俺ロワ・トキワ荘にて行われている二次創作リレー小説企画の一つ。Perfect World Battle RoyaleのまとめWikiです。

旧人類狩り。
新聖堂騎士団を名乗る連中が、少し前まで掲げていた大義名分の看板。
この世に生き残るべきは新人類になるため、旧人類は魂の救済を以て新たな境地へとたどり着かなければならないのだという。
魂の救済、身も蓋もなく言い換えれば殺人だ。
ほんの少しの間に数え切れないほどの命が奪われ、数え切れないほどの夢がなくなった。
空を飛ぶ女、電気を操る男、自律稼働する戦車。
旧人類はその強大な力に、身を斬り裂かれ、焼かれ、蹂躙された。
誰の目にも夢も希望もない、絶望の未来が広がっていた。
そんなある日、パタリと旧人類狩りが止んだ。
毎日のように目撃されていた新聖堂騎士団の姿が一切見えなくなったのだ。
一日だけではなく、三日、五日、一週間、半月、一ヶ月、三ヶ月と徐々に期間は伸びていった。
旧人類と名付けられた人々は、かつての恐怖の日々から逃れるように笑い、叫び、いつも通りの生活を過ごすことで地獄の日々を忘れようとしていた。

彼も、そのうちの一人である。
旧人類狩りが終わったとされた直後に、旧人類狩り以前のようにアメリカンフットボールプレイヤーとして活躍に活躍を重ねていた。
ブライアンがフィールドに出れば、大人も子供も問わずに飛び跳ねて喜ぶ。
ポジションを問わず、チームに貢献する。
味方の手元に滑り込むように入るパスは、敵には弾丸のように鋭く。
守備に回れば彼の目の前をすり抜けることができない。
ひとたび前に出ればたちまちタッチダウン。
アメリカンフットボールの神様とまで呼ばれるほど、凄まじい成績を納めた。
そんな彼から勇気や夢や希望を貰った人間は、アメリカだけでも数え切れないほどにいる。
ブライアンはまさに、アメリカンドリームを体現しているかのような存在になっていた。

そんな彼に現実という牙が突き刺さる。
旧人類狩りは、終わってはいなかったのだ。
完全者ミュカレも生きていたし、新聖堂騎士団も数え切れないほど生きていた。
そして、機械のように無機質な声で放たれた命令。
「最後の一人になるまで殺しあえ」
配られたタブレットの映像を繰り返し見つめても、変わることのないたった一つの事実。
自分の命をこの首輪で握られた状態で、最後の一人になるまで殺しあわなければいけない。
女も、子供も、関係なく。
その全ての命を奪い去らなければいけない。
夢も希望なんてあるわけもなく、巨大な絶望という壁がそびえ立っているだけ。
生きる道を選ぶか、他人の養分になることを選ぶか。
道は、二つしかない。

手のひらを見つめる。
関節ごとに少し太くなっており、擦り傷や打撲を繰り返した皮膚は硬化している。
握りしめたボールを決して離さないように。
組んだスクラムを決して崩されないように。
掴んだ相手に決して振り払われないように。
鍛えてきたこの手は、今から血に塗れる。
掴むべきモノではないモノを掴み、新人類として生き残る為に。
自分が夢を掴み、希望を与えるために培った技術で、この殺し合いを生き抜かなければならない。
そのためのモノではない、分かっているのに。
自らが愛したアメリカンフットボールを、血で汚す行為などしたくない。
だがそうなれば、自分の命を落とす羽目になるだけだ。
二者択一、究極の選択、人生の岐路。
選ぶに選びきれないたった一度の分かれ道。
その分岐点で、彼は座り込んで悩み続けていた。

「うおおおっ!! すげえ!! ブ、ブライアン・バトラーだ!!」
ふと、聞き慣れない声が聞こえる。
声の方へ振り向くと、とても興奮した様子の兵装の男が立っていた。
輝いた目、微かに震えを繰り返す拳。
全身を使って男は喜びを表す。
「お、俺、あんたの大ファンなんだ! 少ない休みを使って、年に一回はあんたの試合を見に行くんだ!」
その言葉をきっかけに、男はブライアンに語り続ける。
聞けば思い出せる懐かしい場面や、この世の中でも数人しか知らないであろう出来事まで話の種は尽きない。
殺し合いの場だというのに、何の警戒心も持たずにひたすらに語り続ける。

自分が与えてきた夢、希望。
それに影響されて生きてきた人間に、まさかこんな所で出会うとは。
運命というのはつくづくいたずらが好きなのだろう。
もし、自分が今から人を殺すと聞けば。
彼は、どんな顔をするだろうか?
もし、今まで鍛え上げてきたアメフトの技術を人殺しに使うと言えば。
俺は、どんな顔をすればいいだろうか?
少し悩んだ後に男を見つめ直し、語りかけようとする。
「お、おい」
「うおーっ! 燃えてきた! 俺はこんな殺し合い、絶対に抜け出してみせるぞ!
 チクショーッ! 旧人類狩りが何だ! 正規軍の連中の方がもっと怖いぜ! バカヤローッ!」
ブライアンの問いかけの言葉は、男の大声に遮られる。
あれだけの現実を突きつけられても、殺し合いに抗うという希望に縋ることができる人間がいる。
いや、違う。
自分が、逃げているだけだ。
希望を抱き、未来を夢見るという行為から。
背を向けて、視界に入れないように逃げているだけだ。
こんな絶望的な状況でも、夢を見ることができる。
本人が諦めなければ、希望はいつだってそこにある。
アメフトで散々学んだことが、ごっそり頭から抜け落ちていたようだ。
砂粒ほどの望みでも、ゼロではないなら賭けられる。
どんな逆境でも、チャンスがあるなら逆転できる。
そう、アメフトと同じではないか。
「ありがとよ」
「へ?」
ブライアンが突然発した言葉に、男はきょとんとしてしまう。
「大事なことを忘れてたぜ、それを思い出させてくれた事に感謝するぜ」
ゴツゴツとした手で男の頭をヘルメット越しになでる。
夢を、諦めない。
アメフトで頂点を取ったときのように。
自分が夢へと向かう姿が、ほかの人間の活力にもなるのだ。
戦うべきは、人同士ではない。
旧人類狩りなどとヌカしている、あの夢を見ない少女だ。
「さ、行こうぜ。俺たちの夢を掴みにな!」
人生の続き、その先にある夢と未来を掴みに。
殺し合いという異色のフィールドで、アメリカンフットボールプレイヤーのブライアン・バトラーが。
芝生をもう一度、踏みしめた。

【G-3/平瀬村分校跡付近/1日目・朝】
【ブライアン・バトラー@THE KING OF FIGHTERS】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品(1〜3)
[思考・状況]
基本:夢と未来を掴み、希望を与えられる人間になる。

【モーデン兵@メタルスラッグ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品(1〜3)
[思考・状況]
基本:ブライアンについていく
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015:Picnic
時系列順
017:新境地への招待状
投下順
始動
ブライアン・バトラー
044:状況は開始されている
モーデン兵

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