俺ロワ・トキワ荘にて行われている二次創作リレー小説企画の一つ。Perfect World Battle RoyaleのまとめWikiです。

願ってもない幸運は、突如としてその手に舞い込む。

赤い軍服を身にまとい、色のぬけ落ちたような髪の電光機関を操る男、アドラーは当てもなく歩いていた。
この殺し合いという状況は非常に厄介だ、いつどこで命を落とすか分からない緊迫した状態が続く。
そう、普通の人間ならば「死にたくない」一心で行動するだろう。
だが、彼は少し違う。
転生の秘宝。
肉体が滅びようとも精神を他の器に移し、生きることを長らえる禁断の術。
これがある限り、アドラーという一人の軍人の精神はこの世に残り続ける。
たとえこの地で命を落とそうとも、次の肉体に魂を移し変えればよいのだ。
最強にして最大の保険は手元にある、ならばあの完全者の手のひらで暴れに暴れてやろうではないか。
そしてあの女の顔が驚愕の表情に染まるのを、この目で見届けてみせる。
そうと決まれば話は単純だ、完全者ミュカレの意に反し盤面を狂いに狂わせるだけだ。
ああ、笑いが止まらない。
あのいけ好かない仮面が壊れるのを想像するだけで、体が震える。
我慢しようにも、我慢できない。
ついこらえきれずに掌を天へと翳し、腹の底から力を込めて叫ぶように笑う。

「おじさん、何してるの?」
アドラーの勝利を確信した余裕の笑いは、一人の少女の問いかけによって中断される。
声のする方を振り向くとそこには、妙な衣服に身を包む栗色の長髪の少女が、渦巻きの飴を舐めながらこちらを見つめている。
おじさんと呼ばれたことも気に留めず、アドラーは余裕を崩すことなく、現れた少女へと語りかける。
「何というわけではない、この狂った遊戯において俺が必ず勝利するというだけだ」
きっぱりと言い放ったアドラーに対し、少女はさして関心も持たずに飴を舐め続けている。
「そういう貴様こそ、何をしているのだ?」
質疑応答の立場が入れ替わる。
少女は飴を舐めながら、アドラーの問いかけに応じる。
「クーラはね、K'とみんなを捜してるの。
 さっきの場所でK'を見たの、ホントだよ?」
人を探している、ケーダッシュというのが人かどうかはともかくとして彼女、クーラは何かを探しているようだ。
どうせこの盤面で大暴れするのだ、少しくらい寄り道してもかまわないだろう。
「フン、なるほど。ではこの俺も手伝ってやろう。
 一人より二人の方が都合がいい、探索も戦闘もな」
「ホント!? おじさん良い人なんだね!」
思わぬ形での協力者の出現に、目をぱっちりと開いて喜ぶクーラ。
どこかの表面だけの子供とは違う、子供本来の愛くるしさに思わず頬が綻んでしまう。
「クーラ、あたしはクーラ・ダイヤモンドだよ!」
「俺は……」
そこで、わざとらしく言葉を切る。
「アドラー。エルンスト・フォン・アドラー。大いなる遺産を我が手にする神の後継者たる者だ」
言ってることの意味が分からなかったのか、クーラは頭にクエスチョンマークを並べていたが、自己紹介をすませることには成功した。

「ところでクーラ、万が一戦闘になった時に貴様に自衛の手段はあるか?
 いくら俺がある程度戦えるといっても、貴様を守りながらとなると少々厳しいのでな」
アドラーが話題を切り替える。
パっと見ただの少女にしか見えないクーラに、戦闘能力があるとは思えない。
そんなごくふつうの一般人を殺し合いに招いたのだとすれば、ミュカレの思考回路も相当焼き切れてしまっているのだろう。
もし何か異能があれば、それはそれで戦闘の際の自身への負担が軽くなる。
もとよりアテにしていない要素を確認するために、アドラーは問いかけた。
「うん、大丈夫だよ」
帰ってきたのは、予想外の返事。
軽いその一言と共に、あたりの空気が急に冷たくなる。
それとほぼ同時にクーラの髪の色が水色に変色し、クーラが掲げた右手からは握り拳ほどの氷の塊がどこからともなく出来上がっていた。
クーラが氷の塊にふうっと優しく息をかける。
その瞬間に氷の塊は砕け散り、クーラの吐息に乗せられるように繊細な氷の粒となって大気に舞った。
「そこらへんのテキトーなのには、負けないよ」
アドラーは予想もしなかっただろう。
まさかミュカレより先に自分の顔色が驚愕に染まるなんて。
電光機関とは全く性質の異なる力。
どこからともなく氷を生み出し、己の意志のまま自在に操る能力。
草薙一族のように炎を自在に操る人間の存在は聞いたことはあったが、氷を自在に操る人間は初めて見た。
そういう体質の人間なのか、それとも右手の装置の力なのか。
いずれにせよ、この能力は必ず手中に収める。
完全者ミュカレのマヌケ面を拝んでから、ゆっくりと時間をかけて解明し、手に入れる。
今まで以上の力が手に入る可能性が頭に浮かんだときから、初めのように笑いが止まらなくなる。
「ククク、ハハハ、ハーッハッハッハッハ!!
 ミュカレよ! どこまでも俺を楽しませてくれるな!」
天高く笑い声が響く。
自分能力を見るや否や笑い出したアドラーを見て、驚きながらクーラが呟く。
「おじさん、やっぱり変だよね」
その声は、笑い声にかき消されて聞こえることはなかった。

【E-7/東崎トンネル出口付近/1日目・朝】
【アドラー@エヌアイン完全世界】
[状態]:ゴキゲン
[装備]:電光機関@エヌアイン完全世界
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜2)
[思考・状況]
基本:完全者ミュカレの意に反する
1:クーラと行動、あわよくばその力を手に入れる。

【クーラ・ダイアモンド@THE KING OF FIGHTERS】
[状態]:健康
[装備]:ペロペロキャンディ
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜2)
[思考・状況]
基本:K'達を探す
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