俺ロワ・トキワ荘にて行われている二次創作リレー小説企画の一つ。Perfect World Battle RoyaleのまとめWikiです。

風が、舞う。
靡くのは少し白が混じった髪と、体を包み込む黒きマント。
青年の目はどこかを見つめているようで、どこも見つめていないように見える。
「……イゾルデ」
一人の名を呟く。
ここにはいない、自分の帰りを待つ人の名を。
「待っていてくれ」
真実は分からない。
ひょっとすれば、もう自分のことを待っていないのかもしれない。
だが、そんなことは関係ない。
彼女が生きているのならば、それでいい。
彼女が生きていないのならば、その時に取る手段はいくらでもある。
何がどうあれ、今の自分に確実に言えることは。
こんな場所で立ち止まっている場合ではない、ということ。
ゆっくりと視線を前へ落とし、視界を切り替えていく彼を引き留める声がする。
「お主……複製體か?」
声をかけてきたのは着物に身を包み、一本の刀を腰に据えた老人。
その瞳はじっと青年を見つめ、離そうとしない。
「あの忌々しい技術とは違う、だが儂の身に伝わるこの感覚は間違いなく作られし命……」
「言ってる意味が分からないな」
そう、老人の言うとおり。
青年はある組織、ネスツの手によって生み出されたクローン生命体である。
しかし、一方で老人の言う事と違うこともある。
老人の知っているクローン技術と、彼が生み出されたクローン技術は似て非なる物ということである。
感じ取った違和感の正体は、生み出された経緯と手段によるものだ。
だが、クローンはクローン。
老人にとってこの上なく忌々しい記憶。
「お主に恨みはない、じゃが複製體と知っては生かしておく訳にはいかぬ」
一歩引き刀に手を添え、青年を今一度睨み直す。
殺気を感じ取った青年も、マントを投げ捨てて臨戦体制に入る。
「斬る……!」
開戦の合図は、その一言。
足元めがけて振り抜かれた刀に対し、青年は純白のグローブで受け止める。
刀が止められたことを認識した老人は、素早く刀を仕舞いその場から離れる。

「こっちじゃ!」
瞬間移動ともとれる転移術。
電光被服により己の能力を一時的に上昇させることで、超人的な速度で移動しているのだ。
青年はその老人の姿を、じっと見つめていた。
続いて襲いかかる抜刀攻撃。
今度は正面に踏み込みながら縦に一気に振りおろそうとする。
防ぎきれない、そう判断した青年がついに動く。
「斬り裂け」
白きグローブを一瞬着脱し、赤黒い炎を爪のように放つ。
攻めに意識を注いでいた老人は、その炎を正面から浴びてしまう。
電光機関とはまた違う、全く謎の技術。
見たこともない色の炎に老人は、少し判断が鈍る。
その一瞬が命取り。
素早く走り込み、刀を振り抜けない至近距離へと近づいていく。
「こっちじゃ!!」
その距離に踏み込まれてはいけないと、再び電光被服を起動させる。
だが、それこそが青年の狙い。
「絶影」
小さな一言とともに、振り抜かれる腕。
そして老人の目の前で巻き起こる爆発。
グローブの着脱を繰り返しながら、爆ぜる炎を瞬時に飛ばしていく。
遠距離に対応した彼の技が、老人の身を焼いていく。
「闇と散れ」
最後に腕を大きく振り抜き、より大きな爆発が起きる。
耐えきれずに、老人が大きく吹き飛んでしまう。
すんでの所で受け身をとり、体勢を立て直そうとした時。
目の前で輝いていたのは、白いドリル状の物だった。

グローブに付いた血を拭いながら、ネームレスは歩き出す。
「裏切り者を殺せ」
命じられた司令を果たすため、彼は立ち止まっているわけには行かない。
だというのに、殺し合いなどと言う無駄な事柄に時間を割いている事などできるはずもない。
ならば、この場所から抜け出す最短の方法を取るのみ。
この場にいる人間をすべて殺害し、それから標的の裏切り者を殺す。
もしこの場に討つべき相手がいるのならば、願ってもない幸運なのだが。
ともかく、今すべき事は「一刻も早い任務への復帰」である。
愛する人の為に、成すべき事を成す。
いつかくる、幸せの時のために。

【不律@エヌアイン完全世界 死亡】

【I-10/琴ヶ崎灯台付近/1日目・朝】
【ネームレス@THE KING OF FIGHTERS】
[状態]:健康
[装備]:カスタムグローブ"イゾルデ"
[道具]:基本支給品、不明支給品(1〜5)
[思考・状況]
基本:一刻も早い任務への復帰のために皆殺し
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