魔法使い……さん?」





……紛れもない、二人の姿だった。






「…馬鹿な。あれから何年、何千、何万年の月日が…」

「……まさか、そんなまさか!」






……輪廻転生。


まさか、そんなことが……。


だが、彼らは彼らであって、彼らではない。



「だ、だけど……」




…魔法士は、崩れ落ちた。

涙を流した。

心が失われるほどの時間を経て、魔法士のもとに、再び彼らが現れた。

これを運命と言わずして、何というのか。




「……っ」

「…」

「……!」





そして、再び――――……










……………
………








16 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/09(土) 21:00:50 ID:so2HniNw
 
先生「はいはい。とりあえず…、あそこの真剣士くんの隣の席にお願いね」

大魔道「はい」ニコッ


トコトコ…、ザワザワ…

女子生徒「凄いねー、これからヨロシクね♪」

男子生徒「後で色々話し聞かせろよ、な!」

大魔道「あはは…よろしくお願いします」


黒髪乙女「きゃっ、こっち来たよ真剣士!」

真剣士「っせーな、分かってるよ。どうせインチキマジックだろ」

黒髪乙女「そういう事言わないの!」ビシッ

真剣士「いてっ!」

17 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/09(土) 21:01:49 ID:so2HniNw
 
トコトコ…ストンッ


大魔道「君が隣ですね、これから宜しくお願いします」

真剣士「あぁ…まぁ、よろしく」

大魔道「僕は大魔道です、君の名前は?」

真剣士「…真剣士」


大魔道「へぇ…変わった名前ですね」

真剣士「お前だって変じゃねーか」

大魔道「僕は一応、芸名みたいなもんですから…」

真剣士「本名は?」

大魔道「それは、そのうち…」


19 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/09(土) 21:02:45 ID:so2HniNw
 
黒髪乙女「ねえねえ、大魔道さんっ」ガバッ

真剣士「うっぷ、前が見えねぇ!」


大魔道「あぁ、ありがとうございます」

黒髪乙女「私は黒髪乙女、この真剣士の幼馴染ですっ!」

大魔道「へぇ、そうなんですか」


黒髪乙女「真剣士、変わった名前してますよね」クスクス

真剣士「うっせー!」

黒髪乙女「何でも、昔は有名な剣士の家系だったらしいですよ」

真剣士「お前はペラペラと…」

20 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/09(土) 21:03:35 ID:so2HniNw
 
大魔道「有名な剣士ですかぁ。じゃあ、真剣士さんの実家は武道場か何かを?」

真剣士「…」プイッ

黒髪乙女「答えてあげなさいよ!」

真剣士「あーもう…、別に普通の家庭だよ。アパート暮らしだし」

大魔道「なるほど」


先生「くおら、そこっ!!黒髪乙女、真剣士!ホームルームをしっかり聞かないか!」クワッ


真剣士「見ろ、怒られたじゃねえか!」

大魔道「あっ、すいません」

黒髪乙女「いけない、また後で色々話しましょ!」

大魔道「…はい」ニコッ









……性格は違えど、まるで昔の様。

狂おしい程、心が洗われていく。

久方ぶりに、安らぎを感じる事が出来るのかー……



……そう思っていた。




だが、運命は過酷。


彼らと魔法士が出会ったのは、大きな運命だったのだ。








(…魔族が、再び人間界へ侵攻を?)

(馬鹿な、初代英雄剣士の倒したアリオク、魔族の王の血筋……?)



…初代英雄剣士の討伐した、大陸戦争の引き金となりし魔族の王アリオク。

彼の血を引いたのは、"大魔道"一人ではなかった。

その子孫の名は……幻王。


亡き祖先のアリオクを引き継ぐ、純粋な悪。


彼らは、再び人間界へと侵攻せんと目論んだのだ。




だが、大魔道はそれを許さなかった。

青年剣士との約束のため、平和のため、未来のため……。


大魔道は、これを運命とし、現代に生きる真剣士と黒髪乙女へそれを伝え、立ち上がった。





………… そして …………






474 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/24(日) 22:53:37 ID:3QncLmjA
 
真剣士「…」…ゴッ!!!!

ゴゴゴゴゴッ…

 
大魔道「…きた」

師匠「ごほっ…まさか…」 
 

幻王『…ッ!』

真剣士「…お前は…絶対に殺してやる…」ゴォォォッ

幻王『な、何て魔力…』タジッ

475 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/24(日) 22:55:01 ID:3QncLmjA
 
真剣士「…」スチャッ

幻王『だけど、今の君じゃまだ力量不足だ!』パチンッ

…ドゴォンッ!!!!


幻王『僕の火炎魔法も受けきれないようじゃ』

モクモク…

幻王「…!』


真剣士「…痛くもねえな」

幻王『…』

476 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/24(日) 22:55:55 ID:3QncLmjA
 
ビキッ…ビキビキビキ…

大魔道「竜の皮膚…、3代目の力…」


幻王『…これならどうですか』パチンッ

ゴォォォッ!!!!


師匠「や、闇の魔法…あれに飲まれては一瞬で灰になってしまう…避けてください…っ!」

大魔道「…大丈夫でしょう」


真剣士「…うぜぇよ!!」スチャッ…パァッ!!!

…キキキィンッ!!!ズバァンッ!!!!

幻王『な、何だと!闇を…切り裂くなんて!』

477 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/24(日) 22:56:48 ID:Q9G7dErw
大魔導…やっぱりそういうことか…

478 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/24(日) 22:58:09 ID:3QncLmjA
 
大魔道「2代目の切り札…、剣への光属性の付与…」

師匠「…」ゴクッ


幻王『まだまだぁっ!大雷撃魔法っ!」パチンッ

バチバチバチッ…!!

真剣士「…」ビキビキッ

ザッ…ザッザッ…


幻王『な…何だってたんだよ!!何で倒れない!』

479 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/24(日) 22:58:52 ID:3QncLmjA
 
幻王『…極火炎魔法!極雷撃魔法!極水流魔法!』パチパチンッ!!!

…トゴ゙ォォォオオオオンッ!!!グラグラグラ…

真剣士「!」

ズバァンッ!!!…ドシャッ…


真剣士「…」

幻王『はぁ…はぁ…』


師匠「し、真剣士さん!さ、さすがに今の攻撃では…!」

大魔道「いえ大丈夫でしょう…。彼には、あの血…」


真剣士「ぬ…ぬうおおおっ!」ムクッ


大魔道「"初代"の英雄の血…、打たれ強さがある!」

480 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/24(日) 23:00:06 ID:3QncLmjA
 
幻王『な、何なんだよ…くそぉ!』

真剣士「…」

ザッ…ザッ…ザッ…

幻王『…こ、こんなバカな…』


真剣士「俺の頭に、色々と囁いてくれているよ。これが、血ってやつなのか…」ユラッ


幻王『お…俺は…!幻王だ!!極幻まほ…』クワッ
 
真剣士「うおおおっっ!!!」


キィィィンッ!!!!ズバァァンッ……

481 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/24(日) 23:01:07 ID:3QncLmjA
 
幻王『…がっ…』


真剣士「…」


幻王『…っ』

…ドサッ


真剣士「…」

師匠「し…真剣士さん!」

大魔道「や、やった…」


真剣士「これで…終わりか…?」

幻王『…』

真剣士「本当にあっけない…幕切れ…だな」












道中仲間になったクレイオス、姉剣士の二人とともに、


真剣士は幻王を打ち破り、大魔道たちは勝利を得た。



だが、こちら側とて無傷ではすまなかった。




真剣士の幼馴染である、黒髪乙女が幻王の術の前に、倒れたのだ。




真剣士「…く、黒髪乙女を助けてくれっ!」

大魔道「…」









508 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/24(日) 23:35:43 ID:3QncLmjA
 
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ガチャッ…ギィィ…


真剣士「黒髪乙女…」

黒髪乙女「…」


真剣士「…っ」 
 
大魔道「貴方の魔力を使えば…必ず眼を覚ますでしょう」

真剣士「わかった…やってくれ!今すぐに!」

大魔道「ですが…、問題があります」


真剣士「何だよ!」

509 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/24(日) 23:37:31 ID:3QncLmjA
 
大魔道「これを行なえば…貴方の魔力は失われます」

真剣士「そ、それくらい!」

大魔道「それは、この魔界で過ごす事は出来なくなるということ」

真剣士「元々俺は…魔界の住人じゃないからな」


大魔道「魔力を失った体は、すみやかにあなた方の世界へ送還せねばなりません」

真剣士「だから、それくらい大丈夫だっていってるだろ!」

大魔道「そして、移動をしてきたゲートを覚えていますか?」

真剣士「当たり前だ!」


大魔道「そこを越すには、魔力がいる。魔力がない貴方は…」

真剣士「まさか…通れない…?」

大魔道「いえ、通るには通れます」

真剣士「だから…一体何を言いたいんだ」

510 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/24(日) 23:38:12 ID:3QncLmjA
 
大魔道「…記憶を失う事になってしまう、ということです」

真剣士「!」

師匠「…」


真剣士「こっち側の全てを忘れるってことか…?」

大魔道「少なくともそうなります。更に、魔力の代わりに体力…それをも奪ってしまう」

師匠「つまり、普通の人間に…戻るということです」


真剣士「何もかも失うのか…?」

大魔道「そうなります」

真剣士「師匠も、お前も、竜少女も…クレイオスさんも…あの料理も全部忘れるのか…?」

大魔道「そうです…」

511 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/24(日) 23:39:37 ID:3QncLmjA
 
真剣士「…」

大魔道「ですが、黒髪乙女さんを救う術は…それしかない」

真剣士「…どうすりゃいいんだよ」

大魔道「貴方が決めること、です」


真剣士「…」

師匠「私の本音は…忘れて欲しくはありません。黒髪乙女さんだって、他に助け出す手段があるかもしれない」

真剣士「で、ですよね!」

師匠「ですが…時間がないのも事実。もう、答えは…決まってますよね」

真剣士「…っ」


大魔道「こんな事になって…申し訳ありません…」

512 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/24(日) 23:40:35 ID:3QncLmjA
 
真剣士「黒髪乙女も、ゲートを通れば全てを…忘れるのか?」

大魔道「供給された安定のない魔力で、記憶を保持するのは難しいですからね」


真剣士「俺がこっち側の事を忘れて…こっち側はどうなる?何か変わるか?」

大魔道「こちら側では、貴方はもう名前の刻まれた英雄です。それは、永遠に続くことでしょう」

真剣士「…そうか」

師匠「貴方が忘れても、私たちは貴方を決して忘れません」


真剣士「でもさ…俺、やっぱり黒髪乙女を助けたい…」


師匠「やっぱり…そう言うと思ってました」ニコッ

大魔道「…準備は出来ています。時間もない…早速、はじめましょう」スッ

513 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/24(日) 23:41:13 ID:3QncLmjA
 
真剣士「…師匠、大魔道」

師匠「…」

大魔道「…」


真剣士「楽しかった事、辛かった事もあるけど…とりあえず礼を言っときます。ありがとう」


師匠「礼を言うのはこちらです。ありがとう」

大魔道「…ありがとうございました」


真剣士「手術ってことだよな…痛いのか?」

大魔道「眠ってる間に終わりますよ。目覚めたら…あちら側です」

真剣士「わかった…」

514 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/24(日) 23:41:44 ID:3QncLmjA
 
大魔道「睡眠魔法…」パァッ

真剣士「…っ」


クラクラッ…ドサッ…


大魔道「…魔力の供給を始めます。本当に感謝します、現代の"英雄剣士"さん…」

515 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/24(日) 23:42:46 ID:3QncLmjA
 
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・・・・
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大魔道「…」

大魔道「…っ」

大魔道「………私が、彼といるのはもう、許されないということなんでしょうね」








……
…………




516 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/24(日) 23:44:12 ID:3QncLmjA
 
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 現代国・東都 】


ガタンガタン…ガタンガタン…


真剣士「…ん?あれ…俺、今何してたっけ」

…ポチポチ…カチャカチャ…


真剣士「あ…そうだ!あいつ…、早く連絡くらい寄こせよ…」


ドンッ!!!

真剣士「うわっ!」

517 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/24(日) 23:45:34 ID:3QncLmjA
 
???「ほらぁ、きちんと前見ないと危ないよ!」クスッ


真剣士「いっつ…、黒髪乙女か…。さっきメール送った所だろうが!返事返せよ!」

黒髪乙女「そんなの来てないし、ずーっと私は声かけてたじゃない!」

真剣士「うそつけ!」

黒髪乙女「嘘じゃないし!」

真剣士「…まぁいいや。んで…何の用?」


黒髪乙女「今日の約束、覚えてる?」

518 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/24(日) 23:46:27 ID:3QncLmjA
 
真剣士「覚えてるよ。帰りに、ケーキ食うんだろ?」

黒髪乙女「やったー!」

真剣士「今月の小遣い少ないっつーに…」ブツブツ


黒髪乙女「ねっ、そうだ…昨日のテレビ見た?」

真剣士「特番のやつ?」

黒髪乙女「うん、それそれ!謎の爆発が東都の夜空を切り裂いたとかっていうの!」

真剣士「あんなのただのCGだろ」

519 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/24(日) 23:47:04 ID:3QncLmjA
 
黒髪乙女「でも、本物っぽかったよ?」

真剣士「中から人が飛び出してる姿が確認!とか、ありえねーから」ハハハ

黒髪乙女「そうだよね〜…。4人とか飛び出してたし、やっぱりヤラセかなぁ」

真剣士(あれ…4人とか詳細、書いてあったっけ?)


黒髪乙女「う〜ん…」

真剣士「まぁ、ヤラセだよヤラセ」

黒髪乙女「でも、そういう事ばっか言ったら夢がないでしょ!」

真剣士「あのな…」

520 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/24(日) 23:47:49 ID:3QncLmjA
 
黒髪乙女「でも、もし本当だったらその人たちは何をしに来たんだろうね」

真剣士「…東都の観光」

黒髪乙女「何で…」


真剣士「どうでもいいよ…つーか、学校始まるって!」

黒髪乙女「あ、いけない…走ろ!」ダッ

真剣士「あ、おい!待て!」


タッタッタッタ…

521 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/24(日) 23:48:30 ID:3QncLmjA
 
コケッ…ドシャッ!!

真剣士「…って…」

黒髪乙女「えーっ!何で転んでるの!」

真剣士「…」グスッ…ポロッ…


黒髪乙女「…え、泣いてるの?どこかぶつけたの?」アセッ

真剣士「…」ポロポロ

黒髪乙女「真剣士…?」

真剣士「転んで痛かったんだ…なんて!俺はウソ泣きが得意なんだよ」ゴシゴシ


黒髪乙女「…?」

真剣士「いいから学校行くぞ!遅れる!」ダッ

黒髪乙女「あっ、ずるい!」ダッ

タッタッタッタ…

522 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/24(日) 23:49:22 ID:3QncLmjA
 
ソロソロ…

…………スッ…


大魔道「やはり、記憶は失われていたようですね」

師匠「これで…見納めですか。やはり…寂しいものですね」

大魔道「…僕たちの役目は本当にこれで終わりました。帰りましょう…僕たちの世界へ」

師匠「そうですね…」


大魔道「…」パァッ

523 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/24(日) 23:49:59 ID:3QncLmjA
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

バチバチバチッ!!ドォォンッ!!!


タッタッタッタ…

真剣士「!」ピタッ

黒髪乙女「きゃっ!な、何…今の光…」ピタッ


真剣士「さ…さぁ…」

黒髪乙女「…」


真剣士「まぁ…とりあえず、学校遅れるぞ!」

黒髪乙女「……、そうだった、いっそげ〜!」

524 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/24(日) 23:50:55 ID:3QncLmjA
 
真剣士(…大魔道、師匠。いたのは分かってたよ)

真剣士(俺に流れる血は、全てを忘れるのは許されなかったらしい)

真剣士(また…きっと会えるよな)

真剣士(…)


真剣士「まぁ…それでも、転んだ拍子に黒髪乙女の顔見て涙流すとは情けない…」トホホ

黒髪乙女「…何か言った?」

真剣士「はは、いや何でも」


黒髪乙女「?…変な真剣士」

525 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/24(日) 23:51:37 ID:3QncLmjA
 
真剣士「…また、きっと会おうな…みんな!」

526 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/24(日) 23:52:19 ID:3QncLmjA
 
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……運命とは、時に過酷で、残酷で。



だけど、時には優しさも見せてくれる。













527 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/24(日) 23:54:25 ID:3QncLmjA
 
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――――【 魔 界 】


姉剣士(師匠)「それにしても、平和が戻って本当によかった」

大魔道「そうですね」

姉剣士「これで、私たち姉妹は傭兵稼業に戻れます」

大魔道「妹さんは、もう少しで戻ってくるんでしたっけ?」

姉剣士「ようやく前線も落ち着きましたからね」


大魔道「"姉妹堂"、久々の営業開始ですね」


姉剣士「…大魔道さん」

大魔道「はい?」

528 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/24(日) 23:55:15 ID:3QncLmjA
 
姉剣士「…今更ですが…あなたは一体何者ですか?」

大魔道「…」

姉剣士「私たちが知らない技術や、戦術。知るはずのない英雄の歴史…貴方は一体…」

大魔道「気になり、ますか」


姉剣士「…気にならないといったら、ウソになります」

大魔道「貴方なら…いいでしょう。僕は"魔王"の血を引きし者、です」

姉剣士「!」


大魔道「…幻王は、その魔王の血を別に引いた…いうならば親戚でしょうか…」

姉剣士「そっ…そんな…」

529 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/24(日) 23:56:59 ID:3QncLmjA
 
大魔道「…僕は数千年…この世界を生きてきました」

姉剣士「数千年…ですか」

大魔道「愛する者が死に、僕に流れる魔王の血は、僕が死ぬ事を許さなかった」

姉剣士「…」


大魔道「辛かったですよ。ですが、こうして…再び"友の力"を見れました」

姉剣士「友の力…ですか?」

大魔道「はは、僕がまだ子供の時、2代目英雄剣士と学校の友達だった時代があるんです」

姉剣士「と…突拍子もない話ですね…」

530 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/24(日) 23:58:19 ID:3QncLmjA
 
大魔道「そこから彼の子、彼が関わった世界を救った人々の助けに回ってきました」

姉剣士「だから…あんなに詳しかったんですね」

大魔道「そして、魔界の扉が閉じられ…もう二度と友と会えなくなってしまった…と思っていました」

姉剣士「…」

大魔道「不謹慎ですが…僕は、再び英雄剣士の血を引く子孫と出会え、正直…嬉しかった」

姉剣士「そんな…こと…」


大魔道「僕はいつ死ねるのか。僕の使命はまだ終わらないのか。僕自身、どうすればいいか分かりません」

姉剣士「…」

531 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/24(日) 23:59:34 ID:3QncLmjA
 
大魔道「ですが僕がいる理由は…、いつの時代も一緒です。僕を信じてくれた人…それを支える事」

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少年剣士「中級魔道、ありがとう!」
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大魔道「…僕を最後まで信じて、僕を最後まで支えてくれた人がいた。あの一言がなければ…僕は…第二の魔王に…」


姉剣士「大魔道さん…良かったですね。真剣士さんも…その人のように信じてくれましたし」

大魔道「…真剣士さんは、彼とは性格は違いますが、やはりどことなく…似ていました」


姉剣士「…大魔道さんは、これからどうするんです?」

大魔道「僕ですか…また、隠遁生活に戻りましょうかね」ハハ

532 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/25(月) 00:00:19 ID:yWSiGUbE
 
姉剣士「…とはいっても、人並みにお腹がすいたりはするんですよね?」

大魔道「まぁ…死ぬ事はなくても…、痛みや辛さはそのままですよ」

姉剣士「じゃあ、うちで働かないですか?」


大魔道「え?僕がですか?」

姉剣士「姉妹堂のサポート…とか」

大魔道「いや…でも」


姉剣士「私たちが元気なうちですけど、亜人同士で寿命も長いですし…お世話くらいできますよ」

大魔道「…」

姉剣士「妹もきっと喜ぶでしょうし、強力な仲間ですからね」クスッ

533 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/25(月) 00:01:28 ID:yWSiGUbE
 
大魔道「姉妹剣士の、仲間…ですか」

姉剣士「無理にとはいいませんが、給料も安いですしね」

大魔道「…少しだけ、お世話になりましょうか」

姉剣士「…はいっ」


大魔道「それじゃ、とりあえず妹剣士さんにでも挨拶しに行きましょうか」


姉剣士「ですね♪」

534 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/25(月) 00:02:16 ID:yWSiGUbE
 
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―――現代。

魔法という存在が、昔はあったらしい。


だが、ふと気づくと魔法よりも"錬金科学"が世界を支配していった。

自らの体力を使わずに魔法と同等の利便をもたらしたこの技術は、あっという間に世界に広がった。


今日という日、

スイッチ一つで明かりが点く。
スイッチ一つで水が出る。
スイッチ一つで火が吹く。

当たり前のようで、不思議な技術。気がつけば、人の歴史から"魔法"は忘れ去れていった。

535 : ◆qqtckwRIh.:2013/11/25(月) 00:03:14 ID:yWSiGUbE
 
しかし、この世に残る"魔法"という言葉。

その真理、真実に…気づいている人は、少なからずいる。


…君が住んでいる世界が"全て"だと思っているのなら、それは間違いだろう。

なぜなら、壁を隔てた先に…もう1つ、"魔界"に生きる者たちがいる。


ウソだと思うなら、呼んでみるといいかもしれない。


―――そうすれば、ほら…どこからともなく…君を呼ぶ声が…

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大魔道「……私の旅は、まだまだ終わらない。」

大魔道「いや、一生終わることがないのかもしれない。」

大魔道「だけど、私はそれでもいい。」

大魔道「…ただの我慢かもしれないけど、これが私の運命。」

大魔道「運命のまま、世界のため、犠牲になった友を知っているから。」

大魔道「私は……生き続ける。」


大魔道「だけど、願わくば…。いつか、またあの時代の友のもとへ……」




「……中級魔道、ほら、早くおいでよっ!」


「し、少年剣士さん…!は、はいっ……!」






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【 E N D 】


















あとがき



青年剣士魔界編、およぶところ「完結編」はこれで終了です。


過去のお話をもってきたことで、なんとなく"懐かしい"や"そうだったな"と思って頂けたかもしれません。


題名は青年剣士ですが、大魔道の物語でもありました。


少年剣士より出会い、中級魔道として名もなかった二人。



それが英雄とし、歴史の証人とし、驚くべき成長を遂げつつ…哀しい物語となりました。



最期のシーンまで(主人公クラス登場人物の一生)を描いたのは、これが初めてになります。



大魔道の物語は、これからも続くことでしょう。



しかし、自分はここで、剣士シリーズが本当に完結したんだなと改めて思います。



新作や、同世界観の作品はまだ描くつもりですが、


「英雄剣士の一生」、つまり「剣士の物語」は完結となります。



ありがとうございました。



2015年2月

このページへのコメント

ほぼ全て読み終えて思うのは悲しいな、という感情。
初代英雄剣士の父親は元帥になってたはずだけど、それからどうなったのか分からないままだし、他あの人は?というのもある。
それはそれとして言わせて頂くね、お疲れ様、ありがとう。

2
Posted by 名無Cさん 2018年08月13日(月) 00:39:50 返信

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