◆qqtckwrihのSSのまとめです。完結した作品および、新作告知、Wiki限定連載等を行っております(ハル SS Wiki)

【最終話:ドラキュラ】


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――――【 夜空の中 】

バサバサッ……

ドラキュラ(……色々あったけど、今日も楽しかったな)

ドラキュラ(お弁当も作ってきてくれて、女子大生さん…なんか、僕のお姉ちゃんみたい……)エヘヘ…

ドラキュラ(でも、こーくんに言ったらたぶん……)


ドラキュラ『人間の姉貴だとっ!?バカじゃねーの、死ねよ!!』


ドラキュラ(とか、言うんだろうなぁ……)アハハ…

ドラキュラ(…)

ドラキュラ(僕は、本当は人間と相対する存在。)

ドラキュラ(だけど…血が飲めなくて、人間と仲良くしてて、楽しんで……)

ドラキュラ(僕ってば、本当にドラキュラなのかなぁ……)



バサバサッ、バサバサッ……!!


ドラキュラ(…まぁ、仕方ないよね。)


ドラキュラ(僕は僕だし、いまさら変われなんか言われても仕方ないし!)


ドラキュラ(願わくば、もう少しこのまま……)


ドラキュラ(…)


ドラキュラ(……って、そうだ!)

バササッ…!!



ドラキュラ(忘れてた、次はケーキを作ってくれるっていった日は…僕のヴァンパイア様の挨拶日だった!)

ドラキュラ(1日ずらして行くから、言わないと…!)

ドラキュラ(まだ別れたばっかだし、もしかしたらマンションの玄関にいるかも…。急ごうっ!)クルッ

バサバサッ!バサバサバサッ、バササッ!!

ヒュッ…ヒュオオオォォッ!!

…………
……








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――――【 マンション玄関の前 】

ポタ…ポタッ……

女子大生「…ッ!!」ズキンズキン!!


ストーカー「は、はははっ!こ、ここ、これで…あんたは永遠に…誰のモノにもならないんだ……!」


女子大生(さ、刺された…。い、痛い、痛いよ……っ!)ズキンズキン…!

女子大生(どうして…なんで……!)ググッ…!


ストーカー「…ん、生きてるのかぁ……?」


女子大生「ど…う……して……」ゲホッ…!


ストーカー「…君を、君を誰にも渡さないためにだよぉ……」

ストーカー「僕が、ぼぼ、僕が、僕のものに、永遠に僕のものにする…ために……」ニマァ……



女子大生「…ッ!!」


ストーカー「…おなかを刺しただけで、君の美しい顔には傷はついてないよ……」ニコニコ

ストーカー「き、きき、君が死んだら…僕の部屋に運んで、きれいにお着替え…したり…遊ぼうね……」ヘヘ、ヘヘヘ……


女子大生「う…そ……」

女子大生「こ、こん…なの……ないよ…………」グスッ…

ドロッ…ポタポタッ……


ストーカー「あ、あのへんなガキとかさぁ、君の周りは危険な人が多すぎるから……」

ストーカー「ぼぼ、僕が、僕といっしょに、一生僕の部屋で、一緒に過ごそう…ね……ね、ね?」


女子大生(ど、どらきゅら……くん……)グッ…

女子大生(こー…くん……)ググッ…




ストーカー「…動いていると、運びにくいから…」

ストーカー「一瞬痛いかもしれないけど、ご…ごめんね……」ビュオッ!

…ザシュッ!!

プシュッ!ポタタッ……!ドクッ……


女子大生「……ッ!!」

女子大生「…」

女子大生「…」

女子大生「……」ガクッ…


ストーカー「……えっ、えへ…」

ストーカー「えへへへへへっ!」

ストーカー「こ、これで、君を一生守れるよ!一生、僕といっしょで、いっしょに遊んですごそうね!」

ストーカー「……楽しい生活になりそう、だよ……」ニマァ…




……ガサッ!


ストーカー「!?」クルッ!


「…」

「………え?」


ストーカー「……な、なな、なんだ、君か」


………


ドラキュラ「おねえ…ちゃん……。女子大生……さん……?」


………


ストーカー「…き、君みたいな悪いやつから守るためにこうなったんだぞ!」

ストーカー「それに、この子はもう僕のものだ、ち、近づくな!!」


ドラキュラ「……ッ!」

ザッザッザッ……



ストーカー「ちち、近づくなぁぁああっ!!これで、切り刻んでや……!」ビュオッ!!

ドラキュラ「……うるさい」バッ!

…バキィッ!!!

ストーカー「ひぎぃっ!?」

ズザザァッ…!!


ドラキュラ「お、おねえちゃ……。しっかりしてよ、ねぇ!」

ドラキュラ「お姉ちゃん、お姉ちゃんっ!?」

ユサユサ……!!

女子大生「…」ダラン…

ドラキュラ「目を覚ましてよ、お姉ちゃん!!!」



ストーカー「くっ……!」ムクッ…

ストーカー「がが、ガキのクセになんて力だ……!」ズキズキ!

ストーカー「み、見ろ!血が出てしまったじゃないかあああ!!」ドクドク…

ストーカー「だからお前のような存在を、女子大生さんに近づけるべきじゃなかったんだよぉぉおお!!」


ドラキュラ「…お姉ちゃん」ギリッ…

女子大生「…」


ストーカー「聞いているのか、貴様あぁぁ〜〜〜っ!!」ビシッ!!


ドラキュラ「…」

ドラキュラ「……さい」


ストーカー「…なんだとっ!?!?」



ドラキュラ「うる…さい……」

ドラキュラ「……うるさい、うるさい」


ストーカー「ひ、人を怪我させといて何がうるさいだあぁぁあああっ!!」


ドラキュラ「……聞こえないのか。うるさいと言っているんだ…」ゴッ…!


ストーカー「なにぃ!?うるさいのは、おま……」

ストーカー「……え……?」


ドラキュラ「……ッ!!」ギロッ!!

…バサァッ!!!



ストーカー「へ……っ!?」

ストーカー「な、なんで目が赤く光っ…て……いうか、ななな、なんだその羽根は!!」


ドラキュラ「…なんで、こんな優しい人を…殺したんだ……!」ゴッ、ゴゴ……!!


ストーカー「…ま、まるでコウモリのよう…な……!!」


ドラキュラ「お前は…許さない……」

ドラキュラ「…お前だけは、許さない……」

……ゴォォォォオッ!!!……


ストーカー「ひ、ひぃいぃぃいっ!?」




ドラキュラ「…お姉ちゃん」ソッ…


女子大生「…」


ドラキュラ「……こんな形でゴメンね……」

ドラキュラ「だけど、今なら…僕……」

…カプッ

女子大生「…」

ドラキュラ「……っ」

…"ゴクッ"…!!


ストーカー「く、首筋から…!まま、まさか、血を……!!」




ドラキュラ「…ッ!!」

ゴクッ、ゴクッ……!!グビッ……!!

ドラキュラ「……は、はぁっ!!!」ググッ…!!

ドラキュラ「お、俺の身体に…力…が……!!力が、あふれてくるっ…!!」ビキビキッ!!


ストーカー「お、お、お前…は……!!」


ドラキュラ「…ッ!!」クワッ!

ドラキュラ「人間は…俺の…餌……!!」

ドラキュラ「思い知るがいい…人間……めが……!!」ダッ!

ダダダダダダッ!!!


ストーカー「ひっ…!!」

ストーカー「く、くく、来るな来るな来るな来るなぁぁぁあああっ!!!」




ドラキュラ「……がぁああああぁぁっ!!!」


ストーカー「ひ…!」

ストーカー「ひやああああぁぁあああああぁぁあああっ!!!」


……………
………




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――――【 数分後 】


ストーカー「あ゛っ……」ゲホッ…

ドラキュラ「…不味い血だ」ペッ…

ストーカー「ど、ドラ…キュラのよう…な奴……が……」

ドラキュラ「生憎さま。俺はような、じゃない。ドラキュラなんだよ」

ストーカー「嘘…だ……」

フラッ……ドシャアッ……!!


ドラキュラ「…」

ドラキュラ「……ッ」




「…な、なんだぁ!?」

…バサバサッ!!ヒュオォッ!


ドラキュラ「…ん?」チラッ


バサバサバサッ!

使い魔「……お、お前!?」


ドラキュラ「あぁ、お前か」

使い魔「お、お前って…!は!?」

ドラキュラ「…」


使い魔「帰りが遅いから来てみれば……」

使い魔「…じょ、女子大生の姉ちゃんは倒れてるし、お前は血ぃ吸ってるし!?」

使い魔「な、何があったんだよ!?」




ドラキュラ「俺のせいだ。全部……」

使い魔「…お、お前言葉使い変だぞ!?」

ドラキュラ「……」バッ

…ガシッ!

使い魔「むぐっ!?」


ドラキュラ「…俺は確かにショボい存在だけどな、仮にも主だぞ。」

ドラキュラ「普段はいいが、お前は使い魔としてもうちょっと立場をわきまえないか」


使い魔「…!?」

使い魔(な、なんだぁ!?)

使い魔(事情が分からないが、雰囲気といい勢いといい、先代……いや)

使い魔(まるで、ヴァンパイア様のような……!)




ドラキュラ「…」

ドラキュラ「……っ」フラッ


使い魔「…あっ、おい!?」


ドラキュラ「…」フラ…

クラクラ……ドサッ!


使い魔「お、おいっ!?主っ!?」


…………
……







……
…………
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――――【 1時間後 女子大生の部屋 】

…パチッ

ドラキュラ「ん……」


使い魔「」ゼェゼェ…!!


ドラキュラ「あ、あれ……?」

ドラキュラ「ここはお姉ちゃんの…部屋……」ムクッ


使い魔「や、やっと目が覚めたか……!」


ドラキュラ「…」

ドラキュラ「……あっ、そうだ!?」

ドラキュラ「"僕"のせいで、お姉ちゃんが!!」バッ!




使い魔「そ、そこに…運んだぞ……二人とも……!」ゼェゼェ!

使い魔「くっそ疲れた…!」

使い魔「一体、何が…あったんだよ……!」ハァハァ!!


ドラキュラ「…ッ!」


女子大生「…」ダランッ…

ストーカー「…」


ドラキュラ「……夢なんかじゃ、なかったんだ」


使い魔「…何があったか話してもらおうか」

使い魔「つーか、聞かないことには話が進まん」



ドラキュラ「…」

ドラキュラ「……あのね」


使い魔「…」


ドラキュラ「…僕のせいなんだ」


使い魔「…」


………








………
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使い魔「……そういうことか」

ドラキュラ「それで、怒りでいっぱいになって、そしたら血がほしくなって……」

使い魔「…さっきみたくなったと」

ドラキュラ「記憶もあるし、だけど興奮してて、何がなんだか……」


使い魔「…」

使い魔「……覚醒、だな」


ドラキュラ「覚醒?」


使い魔「恐らく、今まで眠っていた力が血を飲んで解放されたんだろう。」

使い魔「言うならば、お前は今の顔と裏の顔があったってことさ」


ドラキュラ「…」




使い魔「……まぁ、殺されたのも、殺しちまったのも仕方ねぇ。」

使い魔「後処理が大変だし、女子大生は残念だったが……俺らは逃げようぜ」


ドラキュラ「そ、そんな簡単に!」

使い魔「……じゃあどうすんだよ」

ドラキュラ「え?」

使い魔「この女子大生を連れて帰るか?」

ドラキュラ「え、いや……」

使い魔「コイツのいるであろう家族に、自分のせいで殺しましたっていうのか」

ドラキュラ「そ、それは……」



使い魔「……人間と仲良くしすぎだ。」

使い魔「いいか、お前はドラキュラで…人間と相対する存在。恐怖の存在なんだ」

使い魔「今回のことは、良い夢でも見ていたんだと思うだけにしておけ」


ドラキュラ「…っ」


使い魔「…ほら、行くぞ。俺らは俺らの住処へ帰るんだ」

ドラキュラ「う…うん……」モジッ…

使い魔「…」

ドラキュラ「だ、だけどさ…こーくん……」

使い魔「んだよ」



ドラキュラ「こ、こんなの…辛いよぉ……」グスッ…

使い魔「!?」

ドラキュラ「せっかく仲良くなって、ケーキを作ってくれるって約束してて、また遊ぼうねって……」

使い魔「おま…」

ドラキュラ「さっきまで元気で、夕方まで一緒に遊んでたのに、どうして…こうなっちゃったの……?」ポロポロ…

使い魔「人間に涙流すかフツー…」ハァァ

ドラキュラ「僕がドラキュラじゃなかったら、女子大生さんも死ななくて済んだんだよね……」ヒグッ…

使い魔「…あーそうね。そうそう」

ドラキュラ「……自分が憎い。なんで、どうして…なんでなの……」グスグスッ…


使い魔「…ッ」イラッ!

使い魔「……ホンット、お前はドラキュラ一族の恥さらし……!!」



…ムクッ!

女子大生「…」

女子大生「……あ、あれ?」

女子大生「こ、ここは……どこだろ……?」


ドラキュラ「…えっ!?」

使い魔「…はい?」


女子大生「…って、私の部屋か」

女子大生「…」

女子大生「…あっ、ドラキュラくん、こーくん!?」ハッ!


ドラキュラ「…お、お姉ちゃんっ!?」

使い魔「な、なにっ!!?」



女子大生「…って、隣で寝てるのはあの男!?」ビクッ!

女子大生「…」

女子大生「……ん、あれ。そういえば私、この男に刺されて…」


使い魔「…嘘だろ。お前、さっきまで死んでたんだぞ」

女子大生「え?」

使い魔「ちょっ、腹の傷見せてみろ!」バッ!

女子大生「え…!き、きゃ〜〜っ!?」

…ペロンッ!


ドラキュラ「こ、こーくん!?めくりすぎだよぉっ!!」カァァ!


使い魔「…」

使い魔「……は?」




女子大生「こ、こーくん…?」


ドラキュラ「うぅぅ〜……」カァァ


使い魔「…な、ない。傷が」

ドラキュラ「えっ?」

使い魔「…いや、あるにはあるが完治してる。わずかに…傷跡はあるんだが」

ドラキュラ「…ど、どういうこと?」


女子大生「…?」


使い魔「…な、なんで」

使い魔「は、はぁっ!?どうしてだ、何がなんだ!?」



ドラキュラ「…わ、わかんないよぉ!」

使い魔「わ、わかんねーよ俺にも!確かに、血がドクドク出てて、死んでたのは俺もチェックしたし!」

ドラキュラ「……ま、まぁだけど、生きててよかったよ」グスッ…

使い魔「いやいやいやいや!?」


女子大生「…」

女子大生「……よ、よくわからないけど私は助かったのかな?」


ドラキュラ「…た、たぶん助かったんだと思います!夢じゃないです!」グスッ…

女子大生「……そっか、夢じゃないんだ」

ドラキュラ「…はいっ」ニコッ

女子大生「…っ!」ダッ!

タタタッ、ギュウッ!フニュッ…



ドラキュラ「わわわっ!?」

ドラキュラ「お姉ちゃん、服がめくれたままで……!あうぅぅ〜…!」


女子大生「…わからないけど、また君と遊べるんだね」ギュウッ

ドラキュラ「は、はい……!」

女子大生「ケーキの約束、守ってあげられるんだね」

ドラキュラ「…はいっ」

女子大生「……嬉しいな」

ドラキュラ「……はいっ」



使い魔(…なんだ、何が起きている?)

使い魔(俺は確かに死んでいるのを確認したし、傷が深くあるのも確認した!)

使い魔(…なのに傷はないし、生き返っただと?)

使い魔(これは奇跡なんかじゃねえ、何かある。絶対にあるはずだ、絶対に……)

使い魔(どのタイミングで、何かがきっかけになっている)ブツブツ…

使い魔(考えられると…したら……)

使い魔(……)

使い魔(……ま、まさか!?)ハッ!


女子大生「ふふっ、ドラキュラくんをまた抱きしめられて…本当に…嬉しい」ギュー!

ドラキュラ「お、お姉ちゃん…!」カァァ




使い魔「…まさかとは思うが、おい、主っ!!」バッ!

ドラキュラ「な、なぁに?」

女子大生「いいところなのにー」ブスー

使い魔「う、うっせぇよ!いいか、もしかすると…女子大生が生き返ったのは……!」

ドラキュラ「うん?」


……ガチャアンッ!!パリンッ!!


使い魔「!?」

ドラキュラ「!?」

女子大生「!?」

…クルッ!


使い魔「なんだ、ガラスの割れた音が……」

使い魔「……って!?」ハッ!!




ビュウウッ……バサバサッ…………!!


???「……今宵の月は美しいな。そうは思わないか?」


使い魔「あっ……!」ガタガタ…!

ドラキュラ「あぁっ…!?」

女子大生「…私の部屋は、いっつも空からのお客さんが多いんだなぁ」アハハ…


ヴァンパイア「…」ニタッ


使い魔「ヴァ…!」

ドラキュラ「ヴァンパイアさんっ!?」

女子大生「えっ、ヴァンパイアさんって…あの、ドラキュラ一族の本家の!?」



ヴァンパイア「…そうだな。そんなこともあった」


使い魔「な、ななな、なぜヴァンパイア様がこんな場所へ!?」

使い魔「何か粗相がございましたでしょうか!?」

使い魔「もしそうであれば、使い魔である我が身の首をも差し出す所存でございます!!」


ヴァンパイア「…心配するな。」

ヴァンパイア「何、覚醒の声がようやく聞こえたのでな……」


使い魔「か、覚醒ですか?」


ヴァンパイア「……ドラキュラよ」


ドラキュラ「ひ、ひゃいっ!?」




ヴァンパイア「…お前が覚醒した声に、我は呼ばれた。」

ヴァンパイア「ようやく、血を飲むことが出来た……そうであろう?」


ドラキュラ「そ、そう…ですが……」


ヴァンパイア「…ククク。そこの女子大生は甦り、か。」

ヴァンパイア「思っていた通り、お前は濃く継いでいる……」


ドラキュラ「な、何がでしょうか……」

女子大生「…?」


使い魔「……や、やはりっ!?」


ヴァンパイア「…ほう、使い魔のほうは気づいたか」



ドラキュラ「な、何が…?」

使い魔「…にしても、冗談だろ」ハハ…

ドラキュラ「こーくん、何が?全然わかんないよ!」

使い魔「…ヴァンパイア様から直接聞け」ハハ…

ドラキュラ「う、うん……?」


ヴァンパイア「…ドラキュラよ」

ドラキュラ「はい…」

ヴァンパイア「お前は、一族の落ちこぼれだと…我が配下や同族、魔族、使い魔の一族にも言われていたな」

ドラキュラ「う゛……」シュン…

ヴァンパイア「…その理由は明白。血を飲まず、陽にも当たり、銀を用いても傷がつかぬ、異端の存在だったからよ」

ドラキュラ「…はい」

ヴァンパイア「ククク……。なのに俺が目をかけてやったことに加え、今日の覚醒と甦り、何か気づかぬか?」




ドラキュラ「…」

ドラキュラ「……す、すみません。わかりません」シュン


使い魔「…バカッ!!」

ドラキュラ「ば、ばかってひどいなぁ!」

使い魔「あのな、お前は…!」

ドラキュラ「うん…?」

使い魔「ヴぁ、ヴァンパイア様と全く同じ能力を持っているんだよ!!」

ドラキュラ「……え」


ヴァンパイア「…ハッハッハッハ!」

ヴァンパイア「その通り、ドラキュラ一族の中でようやく"俺の分身"ともいうべき優れた存在が出来たのだ」

ヴァンパイア「何にも屈せず、血を必要とせず、己が欲望の時に覚醒し、性格は違えど…それは俺の身体と同じことよ」



ドラキュラ「ぼ、僕がヴァンパイアさんと同じ…!?」

ヴァンパイア「何が落ちこぼれだ。俺は元々、人間と魔族のハーフでな」

ドラキュラ「!」

ヴァンパイア「たまたま魔族の血が強く出たが、それでも最初は、人間の血を呑むことはできなかった」

ドラキュラ「…ヴァンパイアさんも」

ヴァンパイア「だが、とある怒りが俺に血を受け入れさせた。今日のことのように…な」

ドラキュラ「!」


女子大生「私が……」


ヴァンパイア「…そこの女は、すでに普通の人間ではない。」

ヴァンパイア「お前の配下であり、お前の僕となった。これから、人の生活はもう出来ぬであろう」



ドラキュラ「…そんな」

女子大生「…」

ドラキュラ「僕の…せいで……」

女子大生「…気にしないで。私は、こうしてもう1度あなたをこの目で見れたことが嬉しいから」

ドラキュラ「で、ですけど……」ブルッ


ヴァンパイア「…まぁいいのではないか?」

ヴァンパイア「その女、お前へ好意を寄せている。変わった性格ではあるが、夜の伽にも使えるだろう」


ドラキュラ「は、はいっ!?」

女子大生「そ、そんなハッキリ言うんですかぁっ!?」


使い魔「…ショタかよ」オエ




ドラキュラ「お、お姉ちゃん……」

女子大生「…ドラキュラくん。本音で言って、嫌いにならないかな」

ドラキュラ「も、もちろんですよ!」

女子大生「…私は、昔から絵本が好きでね」

ドラキュラ「は、はい」

女子大生「有名なお話で、寝ている子どもへ夢の世界に連れて行ってくれるってお話しがあるの…知ってる?」

ドラキュラ「えぇ、まぁ」


女子大生「ずーっと私は、子どもの時からもそういうのに憧れててね……」

女子大生「……あの日、君たちが来たのはまるでそれと一緒に見えたんだ」

女子大生「それから、会うのが楽しくなって、子供だってわかってたのに、気持ちが揺れ動いてたの」

女子大生「……気持ち悪いよね、私」




ドラキュラ「…そ、そんなことありませんよ!!」

女子大生「!」

ドラキュラ「…それが本当なら、僕だって魔族として"人間と仲良くするのは気持ち悪い存在"なんです!」

女子大生「…っ」

ドラキュラ「僕は、何かを否定したりはしません。むしろ、お姉ちゃんが僕を好きなのは…嬉しいですから」ニコッ

女子大生「ドラキュラくんっ……」

…ギュッ

ドラキュラ(……抱きしめられるのは、やっぱりなんか恥ずかしいですけぉ〜〜!)カァ


使い魔「…はぁぁ」




ヴァンパイア「……使い魔」

使い魔「はいっ!?」ビクッ!

ヴァンパイア「これより先、幾度も困難があるであろうが…当代のことはよろしく頼んだぞ」

使い魔「は、ははぁっ!」

ヴァンパイア「いずれ、我が身が滅ぶ時…この者こそが、我が席に座るべき存在とも考えている」

使い魔「!?」

ヴァンパイア「そうなれば、貴様も"血の王"の使い魔とし、その一族として一生の名誉となるだろうな」

使い魔「……が、頑張らせていただきます!!」


…イチャイチャ

ドラキュラ「お、お姉ちゃん恥ずかしいですよぅ〜!」

女子大生「えへへ、くっつきたいの〜」

ドラキュラ「いろいろ恥ずかしいです〜〜!!ぼ、僕も男なんですからぁ〜!」

女子大生「…男の子っていうのは分かるよ〜。ほら、色々とね〜」クスクス

ドラキュラ「あっ…!あうぅ……!」




使い魔「……でも、うちの主じゃあと数千年はかかりそうですよ」ピクピク


ヴァンパイア「ハッハッハ、それまでよろしく頼むぞ」


使い魔「はい…」


ヴァンパイア「…」

ヴァンパイア「……ついでに、そこの男は貰っていく。色々と使い勝手がよさそうなのでな」

トコトコトコ…グイッ!

ストーカー「」ダラン


ドラキュラ「え?」



ヴァンパイア「一生、生き殺しで魔族の使いとし、死んでいた方がよかったと思うかもしれんがな……」ニタァ…

使い魔「…面白そうですね、今度見に行かせていただきます」

ヴァンパイア「いつでも遊びに来い」

使い魔「はっ!」


女子大生「…」


ヴァンパイア「女、魔族の一員となったこと…歓迎するぞ」ククク

ヴァンパイア「また会う機会はあるだろうが、人間から魔族への生活が変わることは、辛く長い道となる。」

ヴァンパイア「……励めよ」


女子大生「…っ」コクン

使い魔「…っけ、いいとこ暮らししてた女が着いてこれるかどーか」ペッペ





ドラキュラ「…」

ドラキュラ「……大丈夫です、お姉ちゃん、こーくん」


女子大生「…どらきゅらくん?」

使い魔「あぁ?」

ヴァンパイア「ほう?」


ドラキュラ「僕は、僕の責任で、彼女をこうしてしまった。」

ドラキュラ「責任がないと彼女は言ってくれるでしょうが、やっぱり僕はこれから先、罪に悩むでしょう」

ドラキュラ「……だから、僕がお姉ちゃんを支えて、涙を流させないように努力します!」


女子大生「ど、ドラキュラくん……!」


ヴァンパイア「…うむ、面白い話だ。傍観させてもらうか」ハハハ




使い魔「…」ピクピク

使い魔「……主っ!!いいか、本来、下僕にした奴にアレコレさせて支えてもらうのはお前なんだよ!!」

使い魔「なぁにが逆に支えるだ、こんな女な、ズタボロになるまで適当にコキ使って…!」


ドラキュラ「…おい、俺の意見に反対するのか……テメェ」ギロッ


使い魔「ひっ!?」ビクッ

女子大生「!」


ドラキュラ「……な、なんてね♪」テヘ


使い魔「…」

女子大生(い、今のもかっこよかったかも……)

ヴァンパイア「……面白いな、今のは」




使い魔「…」ピ…

使い魔「…」ピクピク……!!

使い魔「……」プルプルプル……!!


使い魔「ふ、ふざけんな!この、落ちこぼれドラキュラがああああああっ!!!」


ドラキュラ「ご、ごめんなさぁぁあああいっ!!」


……………
………




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・・・・・
・・・・
・・・
・・





【 E N D 】










あとがき


ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました。

落ちこぼれドラキュラお話、いかがでしたでしょうか。

ここからいろいろと繰り広げられるドタバタ劇、どうなることやら……といった感じです。


普段のヘナヘナドラキュラと、覚醒したクールなドラキュラ。

あなたの好みはどっちでしたでしょうか!

(クール側はあまり登場してませんでしたが!)



それでは、ありがとうございました。



2015年4月25日





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