◆qqtckwrihのSSのまとめです。完結した作品および、新作告知、Wiki限定連載等を行っております(ハル SS Wiki)

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――――【 夏休み前日 夜中の公園 】 
 
ホー…ホー……


…コソッ

乙女剣士(…よしっ!)

乙女剣士(なんとか、親に隠れて脱出成功したっ!)

乙女剣士(…)

乙女剣士(結局、魔法士は来なかったけど……)ショボン

乙女剣士(…でも、あまり無理に誘うのはダメだもんね)

コソコソッ……



 
 
 
乙女剣士(そういうのが、私の悪いところだって分かってるけどさ……)

乙女剣士(……ううん)

乙女剣士(私は私で、この旅で成長するんだからっ!)

乙女剣士(…うんっ、折角のチャンス!生かしていこうっ!)グッ!!


ソッ…チョイチョイ…

乙女剣士「…っ!?」ゾワッ!

乙女剣士「…きゃあああっ!?」ゾワゾワッ!

乙女剣士「だ、誰っ!!」バッ!


魔法士「」キーン…


 
 
乙女剣士「ま、魔法士っ!?」

魔法士「や、やぁ…。凄い声だね……」キーン

乙女剣士「ど、どうしてここに……!」

魔法士「どうしてって、今日出発って言ってたから…」

乙女剣士「そうだけど…!」

魔法士「…へへっ」

乙女剣士「何よ、その不敵な笑みは」

魔法士「…ッジャーン!こんなの持ってきたよ!」

…ボスンッ!!

乙女剣士「何、このバックパック……」

 
魔法士「…僕の、さ」

乙女剣士「え?」

魔法士「…だから、僕のだよ」

乙女剣士「…そりゃ、アンタのじゃなかったら盗みでしょ」

魔法士「いや、そういうことじゃなくて」

乙女剣士「うん…?」


魔法士「……鈍いなっ!」

魔法士「だから、僕も一緒にその博物館へ冒険気分で行くってことだよ!」


乙女剣士「…」

乙女剣士「……ウソっ!?」


魔法士「冗談で、こんな恰好するわけないでしょ」パサッ

乙女剣士「学園の、実践用の冒険服!?」

魔法士「刺繍で隠して、王都学園の生徒ってバレないようにしたんだ」ヘヘッ

乙女剣士「ってことは、本気で一緒に行くの!?」

魔法士「な、なんだよ…。この間まで、誘ってたクセに……」


乙女剣士「そ、そうじゃなくて…!」

乙女剣士「今朝の登校っていうか、終業式終わって家で別れるまで、そんな素振りなかったし……!」


魔法士「あぁ、そうだね。今日も乙女剣士に誘われたけど、濁してたし」


乙女剣士「一体、何があったの…」


魔法士「…ちょっとした心変わり。ギリギリまで隠しておいたんだ」

乙女剣士「…っ!」

魔法士「それと、僕は思ってるほどお金ないし、いい宿は泊まれないよ?」

乙女剣士「…そ、そんなの問題ないよ!」

魔法士「それならいいんだけど…」

乙女剣士「…どうしよう、びっくりしすぎて考えが追い付かない」ドキドキ…

魔法士「そんなに…?」

乙女剣士「え、えっと…!ど、どうしよう!どうすればいいんだろ!」アセッ

魔法士「ど、どうすればいいって…まず北方大地行きの船に乗るんでしょ」


乙女剣士「そうだよね…!」

乙女剣士「あ…っ!明日の朝までに北港村に着かないとダメだし、急ごうよっ!」


魔法士「そ、そんなに急がなくても」

乙女剣士「…なんか元気出てきちゃったの!ほら、行こうっ!」グイッ!

魔法士「わわっ!」

乙女剣士「さぁ、夢の冒険へレッツゴ〜♪」ピョンッ!

魔法士「…疑似、だけどね」

乙女剣士「それは言わないっ!」

魔法士「それと、"レッツゴー"とかさ、そういうセリフは男の僕が言うべきなんだろうなぁ……」ボソボソ

乙女剣士「…声が小さいっ!!」

魔法士「うぅ……」


乙女剣士「…情けない声出さないっ!」

魔法士「えぇぇっ…」

乙女剣士「…えへへっ!うんっ、すっごく楽しみになってきたよ!」


魔法士「…へへ、実は僕もだよ」

魔法士(あの人の言った、一歩を踏み出す勇気。なんか、分かった気がする!)


乙女剣士「じゃ、改めてっ!」

魔法士「うんっ!プチ冒険へ出発〜っ!」

乙女剣士「…プチつけないで」

魔法士「ご、ごめんなさい…」



ザッ…!

ザッザッザッ……!


魔法士(…はぁ)

魔法士(それにしても、いよいよ出発かぁ…!)

魔法士(母さん、ゴメンなさい…。置手紙はしたからね……)

魔法士(…)

魔法士(……とりあえず今は、目の前に集中しようっ!)パンッ!


…………
……
… 

 
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――――【 そして次の日 北港村へ向かう道中 】

ザッザッザッ……

乙女剣士「…見て見て!朝焼けだよ!」


パァァッ…


魔法士「ふわぁ…。それより眠い……」

乙女剣士「…」

魔法士「それより、夜通し歩くなんて思わなかった…。凄く眠いんだ…」ムニャッ

乙女剣士「…はぁ」

魔法士「北方大地行きの船、北港村から出発するんだよね?」
 
乙女剣士「うん」

 

魔法士「…王都から歩いてどのくらいだっけ?」

乙女剣士「普通の人の速度で歩くと、往復4週間はかかるかも」

魔法士「」


乙女剣士「…そういえば、魔法士はお金いくらか持ってきた?」

魔法士「もちろん」

乙女剣士「私は一応、貯めてた分で10万ゴールド!」

魔法士「…そんなに!?」

乙女剣士「えっ?」

魔法士「僕、3万ゴールドだよ」

 
乙女剣士「…」

乙女剣士「……まぁ、充分だと思う」


魔法士「だ、だよねっ!」

乙女剣士「宿には泊まれるだろうし、大丈夫だと思うよ…」

魔法士「うんっ!」

乙女剣士(…北方大地の紙幣価値、どれくらいか知らないけど)


魔法士「…それより、少し休まない?」フワァ

魔法士「本当に歩きすぎと、寝てなくて疲労が……」


乙女剣士「…普通の人の速度で歩いてたら、2週間。往復4週間」

乙女剣士「私たちの夏休みは、30日間」

乙女剣士「それだけで、9割近くを使っちゃうことになるんだけど」


魔法士「…じゃあ馬車は?」

乙女剣士「お金あるの?」

魔法士「値段によっては、乗ってってもいいと思うんだけど…」

乙女剣士「確か、直通で往復3万ゴールドよ」

魔法士「」


乙女剣士「…直通便は、貸切しかないから貸切料金は別だったはず」

乙女剣士「えぇと、そうするとプラス1万ゴールドで……」


魔法士「歩くしかないのね」シクシク


乙女剣士「…そういうこと」

乙女剣士「だけど、魔法士がいくら実践に弱くても人よりは遥かに体力がるはずだし。」

乙女剣士「そう考えれば、1週間前後で着くと思うんだけどなぁ」


魔法士「…それは、休んで?」

乙女剣士「ほぼ休みなしで」

魔法士「」

乙女剣士「足腰の鍛錬にもなるし、冒険者になったらこういうのは珍しくないと思うし」

魔法士「きつすぎるよ〜…」

乙女剣士「また文句ば……」

魔法士「…まぁ、やれるだけはやるけどね!」

乙女剣士「…!」

魔法士「本当にキツくなったら、休ませてよね…」

乙女剣士「う、うん。そこは勿論!」

魔法士「はぁ…大変な旅になってきちゃったよ……」


乙女剣士(…なんか、気分が少し前向きになってるみたい。)

乙女剣士「まぁまぁ魔法士、辛いのは分かるけど…これも経験値をためると思って……」

乙女剣士「…」

乙女剣士「……あれ?」ハッ

魔法士「…どうしたの?」

乙女剣士「なんか、向こう側…騒がしくない?」ジー

魔法士「何が…」


乙女剣士「…」

乙女剣士「……何か、もめてるみたい!」


魔法士「よ、よく目ぇ見えるね…」

乙女剣士「いこっ!」ダッ!

魔法士「あ、待ってよっ!」ダッ

タタタタタタッ……

………

 
 

……
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馬車商人「お、お願いします!」

馬車商人「これ以上は、もう出せないんです……!」


盗賊「…おいおい、そりゃないぜ。この立派な馬車があるだろうが」


馬車商人「それを奪われてしまっては、家族を養うことが…!」

盗賊「…俺は、これが奪えなきゃ家族を養えないんでね」ヘヘッ

馬車商人「…っ!」

盗賊「どうせ渡す気もないんだろ。なら…死ぬか」チャキッ

馬車商人「ひっ…!」


タタタタタッ…ズザザザッ!

乙女剣士「…っコラー!!」


盗賊「あん?」

馬車商人「へ?」


乙女剣士「…アンタ、盗賊ね!商人さんを襲ってたとみたっ!」

魔法士「ちょ、ちょっと乙女剣士!」


盗賊「…んだオメーらは」ギロッ


乙女剣士「…そういうことはダメでしょ!商人さんの荷物を返してあげて!」

盗賊「は?」

乙女剣士「は?じゃなくて!」


盗賊「……いやいや。急に出てきてなんだっつーの」

乙女剣士「…アンタは盗賊でしょ!この人の荷物、奪ってたんでしょ!」

盗賊「だから?」

乙女剣士「だ、だからって……」

盗賊「オメーにどうこう言われる筋合いはねーぞ」

乙女剣士「…っ!」


馬車商人「…」ビクビク

魔法士「…」ビクビク


乙女剣士「…こんな時に、魔法士までビクビクするなぁっ!」

魔法士「ひえっ!は、はいっ!」ビクッ!


 
盗賊「…」

盗賊「……面倒くせえな、殺すぞ」チャキッ


乙女剣士「やってみる?」チャキッ

盗賊「…片手剣?」ピクッ

乙女剣士「これでも、その辺のよりは出来ると思ってるけど」

盗賊「…面白れぇ!ガキが!」ダッ!

ダダダダダダッ!!


魔法士「お、乙女剣士っ!」


乙女剣士「…なめないで。このくらい!」

乙女剣士「えぇぇいっ!!小斬っ!!」ビュオッ!!


 
盗賊「っ!」ビュッ!

…ガキィンッ!!

乙女剣士「ち、力比べでも…っ!」ググッ!

盗賊「ふん…!」ググッ!

乙女剣士「このまま…押し切るっ!」グググッ!

盗賊「…バカが」ニヤッ

乙女剣士「!」

盗賊「…せいっ!」ググッ

ビュオッ!ゲシィッ!!

乙女剣士「きゃっ…!?」フラッ!
 
魔法士「あ、足蹴り!乙女剣士っ!」


ズザッ……ドシャアッ…!

乙女剣士「ったぁ〜い……!」

盗賊「…っと!」ピョンッ!

…ズシンッ!

乙女剣士「げほっ…!?」

盗賊「マウントポジショ〜ン」ニタァ

乙女剣士「ちょっ…!」

盗賊「…経験が違うんだよ。死んで後悔しとけ」

乙女剣士「……っ!」


……ヒュオッ、ボォンッ!!!

盗賊「ぬがあっ!?」


乙女剣士「!?」


盗賊「あっちぃな…!コラァッ!」ギロッ!


魔法士「…小火炎魔法、間に合ったぁ」パァァ

盗賊「て、てめぇ……!」

魔法士「お、乙女剣士から離れてください!離れないなら、つ…次は!頭を吹き飛ばします!」

盗賊「…っ!」

魔法士「…」

盗賊「…」

魔法士「…お、脅しじゃないですよ!」パァァッ

盗賊「……くそっ」

タァンッ!クルクルクル、ズシャッ!


魔法士「わっ、凄い身のこなし……」


盗賊「お前らのその恰好、冒険者気取りか知らないが……」

盗賊「俺一人に殺されかけてちゃ、世話ねぇな!」

盗賊「せいぜい、他の奴にでもヤられるんだな!」クルッ

タタタタタタタッ……

………



魔法士「…」

魔法士「……ふぅっ」ハァ

魔法士「乙女剣士、大丈夫…?手ぇ貸すよ……」スッ


乙女剣士「あ、ありがとう……」スッ

…グイッ

魔法士「…一人で突っ込んで無茶しすぎだよ。泥ついちゃってる」

乙女剣士「ごめん……」


魔法士「それにしても、頭なんか吹き飛ばす魔法なんか僕は使えないんだけどね」アハハ

魔法士「ハッタリがきかなかったら、本当に危なかったよ」


乙女剣士「……本当に、ごめん」ブルッ

魔法士「ううん、いいよ」


馬車商人「…」

馬車商人「な、なんか話し込んでいるようだが…」
 
馬車商人「……その、いいかい?」


乙女剣士「あっ……」

魔法士「あ……」

 
馬車商人「僕のこと、助けてくれたんだよ…ね?」

乙女剣士「一応は…そうなりますね」

馬車商人「…そっか、ありがとう!」

乙女剣士「いえ…」



馬車商人「盗賊に襲われた時はどうしようかと思ったけど、本当に助かったよ。」

馬車商人「…君たちは随分と若いように見えるが、その恰好は冒険者か何かかい?」


乙女剣士「王都にある、冒険学園の…生徒です」


馬車商人「…ほっほう!なるほど、それで道理で勇気があるはずだ」

馬車商人「助けてくれたこと、心から感謝するよ」


乙女剣士「…」

魔法士「…」


馬車商人「……と、君たちはどうしてこんな場所に?」

馬車商人「野良道だし、冒険者の卵といえども珍しい場所にいるね…」

 
乙女剣士「あ…。えっと、それはですね……」

魔法士「ちょっとだけ、長くなるんですが……」


馬車商人「ふむ…。」

馬車商人「これも何かの縁、時間があるなら教えてくれるかい?」


…………
……


 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

馬車商人「……そういうことか」

馬車商人「北方大地にある博物館へ、伝説の槍を見に…ね」


乙女剣士「はい…」

魔法士「…」


馬車商人「夏休みは30日なんだろう?港まで歩いていたら、相当な距離だぞ」

乙女剣士「あ、それは休まないで出来るだけ歩こうかなと…」

馬車商人「あぁ。確かに冒険者なら、普通の人の半分くらいでいけるか…」

乙女剣士「はい」

馬車商人「だが、今はちょっと厳しいかもしれんぞ」

乙女剣士「……えっ?」



 
 
 
馬車商人「この先にある崖で、がけ崩れが発生しているらしいんだ」

馬車商人「大きく迂回する事となるだろうから、君たちの足でも2週間はかかるだろう」


乙女剣士「そ、そんな!?」

魔法士「うっそでしょ……」


馬車商人「…」

馬車商人「……ふむ」

馬車商人「君たちは、北港村に行ければいいんだったな?」


乙女剣士「そ、そうなんですが……」


馬車商人「なら、僕の馬車に乗っていくかい?」

馬車商人「積荷側だし、お世辞にも乗り心地がいいとは言えないけどね」


 
乙女剣士「え…!」

魔法士「ほ、本当ですか!?」


馬車商人「ははは、助けてくれたお礼だよ」

馬車商人「僕は、その村から更に東側へ抜けていかないといけないから、そのついでって話さ」


乙女剣士「い、いいんですか…?」

馬車商人「もちろんさ。そのくらいしないと、お天道様に怒られちまうよ」ハッハッハ

乙女剣士「…お言葉に、甘えさせていただきます」ペコッ

馬車商人「うむ、甘えてくれ」ニカッ


魔法士「やった…!これで、少しでも休める〜……」



 
 
 
 
馬車商人「…それじゃ、さっそく出発しようか!」

馬車商人「裏側から乗り込んでくれるかい?少し足元が悪いから、注意してくれ」


乙女剣士「…はいっ」

魔法士「ありがとうございますっ!」


…………
……
 
 
 
 

……
…………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 馬車の中 】

パカッ…パカッ……


魔法士「ふぅ〜!快適快適……」

乙女剣士「…」

魔法士「少し…寝ても大丈夫かな……」フワァ

乙女剣士「…」


魔法士「…」

魔法士「……ん、乙女剣士?」



乙女剣士「…」

乙女剣士「……えっ?」ハッ

乙女剣士「な、何っ?どうしたの!」


魔法士「ど、どうしたのって僕のセリフだよ。急に元気なくなっちゃって…」

乙女剣士「あ…」

魔法士「…さっきのこと?」

乙女剣士「…っ」

魔法士「し、仕方ないよ。相手も実践が多い相手だったし…さ」

乙女剣士「…分かってるけど、自分が情けなくて」

魔法士「…」

 
乙女剣士「…」ブルッ

乙女剣士「その、魔法士にはいつも偉いように言ってきてさ……」

乙女剣士「さっきも、一人で粋がってただけで、結局助けてもらったのも情けないし……」

乙女剣士「こういう性格だって分かってる自分も嫌なの…。」

乙女剣士「だから…色々と…考えちゃって……」グスッ


魔法士「…僕たち、今は仲間なのに。パーティなのに、助けて貰ったのが嫌なの?」

乙女剣士「!」

魔法士「二人で一緒に行くのに、助け合うのが嫌なの…?」

乙女剣士「ち、ちがっ!そういう意味じゃなくて…!」

魔法士「…」

 
乙女剣士「そ、その……っ」ブルッ


馬車商人「自信満々に言ったのに、助けて貰ってしまったこと」

馬車商人「それが、情けなくて悔しくてたまらない。」

馬車商人「……そういうことかな?」


乙女剣士「!」

魔法士「!」


馬車商人「ははは、ごめんよ。話しに割り込んじゃって。」

馬車商人「積荷側の声が妙に響いちゃって、聞こえてきたもんでつい……ね」


乙女剣士「い、いえ…」


馬車商人「えーっと、魔法士くんとか言ったかな?」

魔法士「は、はい」

馬車商人「彼女はね、助けてもらったのが嫌なんじゃないんだ」

魔法士「…?」

馬車商人「例えば君が、彼女に奢ってあげると高級料理店にいったとするだろう?」ジュルリ

魔法士「…は、はぁ?」

馬車商人「なのに、君が支払う時に財布がないことに気が付いた。だから、彼女が払った」

魔法士「は、はい…?」


馬車商人「その時、彼女はこう思った。"忘れてしまうのは仕方ないし、次があるよ"と」

馬車商人「でも、君は違うだろう?恥ずかしさやらでいっぱいのはずだ」


魔法士「そ、そりゃまぁ……」
 
 
馬車商人「……彼女は、今。その逆の立場で、人助けをしようとした」

馬車商人「だけど、財布を忘れて…ああなってしまったんだ」

馬車商人「…ちょっとニュアンスは違うが、そんな感じじゃないかな」


魔法士「あ…」

乙女剣士「…」ギュッ


馬車商人「…嫌だよねぇ。気持ちは凄く分かるよ。」

馬車商人「僕も、この業界に入ってベテランで、かなり経つけど……」

馬車商人「後輩に粋がって、助けて貰っちゃうことが何度もある」ハハハ


乙女剣士「…」
 
 
馬車商人「確かに恥ずかしいけど、それは自分に足りなかった部分の成長の糧なんだ」


乙女剣士「成長の糧…?」


馬車商人「失敗は成功の母!」

馬車商人「粋がったところや、失敗したところ、全部が成長の糧、種となる!」

馬車商人「君たちはまだ若いし、足りない部分が沢山あると思う」

馬車商人「だけどね、それは今日のことも通して、自分の成長の糧となったんじゃないかな?」


乙女剣士「…っ」


馬車商人「そっちの男の子、魔法士くんは…女の子に負けないように、"最後の方は"勇気も出せたし」ハハ


魔法士「うっ……」

 
 
馬車商人「……っと、説教染みていかんなぁ」

馬車商人「すまんすまん。僕は少し黙っておくから、あとはゆっくり休んでくれ」


魔法士「…」

乙女剣士「…」


馬車商人「…到着まで、速度を出しても1日以上かかるからね」

馬車商人「あと、着いたら教えるよ」


魔法士「あ、ありがとうございます……」


馬車商人「うんっ」


 
乙女剣士(…)

乙女剣士(…成長の糧、か)

乙女剣士(私、すぐに調子乗っちゃうところがあるから……)

乙女剣士(…っ)

乙女剣士(……ううん、元気を出そう)グッ

乙女剣士(そう、この人のいう成長の糧にして、しっかり考えようっ)

乙女剣士(それに魔法士は仲間なんだ。守って、守られる、守り合う存在なんだよね)

乙女剣士(あと、魔道士ってば普段はのんびりしてるのに…いざとなったら男の子なんだなぁ)

乙女剣士(た、助けてくれた時はちょっとだけ、かっこよかった……とか……)


…………
………



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