◆qqtckwrihのSSのまとめです。完結した作品および、新作告知、Wiki限定連載等を行っております(ハル SS Wiki)


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――――【 次の日 ギルド 】


ガチャッ…


騎士兵「おはよう〜」

シーフ「あ、おはよっ!」

タタタタッ…ダキッ!ギュッ〜…

騎士兵「…」


乙女学士「おはようございます、騎士兵さん」



 
 
 
 
騎士兵「シーフ、昨日は寝れたかい?」

シーフ「うんっ…!」

騎士兵「そっか…。」

シーフ「今度、お兄ちゃんも一緒に寝ようね!」

騎士兵「い、いや…」


乙女学士「…」クスッ

乙女学士「このギルドには、シャワールームもありますしね」

乙女学士「ご飯くらいなら私が準備しますから、生活するのに支障はないと思いますよ」


騎士兵「何から何まで準備して貰って…すみません」ヘコヘコ

乙女学士「いえいえっ。これがお仕事ですから」

騎士兵「…」ペコッ



 

 
 
 
シーフ「それでお兄ちゃん、今日から何するの?」

騎士兵「まずは、依頼を探そうかなって」

シーフ「あ、私の仕事だね〜?」

騎士兵「そういうこと。手先が器用なんだっけか」

シーフ「…こんな感じに、触れただけで」

…ポンッ

騎士兵「ん…」


シーフ「にひひ…」スッ


騎士兵「あ、僕の財布!?」

騎士兵「……相変わらず、一瞬で凄いな」



 
 
 
シーフ「でしょ〜?」

騎士兵「でも、財布は返してね」グイッ

シーフ「…オニッ!」

騎士兵「…」


乙女学士「クエストの募集なら、簡単なところからお店とかいいですねぇ」

騎士兵「どこか取れそうな場所とかありますか?」

乙女学士「近所のお店は、うちのギルドの評判的に絶対無理でしょうね…」

騎士兵「ですよね…」

乙女学士「王国といえども、広いですからね。探せばあるとは思いますけど…」



 
 
 
騎士兵「この周辺がダメとすると、少し離れまで顔を出しますか……」

乙女学士「大変でしょうけど、そうなっちゃいますね…」

騎士兵「…ま、これも仕事ですから。早速行ってきます」スクッ

乙女学士「はいっ。お気をつけて行ってらっしゃいませ」ニコッ


シーフ「あっ、私も行く〜!」

騎士兵「営業だから、面白いこともないよ?」

シーフ「いいの、好きな人と一緒にいたいだけだからっ!」

騎士兵「…そう」

シーフ「じゃあ、しゅっぱーつ!」

…ギュウッ!

騎士兵「…歩きにくい」


…………
……








 
 
 
 
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――――【 城下町 三丁目商店街 】


ガヤガヤ……!


シーフ「うわ〜…」

シーフ「この辺まで初めて来たけど、王城から離れてるのに人が多いんだね〜」


騎士兵「王国の土地は広いからね。」

騎士兵「王城を中心に、グルっと壁で囲まれている全部が城下町なんだ」


シーフ「…その壁を抜けると、別の町なんだよね」

騎士兵「うん、そういうこと。」

シーフ「私の"離れ町"も壁の外の、林を抜けた先だもんね」

騎士兵「僕も城下町は詳しいけど、外のことはあまり知らないんだよなぁ」ポリポリ



 
 
 
シーフ「うーん…。やっぱり、城下町以外は私の町みたいなのが多いのかなぁ」

シーフ「っていうか、住んでる私が言うのはアレだけど…。」

シーフ「どうして"離れ町"の惨状を知ってて、付近の私たちを王国は放置しているんだろう…」


騎士兵「…」

騎士兵「言葉が悪くなるけど……」


シーフ「…私は気にしないよ。教えて」

騎士兵「…離れ町は、王国の繁栄の影。あそこが特別なだけなんだ」

シーフ「!」


騎士兵「王様や元老院が、あそこは無法者のパラダイスだって理解して放置しているんだよ」

騎士兵「影は影に集まるように、そう仕向けてわざと放置しているんだ…」


シーフ「…そっか」
 




 
騎士兵「僕自身、騎士団ってこともあってそういうのも本当は防ぎたいんだけどね…」

騎士兵「だけど…力がないばっかりに悔しい思いはしてるんだ」


シーフ「へへっ、お兄ちゃんらしいね」


騎士兵「はは…」

騎士兵「…」

騎士兵「……さてと、お店に何か冒険者へ依頼がないか聞こうか?」キョロキョロ


シーフ「おーっ!」


騎士兵「じゃあ、商店街のそこから……」


…………
……




 
 
 
 

……
…………
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――――【 2時間後 公園のベンチ 】


騎士兵「…」ズゥゥン

シーフ「…」ズーン…
 
騎士兵「ギルド依頼はあったけど、無理でしょあんなの……」

シーフ「うん…」


騎士兵「依頼のほとんどが、上級魔物の素材とか、危険な場所にある鉱石とか……!」

騎士兵「まだ、僕らが受けられそうな依頼が一つもなかった……」ガクッ


シーフ「め、メンバー私だけだしね……」




 
 
 
騎士兵「まぁ、冒険者に求められるものがそういうものだっていうのは分かってたけど…」

騎士兵「高級物販店じゃないのに、そういうこと依頼してくるのか…」


シーフ「…」


騎士兵「掃除とか、配達の依頼はないかって聞けば"バイト君雇うから充分だ"とか…」

騎士兵「確かにそうだけどさぁぁぁ……」ハァァ…


シーフ「…盗みの技術じゃ、やっぱり生かせないよね」シュン


騎士兵(折角、この子のためにもなるはずだったのに…)

騎士兵(どうしようか……)


シーフ「…」




 
 
 
騎士兵「…」

シーフ「…」

騎士兵「…」

シーフ「…」


…ザッ

男「…あの〜、すみません」


騎士兵「はい?」

シーフ「ん?」


 

 
 
 
男「…先ほど、商店街でクエストの募集をしていた方ですよね?」

騎士兵「そうですが…」

男「…今、少し聞こえたのですが"盗みの技術"といいましたか?」

騎士兵(あっ…!不味い!)

男「実は、そのことに関してー……」


騎士兵「い、いえいえいえっ!そ、そんなことは!」ババッ!

騎士兵「技術を盗んで、もっと成長しようとかそういう話をしてただけでして!!」


男「…隠さなくても結構ですよ。」

男「実は、その技術を生かしてほしい依頼があるんですが…いいですか?」


騎士兵「…へっ?」




 
 
 
  
 
 
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――――【 男の自宅 】


男「とりあえず、コーヒーでも」

…コトッ

騎士兵「有難うございます」ペコッ

シーフ「…ふーん、いい家だね」キョロキョロ


男「…さて、先ほどのお話の続きなのですが」


騎士兵「えぇ、ご依頼されたいことがあるという事ですね」



 
 
 
男「そういうことになります」

騎士兵「では、その内容のほうを……」

男「…っと、その前に、少しよろしいでしょうか?」

騎士兵「?」

男「コレを…見てください」ゴソッ

ゴソゴソッ…チャリン……!


騎士兵「!」

シーフ「!」



 
 
 
男「これは、年代物で非常に値打ちのある金貨なんです」

騎士兵「ほう…」

シーフ「…」


男「実はこれ、5枚組の金貨なのですが…。」

男「そのうちの1枚を、とある場所で落としてしまったのです…」


騎士兵「ふむ…」

シーフ「…」ピクッ


コイン商(男)「自分は、値打ちのあるコインの販売で生活をしています」

コイン商「ギルドへ依頼を出し、古代遺跡からコインを集めて貰い、それを売るのです」


騎士兵「…なるほど」



 
 
 
コイン商「少し前……。」

コイン商「王国の外側にある"迷走の森"の舗装道で、魔物に襲われて落としてしまったようなのです。」

コイン商「次の日に探して戻った時には、既にコインは消えておりました」

コイン商「もしかしたら、魔物が持って帰ったのかもしれないんです。」

コイン商「ぜひ、それを取り戻してほしいと思いまして」

コイン商「盗みの技術があれば、コインを見つけることは出来なくはないかなと…」


騎士兵「…」

騎士兵「……難しい話ですね。」


コイン商「やはり、難しいですか」ハァ

騎士兵「魔物、コインのどちらも見つけるのは困難でしょう。もしかしたら、人間が拾ったのかもしれませんし」

コイン商「…やはりですか」

騎士兵「何か、目印か追える痕跡があればいいんですが……」




 
 
 
シーフ「…」

シーフ「……お兄ちゃん」チョイチョイ


騎士兵「ん?」

シーフ「もしかしたら、私見つけられるかも」

騎士兵「へ?」

コイン商「ほう!?」


シーフ「古代の金貨って、昔からあるせいか独特の魔力を宿してるの。」

シーフ「いくつも盗って来たから、その感覚は理解してるし…。」

シーフ「落とした場所を教えてくれれば、その付近から感覚で追えるはず…」


 
 
 
騎士兵「つまり、金貨を見つけられるかもしれないってこと?」

シーフ「うんっ」ニコーッ


コイン商「な、なんと…!」
 
コイン商「ぜひ、ぜひお願いします!それ1つで数百万のものなんです!」


騎士兵「…すっ!」

シーフ「数百万!?」


コイン商「…はい」コクン

コイン商「ぜ、ぜひ…よろしくお願いします!」ガタッ!





 
騎士兵(…)

騎士兵(……意外と、いけるか?)

騎士兵(盗賊のコイン一つ取り戻すのが依頼で、追えるという事が本当なら、何とかなりそうだし…)

騎士兵(…だけど、少し気になる点が。聞いておこう)

騎士兵「コイン商さん、それをクエストとして引き受けるのは構わないのですが…」

騎士兵「少し気になった点があるので、いいでしょうか」


コイン商「何でしょうか?」


騎士兵「自分が言うのもなんですが、」

騎士兵「自分たちのような無名ギルドに依頼とは、もっと有名どころでもよかったのでは…」




 
 

コイン商「あぁ…。そ、それがですね…」

コイン商「…それを依頼していたのが割と有名な冒険者でして」

コイン商「帰り道に落としたとあれば、依頼を完遂した冒険者から二度と依頼を受けて貰えなく…」ハァ


騎士兵「なるほど…」


コイン商「…他言無用を含め、よろしくお願いします」


騎士兵「承知致しました。」

騎士兵「ちなみにですが、依頼の報酬はどのようになりますでしょうか」


コイン商「…このコインでどうですか?」


騎士兵「へっ?す、数百万のですかっ!?」



 
 
 
コイン商「あ、いや…。これは5枚組の中でも割と価値の低いものでして」

コイン商「今の相場で、純金価値も含め50万ゴールド程度しかありませんが……」


騎士兵「…50万ですか。」

騎士兵「そ、それでも充分すぎますよ……」


コイン商「…で、では!」

騎士兵「受けましょう。依頼として」ペコッ

コイン商「よ、よろしくおねがいしま……っ!」


シーフ「……待って!お兄ちゃん!」バンッ!




 
 

 
騎士兵「…へっ?ど、どうしたの?」


シーフ「あんた、コイン商って言ったっけ。」

コイン商「そうですが…」

シーフ「報酬にするなら、本物じゃないとダメでしょ」

コイン商「っ!?」


騎士兵「…本物?」


シーフ「これ、偽物だよ。」


騎士兵「な、何っ!?」




 
 
 
シーフ「…見た目はそれっぽいけど、ニセモノだよこれ。」

シーフ「金にしては音が"軽かった"し、古代金貨の独特の魔力も感じないの」

シーフ「それに、コイン商なら"金貨"をこんな風にチャリンと音がするように置いたりしないはず」


騎士兵「…まさか!」

シーフ「さっきも言ったでしょ。私は、今まで幾度と盗んできたから分かるの」

騎士兵「…」

シーフ「信じてよ…」

騎士兵「…」

シーフ「…」


騎士兵「……わかった。」


シーフ「!」



 
 
 
騎士兵「…ということです、コイン商さん。」

木紙幣「うちのメンバーによると、これが偽物とのことですが…どうでしょうか」ジロッ


コイン商「…」

コイン商「はは…。ま、まさかですね……」

コイン商「お、音だけで当てるなんて……」

コイン商「その通り、レプリカなんです…これは」


騎士兵「…!」

シーフ「ほ、ほらぁっ!!」


コイン商「で、ですけどね!」

コイン商「依頼とはいえ、見ず知らずの人にいきなり本物のコインを見せるわけないでしょう!」


騎士兵「あ、あぁ……」


コイン商「報酬の交換の時は、本物を出しますから安心してくださいよ!」



 
 
 
騎士兵「…約束ですよ。」

コイン商「もちろんです!」


騎士兵「それならいいですが……。」

騎士兵「それでは、明日以降にコインの捜索に取り掛かりますので」


コイン商「…よろしくお願いいたします」


騎士兵「では、完遂次第報告に参ります」


コイン商「…」ペコッ


…………
……







 
 
 
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――――【 帰 路 】

トコトコ…

シーフ「ふんふ〜ん♪」

騎士兵「…」

シーフ「…へいへーい♪」

騎士兵「…」

シーフ「ん〜♪」


騎士兵「…」

騎士兵「……シーフ、良くアレが偽物って分かったね」



 
 
 
シーフ「えへへ、褒めて!」

騎士兵「はいはい、よくできました」

…ポンポンッ

シーフ「わぁい!」

騎士兵「…しかし、目利きも出来るなんて本当に凄いと思うよ」

シーフ「まぁねっ!」ヘヘーン


騎士兵「培ってきた技術…と言っていいのか分からないけど、」

騎士兵「それがこんなカタチで役に立つなんてね」


シーフ「…もっと褒めていいよっ!」

騎士兵「こらこら、調子に乗らない」

シーフ「むぅ…」



 
 
 
騎士兵(…ふむ。これが団長の言っていたメンバーの能力ってやつなのかな)

騎士兵(こうやって個人的に付き合うことで、初めて分かることもあるのか…)

騎士兵(…)

騎士兵(もしメンバーが増えたら、こうして個性もきちんと見定めて、伸ばすのも仕事なんだ)

騎士兵(……なるほど)チラッ


シーフ「…?」

シーフ「み、見つめてどうしたの?私、可愛い?」テレッ


騎士兵「…あぁ、可愛い可愛い」

シーフ「…ほんとーっ!?」

騎士兵「その声の大きさと、慎ましさを覚えたらもっと可愛い」

シーフ「…私の個性なくなるじゃん!」



 
 
騎士兵「はは、でももっと可愛くなるかもよ?」

シーフ「うーん、それじゃ頑張ろうかな…」

騎士兵「うんうん」

シーフ「…それが出来たら、私のこともっと好きになる?」

騎士兵「かも」

シーフ「…きゃーっ!じゃあ、頑張るっ!」

…ギュウッ〜!

騎士兵「うん、無理そうだね」


…………
……

 







 
 
 
 
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――――【 騎士兵のギルド 】


騎士兵「…というわけです」


乙女学士「1つの依頼を受けることには成功したんですね!」

騎士兵「…ようやくスタートラインに立てたって感じですかね」アハハ…


乙女学士「ようやく光明が見えてきたようでよかったです〜…」

乙女学士「…」

乙女学士「あっ!で、でも……」


騎士兵「どうしました?」

乙女学士「まだ、その人に依頼受注書のサイン貰ってませんよね?」

騎士兵「あ…」




 
乙女学士「…大丈夫です、慣れてないので…そういうこともありますよ!」

乙女学士「では、私が明日その人の自宅へ赴いてサインをいただいてきますね。」

乙女学士「常に依頼受注書は持ち歩いていた方がいいかもしれないです」

 
騎士兵「…そ、そうでしたね。申し訳ないのですが、よろしくお願いします」

乙女学士「いえいえ♪」


シーフ「お兄ちゃん、明日には行くんだよね?」

騎士兵「そのつもりかな」

シーフ「わかった!」


乙女学士「…50万のお仕事とはいえ、再出発にしては充分ですね♪」




 
騎士兵("50万のお仕事とはいえ"…?)

騎士兵(…ってことは)

騎士兵「お、乙女学士さん」


乙女学士「はい?」


騎士兵「質問なのですが、ここが現役だったころは、どのくらいの依頼を受けてたんですか?」


乙女学士「1日平均で、1000万以上の動きはありましたかね…」ウーン

騎士兵「へっ…?」

乙女学士「1枚の受注書で、最大5000万ゴールドの依頼もあったよーな…」

騎士兵「ごっ…!?」

乙女学士「景気がいいときもあったってことですよ〜」



 
 
 
 
騎士兵「ぼ、僕の受けた依頼の100倍の仕事ですか……」

乙女学士「いずれ、またそういうクエストを受注できるようになりますよ♪」

騎士兵「…そうなればいいんですが」

乙女学士「私も精いっぱい手伝いますから!」


騎士兵(…僕が考えていたより、冒険稼業ってよっぽど大金の動く仕事なんだな)

騎士兵(気ままに世界を回るだけだと思ってたけど、そうじゃないってことか)

騎士兵(王国騎士の給与は、僕で月50万弱…。)

騎士兵(…この依頼一つの完遂分なんて、哀しくなってくる)シクシク


シーフ「…」

シーフ「ん〜…、お姉ちゃん」


乙女学士「はいはい?」




 
 
騎士兵(…へぇ、乙女学士さんのことはお姉ちゃん、か)


シーフ「クエストって、難しいほど報酬も高くなるの?」

乙女学士「基本的にはそうですね…。たまに割に合わないのもあるみたいですが…」

シーフ「今回の依頼の人は、コイン収集って言ってたけど、それでどれくらいなんだろ?」

乙女学士「ダンジョンにもよると思いますよ」

シーフ「…だんじょん?」


乙女学士「えっと……。」

乙女学士「古代遺跡や、自然の洞窟に魔物が棲み付いているいる場所をダンジョンというんです」


シーフ「ふむふむ…」



 
 
 
乙女学士「古代遺跡には古代の宝物が、」

乙女学士「自然には自然の宝物が存在しています。」

乙女学士「人がいない場所は、魔物が生息し、そこを支配しているわけで……。」

乙女学士「その場所を総称して、"ダンジョン"と呼ぶんです。」


シーフ「…自然の宝物っていうのは、鉱石とか?」

乙女学士「鉱石、植物、深淵に潜む魔物の素材、沢山ありますよ」

シーフ「ほぇ〜…」

乙女学士「いつかシーフさんも、世界を巡って、凄い冒険者になれるかもしれませんよ」

シーフ「…そしたら、お兄ちゃんと一緒に色々見つけたいな〜」

乙女学士「…」クスッ



 
 
 
騎士兵「…まぁ、シーフが凄く強くなって、機会があったらね」アハハ

シーフ「よぉーっし!頑張っちゃうよ〜!」グッ!


乙女学士「今回の依頼の"迷走の森"は、王国領地外とはいえ…、」

乙女学士「王国領地のすぐ外のおかげか、そこまで強い魔物もいなかったはずです」

乙女学士「お化けキノコのスクイッグや、小妖精のインプ程度だった気がしますよ」


騎士兵「ふむ…。」

シーフ「う〜ん。どっちも相手にしてるけど、大した相手じゃないね」

騎士兵「…え゛っ、戦ったことあるの?」

シーフ「私の地元の途中で、林を抜ける時によく会う連中っていうか…」

騎士兵「…敵の強さに対しても、実力は問題なさそうだね」



 
 
 
シーフ「……でも、お兄ちゃん」

騎士兵「うん?」

シーフ「私ね、一人で森は怖いの」キャッ

騎士兵「…一緒に来てほしいと?」

シーフ「えへへ〜分かってるジャン♪」


騎士兵「…」

騎士兵「……仕方ない。初クエストだし、僕も勉強のためにやらせてもらおうかな」


シーフ「ヤらせて…?」

騎士兵「違います」


乙女学士「騎士兵さんも一緒なら、より安心ですね」

乙女学士「ご武運、祈ってますネ」ニコッ







 
騎士兵(ま、僕も心配だったし、最初から着いていくつもりだったんだけど)


シーフ「えっと…、迷走の森って王国のすぐ外にあるんだよね?」


騎士兵「そうそう。城下町を囲んでいる、壁の外に隣接する形でくっついてる森なんだ」

騎士兵「一応は整備された道があって、そこを抜けた先には迷走村っていう村があるよ」


シーフ「じゃあ思ったよりも…危険じゃないカンジ?」

騎士兵「魔物自体もそうそういないはずだから、大丈夫だと思うけど…」

シーフ「…まぁ、用心はしといたほうがいいってことかぁ」

騎士兵「用心は大事だよ。迷走の森っていうだけあって、道から外れると迷っちゃうからね」

シーフ「へぇー…」



 
騎士兵「…それじゃ、明日も早いし今日は休もうか?」

騎士兵「あとは自由時間でいいかな」

 
シーフ「!」

シーフ「じゃあお兄ちゃん、デートしようよ〜!」


騎士兵「僕は、自室に戻って明日の準備とやることがあるから」

シーフ「…オニッ!」

騎士兵「オニて」

シーフ「いいもん…。お姉ちゃんと遊ぶもん……」

騎士兵「あまり、乙女学士さんにも迷惑かけないようにね…」

シーフ「…ふーんだ!」




 
 
乙女学士「…ふふっ、構いませんよ。可愛い妹が出来たみたいなので」

シーフ「じゃあ、あとで町に行こうねっ」

乙女学士「わかりましたよ」ニコニコ

 
騎士兵(…乙女学士さん、本当にいい人だな)

騎士兵(僕とそこまで歳とか変わらないように見えるけど、大人っぽいというか…)
 
騎士兵(…今回は甘えさせてもらって、僕は色々準備とか団長に報告しないと)

騎士兵(依頼は決まったし、あとはやることをしっかりやるだけだ!)


…………
……






 
 
 
 
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――――【 少しして 城下町の一角 】

トコトコ…


騎士兵(…よし、これで買い物はいいかな?)

騎士兵(ポーション類に、念のための簡易な冒険道具キットとやら……)

騎士兵(まぁヒールが使えないわけじゃないし、その辺の魔物にも負けない自信はあるけど)

騎士兵(何事も、準備を怠らないほうがいいとは思うしね)

騎士兵(…)


ザワッ…!!


騎士兵(……ん?向こう側が、なんか騒がしいな)




 
 
 
タタタタタッ……!

みずぼらしい男「クソッ、どけどけぇっ!!」


騎士兵(……なんだ?)


みずぼらしい男「どんだけしつこい奴なんだ!」

みずぼらしい男「たかが100ゴールド程度の食い逃げで、ここまでしつこいとは…!」ハァハァ!

タタタタッ!!

店主「コラァァァッ!たかがっつうなら、金払えぇやあああっ!」

みずぼらしい男「う、うるせーーーっ!!」


騎士兵(…やれやれ、食い逃げか)

騎士兵(仕方ないか、ココは僕がー……っ)

騎士兵(……って、んっ?)ハッ



 
 
 
 
…ザッ!

???「…待て、そこの食い逃げ」


騎士兵(…なんだろう、あの男。盗人の前に立ちふさがった?)


みずぼらしい男「…あぁん!?なんだ、ジャマだ前のヤツッ!!」

みずぼらしい男「吹き飛ばすぞコラァァッ!」

ダダダダッ…!!


???「…」スチャッ、チャキンッ


みずぼらしい男「…げっ!?」

騎士兵「げっ!?」


???「…犯罪のような醜い行為は、大嫌いなんだよ」チャキッ




 
 
 
騎士兵「両手に片手剣を一本ずつの、そ…双剣っ!?」

騎士兵「まさか、食い逃げ程度で切り刻むつもりっ!?」


???「…」ググッ


ダダダダッ、ズザザァッ!

みずぼらしい男「お、おいっ!冗談だろ!?」


???「…言い訳はいらん」

…ビュオッ!!

みずぼらしい男「う、うあああっ!?」バッ!




 
 
 
ガッ…!ガガキィンッ!!!


みずぼらしい男「…ッ!」

みずぼらしい男「…」

みずぼらしい男「……ハレ?生きてる…」ハッ


???「…なぜ邪魔をする」ググッ!

騎士兵「く、食い逃げ程度に剣を抜かなくてもいいじゃないかな…!」ググッ!

???「犯罪者を殺して何が悪い」

騎士兵「100ゴールドのおにぎり1個を奪う事情があったかもしれないでしょ…!」ギリギリッ

???「知らん。コイツをかばうなら、お前も犯罪者の一人とみるぞ」グググッ!

騎士兵「…ココは王国の領地だ!犯罪者を裁くのは君じゃなく、王国騎士団の仕事だ!」




 
 
 
 
 
???「…知るか。犯罪者は全て、切り殺せばいい」

騎士兵「なんだと!」

???「俺は俺の赴くままにやらせて貰う。そうして旅を繰り返してきたからな」

騎士兵「…お前は冒険者か何かか!」

???「その恰好は、お前もだろう?」

騎士兵「…他所の冒険者。道理で、この国のルールを守れないはずだね……」

???「ふん…。戦いなら、しゃべるより身体を動かそうか」ググッ!!

…ビュッ!!

ガキィンッ!ガガキィンッ!キィンッ!!!


騎士兵(は、早いっ!それに、攻撃が正確だ!)

騎士兵(僕の武器は騎士団の槍…っ!双剣には相性が悪すぎる!)



 
 
 
???「ほう、俺の攻撃を受け切るとは…中々いい反応をしてくれるな」

騎士兵「…っ!」

???「少しは楽しめそうだ。なら、俺も本気でいくか……」チャキッ

騎士兵「くるか…!」スチャッ


???「…」

???「…ん?」

???「……チッ」


騎士兵「…?」


???「……面白そうだったが、残念だ。」





 
 
騎士兵「どうした…?」

???「…戦いはお預けだな」スッ
 
騎士兵「何…。どうして武器を収めたんだ…」
 
???「後ろを見ろ。お前の言う、"王国騎士団"とやらの連中が来たようだからな」


騎士兵「…何?」クルッ


王国騎士団兵「騒ぎを起こしているのはお前たちか!」

王国騎士団兵「大人しくしろーっ!」

タタタタタッ……!


???「アレがそうなんだろう?」

???「大声出して無様な姿だが……」

???「多勢に無勢で街中で騒ぎを起こしちゃ不利だ。俺は逃げさせてもらう」クルッ






騎士兵「ま、待てっ!お前は一体…!」

 
???「…」
 
???「……ブレイダー。」

ブレイダー「お前の名前は、また次に会った時に聞かせて貰うさ」

ブレイダー「またな……」ダッ!

ダダダダダダッ……!!!

………



騎士兵「ぶ、ブレイダー……」


タタタッ…!

王国騎士団兵「クソッ、一人逃がしたか!」

王国騎士団兵「お前だけでも、大人しくお縄につけ!」




 
 
 
騎士兵「一体、あいつは……」


王国騎士団兵「…確保ぉっ」バッ!

…グイッ!ガシィッ!

騎士兵「いたっ…!」


王国騎士団兵「…確保、犯人確保っ!」

王国騎士団兵「お前は、俺らが裁いてやるからな!」

王国騎士団兵「さっさと歩けぇ!」


騎士兵「…っ」


…………
……








 
 
 
 
 

………
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――――【 夜 団長の部屋 】

団長「…」

騎士兵「…」

団長「…」

騎士兵「…」

団長「…」

騎士兵「…」


団長「…弁解の言葉があれば、聞こうか」ヒクッ

騎士兵「い、いえ…」





 
団長「…問題ばかり起こすんじゃない」ハァァ

騎士兵「申し訳ありません…」

団長「私が特別に頼まなければ、1か月は牢屋の中だったのは理解しているな…?」

騎士兵「面目ないです…」


団長「ようやく、ギルドが軌道に乗り始めたというのに…」

団長「こんなことでは、ギルドマスターの悪い噂でギルドは本当に潰れるぞ」


騎士兵「うっ…」


団長「…騒ぎを起こした理由は聞いたが、今のお前は騎士団であって騎士団じゃないんだ」

団長「あくまでギルドマスター、一人の冒険者。」

団長「騎士団としての志を忘れないのはいいが、その前にお前の仕事を全うせんか」



 
 
 
騎士兵「…目の前で殺されそうな人を、無視はできませんでした」


団長「…」

団長「…ま、お前らしいよ。」

団長「人の命を救ったのは、よくやったと思う。」フゥ


騎士兵「だ、団長……」


団長「して、ブレイダーとか言ったか、その男」

騎士兵「あ、はい…。確かにブレイダーと……」

団長「その男は双剣使いだったんだろう?また珍しいヤツだ…。」

騎士兵「自分は初めて見ました。正直、強かったです…」

団長「…滅多にいないからな。剣術としては相当な強さを誇ると…聞いたことがある」



 
 
 
騎士兵「…」


団長「だが、この国のルールを守れぬ男は、私も許さん」

団長「今、お前の情報をもとに部下がその男を追っている。」

団長「いずれ捕まるだろうが、お前は気にする必要はないからな」


騎士兵「わかりました。よろしくお願いします」ペコッ


団長「…それより。明日からようやく最初の依頼なんだろう?」


騎士兵「あ、そうなんです!」


団長「一番最初に受けた依頼が近くの森の金貨探し。」

団長「…いいじゃないか!」ハッハッハ!



 
 
 
騎士兵「そ、そうですかね?」

団長「最初の依頼としちゃ、充分すぎる報酬と簡単な依頼だろう。」

騎士兵「シーフによると、古代の金貨には魔力が染みついて、それを追えると」

団長「ほう…」


騎士兵「迷走の森は整備道路以外、凄く広いですからね」

騎士兵「もしそんなスキルがなかったら、受けるつもりはありませんでしたよ…」


団長「…ったく!勉強不足で、0点だなお前は」

騎士兵「え゛っ」

団長「あの森には、スクイッグやインプ、狼類の他に…アイツが奥にいるのを知らんのか」

騎士兵「な、なんでしょ…」



 
 
 
団長「…ゴブリンだよ。」

騎士兵「!」

団長「知性のある魔物で、たまに道を通る人間に対し、配下の小妖精やらに襲わせるんだ」

騎士兵「ほ、本当ですか!?」


団長「金や銀、光物を好み、道行く人間を襲い、宝物を奪う。」

団長「その依頼人が襲われたのも、恐らくソレだろう」


騎士兵「…王国領地外とはいえ、そんなヤツを野ざらしに?」

団長「別に人を殺すことはしないし…そこまで重要視してないということさ」

騎士兵「な、なるほど…」

団長「ヤツは迷走の森の奥にある、大木付近いると聞いたことはある」

騎士兵「…あ、ありがとうございます、探すのが楽になりそうです」



 
 
 
 
 
団長「ココからは、お前の"ギルド"の仕事だな。」

団長「そのシーフの能力を使って、奴らを見つけ、しっかりと退治して来い。」

団長「あそこは通る人も多いし、討伐したとなればギルドの評判も上がるかもしれないぞ」

団長「成功した暁には、そんな噂も流れ、少しはギルドの存在も良くなるだろうな」ククッ


騎士兵「…!」

団長「…」ニカッ

騎士兵「き、今日もありがとうございましたっ!」

団長「気にするな」

騎士兵「それでは、今日はこの辺で…。失礼いたします!」

団長「うむ、おやすみ」


…………
……





 
 
 
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