最終更新:ID:OAZhdX/9tw 2013年03月13日(水) 16:46:53履歴
ノアの箱舟か、博物館の標本室か。
その光景を見た人間たちは一様に同じ感想を述べるであろう。
薄暗く、さして広くも無い空間の中に、巨大な恐竜やクジラから人間、鳥、魚に昆虫までもが勢ぞろいしていたのだから。
彼らはみな、何が起こったのかよくわらかないという顔をしている。
辺りを不安そうに見渡すものもいれば、苛立ち紛れに吼え声を上げるものもいる。
なお魚やクジラなど海生の動物も床の上に横たわっていたが、呼吸は正常にできているようだった。
『皆さん、ようこそお集まり下さいました』
やがてどこからともかう声が聞こえた。女性の声だ。だが声だけだというのに、圧倒的な存在感を伴うように感じられる声であった。
「お前は何者だ? 一体どこにいる?」
集められた者の中の一人が苛立たしげに声を上げる。
『私はいつも皆さんとともにあります。正確には、皆さんの足元に、ですけど』
不思議な答えに、ざわめきがひときわ大きくなる。
『私は大地です。一部の人たちには、地球、と名乗ったほうがいいのかもしれませんが』
一同の間に衝撃が走った。悪い冗談だろうと顔をしかめるもの、顔面蒼白になるもの、よくわからないといった顔をするもの。
『私は、今までに私の上に生まれた私の子どもたちの中から、ある目的に沿って代表者を選びました。それが貴方たちです』
荘厳な雰囲気を纏ながらも、やわらかい母性をどこかに感じさせる声で彼女は続けた。
『貴方たちは、貴方たちの種族の代表でもあり、同時に今までに生まれたあらゆる動物たちの中の代表者でもあるのです』
「……それで、我々に一体、何をさせようとするのです」
群衆の中からまた一人、声に問いかける者がいた。声は明瞭に答えた。
『はい。皆さんには今から、最後の一匹になるまで殺し合いをしてもらいます』
ざわめきは、この言葉をもってようやく止まった。
『といっても、今すぐここで、ではありません。これからみなさんを、私を模して作ったミニチュアの地球にご案内いたします。
そこでは今までいた世界とは違い、食べ物を食べなくても飢えることはなく、水を飲まなくても乾くことはありません。
つまり、みなさんは自分が生きるために他の動物を殺す必要は無いのです。
この条件のもとで、みなさんには殺しあってもらいたい』
質問の声は上がらなかった。誰もが、一体何を聞けばいいのか皆目判らないという顔をしている。
『また、そのミニチュアの地球では、水の生きものも陸上で自由に息ができ、陸上の生きものも水の中でも自由に息が出来ます。
また、そこではみなさんは何不自由なくお互いに会話をすることが出来ます』
「ちょ……ちょっと待ってくれ。何のためにそんなことをしなきゃいけないんだ?」
当然の疑問が真っ先に出された。しかし、
『それにだけはお答えできません。ただ、皆さんにはあくまでも、お互いに対等な立場で殺し合いをしてもらいたいのです。
それでは、そろそろ始まりと致しましょう。私の愛しい子どもたち。どうか存分に、純粋に生命を賭けて戦ってください』
やがて声は途切れ、その空間は再び、深い闇に閉ざされた。
【主催者・地球】
その光景を見た人間たちは一様に同じ感想を述べるであろう。
薄暗く、さして広くも無い空間の中に、巨大な恐竜やクジラから人間、鳥、魚に昆虫までもが勢ぞろいしていたのだから。
彼らはみな、何が起こったのかよくわらかないという顔をしている。
辺りを不安そうに見渡すものもいれば、苛立ち紛れに吼え声を上げるものもいる。
なお魚やクジラなど海生の動物も床の上に横たわっていたが、呼吸は正常にできているようだった。
『皆さん、ようこそお集まり下さいました』
やがてどこからともかう声が聞こえた。女性の声だ。だが声だけだというのに、圧倒的な存在感を伴うように感じられる声であった。
「お前は何者だ? 一体どこにいる?」
集められた者の中の一人が苛立たしげに声を上げる。
『私はいつも皆さんとともにあります。正確には、皆さんの足元に、ですけど』
不思議な答えに、ざわめきがひときわ大きくなる。
『私は大地です。一部の人たちには、地球、と名乗ったほうがいいのかもしれませんが』
一同の間に衝撃が走った。悪い冗談だろうと顔をしかめるもの、顔面蒼白になるもの、よくわからないといった顔をするもの。
『私は、今までに私の上に生まれた私の子どもたちの中から、ある目的に沿って代表者を選びました。それが貴方たちです』
荘厳な雰囲気を纏ながらも、やわらかい母性をどこかに感じさせる声で彼女は続けた。
『貴方たちは、貴方たちの種族の代表でもあり、同時に今までに生まれたあらゆる動物たちの中の代表者でもあるのです』
「……それで、我々に一体、何をさせようとするのです」
群衆の中からまた一人、声に問いかける者がいた。声は明瞭に答えた。
『はい。皆さんには今から、最後の一匹になるまで殺し合いをしてもらいます』
ざわめきは、この言葉をもってようやく止まった。
『といっても、今すぐここで、ではありません。これからみなさんを、私を模して作ったミニチュアの地球にご案内いたします。
そこでは今までいた世界とは違い、食べ物を食べなくても飢えることはなく、水を飲まなくても乾くことはありません。
つまり、みなさんは自分が生きるために他の動物を殺す必要は無いのです。
この条件のもとで、みなさんには殺しあってもらいたい』
質問の声は上がらなかった。誰もが、一体何を聞けばいいのか皆目判らないという顔をしている。
『また、そのミニチュアの地球では、水の生きものも陸上で自由に息ができ、陸上の生きものも水の中でも自由に息が出来ます。
また、そこではみなさんは何不自由なくお互いに会話をすることが出来ます』
「ちょ……ちょっと待ってくれ。何のためにそんなことをしなきゃいけないんだ?」
当然の疑問が真っ先に出された。しかし、
『それにだけはお答えできません。ただ、皆さんにはあくまでも、お互いに対等な立場で殺し合いをしてもらいたいのです。
それでは、そろそろ始まりと致しましょう。私の愛しい子どもたち。どうか存分に、純粋に生命を賭けて戦ってください』
やがて声は途切れ、その空間は再び、深い闇に閉ざされた。
【主催者・地球】
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