俺ロワ・トキワ荘にて行われている二次創作リレー小説企画の一つ。Perfect World Battle RoyaleのまとめWikiです。

無力。
彼女に襲いかかる強大な敵。
何もすることはできないし、何もさせてくれる筈がない。
超能力だなんだとはやし立てられても、ここぞと言うときには何の役にも立ちはしない。
人知れず地球意志と戦っていた人間の力にもなれない。
世界を支配せんとしていた組織を打ち倒す事も出来ない。
いつも、蚊帳の外である。
大事な時、大事な場面で振るうべき力を振るうことすら出来ず。
決まって耳に入って来るのは事の後の話。
苦しみながら戦っている者の力になる事など、叶いもしない。
超能力なんて、誰の役にも立ちはしない。
旧人類狩りの時も、自身を守る程度で精一杯だった。
誰かを助けるなんて、出来もしない。
手が届かないところで、事が勝手に過ぎ去っていくだけ。
知らないうちに知らない場所で起こった出来事が、自分が無力だと突きつけてくる。
物言わぬ人々の虚ろな目が、逃れられない現実を作っている。

正義の味方になれた事なんて、今まで一度もなかった。

それでも、人は煽ってくる。
超能力を持ったスゴい少女だって。
アイドルとしての私の奥にある、超能力少女という私に期待を込める。
でも、それは誰かの役に立ったことはない。
正義感を出して戦ってみても、何の結果も挙げたことなどない。
ただの人間と、何の代わり映えもしない。
きっと、ここでもそうだろう。
超能力があっても、誰の役にも立ちはしない。
せいぜい自分の命を守るために使う程度だろう。
それで生き残れれば御の字だ、そう思っていたときである。
「ねえ、お姉ちゃん」
足を曲げ、太股に顔を埋めながら悩んでいた彼女に語りかける一つの声。
「デミ、知らない?」
顔を見上げた先には、一人の少年が立っていた。
この殺し合いに呼ばれた者だということが、首をみれば一目で分かる。
無機質な輝きを放つそれ、人一人の命を簡単に奪い去ることが出来る装置。
こんな幼い子供まで、この殺し合いに巻き込まれているのか。
そう考えると無性に悔しくて、一人ですりつぶすように無力さを噛みしめる。
「デミっていうのは、お友達?」
「ううん、僕のお姉ちゃんだよ」
この少年は殺し合いに巻き込まれたことを把握しているのか。
それともそれを紛らわす為に姉という支えを探しているのか。
逃げ、対抗、どちらともとれる動き。
「そう……ごめんなさいね、ここで人にあったのはあなたが初めてよ」
事実をしっかりと伝える。
嘘をついても何も起こりはしない。
いたずらにこの少年の気持ちを弄ぶだけだ。
そっか、と小さく呟いて、少年は彼女のそばから離れようとする。
「ねえ」
立ち去る少年を、彼女は呼び止める。
「お姉さん、私も一緒に探すよ」
同行の提案。
飛び出していた言葉は無意識のモノだった。
この殺し合いにおいて、見るからに無力そうな少年が一人で探索行動を行うのは危険だ。
ならば、自分も共に行動すればいい。
ある程度の戦闘には自信もあるし、子供の目が届かない所に目配りすることで探索の効率が上がる。
何より、彼に手を貸すことで自分が役に立てる可能性というのは大きい。
誰かの力になりたい、ずっと願い続けてきた事。
「ホント? ありがとう」
少年の答えを聞き、彼女は満面の笑みで答える。
自分の願いが叶う日、それが来たのかもしれない。
皮肉な話だと思いながら、彼女は少年の手を取って歩き出す。
自分は、無能じゃない。
誰かを救い、誰かの力になることが出来る。
そのための超能力だと、信じているから。



麻宮アテナは、気づかない。



登り始めた太陽を眺めながら、大男は静かに武器を構える。
殺し合い、幾多もの人間のうち一人しか生き残ることを許されない空間。
身の振る舞いを悩む要素など微塵もなかった。
単純明快、他の人間を全員殺して回ればいいのだ。
そうすれば、生き残れる。
くぐり抜けた戦場の日々と、なんら大差はない。
目に入った人間の頭を打ち抜き、胴を斬り裂き、その命を奪っていく。
あの少女の言うとおり、この場にいるのは全て敵なのだから。
いつもやってきた、単純なこと。
幸運にも自分の手にはそれを手助けする道具がある。
遠くに映れば銃弾を放ち、近くに寄れば剣を振るう。
そして、全ての命を奪う。
たった、それだけのことである。
そそくさと覚悟を決め、彼は殺戮へと動き出す。
早速感じ取ったのは殺気も何もない一人の人間の気配。
戦場で気ままにふらふらと歩いている人間は、彼にとってはただの的にすぎない。
まずは一人、確実に仕留める。
物陰から勢いよく飛び出し、感じ取った気配の方へと銃を向け、その引き金を力強く。
「あ……」
引けなかった。
驚きの声が、ぽっかりと開いた口から漏れる。
感じ取った気配の正体、銃を突きつけた先に立っていたのは。
金髪ロングの、一人の少女だった。

彼が、生き残ることを優先する理由。
それは、愛する家族の元に帰るため。
軍人という危険な職業の自分を、いつも笑顔で優しく迎えてくれる妻。
誰に似たのか豪快に振る舞いながらも気配りの出来る息子。
そして、純粋で疑うことを知らない元気いっぱいの娘。
自分を幸せにしてくれる家族が居る、だからどんな窮地からでも家族の元へ帰らなければいけない。
瀕死の傷を負おうが、シャチに飲まれようが、どんなことがあっても、だ。
この戦場でも、それは同じ事。
だが家族を愛する彼だからこそ、この状況は死を選ぶよりも辛い。
自分の娘とほぼ同じ姿の少女が、目の前に立っているのだから。
「おじさん、どうしたの? 大丈夫?」
銃をこちらに向けたまま動かない軍人に対し、少女は質問を投げかける。
その一言は、彼の娘ではないと言うことを示している。
そう、この場にいるという事はこの少女も彼にとっては敵なのだ。
今もどこかで暮らしている、彼の家族とは違う、赤の他人である。
だから、生き残るにはここで殺さなければいけない。
持っているマシンガンの引き金を引く、たったそれだけで事は終わるというのに。
彼はとうとう引き金を引けずに、その場に崩れ落ちてしまったのだ。
初めての、敗北。
戦場において、どのような人間であっても平等に力を振るってきた「鬼軍曹」の、初めての心の敗北であった。
「おじさん、ダニー知らない?」
そんなことも露知らず、彼女は軍人に問いかけていく。
「ダニーというのは?」
「あたしの弟だよ」
「……そうか、君も家族を探しているのか」
邪悪な考えが横切る。
この少女を打ち抜けないのならば、どの道自分が生き残ることなど出来ない。
ならば、この少女に協力する途中で何らかの事故で少女が死んでしまえば。
この場においての唯一の支えが取れ、生き残る道へと歩むことが出来る。
弟を捜しているという餌をうまく使い、危険な場所へと飛び込ませれば。
この殺し合いの場ならば、チャンスは幾らでもある。
「私も、手伝わせてくれないか」
邪悪な考えを含んだ提案を、目の前の少女は飲んだ。
娘とほぼ同じ顔の少女は差し出された手を取り、共に歩き始める。
願わくば、少女がどこかで死を迎えることに期待して。
自分が生き残って家族の元にたどり着くには、今はそれしかないのだから。
様々な思惑を乗せた足が、ゆっくりと進み出した。



アレン=オニールは、気づかない。



気づくべきだったのだ。
麻宮アテナが遭遇した少年は、無防備だったのではなく、「余裕」と「殺意」を醸し出していたことに。
気づくべきだったのだ。
アレン=オニールが少女に銃を向けたとき、少女が口元を歪めて笑っていたことに。
二人とも、気づくべきだったのだ。
出くわした少年少女こそが、この地において群を抜いた邪悪であるという事に。



ああ、なんて素晴らしい日なのだろう。

今日の「戦争ごっこ」はひと味違う。

数え切れないほどの人が牙をむき、互いに殺し合う。

いつもみたいに一人や二人殺して終わりではなく、唯一の一人になるまでみんなを殺して回ることが出来る。

こんなに楽しい出来事はない。

来る人来る人に銃を打ち込み、ナイフで斬り裂き、その声を聞く。

こんなに楽しい出来事はないのに。

どうして、君はいないのだろう。

こんなに楽しい気持ちを、共に分かち合いたいのに。

一人で楽しんでも、何も楽しくないと言うのに。

どうして、君はいないのだろう。

でも、なんとなくわかる。

この場所のどこかに君が居ることは。

だから、それまではお預け。

楽しいパーティーのクラッカーを鳴らすのは、主役の二人が揃ってから。

それまでは七面鳥の丸焼きも、大皿のスパゲッティも、大きなプディングも、ぜーんぶお預け。

一人より、二人で楽しみたいから。

今は、我慢する。

いつか、この場所のどこかで出会うことが出来たら。

そのときは、精一杯楽しみましょう。

バトル・ロワイアルという、最高に楽しいパーティーを。

最高のプレゼントを、一緒に持っていくから。

【H-5/道/1日目・朝】
【麻宮アテナ@THE KING OF FIGHTERS】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品(1〜3)
[思考・状況]
基本:超能力で誰かの役に立つ。
1:ダニーを姉に会わせる

【ダニー@アウトフォクシーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品(1〜3)
[思考・状況]
基本:デミと合流するまで我慢

【B-5/鎌石村消防署/1日目・朝】
【アレン=オニール@メタルスラッグ】
[状態]:健康
[装備]:DSA SA58(30/30 予備マガジン2)、方頭大刀
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜1)
[思考・状況]
基本:家族の元に戻るため皆殺し
1:デミと行動し、死んでくれるのを待つ

【デミ@アウトフォクシーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品(1〜3)
[思考・状況]
基本:ダニーと合流するまで我慢
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016:夢を止めないでいて
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018:ERROR
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033:アイドルをプロデュース
ダニー
アレン=オニール
039:おさるのカーニバル
デミ

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