架空の世界で創作活動及びロールプレイを楽しむ場所です。

短編
「パルハの戦い」

日暦1046年、マウサネシア連邦共和国


カウウルフォヌア率いるトァイ・トゥンガ国(現在のトァイ・パロア自治州が首都)が大軍をもってマウサナに侵攻してきた。
時の大王ウダヤデイッタヤジュラル2世は戦死してしまうが、跡を継いだ大王、ハルシャジュラル3世にはある秘策があったのである……



「パロア軍29万!?そのような大軍をどうやって……」

「どうもパロア軍は本土から連れてきた軍9万と占領地から新たに徴兵した軍20万を合流させる予定のようで……」

「一体どうすれば……」

クシャール王国の首都ヤソーダラプラでは、王命によって将軍たちが集められていたが、先王を喪って間もない彼らは完全に葬式ムードであった……

「心配するな。余の指示に従えば勝てる。要するに最後に勝てばよいのだ。」

「大王様!?しかし……」

「その、第三軍は……」

「第三軍は既に壊滅状態でありロアン将軍は討死を……」

「ふん、心配するなといっただろう。既に手は打ってある。」

「というと?」

自信満々な皇帝に対して将軍たちは半信半疑であった。よもや神頼みでも始めるのだろうか、と……
しかしその時、全く予想外の人物がこの場に現れたのである……

「ごきげんよう」

「!!」

「この者はもしや……」

「ああ。隣国スータイ王国の第一皇子、カツーナ氏だ」

そのカツーナと言われた高貴なマウサナ人は、戦国始まって以来のクシャール王国のライバルであるスータイ王国の第一皇子、つまり皇太子だというのだ。

「ちょっと待ってください!なぜ敵国の者がこの場に!」

「しかも第一皇子とは……」

「大王様、よもやスータイの連中にこのクシャールを明け渡すつもりでは……」

「はっはっは、だから心配するなと言っておるだろう。この度、我々はスータイ王国からの援軍を得たのだ。」

ざわざわ……
敵国であるはずのスータイ王国からの援軍。しかも皇太子が居るということはよほど本気の大軍なのだろう。皆が混乱した。

「しかしなぜそのような……」

「敵国の援軍など反対です!危険すぎます!」

「ふふ、スータイ王国だけじゃないぞ……?」

「え……」

「この度、チェンパ王国、サンラーン王国からも援軍を得ている。」

「ぜ、全員敵国ではないですか!」

「大王様、まさかご乱心を……」

「ふむ。確かにクシャールの連中は憎いが、我々は同じ太陽教の民、マウサナ人ではないか。異教徒に太陽神の土地を荒らされたらたまったものではない。」

「そうゆうことだ。もしクシャールが倒れれば、次に戦火に晒されるのはスータイやチェンパの民だからな。」

「確かに、連中の残虐性は度を過ぎていますし……」

「そうだ。だからひとまず手を組む。簡単な話だ。」

「それで大王様、その4大国合従軍の規模は……」

「37万だ」

「37万!?前代未聞の大軍ではないですか!」

ざわざわ……

「もっとも、シャラ軍のうち3万は既に出陣したがな」

「どこへですか?」

「それは現地徴兵の20万がトゥンガ国本軍に合流する中間地点だ。そろそろ済んだ頃だと思うが……」

すると1人の伝令が息を切らしながら入ってきた。

「急報!トゥンガ軍20万壊滅!我が方の勝利です!」

「他に情報は?」

「はっ。我が方の奇襲により敵将を討ち取り行軍中の20万のうち2万が撃破、13万が指揮統制を失って出撃地点に潰走、残り5万は進軍を続行し集結地点に向かいました。」

「計画通りだ。下がって良いぞ」

「計画通りと申しましたか!?」

「そうだ。計画通りだ、だから心配するなと言った。」

「しかし残りの5万は……」

「5万をあえて逃がすことでカウウルフォヌア本軍は14万になる。この国がまともに動かせる兵力は10万程度、9万では攻略を諦めるが14万であれば証書不安だが不可能ではない数字だ。」

「しかしその14万は……」

「そのために34万の軍勢が居るのだ。兵力差は倍以上、そして敵はこのことを知らない、合従軍の存在をな」

実際に、クシャール王国の上層部ですらこの合従軍について知っていたのはハルシャジュラル3世大王を含めても片手で数えられる人数であり、そのような情報を敵国が掴んでいるはずがないのだ。

「楽勝でしょうねこれは」

「楽勝ではない。完勝だ。敵14万をすり潰すぞ!」

「おお……」
ざわざわ……

「同胞を殺戮した罪はその身できっちりと贖ってもらう!太陽神万歳!」

「「太陽神万歳!」」


こうして戦闘の日は訪れた。
出陣の直前、大王は兵士たちの前に自ら姿を表した。

ざわざわ……
「大王様……」

「大王様だ……」

「諸君!今、この地に14万の敵軍が向かってきている!」

ざわざわ……
兵士たちの声に明らかな不安感が混ざり始める。

「敵はあのカウウルフォヌアだ!通り道の集落でマウサナ人を皆殺しにし、陥落させた都市で民間人を皆殺しにし、降伏した捕虜10万を皆殺しにした、あのカウウルフォヌアだ!」

「うぅ……」
「私も親戚を殺された……」
「カウウルフォヌアめ……」
兵士たちの声はカウウルフォヌアへの憎しみに満たされた。

「もしこのヤソーダラプラが落ちればクシャール朝は滅亡だ。それだけではない、スータイやチェンパ、サンラーンも滅亡し、マウサナ人は滅びるだろう!」

「…………」
「…………」

「だが、今はそんなことはどうでもいい。」

「え……」
ざわざわ……

「諸君が考えることは、侵略者の血塗られた手からこの神聖な太陽神の土地を守ること………そして、諸君の家族を守ることだ!」

「……!」

「諸君の両親を!子を!愛する者を!それらを守るという強き意思があれば、この戦い、必ず勝利できる!」

「「うおおおおぉ!」」

「子供には指1本触れさせないよ!」
「家族を守ろう!」

突如として兵士たちの士気は極限まで高められたのである!

「諸君、我々の軍勢は34万だ!中には敵国同士も居る、だが今は、今だけは!マウサナ人として、太陽神の民として力を合わせようではないか!」

「「おおおおおおおおおぉ!!」」

「この戦いで敵軍を1人残らず潰す!侵略者に死を!太陽神に栄光あれ!」

「「侵略者に死を!!」」
「「太陽神に栄光あれ!!」」

「全軍出陣だああああ!!」

「「おおおおおおおおおおおお!!」」

さて、14万で進軍したトゥンガ軍はついに目的地であるヤソーダラプラの近くまで来ていた……

「急報!前方に軍勢が!」

「ふん、どうせ大したことないだろう。」

「おめおめと玉砕しに来ましたねぇ」

「カウウルフォヌア様、攻城戦の手間が省けましたなぁ」

「…………(しかしなぜ出てきたのだ、攻城戦のほうが有利だろうに……まさか、数を増やした?いや、だがそんな程度では……)」

「きゅ、急報!!左側より敵の大群が!」

「何だと!?」

「急報おおおぉ!!右側より敵の軍勢が!!」

「斥候隊より急報!正面の敵、こちらよりも多いとのこと!」

「カウウルフォヌア様、これは一体……」

「はめられた、か……」

  • クシャール軍11万
  • スータイ軍7万
  • チェンパ軍7万
  • サンラーン軍5万
  • シャロファチャイ軍2万
  • ラーゴ軍2万

【マウサナ人諸国合従軍:34万】

【トゥンガ軍:14万】



後の時代の歴史書『ヤソーダラプラ列王記』には、以下のように書かれている。

カウウルフォヌア率いる9万の軍勢は29万に増員しようとしたが合流の失敗により14万で攻略を試みた。
ハルシャジュラル3世大王率いる34万のマウサナ人諸国合従軍がカウウルフォヌアの軍勢をヤソーダラプラ郊外で撃破した。
カウウルフォヌアは10の将軍と軍勢の大部分を失い、数人の将軍と数千の兵士を連れて命からがら本拠地に逃亡した。
7万が捕虜になりハルシャジュラル3世大王はその全員を生き埋めにした、と。

つまり、マウサナ人諸国は防衛に成功し、大勝利を収めたのである。



ヤソーダラプラ郊外の荒れ地

「おのれ猫女どもめぇぇええええ!」
「呪ってやる!呪ってやる!」

「あんたらこそマウサナ人を沢山殺した!外道に相応しい死だ!」

「ああそうだよ、俺はマウサナ人を4人殺したんだぁうひゃひゃひゃ」
「淫乱の猫女はいくら殺しても罪ではないからなぁ!」

「こ、こいつら……!」


「諸君!ついにこの者たちに鉄槌を下す時だ!処刑を始めろぉぉおおお!」


「伍長、本当にこれで良かったのでしょうか……?」
「連中は同胞をたくさん殺したんだ。しかも7万なんて数じゃない。当然の報いさ」
「でも子供みたいなのも混ざってるけど…」
「連中のこと庇ったら我々まで生き埋めだよ、分かってるの?」
「はい、指示に従います……」

「父さぁぁぁぁん!」
「おのれマウサナ人どもめ……よくも子供まで!」

「問答無用だ!やれ!」

敵の兵士たちは10人が縛られて繋がれており、それをマウサナ人の兵士たちが順番に、背後に掘られた大穴に足で蹴落としていく。

「ざまあみろ!えいっ!」
「やっ!死で償え!」
「しねぇ!ふんっ!」

双方が激しい憎悪のうちに罵りあい、兵士たちは暴言を浴びせながら顔を蹴飛ばして落としていった……

「マウサナ人を殺すのは楽しかったぜえぇぇぐわっ」
「くそぉぉおおぉ!」

「よし、これで全員だな!奴らを埋めろぉぉおおお!」

その後、大量の土が大勢の兵士によって順番に投げ込まれた。

「こ、これは夜までかかるな……」
「早く帰りたいなぁ」

全てが終わったのは太陽が沈んだ後であったという……

こうしてカウウルフォヌアは敗北し、彼の野望は打ち砕かれたのである。

数百年の後、この土地であったことは忘れさられ、場所も分からなくなった。
共産革命の後、この地域は人口の急増によりアンコール市のベッドタウンとして開発され、現在、7万の遺骨の上には10階建ての高層アパートが建ち並んでいる。
この団地では時折、幽霊が出るとか、出ないとか……

【完】

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