資料
抜粋 大野幸則『うたごえ喫茶ともしびの歴史――歌いつづけた65年間』
政経68年入学の大野幸則君は今年（2019年）4月6日に亡くなった。癌との闘病の果てにであった。そのほぼ二ヶ月後、唯学書房より上・下二巻の大部な『うたごえ喫茶ともしびの歴史――歌いつづけた65年間』が出版された。彼は、この「早稲田の杜の記憶68」プロジェクトに参加する多くの友人が知っているように、学生の時以来「うたごえ運動」に挺身し、「うたごえ喫茶ともしび」の店長を長く務め、1996年より「株式会社ともしび」の代表取締役に就き、また同時期に「日本児童・青少年演劇劇団協同組合」の代表理事や「アジテジ（国際児童青少年舞台芸術協会）」日本センター副会長などを務めた。
同書のあとがきにこうある。
貴重な資料として紹介したい。
あとがき
初めて吉祥寺「灯」に足を踏み入れたときのことが、昨日のことのように浮かんできます。
弓道部の運動一筋ですごした付属高校から進学した大学で中国研究会に入部したことは本文にも書きました。そのサークルの先輩に誘われて行った歌声喫茶は、私にとって衝撃的で想像を絶した世界でした。こんなに楽しそうに、そして一途に歌とともに生きている人がいることに驚き、あこがれました。
それから五一年間、私はともしびとともに半世紀を超えて歩んできたことになります。今年は音楽文化集団ともしびが結成されて５０年を迎え、私もほぼ同じ時の流れの中に身を置いてきました。
大変なことは多々ありました。それでも続けてこられたのは、「みんなでつくっていく」というともしびが楽しかったし、自分の肌にあっていたからだと、振り返ってみて思います。
演奏家や歌手や司会が一方的に音楽をお客さまに届けるコンサートとはちがって、うたごえ喫茶という場は、お客さまと、一緒に音楽をつくっていく場です。では、どういう音楽をつくっていくのか。とりわけ団結成以降、私たちは「ともしびらしい音楽」を追求してきました。カラオケがはやり、危機的な困難の時期をたんとか乗り越えることができたのも、「ともしびらしさ」を追求することにこだわり、逆境を逆手にとって力に変えてきたからです。
一九七〇年代の初め、「ひとりぼっちの青年をなくそう！」というスローガンをかかげ、それが「あなたの街にもうたごえ喫茶を！」というスローガンに発展していきました。その後の困難な特期に、「うたごえ喫茶が街へ出て」新しい多様な展開を始め、形を変えていろんな地域で広がっていきました。うたごえ喫茶ともしび六五周年、音楽文化集団ともしび結成五〇周年のいま、「あなたの街にもうたごえ喫茶を！」というスローガンが実現できたのではないかと思っています。そして、歌があふれる世界で、ともに生き合える人と人との関係が「共震」して広がっていくこと、一緒に歌い合う、生き合う文化が全国に広がっていくことを夢見ています。
これまでうたごえ喫茶ともしびを支えていただいた多くのお客さま、公演活動を支えてくださった学校の先生方や関係者の方々、創造にご協力いただいた脚本家や作曲家や作詞家の先生方、困難な時期にご支援をいただいた方々、児童青少年舞台芸術団体の方々、各地でうたごえ喫茶を開催されている方々、そのほか大勢の方々に心より感謝いたします。そして、これからもいっそうのご支援をお願い申し上げます。
本書は、「月刊ともしび」で二〇〇三年一月号から二〇一二年四月号まで毎月連載した「うたごえ喫茶の五〇年（ともしびの歴史）」をもとに、できるだけ編年的な記述になるよう大幅に構成を変え、加筆・修正・削除を行い、さらにその後の一五年間（二〇〇五年〜現在）を書き下ろしたものです。
本書刊行にあたっては、多くの方々のお世話になりました。連載時、本書執筆時に、多くの方々から資料を提供していただいたり、取材へのご協力をいただきました。また、各地の歌声喫茶を運営されている方々などからご寄稿をいただきました。ひろせめぐみさん、ＣRファクトリーさん、ベイビー・ブーのユースケさんには、これからの歌声喫茶について示唆に冨む文章をお寄せいただきました。本村秀三さんのご支援がなければ、このようなかたちで出版することができませんでした。斎藤博さんには原稿を整理していただきました。
うたごえ喫茶ともしび六五年・音楽文化集団ともしび五〇年
音楽文化と人間社会の有り様を求め続けた年月でした。
二〇一九年四月六日午後一時三九分
なおこの「あとがき」には注が添えられており、最後の「二〇一九年四月六日午後一時三九分」との記載は、「あとがきの最終原稿」が「著者より編集者へメールで送られてきた」ときの「日時」を示すとある。大野君が亡くなったのは同日だから、彼は自分の体調の変容から死を予感し、この時刻に急遽同稿を編集者へメールしたと思われる。
いつか、誰かが、この大野君の大著についての書評を寄せてくれることを期待しつつ、とりあえず我々の六八年の記憶にまつわる箇所の幾つかだけを抜き出し、ここに紹介しておきたい。また時代の趨勢の大変化のなかでうたごえ運動ならびに音楽文化集団ともしびの活動が大困難に逢着し、それをどう乗り越えるかという大問題に直面した時、彼がどのような想いに立ったかを鮮烈に伝える数ページを、これも抜き書きして掲げておきたい。（編纂委員会）
I. 同書下巻 第�孤堯峅∪垢謀験�するともしびの音楽創作活動（一九八〇年代後半）・「『平和』とうたごえ喫茶」章・「ベトナムへ想いを寄せて」節の「ベトナム反戦運動」から
ベトナム反戦運動
時代のフォークソング
II. 同書下巻・第�紘堯峇躓，�らの再構築」（一九九〇年代〜二〇〇四年頃）・「ともしびは、どうやって苦境から生きかえったか」より
注（編纂委員会）：同書によれば、一九九〇年代に音楽文化集団ともしびは大きな危機にぶつかる。大阪ともしび店が一九九一年に閉店をやむなくされる。一九七〇年代半ば以降、うたごえ喫茶にくる客数は減少を続け、閉店が相続ぎ、累積赤字は一九八九年には一億に迫るほどに増大した。一九九二年にともしび店を新宿店だけにするという「再構築の方針」が打ち出され、この思い切った経営規模の縮小によってともしびの経営は赤字構造を脱却することができた。しかし客の減少は続き、どう再構築をはかるかは依然として大問題であり続けた。同書125頁にこうある。「この時代がともしびの存立をかけた厳しい時代てもあったこと、そこを乗り越えてきた力の必然的ともいえる成長を感じます。そこからともしびが踏みとどまり、どうやって生き返ったのかについて、ここて少し詳しく触れてみたいと思います」と。
決断
実行
原点に立つ
集団の底力
組織的な民主的文化運動
残ってしまった私……
抜粋 大野幸則『うたごえ喫茶ともしびの歴史――歌いつづけた65年間』 
政経68年入学の大野幸則君は今年（2019年）4月6日に亡くなった。癌との闘病の果てにであった。そのほぼ二ヶ月後、唯学書房より上・下二巻の大部な『うたごえ喫茶ともしびの歴史――歌いつづけた65年間』が出版された。彼は、この「早稲田の杜の記憶68」プロジェクトに参加する多くの友人が知っているように、学生の時以来「うたごえ運動」に挺身し、「うたごえ喫茶ともしび」の店長を長く務め、1996年より「株式会社ともしび」の代表取締役に就き、また同時期に「日本児童・青少年演劇劇団協同組合」の代表理事や「アジテジ（国際児童青少年舞台芸術協会）」日本センター副会長などを務めた。
同書のあとがきにこうある。
貴重な資料として紹介したい。
あとがき
初めて吉祥寺「灯」に足を踏み入れたときのことが、昨日のことのように浮かんできます。
弓道部の運動一筋ですごした付属高校から進学した大学で中国研究会に入部したことは本文にも書きました。そのサークルの先輩に誘われて行った歌声喫茶は、私にとって衝撃的で想像を絶した世界でした。こんなに楽しそうに、そして一途に歌とともに生きている人がいることに驚き、あこがれました。
それから五一年間、私はともしびとともに半世紀を超えて歩んできたことになります。今年は音楽文化集団ともしびが結成されて５０年を迎え、私もほぼ同じ時の流れの中に身を置いてきました。
大変なことは多々ありました。それでも続けてこられたのは、「みんなでつくっていく」というともしびが楽しかったし、自分の肌にあっていたからだと、振り返ってみて思います。
演奏家や歌手や司会が一方的に音楽をお客さまに届けるコンサートとはちがって、うたごえ喫茶という場は、お客さまと、一緒に音楽をつくっていく場です。では、どういう音楽をつくっていくのか。とりわけ団結成以降、私たちは「ともしびらしい音楽」を追求してきました。カラオケがはやり、危機的な困難の時期をたんとか乗り越えることができたのも、「ともしびらしさ」を追求することにこだわり、逆境を逆手にとって力に変えてきたからです。
一九七〇年代の初め、「ひとりぼっちの青年をなくそう！」というスローガンをかかげ、それが「あなたの街にもうたごえ喫茶を！」というスローガンに発展していきました。その後の困難な特期に、「うたごえ喫茶が街へ出て」新しい多様な展開を始め、形を変えていろんな地域で広がっていきました。うたごえ喫茶ともしび六五周年、音楽文化集団ともしび結成五〇周年のいま、「あなたの街にもうたごえ喫茶を！」というスローガンが実現できたのではないかと思っています。そして、歌があふれる世界で、ともに生き合える人と人との関係が「共震」して広がっていくこと、一緒に歌い合う、生き合う文化が全国に広がっていくことを夢見ています。
これまでうたごえ喫茶ともしびを支えていただいた多くのお客さま、公演活動を支えてくださった学校の先生方や関係者の方々、創造にご協力いただいた脚本家や作曲家や作詞家の先生方、困難な時期にご支援をいただいた方々、児童青少年舞台芸術団体の方々、各地でうたごえ喫茶を開催されている方々、そのほか大勢の方々に心より感謝いたします。そして、これからもいっそうのご支援をお願い申し上げます。
本書は、「月刊ともしび」で二〇〇三年一月号から二〇一二年四月号まで毎月連載した「うたごえ喫茶の五〇年（ともしびの歴史）」をもとに、できるだけ編年的な記述になるよう大幅に構成を変え、加筆・修正・削除を行い、さらにその後の一五年間（二〇〇五年〜現在）を書き下ろしたものです。
本書刊行にあたっては、多くの方々のお世話になりました。連載時、本書執筆時に、多くの方々から資料を提供していただいたり、取材へのご協力をいただきました。また、各地の歌声喫茶を運営されている方々などからご寄稿をいただきました。ひろせめぐみさん、ＣRファクトリーさん、ベイビー・ブーのユースケさんには、これからの歌声喫茶について示唆に冨む文章をお寄せいただきました。本村秀三さんのご支援がなければ、このようなかたちで出版することができませんでした。斎藤博さんには原稿を整理していただきました。
うたごえ喫茶ともしび六五年・音楽文化集団ともしび五〇年
音楽文化と人間社会の有り様を求め続けた年月でした。
二〇一九年四月六日午後一時三九分
なおこの「あとがき」には注が添えられており、最後の「二〇一九年四月六日午後一時三九分」との記載は、「あとがきの最終原稿」が「著者より編集者へメールで送られてきた」ときの「日時」を示すとある。大野君が亡くなったのは同日だから、彼は自分の体調の変容から死を予感し、この時刻に急遽同稿を編集者へメールしたと思われる。
いつか、誰かが、この大野君の大著についての書評を寄せてくれることを期待しつつ、とりあえず我々の六八年の記憶にまつわる箇所の幾つかだけを抜き出し、ここに紹介しておきたい。また時代の趨勢の大変化のなかでうたごえ運動ならびに音楽文化集団ともしびの活動が大困難に逢着し、それをどう乗り越えるかという大問題に直面した時、彼がどのような想いに立ったかを鮮烈に伝える数ページを、これも抜き書きして掲げておきたい。（編纂委員会）
I. 同書下巻 第�孤堯峅∪垢謀験�するともしびの音楽創作活動（一九八〇年代後半）・「『平和』とうたごえ喫茶」章・「ベトナムへ想いを寄せて」節の「ベトナム反戦運動」から
ベトナム反戦運動
うたごえ喫茶で歌われる歌も大きく変化してきました。世界的に広がるベトナム反戦運動と学生たちの運動、そしてアメリカでは公民権運動が合わさって広がる中、歌い広められた歌たちが「フォークソング」「黒人霊歌」としてうたごえ喫茶にも加わってきました。
「花はどこへ行った」は、一九五五年、ピート・シーガーが作詞作曲しましたが、このころはまだ反戦歌としてはうたわれていなかったようです。一九六二年、アメリカがベトナム戦争まっただ中であった時期に、キングストン・トリオによって同曲はカヴァーされ、大ヒットとなり、また同年、ピーター、ポール＆マリーによってもカヴァーされ、これらも大ヒットとなりました。「勝利を我らに」はジョーンーバエズが歌い、一九六〇年代から続いた公民権運勤と反戦活動へ大きな影響を及ぼしました。「風に吹かれて」（旧版ともしびCD『うたの世界』所収）はボブ・ディラン（一九六二年）、「平和に生きる権利」はチリでビクトル・ハラ（一九七一年）によって作られ、歌われ、世界中に広まりました。
うたごえ喫茶では「おいらの空は鉄板だ」や「お父帰れや」でなじみのあるすずききよしさんが「母の願い」を歌い、「私の愛した街」の横井久美子さんが、ベトナム戦争で損壊し、日本で陸揚げされ一般道を通って米車基地で修理しようとした戦車を、橋などの重量制限を楯に通さなかつた日本での闘いについて、「戦車は動かない」として歌いました。店では模造紙などに歌詞を書き、ステージにつるしてこれを（これを「つるし」といいます）新しい歌をうたったものです。谷川俊太郎の作詞、武満徹の作曲による「死んだ男の残したものは」は、六〇年安保闘争時に作られ、ベトナム反戦運動の中で広がっていきました。
新宿駅西口広場では、一九六八年から六九年にかけてフォークゲリラ、反戦フォーク集会が頻繁にもたれました。「死んだ男の残したものは」「友よ」「勝利を我らに」等が歌われていました。その少し前、一九六八年の春は同じ広場で若者たちの議論の輪があちこちに幾重にも生まれました。安保のこと、べトナム戦争のこと、社会の変革について、意見の違うものたちが真摯に自然発生的に議論の輪を増やしていきました。
通りがかった私もその輪に入り議論を聞いていました。中に一人孤立しがちな学生が、それでも理路整然と応じ反論している姿に惹かれました。胸のバッジが入学予定の学校だったことから声をかけ、入学したときの推薦サークルを紹介してもらいました。彼の推薦は中国研究会でした。この方との出会いが人生の分かれ道をとなるとは、そのときは思いもしませんでした。何せ高校時代は弓道部で、大学でも体育会の弓道部に入部することになっていました。大学から卒業する先輩からはすでに伝統ある角帽をゆずられていました。まだ学生運動も、暴力がエスカレートする前の、一瞬の輝かしいときだったように思えます。
「花はどこへ行った」は、一九五五年、ピート・シーガーが作詞作曲しましたが、このころはまだ反戦歌としてはうたわれていなかったようです。一九六二年、アメリカがベトナム戦争まっただ中であった時期に、キングストン・トリオによって同曲はカヴァーされ、大ヒットとなり、また同年、ピーター、ポール＆マリーによってもカヴァーされ、これらも大ヒットとなりました。「勝利を我らに」はジョーンーバエズが歌い、一九六〇年代から続いた公民権運勤と反戦活動へ大きな影響を及ぼしました。「風に吹かれて」（旧版ともしびCD『うたの世界』所収）はボブ・ディラン（一九六二年）、「平和に生きる権利」はチリでビクトル・ハラ（一九七一年）によって作られ、歌われ、世界中に広まりました。
うたごえ喫茶では「おいらの空は鉄板だ」や「お父帰れや」でなじみのあるすずききよしさんが「母の願い」を歌い、「私の愛した街」の横井久美子さんが、ベトナム戦争で損壊し、日本で陸揚げされ一般道を通って米車基地で修理しようとした戦車を、橋などの重量制限を楯に通さなかつた日本での闘いについて、「戦車は動かない」として歌いました。店では模造紙などに歌詞を書き、ステージにつるしてこれを（これを「つるし」といいます）新しい歌をうたったものです。谷川俊太郎の作詞、武満徹の作曲による「死んだ男の残したものは」は、六〇年安保闘争時に作られ、ベトナム反戦運動の中で広がっていきました。
新宿駅西口広場では、一九六八年から六九年にかけてフォークゲリラ、反戦フォーク集会が頻繁にもたれました。「死んだ男の残したものは」「友よ」「勝利を我らに」等が歌われていました。その少し前、一九六八年の春は同じ広場で若者たちの議論の輪があちこちに幾重にも生まれました。安保のこと、べトナム戦争のこと、社会の変革について、意見の違うものたちが真摯に自然発生的に議論の輪を増やしていきました。
通りがかった私もその輪に入り議論を聞いていました。中に一人孤立しがちな学生が、それでも理路整然と応じ反論している姿に惹かれました。胸のバッジが入学予定の学校だったことから声をかけ、入学したときの推薦サークルを紹介してもらいました。彼の推薦は中国研究会でした。この方との出会いが人生の分かれ道をとなるとは、そのときは思いもしませんでした。何せ高校時代は弓道部で、大学でも体育会の弓道部に入部することになっていました。大学から卒業する先輩からはすでに伝統ある角帽をゆずられていました。まだ学生運動も、暴力がエスカレートする前の、一瞬の輝かしいときだったように思えます。
時代のフォークソング
「友よ」(詞・曲、岡林信康）は正にこの時代の歌でした。うたごえ喫茶では、この歌は未来を見据えた希望に満ちた歌として歌っていました。岡林信康信奉者は「その歌い方は明るすぎる。ちがう！」と批判しました。確かに彼らの歌う「友よ」は、どこか絶望感が漂い、「ともよ！」と歌いかけながらそこに届かない自分の心を悲しく歌っているように、私には聞こえました。学生運動の一部に「挫折」が生まれ、「社会に屈服」し、学校に戻り就職を考えるクラスメートが目立ち始めました。「『いちご白書』をもう一度」(詞・曲、荒井〔松任谷〕由美）はそんな学生の心を見事に歌った名曲だと思います。それは単に挫折とノスタルジーではなく、あのともに感動した映画『いちご白書』をもう一度と、心の奥底に呼びかけているからこそ名曲といえるのかもしれません。
『いちご白書』は一九七〇年第23回カンヌ映画祭審査員賞を受賞。アメリカの学生たちの学校の腐敗に怒る闘いが、警察の力の前につぶされていく。私には映画『追憶』が重なるように思い出されます。バーブル・ストライサンドの『追憶』のラストシーン、学校(だったか）の前で誰も受け取らないチラシをまいているバーブル・ストライサンドを離れたアングルから撮って、『追憶』のテーマソングが流れていく。思い出すだけでも感傷的になってしまいます。
フォークソングは「反戦フォーク」から「生活派フォーク」「四畳半フォーク」と呼ばれた時代を超えて、｢フォークソング」として若者たちの心をつかみ名曲がつぎつぎと生まれるようになります。
『いちご白書』は一九七〇年第23回カンヌ映画祭審査員賞を受賞。アメリカの学生たちの学校の腐敗に怒る闘いが、警察の力の前につぶされていく。私には映画『追憶』が重なるように思い出されます。バーブル・ストライサンドの『追憶』のラストシーン、学校(だったか）の前で誰も受け取らないチラシをまいているバーブル・ストライサンドを離れたアングルから撮って、『追憶』のテーマソングが流れていく。思い出すだけでも感傷的になってしまいます。
フォークソングは「反戦フォーク」から「生活派フォーク」「四畳半フォーク」と呼ばれた時代を超えて、｢フォークソング」として若者たちの心をつかみ名曲がつぎつぎと生まれるようになります。
II. 同書下巻・第�紘堯峇躓，�らの再構築」（一九九〇年代〜二〇〇四年頃）・「ともしびは、どうやって苦境から生きかえったか」より
注（編纂委員会）：同書によれば、一九九〇年代に音楽文化集団ともしびは大きな危機にぶつかる。大阪ともしび店が一九九一年に閉店をやむなくされる。一九七〇年代半ば以降、うたごえ喫茶にくる客数は減少を続け、閉店が相続ぎ、累積赤字は一九八九年には一億に迫るほどに増大した。一九九二年にともしび店を新宿店だけにするという「再構築の方針」が打ち出され、この思い切った経営規模の縮小によってともしびの経営は赤字構造を脱却することができた。しかし客の減少は続き、どう再構築をはかるかは依然として大問題であり続けた。同書125頁にこうある。「この時代がともしびの存立をかけた厳しい時代てもあったこと、そこを乗り越えてきた力の必然的ともいえる成長を感じます。そこからともしびが踏みとどまり、どうやって生き返ったのかについて、ここて少し詳しく触れてみたいと思います」と。
決断
第一に、民主主義的な論議を尽くし、タイムリーな決断をしたということです。それこそ様々な意見や観測が出されました。それぞれの地域にはそれまでに築きあげてきたお客さんとの結びつきというものがありました。その方からの信頼を裏切ることにならないのか。続けたい、続けられるのでは、という希望的な心情が一部では流れていました。総会が四月にあるからそこで判断すべきという意見も出されていました。大事なことは総会で決めるべきという ｢正論」が反対の気分を代弁してもいました。しかし解決の対案がない論議は、問題を解決することにはならない、無為に赤字を累積させるだけにしかならないと、積み上げられた「再構築の方針」を総会を待たずに決断しました。
三〇年間掲げてきた「あなたの街にもうたごえ喫茶を！」の理想の旗印を守るためにも何とか続けたい。閉店はこれまでの努力・活動を無にするものとも思われ、苫渋の選択でありました。理想の旗印を一時下ろすことでもありました。しかしここで時期をのがさず決断できたことが、振り返ってみればとても大きなことでした。
三〇年間掲げてきた「あなたの街にもうたごえ喫茶を！」の理想の旗印を守るためにも何とか続けたい。閉店はこれまでの努力・活動を無にするものとも思われ、苫渋の選択でありました。理想の旗印を一時下ろすことでもありました。しかしここで時期をのがさず決断できたことが、振り返ってみればとても大きなことでした。
実行
決断の次に大事なことが実行でした。地域の関係では「西戸山うたごえ」等、地域での活動にともしびの活動がつながっていました。「三鷹一日うたごえ」、「小岩一日うたごえ」と、それは確実につながり広がっていきました。
うたごえ喫茶部門の目標は、一店に活働を集約することでうたごえ喫茶の質を上げ、うたごえ喫茶を再発信することでした。といいますのも、数多くあったうたごえ喫茶の盛衰の歴史の中で、「うたごえ喫茶ともしび」として音楽文化を深め、高め続けてきたことが私たちともしびの歴史の特徴の一つでもあり、誇りでもありました。そのことに対して、音楽文化集団ともしび、通称「団」としての活動が大きな力を発揮してきたことは本書でも述べてきました。そうしてきたことが、ともしびがなぜ生き残ったかという疑問への核心的答の一つでもありました。
うたごえ喫茶部門の目標は、一店に活働を集約することでうたごえ喫茶の質を上げ、うたごえ喫茶を再発信することでした。といいますのも、数多くあったうたごえ喫茶の盛衰の歴史の中で、「うたごえ喫茶ともしび」として音楽文化を深め、高め続けてきたことが私たちともしびの歴史の特徴の一つでもあり、誇りでもありました。そのことに対して、音楽文化集団ともしび、通称「団」としての活動が大きな力を発揮してきたことは本書でも述べてきました。そうしてきたことが、ともしびがなぜ生き残ったかという疑問への核心的答の一つでもありました。
原点に立つ
しかし、ともしびの音楽文化を追求するあまり、うたごえ喫荼の母胎の音楽文化運働という立脚点が薄れ始めるということが起こっていました。「お店はともしびの音楽の発信の場」という考えが強よまっていました。お客さんたちから不満の声が出されていました。「せっかく歌いにきているのに……」。「聞きたくもないコンサート。どうして？」等々。
うたごえ喫茶のお客さんが減っている現象は、社会的状況だからやむを得ないんだと手をこまねいているだけ。そんな私たち自身の姿勢も、お客さんが離れていく要因を作り出している。そういう事実に驚きました。
うたごえ喫茶ともしびは、確かにともしびが経営しています。ライブハウスではなく、うたごえ喫茶です。それらの声は、ともしびの発展の重要な要素として大事にされてきた。お客さんと一緒に作りあううたごえ喫茶という理念から隔たっているということの現われでした。ともしびのメンバーが、うたごえ喫茶という場で音楽活動をするだけでなく、それぞれが個性を持って目指すものコンサートという形で昇華させていくことは、一人ひとりの成長にとって、また豊かで完成度の高い音楽表現実現にとっても、とても大切なことてした。そのことで、明らかに、成長したメンバーも生まれてきました。しかし、お客さんの不満の増大とお客さんのうたごえ喫茶離れの現象を積極的に解決するには、私たち自身がうたごえ喫茶の原点に揺るぎなく立つことしかありませんてした。それは決して、どこにでもあるうたごえ喫茶、もしくはライブハウスの延長上を目指すのではなく、ともしびがリーダーシップを発揮するうたごえ喫茶の場を改めて作り出すということでした。
コンサートや構成ステージは営業外の時間に設定し、独白にお客さんを募り楽しんでいただく。そこは思いっきり作り出したいステージを作り、表現したい歌を生み出す努力を自らが行う場としてとらえていく。通常の営業時間は、ともしびらしさがあふれたうたごえ喫茶充満する「歌い合い生き合う」場とする。営業時間内のミニミニコンサートもあくまで休憩時間を使わせていただき、お客さんに楽しんでいただくものに。そのように、うたごえ喫茶ともしびの方向を徐々に整理し実施していきました。
うたごえ喫茶のお客さんが減っている現象は、社会的状況だからやむを得ないんだと手をこまねいているだけ。そんな私たち自身の姿勢も、お客さんが離れていく要因を作り出している。そういう事実に驚きました。
うたごえ喫茶ともしびは、確かにともしびが経営しています。ライブハウスではなく、うたごえ喫茶です。それらの声は、ともしびの発展の重要な要素として大事にされてきた。お客さんと一緒に作りあううたごえ喫茶という理念から隔たっているということの現われでした。ともしびのメンバーが、うたごえ喫茶という場で音楽活動をするだけでなく、それぞれが個性を持って目指すものコンサートという形で昇華させていくことは、一人ひとりの成長にとって、また豊かで完成度の高い音楽表現実現にとっても、とても大切なことてした。そのことで、明らかに、成長したメンバーも生まれてきました。しかし、お客さんの不満の増大とお客さんのうたごえ喫茶離れの現象を積極的に解決するには、私たち自身がうたごえ喫茶の原点に揺るぎなく立つことしかありませんてした。それは決して、どこにでもあるうたごえ喫茶、もしくはライブハウスの延長上を目指すのではなく、ともしびがリーダーシップを発揮するうたごえ喫茶の場を改めて作り出すということでした。
コンサートや構成ステージは営業外の時間に設定し、独白にお客さんを募り楽しんでいただく。そこは思いっきり作り出したいステージを作り、表現したい歌を生み出す努力を自らが行う場としてとらえていく。通常の営業時間は、ともしびらしさがあふれたうたごえ喫茶充満する「歌い合い生き合う」場とする。営業時間内のミニミニコンサートもあくまで休憩時間を使わせていただき、お客さんに楽しんでいただくものに。そのように、うたごえ喫茶ともしびの方向を徐々に整理し実施していきました。
集団の底力
「うたごえ喫茶ともしびの存続」をかけた「再構築の方針」の速やかな「決晰」と「実行」は、何はともあれうたごえ喫茶存続に決定的な役割を果たしました。それらの方策、すなわち一店に絞る、稽古場を移す等々という具体的なことを実現させていったのば、実は組織活動の改善にその底力があったということに思い当たります。
読者の皆さんはもうお気づきかと思われますが、「ともしび゛」はいくつかの顔を持って活動しています。それぞれが元気に活動しているのでとてもめまぐるしく、一見複雑なな動きをしているように見えます。見方によっては「とても優秀な司令塔が存在するのでは？」とお感じになるかもしれません。結綸から申しますと、ともしびの今の活動を実現させている力は、集団のダイナミズムとでも名づけることができるかもしれません。一人ひとりが自分の持てる力を発揮しつつ、集団的なエネルギーに転化さ活動し、生き生きとした組織活動を続けることがてきるようになってきたということです。その組織的文化運動の再生ともいえる再出発が始まったのが、「再構築の方針」が進められていったこの時期と重なるものでもありました。
誰かが指示しで動くのではなく、いろいろな活動が、それを担っているメンバーによって、いわば自立的に進められる状況が作り出されているのです。音楽文化集問ともしび四〇年の歴史の中で、民主主義的文化運動の組織運営上の困難が一九八〇年代の後半から現われてきますが、九〇年代に経営的には「再構築の方針」に組織丸ごとで取り組む中で、組織上に現われてきたこの困難に立ら向かい、徐々に回復しつつ新たな組織運動上の成果を生むことになります。その組織的なお話をしていきます。
こんなふうに組織について書くことすら、ちよっと恥ずかしいものがあります。それは集団としての人格の人間性とでもいいますか、個人として自分の内面を語るようなことにもなり、「心」の問題に立ち入らざるを得ないという面もあるからです。
読者の皆さんはもうお気づきかと思われますが、「ともしび゛」はいくつかの顔を持って活動しています。それぞれが元気に活動しているのでとてもめまぐるしく、一見複雑なな動きをしているように見えます。見方によっては「とても優秀な司令塔が存在するのでは？」とお感じになるかもしれません。結綸から申しますと、ともしびの今の活動を実現させている力は、集団のダイナミズムとでも名づけることができるかもしれません。一人ひとりが自分の持てる力を発揮しつつ、集団的なエネルギーに転化さ活動し、生き生きとした組織活動を続けることがてきるようになってきたということです。その組織的文化運動の再生ともいえる再出発が始まったのが、「再構築の方針」が進められていったこの時期と重なるものでもありました。
誰かが指示しで動くのではなく、いろいろな活動が、それを担っているメンバーによって、いわば自立的に進められる状況が作り出されているのです。音楽文化集問ともしび四〇年の歴史の中で、民主主義的文化運動の組織運営上の困難が一九八〇年代の後半から現われてきますが、九〇年代に経営的には「再構築の方針」に組織丸ごとで取り組む中で、組織上に現われてきたこの困難に立ら向かい、徐々に回復しつつ新たな組織運動上の成果を生むことになります。その組織的なお話をしていきます。
こんなふうに組織について書くことすら、ちよっと恥ずかしいものがあります。それは集団としての人格の人間性とでもいいますか、個人として自分の内面を語るようなことにもなり、「心」の問題に立ち入らざるを得ないという面もあるからです。
組織的な民主的文化運動
さて、私たちはともしびの運動を、ときによって 「組織的な民主的文化運動」というように語ってきました。その運動の根幹ともいえる組織運営上に矛盾が生じるようになってきたのは、団の結成まもない頃からでした。いつの間にかその傾向が頭をもたげ、民主的運動にかなり強万な個人指導、影響力を発揮する個人が生まれた時期がありました。前に少しだけ触れましたが、目指す音楽文化の基調を個人の感性・趣味に置くという誤った状況を生んでしまったのです。その傾向は音楽だけに留まらず、様々な活動場面に波及し始めかした。とても微妙な人間関係の機微のようなもの、信頼することと無批判に頂けきってしまうことといった関係が積み重なっていったのではと思い返しています。
「民主主義社会におけるリーダーシップとはどうあるべきか」、「民主主義と機械的な平等主義とは似て非なるものである」、「民主主義の根底に個人主義の確立がある」、「組織の中の個人は組織に埋没せざるを得ないのか。いや集団の中でこそ個性は発揮されるのだ」など、大げさとも思われる、複雑な永遠ともいえるテーマがそこには内在していました。機会があればその分析をする必暖があると思っていますか、ここでは民主的運動におけるリーダーシップについて触れて、現在のともしびの活力の源について話を進めていきます。
ともしびのかっての総会文書には、リーダーシップが昂じて強力的な指導が生まれ、組織が混乱したことが記されています。その後、改めて民主的運営に心がけるように努力し続けましたが、ことはそう簡単にはいかず、一九九〇年代に再びその問題と格闘することになります。
さて私自身、初めからちょっとした違和感を覚えだのは、専従に成り立ての頃のある会議で責任者がレジュメを出し会議を進めたところ、別の人間がそのレジュメを無視して会議進行を取り、ひっくり返してしまうという現場に居合わせたことでした。会議の内容としては、そのあとから提起された内容の方が確かに適切だったと思いましたが、「それでいいのか」という釈然としないものが残りました本当に些細なことでした。
会議運営ということだけではなく、その後のことですが、たとえば、公演などの契約高目標を設足し、そこに届くまでくそれはとても激しい点検と「指導」を行い、ときとして「失格者！」と、裁判官のように人を裁くようにもなりました。
学校公演の初めの頃、児童演劇界の中でともしびは全くの無名でした。担当の先生にお目にかかってともしびのオペレッタを勧めても、それこそ「どこの馬の骨？」とほどんど門前払いの毎日でした。本書の初期の頃にも触れましたが、固い決意をして専従になってぶつかる活動の壁、当時の言葉でいいますと専従が「日和る」（躊躇するとか怖気づくとかの軽い意味ですが）のが、この「オルグ」でした。歌声喫茶の中で活動している分には
、ある意味天職として生き生き活動し、お客さんにも支えられて、困難ではあっても希望に満ちた日々を送っていたわけです。ところが学校へオルグに出かけるとそこは全く違う世界で、「ともしび？」、「オペレッタ？」と、全く相手にされません。日頃優秀な専従も「門前払い」以前の、学校の門を入れないで学校の周りをうろつき、喫茶店で時間をつぶし、却ってくるということもありました。当然のごとく契約目標に達することができません、そもそも目標そのものが、こうしたいという願望を到達目標として設定するというものでした。
しかし、そのとんでもない目標に対して「点検」、「指導」はまさに苛烈でした。店から部署が異動して、劇団部長として全体のとしての契約高に責任を持つようになった時期は、私ですら胃潰瘍、円形脱毛症を経験することになります（独り言：なんとナイーブな青年だったんのだろう！）
そういう短所がありながら、なぜリーダーたり得たのかといえば、その人の圧倒的情熱、うたごえ喫茶やともしび、目本の未来といった夢や理想にがむしゃらしに向かっていく姿勢に多くの人が惹かれていたのではないか。かくいう私もそうでした。
ともしびの音楽を語るとき、指導するとき、熱い心が伝わってきます。短所は誰しも持っているもので、短所は長所とも裏腹で、一方では篤い信頼も生まれてきます。みんながリーダーとしてとして認めていくわけですが、いつの間にかそこに個人的な思惑や傲慢さが頭をもたげてきていたことに気がつくまで、そう時間はかかりませんでした。音楽的指導にそのことは特に現れてきました。意に添わない歌唱や発声を叱るというか否定してしまう、そうすると、たとえば専従全員が参加する専従練習という場がありましたが、その場を欠席するという消極的態度で抵抗する者も生まれました。結果的には評価するものとそうでないもの、次第にそれが自分に従うものとそうてないものという心が育ってきてしまったと思います。
組織的な文化運動に希望を持って参加してきた団員たちにとってとても理不尽なこと、ともしびの掲げる音楽文化に共感し、そうありたいと思っている人が、それを否定される、そんな悲しいこと苦しいことはなかったのてはと思います。入団したてのマミちゃんは今ではとても信じられないことてすが、声が薄ぺヘらい「ピアピア声の清水」といわれたりもしました。その指摘は全くそのように私も感じていました。まみちゃんはその批判を受け止め、おそらく人知れぬ努力を重ね続け、今日の「まみちゃん」になったのだと思います。
「民主主義社会におけるリーダーシップとはどうあるべきか」、「民主主義と機械的な平等主義とは似て非なるものである」、「民主主義の根底に個人主義の確立がある」、「組織の中の個人は組織に埋没せざるを得ないのか。いや集団の中でこそ個性は発揮されるのだ」など、大げさとも思われる、複雑な永遠ともいえるテーマがそこには内在していました。機会があればその分析をする必暖があると思っていますか、ここでは民主的運動におけるリーダーシップについて触れて、現在のともしびの活力の源について話を進めていきます。
ともしびのかっての総会文書には、リーダーシップが昂じて強力的な指導が生まれ、組織が混乱したことが記されています。その後、改めて民主的運営に心がけるように努力し続けましたが、ことはそう簡単にはいかず、一九九〇年代に再びその問題と格闘することになります。
さて私自身、初めからちょっとした違和感を覚えだのは、専従に成り立ての頃のある会議で責任者がレジュメを出し会議を進めたところ、別の人間がそのレジュメを無視して会議進行を取り、ひっくり返してしまうという現場に居合わせたことでした。会議の内容としては、そのあとから提起された内容の方が確かに適切だったと思いましたが、「それでいいのか」という釈然としないものが残りました本当に些細なことでした。
会議運営ということだけではなく、その後のことですが、たとえば、公演などの契約高目標を設足し、そこに届くまでくそれはとても激しい点検と「指導」を行い、ときとして「失格者！」と、裁判官のように人を裁くようにもなりました。
学校公演の初めの頃、児童演劇界の中でともしびは全くの無名でした。担当の先生にお目にかかってともしびのオペレッタを勧めても、それこそ「どこの馬の骨？」とほどんど門前払いの毎日でした。本書の初期の頃にも触れましたが、固い決意をして専従になってぶつかる活動の壁、当時の言葉でいいますと専従が「日和る」（躊躇するとか怖気づくとかの軽い意味ですが）のが、この「オルグ」でした。歌声喫茶の中で活動している分には
、ある意味天職として生き生き活動し、お客さんにも支えられて、困難ではあっても希望に満ちた日々を送っていたわけです。ところが学校へオルグに出かけるとそこは全く違う世界で、「ともしび？」、「オペレッタ？」と、全く相手にされません。日頃優秀な専従も「門前払い」以前の、学校の門を入れないで学校の周りをうろつき、喫茶店で時間をつぶし、却ってくるということもありました。当然のごとく契約目標に達することができません、そもそも目標そのものが、こうしたいという願望を到達目標として設定するというものでした。
しかし、そのとんでもない目標に対して「点検」、「指導」はまさに苛烈でした。店から部署が異動して、劇団部長として全体のとしての契約高に責任を持つようになった時期は、私ですら胃潰瘍、円形脱毛症を経験することになります（独り言：なんとナイーブな青年だったんのだろう！）
そういう短所がありながら、なぜリーダーたり得たのかといえば、その人の圧倒的情熱、うたごえ喫茶やともしび、目本の未来といった夢や理想にがむしゃらしに向かっていく姿勢に多くの人が惹かれていたのではないか。かくいう私もそうでした。
ともしびの音楽を語るとき、指導するとき、熱い心が伝わってきます。短所は誰しも持っているもので、短所は長所とも裏腹で、一方では篤い信頼も生まれてきます。みんながリーダーとしてとして認めていくわけですが、いつの間にかそこに個人的な思惑や傲慢さが頭をもたげてきていたことに気がつくまで、そう時間はかかりませんでした。音楽的指導にそのことは特に現れてきました。意に添わない歌唱や発声を叱るというか否定してしまう、そうすると、たとえば専従全員が参加する専従練習という場がありましたが、その場を欠席するという消極的態度で抵抗する者も生まれました。結果的には評価するものとそうでないもの、次第にそれが自分に従うものとそうてないものという心が育ってきてしまったと思います。
組織的な文化運動に希望を持って参加してきた団員たちにとってとても理不尽なこと、ともしびの掲げる音楽文化に共感し、そうありたいと思っている人が、それを否定される、そんな悲しいこと苦しいことはなかったのてはと思います。入団したてのマミちゃんは今ではとても信じられないことてすが、声が薄ぺヘらい「ピアピア声の清水」といわれたりもしました。その指摘は全くそのように私も感じていました。まみちゃんはその批判を受け止め、おそらく人知れぬ努力を重ね続け、今日の「まみちゃん」になったのだと思います。
残ってしまった私……
私は特に「好きたった先輩ほど早くともしびから離れていった」とつぶやくことがありました。「もう、俺の好きなように生きていきたい、組織（ともしび）にも十分貢献てきたからもういいだろう」といった内容の話をいわれ、独立して活動していくことになった先輩。いつもともしびの看板として歌い演じてきて、六〇歳を過ぎてからの選択でした。また、ともしびのお母さんといった存在で、人生や活動上の悩みを親身に聴いてくれる頼りがいのある先輩がいました。指導のおり方についても、少なくない若い専従や団員の悩みを受けとめてくれました。苦言を呈して、代弁してくれるのですが、結局ともしびを離れてしまいました。
まるて置いてけぼりを食ったような気分でした。残ってしまった私……。「好きだった先輩ほど早くともしびから離れていった」という淋しい想いと、結果として私は辞めずに残ってしまった。やめていった人と残ってやっていこうとする人との問には、決定的ともいえる大きな違いがありました。「再構築」し、ともしびを残していくという大きな課題、さらにともしびを発展させていこうという大きな一致点が、残った人たちにはありました。
不思議なもので、一緒にやるうと活動を始めると、今まで見えてなかったものが見えてきました。思ってもみない良さが随所に見えてきました。良さを大事に大事に、集団の中で生かす。「人」のいいところが現れ見え始める、相手・周りにもその心が伝わるものなのでしょう。わだかまっていた心が周りから溶けていくような心地よさを覚えたことです。
それぞれの部署が責任を持って自立した活動ができる体制を取り、いろいろなことが着実に安定的にできるようになっていきました。組織がしっかりすると課題や問題を集団の中で解決していくことが普通のこととなっていきました。個人プレイに走るような傾向もかくなり、分担を決め綿密な準備をし、大うたごえ喫茶やともしびフェスタでは新しい人、初めての人がリーダーとなり集団の中で力を発揮できるようになってきました。
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まるて置いてけぼりを食ったような気分でした。残ってしまった私……。「好きだった先輩ほど早くともしびから離れていった」という淋しい想いと、結果として私は辞めずに残ってしまった。やめていった人と残ってやっていこうとする人との問には、決定的ともいえる大きな違いがありました。「再構築」し、ともしびを残していくという大きな課題、さらにともしびを発展させていこうという大きな一致点が、残った人たちにはありました。
不思議なもので、一緒にやるうと活動を始めると、今まで見えてなかったものが見えてきました。思ってもみない良さが随所に見えてきました。良さを大事に大事に、集団の中で生かす。「人」のいいところが現れ見え始める、相手・周りにもその心が伝わるものなのでしょう。わだかまっていた心が周りから溶けていくような心地よさを覚えたことです。
それぞれの部署が責任を持って自立した活動ができる体制を取り、いろいろなことが着実に安定的にできるようになっていきました。組織がしっかりすると課題や問題を集団の中で解決していくことが普通のこととなっていきました。個人プレイに走るような傾向もかくなり、分担を決め綿密な準備をし、大うたごえ喫茶やともしびフェスタでは新しい人、初めての人がリーダーとなり集団の中で力を発揮できるようになってきました。
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