ペンシルパズルに関する情報Wikiサイトです!

記事作成中(pzdc, 2019, Oct. 13)

前置き

このページを見にこられた方は天体ショーを作ったことのない方だと想定して説明します。

最初に断わっておくと、ここで紹介する作り方はかなり特殊、言ってしまえば邪道なものですが、敷居は非常に低いと思います。

まだペンシルパズルを一種類も作ったことがない、という方は、ここから始めるのも一つの選択だと思います。
ただ、ここで紹介する以上にパズル作りには深みがあるということは覚えておいてください。

もう少しテクニカルな話は別にページを作成しそこに書く形にしようと思います。
(私はちゃんとした作問経験がほとんどないので、他の方で書けると言う方がいたらお任せします)

準備

パズルを作るうえで、そのパズルを最低限理解するということは必要になります。
簡単な問題が解ける程度にはなっておきましょう。

作問を始める前に、あらためて天体ショーで許されるブロックの形というものを再確認しておきます。


点対称は、右下が飛び出るときは左上も同じように飛び出る、という関係です。これでは駄目ですね。


これは点対称ではないですね。中心がどこにあるかちゃんと確認しましょう。
特に大きいブロックの場合は意外と作っている途中で数え間違えることがあるので注意が必要です。


これは線対称です。点対称ではないです。

作問 1回目


最初はとにかくやってみることが大事です。難しいことは考えずにとりあえず一つ作ってみます。
盤面のどこでも良いので点対称のブロックをエイヤッと置きます。
大きいブロックはあとから追加しづらいので、最初は大きめのブロックを置いていきます。


左上にS字形のブロックがきれいにはまりそうだったので置いてみます。


右下に階段状のブロックを置きました。大体埋まってきました。


上の方でブロックとブロックの隙間が点対称になっているところはそのままブロックにしてしまいましょう。


ここまでできました。後は下のスペースですが、ここも特に何も考えずに、好きなように分割して点対称にしてみます。


できました。


試しに解いてみると、ちょっと難しいですが、確かに答えが一つになっていました。
これでめでたく天体ショーが作れたことになります。

作問 2回目

上の例で天体ショーを作るということの敷居の低さを感じていただけたと思います。
しかし、上の方法ではたまにうまくいかないことがあります。


上と同じ方法で点対称のブロックを置いていって作った配置です。


しかし実際に解きチェック*1してみるとこのように左下が決まりません。
何がいけなかったのでしょう。


複数解*2の原因になっている部分を拡大しました。
経験的には、A、B、Aという風に、同じ種類のブロックが対称に一つのブロックを挟む構造は複数解になりやすいです。


このような場合A、B、Cという風に対称性を崩してやれば複数解が解消されることが多いです。
こういった複数解が怖ければ最初からA、B、Aのようなサンドイッチ側はさけるようにするのでも良いでしょう。


今回はこのような形でA、B、Aを回避することにします。


最後まで作りました。しかし、またもや複数解になっています。


X、Y、Z、Wのマスがループ状になっており、これが原因で複数解になっています。
実は天体ショーで複数解が生じる原因は全てこういったループで説明がつきます。
ここで説明しているような方法で作問している場合にループが偶然できることは比較的稀ですが、対策は必要です。
嬉しいことに、万能な解決策があります。


ループが出来てしまった場合は、ループに関係しているブロックになんらかの変更を加える必要があります。
特に簡明な方法として、ブロックを分割してしまう方法があります。
今回は試しに右下隅のブロックを二つに分割してみます。


もう一度解きチェックしたところ、答えが一つになっていました。完成です。


複数解になった場合に分割してもまた別のループが生じて複数解になってしまう場合もあります。しかし、分割を続けていけば必ずある時点で唯一解になることは保障されています。極端な例として、最後まで分割を続けた場合にこの画像の状態になるためです。
(難しくなりすぎて自力では解けなくなってしまった場合にも、この分割という戦略は有効です)
このため問題は必ず完成させることができます。解なしになってしまうこともありません。

作ったことのないパズルを作る上で一番怖いのは破綻地獄に陥り結局完成しないというシナリオだと思われますが、それがないわけですから、これはこの作問方法の明確なメリットと言えるでしょう。

作問 3回目

私はアルゴリズム化された作り方はあまりしないのですが、もう少し解き手の気持ちに立った作り方もしてみます。


10x10で作ってみます。
今回は計画的に進めたいので、
・入口をどこに置くか
・どういう展開にするか
を考え、解き手がどう解くのかを意識して進めます。
今回はおてごろ程度の難易度で、ところどころでちょっと面白い決まり方があるな、という程度を目指すことにします。


定番どうり左上に入口…と見せかけて今回は左上が最後に解ける展開にしてみます。
今回は最後に「いい感じ」の部分が残る感じにします。「いい感じ」の部分というのは易しすぎず難しすぎない空間処理ということです。大体2〜4ブロック程度で自明すぎないけれど理詰め・直感のいずれであっても解けそうなものを左上に作ってみました。
中線で示したのがブロックの想定形状です。壁はこの時点で確定してしまう部分だけに引いています。

ここが最後に残ってほしいので、周囲の決まり方に無理がないようにしないといけません。つまり難易度の上限がここで決まることになります。また周囲の決まり方はこの部分の自由度とは独立していなければなりません。私はよく周囲に決まりにくいものを置いて必要以上に難易度をあげてしまうので今回は気を付けます。


左上は自由境界ばかりで落ち着きがないので小さいブロックをいくつか置くことでいくらか落ち着かせておきます。


最近の私が作った問題は癖なのか左下に入口があることが多い気がするので、今回は気分を変えるつもりで右下に入口を置いてみます。


ここは矢印のように空中側から手が進むようにしたいという意図です。


この図のXのマスを最初に決める必要があるのでXの周りはわかりやすく囲い込みます。
まず左側はジグザグ型の入口(黄色い線)を置いてみます。
この場合、Xの左の星を星Aが左から抑え込んでいることが肝要なので、この役割をこなすことさえ確認できればAは後から微調整できそうです。覚えておきます。


上側は耳型と呼んでいる入口で処理しました。


耳型と呼んでいるのはこういったタイプの入口です。
平らな壁の上にうさぎのみみのように同じ高さの星が立つところから耳型と呼んでいます。比較的見えやすい入口なので良く使っています。解き手を誘導する効果もそれなりにあるかと思います。
耳を下向きにしたのは右側のへこみの部分を次の仕掛けにつなげたいためです。


全体の展開としては、右下が入口で、左下に進み、そこから右上に波及して、最後に左上をいい感じに決める、ということにします。
右下から左下に進む部分はわかりやすい展開で進めたいので、右上との相互作用部分は分かりにくい状態にしておく必要があるでしょう。なので、ここに二択を作ります。
想定はなんとなく気分で上の方ということにします。


灰色で示した領域は二択の役割のために星を置くことができませんが、どうにか他の星に取らせる必要があります。
こういうマスの予約は何かと厄介なので早いうちに対策を考えておきましょう。


今回は先程の二択とつなげてループ状にしてしまいます。
ループですから、外部から何か仕掛けをしないと確定しません。マスの心配はなくなってだいぶ落ち着きましたが今度はループ解消が心配です。


実はもう一つ心配があります。マスXを回収する必要があるという点です。
二つの心配を同時に解決する案として、星AがマスXを回収するように縦に伸びるというのが考えられますが、直線的過ぎる印象がなんとなく気に入らないです。
マスYやマスZから連鎖させるというのを思いつきましたが、この狭いスペースではそれも不可能です。
Aのブロックももっと巨大化して右上まで波及させ、そこから連鎖させることもできますが、大きくしすぎると後の処理が難しくなりそうです。


今回はループのマスの一つであるマスVから連鎖させることにします。


あいているスペースを埋めて調整しつつ、ループを確定させるための伸びしろを左下に持ってきました。
ここで、マスXとマスYのいずれから確定させてもこのループは確定しますが、マスYの方は左上の「いい感じの部分」と接触してしまっているので、連鎖用には適していません。
マスXの方をうまく包み込む必要があります。また難しくなってきました。


少しく大きいブロックばかりで落ち着きがなくなってきたのでこのあたりでもう一つ、入口を置いておきます。この入口はタタミ型と呼んでいます。落ち着きのない左上の自由境界にくっつけておきます。これだけでもだいぶ楽になった印象です。


マスYのくぼみへ波及させるならこのあたりでしょうか。
今回は右下から波及させることで確定するようにしたいのでXを壁際ぴったりまで持ってきてしまうと後が難しくなりそうです。


だいぶ負債が大きくなってつらい所ですが、なんとか左下で連鎖が組めました。
このあたりがうまく組めるかどうかは運次第です。うまく作れなければ没か、あるいは最初から作り直すことになります(多くの作問方法には運要素が入りますが、その苦労あってこそのやりがいというものです)。


今は矢印で示したように連鎖が効いています。
オレンジの丸で囲んだ部分が好きな決まり方をしそうなのでそれを意識しました。

あとはほぼ埋めるだけですが、ここでマスXを埋めてしまうと下のブロックや右のブロックと接触することで色々な手筋を台無しにしてしまいそうです。このため

連鎖を少し上に引っ張り上げました。
一部先程とは異なる決まり方になりましたが、これはこれで悪くない印象です。


あとは左端にブロックを置くだけです。ここは自然に決まるので大丈夫そうですね。


こうして出来上がりました。
ここから、解きなおして作意通りになっているか確認します。


まず基本的な処理だけしてちゃんと右下に目が行くかどうか検証します。
左上と中央・右上は大体大丈夫かと思います。
左下はいくらか入口になりそうなところで実際に手を進められるところができてしまっています。ここは今回の反省点ですね。連鎖をもう少し大きいブロックで作れば緩和できたと思いますが、いかんせんスペースが残っていませんでした。これはペース配分の問題でしょう。
右下はわかりやすい入口なので、そちらを後回しにして解くようなことをしなければ想定手順で解いてくれるのではと期待されます。


実際に右下から解くとここまで一気に進みます。このあたりは少し連鎖に頼りすぎた印象があります。
続いて、左上か左下か、というところですが、左上はまだ自由度があるので左下に手が進んでくれそうです。

左下の決まり方は最近の私がすっかり気に入ってしまっているもので、破綻閉じ込めと呼んでいるものの一種です。今回は作問終盤の処理で偶然生じた形です。


左下に残っているマスを分け合う場面です。
主観としてはこういうタイプは若干見えにくいかと思います。地続きで形状が分かりにくいせいでしょうか。


あとは上半分だけが残りました。ここはへこみが二つもあるので挟まれた所で手が進むというのはわかりやすいと思います。


こうして無事に目的の左上だけが残る形にたどり着きました。
このように解き直しが一通り済んだ段階で満足がいかなかったり修正できそうな点が見つかったりした場合は「調整」と言って問題の細部に手を入れていくのですが、今回はとりあえず狙い通りの展開にはできたと思うのでよしということにします。

反省点として、途中連鎖だよりになっている部分がちょっとしつこいかな、という点と、ループを使って作っている部分があるのにそこを意識しないで解けるのが勿体ないかな、という点があげられます。入口が複数あるのに左側の入口があまり展開に関係していないので、ここを例えば合流する展開やどちらからも解ける展開にすればもう少し面白くなったかもしれません。

以上、3つ目の天体ショー作問例でした。

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