「なぁレオナ。一緒に帰らねぇか?」
その言葉に私はいつもの様に答える。
「…どうして私があなたと一緒に帰らなくてはいけないの?」
いつものように心とは裏腹な言葉。



いつからだっただろう。
東城学園に編入して、リオ=メイロンやクスハ=ミズハといった友人が出来た頃。
リオの幼馴染のリョウト=ヒカワ君の友人達の一人にタスク=シングウジ…今、目の前のあなたはいた。
最初はクスハの為だった。
リオのアイデアで女性三人男性三人で遊ぶ…。
数あわせでしかなかった私が、同じく数あわせだったのであろうタスク君を好きになっていった理由がいまだにわからない。
気がついたら好きになってた。
でも、態度には出せない。
私が元軍人で、彼の両親が戦争で亡くなっているから。
私が心に傷を負っているから。
私が軍人のままだったら、私はこの学園には来ていなかった。
彼の両親が健在だったら、彼はこの学園には来ていなかった。
二人の出会いの理由が、私の恋の障害にもなっていた。

「そっか、ま、しゃーねーか。」
あきらめないで、次、次に誘われたら、私は一緒に帰って、話をして…。
「じゃ、クスハと帰ろうかな、今日は一人みたいだったし。」
「ダメよ!!」
気がついたら叫んでいた。
「な…、なんだよ、レオナ。脅かすなよ。」
「あなたね、クスハにはちゃんと好きな人がいるのよ?」
本当の事だけど、それは私の本心を隠すための言葉。
「そりゃ、知ってるさ。知らないのは好かれてる本人だけだろーに。」
これも本当、クスハの思い人はクスハの思いに気付いていない。
少女漫画のように懸命に頑張る彼女が不憫になるほど、彼は鈍感だった。
ただ、タスク君も鈍感。
目の前にいる私がこんなにも好きなのに。
クスハほど私も頑張れば、タスク君に思いが届くのだろうか?
「だからさ、あいつの事を色々教えながら帰るのも面白いと思ってさ。」
「余計なことはしないで頂戴。いいわ、私が一緒に帰ればあなたは満足するのね?」
クスハを、友人を利用して私はタスクと帰ることが出来た。
そんな私が嫌いで…素直になれない私が嫌いで…それでも彼のそばにいることが出来た私が、本当の私なのかどうかわからなくて、嫌だった。

「でさ、数学がやばくてリョウトにノート見せてもらったんだよ。」
「きちんと勉強をしてないからそうなるのよ、反省なさい。」
私に言ってくれれば、わからないところを教えてあげるのに。
「その後リョウト達三人でいつものゲーセン行ってさ…」
「どうせ、いつもの様にイヤラシイゲームをしていたんでしょう?」
脱衣麻雀をやっているのを以前見てしまった、本当は私を見て欲しいのに…。
「結局その後面倒くさくて家で三人でメシ食って寝ちまったけどさ。」
「自堕落な生活ね。あきれてしまったわ。」
うらやましい…タスク君のそばで、寝れるなんて。

私の本心とは違った言葉にもめげず、タスク君は私と話をしてくれた。
豊富な話題をいくつか聞いているうちに、私の家の近くまで来た。
…あっという間だった。
悲しいくらいに。

「っと、ここでお別れか。んじゃ、またな。」
「そうね、遊ぶのもいいけど、遅刻するような真似はしないで頂戴。」
いかないで。
もっと一緒に居たい。
「ま、約束はできねーけどな。じゃな!」
行ってしまう、行かないで、行かないで!
「行かないで!!」
気がついたら叫んでいた。
タスク君の方に手を伸ばし、きっと必死な顔をしていたのだろう。
「な、どうしたんだ? レオナ」
心配そうな顔であなたは振り向いた。
うれしくもあったけど、それ以上に混乱していた。
「いえ、その、家に…」
「え?」
「家によって行きなさい!」
言ってしまった。
「家って、レオナの? 良いのか?」
私が一人暮らしなのをタスク君は知っている。
そして私達は一人暮らしの女性の部屋に男性を呼ぶ意味を知らないほど子供ではなかった。
「ええ、あなたに言っておきたい事があるの。」
「え? いや、なんだろ…。」

告白。
私はタスク君に告白した。
私が貴方を好き。愛してる。恋人にして欲しい。
私の告白はそんな言葉ではなかった。
その前に、私が軍人だったことを話した。
本当の私を知って欲しかったから。
学園に入る前、私が軍人だった事。
試作機の変形実験に参加した私が、機体ごとパイロットの命を奪ったこと。
その直後に参加した戦闘で、私のミスで多くの民間人の命を失ったことを。
ポツリポツリと、私はタスク君に話していった。
身体は震え、声はかすれ、涙で前が見えなかった。
それでも私はすべてを話した。
今、言ってしまわなければ二度と話せない気がしたから。

告白が終わった後。
タスク君は「そうか。」と言った後は黙ったままだった。
うつむいて言葉を待つ私には、どれぐらいの時間がたったかわからなかったが、流した涙が乾くほどの時間が流れたのはわかった。
「レオナ…。」
名前を呼ばれて、私は顔を上げた。
そして、大きな音がした。
私の頬から。
叩かれた。思い切り。
女性には優しい、暴力自体振るうことの無いタスク君に。
私は、勢いで倒れた。
「あ…。」
頬を押さえて起き上がろうとする私の身体を、タスク君は押さえつけた。
強い力で、床に組み伏せられる。
「お前が殺したんだな。 俺の両親を。」
背筋が凍った。
「お前が…、お前が! オヤジ…、オフクロ…。」
両肩を抑えている手に力がこもる。
涙が、今度はタスク君の流した涙が私の頬をぬらした。
「ごめん…なさい…」
「謝ったって! 謝ったって何にも戻ってこねぇよ!!」
当然の言葉。
私は何も貴方に返すことが出来ない。
何も、何も。
だから。
「私に出来ることならなんでもするわ。 私のすべてを、あげても…いい。」
捧げる。私を。
でも、それは罪を償うことにならない。
だって、私がタスク君が好きだから。
「…ちくしょう…。」
そう言って、タスク君の手が、私の胸に触れた。
「好きだったのに…よ、レオナの事。」
うれしかった。
そして、それだけでよかった。
私はこのまま、『罪をつぐなう女』を演じれば良い。
本心を隠し、態度を偽る。
それだけで私は、好きな人に何をされても幸せになれる。
タスク君は『偽りの私』を好きでいてくれたのだから。
『本当の私』は永遠に隠すことにした。

「ん……あ、あぁ…。」
服の上からタスク君の手が私の胸を刺激していた。
ゆっくりと、ゆっくりと。
「レオナ…。」
「何?」
「俺は、お前のせいで、家族がいなくなっちまったんだな。」
ごめんなさい、といった言葉を飲み込んだ。
「だからよ、レオナが家族になってくれよ。」
「え…?」
「レオナが俺の家族になって、俺と家族を増やしてくれよ。」
それって。
それって……。
「ああ…。あ…。」
言葉が出なかった。
うれしくて。
「返事は聞かないからな、レオナ。」
言葉の後に、キスされた。
そのまま舌が口の中に入ってくる。
私は口を開けて舌を受け入れると、ぴちゃぴちゃと舌の絡む音が部屋に響いた。
口の中につばが溜まっていき口の端からこぼれていく。
「飲んでくれよ。」
ゾクッと、身体に刺激が走る。
「は…い。」
返事をして、コクンと喉を鳴らす。
つばを飲むたびに、私の身体は熱くなっていく。
「美味いか? レオナ。」
「はい、美味しい…です。」
ダメ、気持ち良い。
性的な行為だけではなく、命令されることも。
もしかすると、命令されてるだけでも私は気持ちよくなっていくのかもしれない。
「次は、何を…すれば…?」
言葉で求めてしまった。
愛しい人の命令を。
「じゃあ、俺のを…舐めて…くれよ。」
「はい。」

四つんばいになり、私はタスク君のペニスに奉仕を始めた。
まずはキスから始めてその暖かさを感じる。
ピクピクと震えるモノを私刺激し続けた。
その微妙な刺激に耐えられなくなったのか、タスク君は私の頭を掴むと、
「くっ……舐めろって言ったろ!」
と、無理矢理口にペニスを入れようとする。
ぐいぐいと押し付けられる事に私は嫌がるそぶりをしながらも、身体がだんだんと火照っていった。
「ちくしょう…ちくしょう!!」
口を開けようとしない私にイラつき、私を思い切り突き飛ばした。
床に倒れこんだ私の髪を掴んで、顔を無理矢理上げると、二度、三度と私の頬を平手で打った。
「イヤ! やめて! やめて!!」
血の味がしてきた口で必死に許しを請う。
「しますから! ちゃんとしますから!!」
二人とも、壊れてしまったのかもしれない。
タスク君と私が、主人と奴隷の関係になっていく。
私は叩かれることの痛みより、タスク君の心の痛みのほうがつらく、せめて快楽で和らげようと決心しペニスにむしゃぶりついた。
ピチャ…ピチャ…と、
しばらく舌を這わせてから、口に飲み込む。
ちゅっ…ちゅっ…といった音がやがて、じゅっ…じゅっ…と言った音に変わっていく。
再び私の頭に手が置かれるが、先ほどとは違い無理強いはしない。
時折髪をなでるような手の動きに私はうれしくなり、より淫らな音を立てようと口の動きを早める。
舌に押し付けるように、頬に押し付けるように、喉で飲み込むように。
変化をつけながら奉仕を続ける。
やがてペニスの先からあふれてくる液を舌先で刺激しながら舐め取ると、
頭を掴んでいた手に力がこもる。
「くそっ…レオナが…こんなに…いやらしい…女だったなんて……」
私は喜んで欲しいだけなのに、貴方のために奉仕をしているのに。
「騙されてたんだな、俺はずっと……くそっ!!」
ぐいっと、ペニスを喉の奥まで突き入れるとタスク君の身体が震え始める。
「ん〜、ん〜〜!!」
何も言えずに、ただうめく私に、
「でる……ぞ…」
びゅくっ! びゅく! どくん!!
大量の精液が放たれた。
口ではなく喉に直接だったため私はむせてしまい、床に嗚咽しながら精液を吐き出した。
苦しさから解放されてタスク君を見上げると、またも平手が飛んでくる。
またも床に倒れこんだ私に対して、何かを言われる前に、
「ごめんなさい! ごめんなさい!! 飲みますから、全部飲みますから!!」
私は許しを請いながら床に散った精液を舐め始めた。
固形のような濃い精液をじゅるじゅると吸い、タスク君を見ながらこくりこくりと飲み込む。
何度か飲み込んでいるうちにぐちゅぐちゅと口の中で味わいながら飲むことで、その行為をタスク君が喜んでいるのがわかった。
10分ほどかけて全部飲み込むと。
「私に、精液を飲ませてくださって、ありがとうございました。」
私は笑顔でお礼を言った。


「んっ…、あ……。」
私が気がつくと、10時を回っていた。
「また、か……。」
今まで寝ていたベッドを見ると、もはや『愛用の』と行ってもいいほど使い込んでいるバイブレーターが枕元にあった。
どこからが自分の空想…いや、妄想だったかを思い出そうとする。
タスク君と一緒に帰ったところまでは現実。
結局今日も何も言えずに分かれていたんだっけ。
「はぁ……。」
ため息をつく。
妄想の中でタスク君を求めるのは何度目だろうか。
そのたびにくわえてきたバイブレーターを洗おうと立ち上がり、洗面所へと向かう。
涙とよだれに汚れ、乱れた髪を揺らしている女性が私と目があった。
私自身だけど。
こんな女……好きになってもらえないわよね。
きっと明日も、明後日もその次の日も。
こうして妄想で自分を汚して、快楽をむさぼるのだろうか。
考えるのがイヤになり、私は冷たい水で顔を洗い始めた。

バルマー戦役と呼ばれた戦いがあった。
普通の学生だったクスハ=ミズハはこの戦いに巻き込まれ、数々の戦いを終えて再び東城学園に帰ってきた。
恋人となった『彼』は、アメリカですることがあるとまだ学園には戻ってはこなかったが再び出会えた友人たちと学生生活を満喫するクスハだった。

しかし、実際は『彼』がクスハの身代わりにティターンズに拘束されていたのだ。
大人しく拘束されていればクスハ=ミズハには手を出さずにいると。
だが、ティターンズにとってはより強い念動力を持つクスハを手に入れないわけが無く。
東城学園に武装した軍人が乗り込んできていた。

友人であるクスハを守るために、リオとレオナはクスハに変装して学園を逃げ回っていた。
リオにはリョウトが、レオナにはタスクがそばにつき、ティターンズの追走を阻んでいる。
だが、とある教室に飛び込んだレオナの前には銃を構えた兵士が立ちふさがっていた。
元軍人であるレオナではあったが、この距離で銃を向けられては両手を挙げるしかなかった。
クスハ本人かどうか確認するために近づく兵士に向かって一人の男が突進してくる。
二度、銃声が鳴った。
一発が男の肩をかすめ鮮血が舞う。
「タスク君!!」
レオナが悲痛な叫びを上げる。
兵士は無言でタスクに銃を向けると立ち上がってくるのを待った。
「へっ、まだ致命傷にはなってねぇぜ。」
よろよろと立ち上がり、肩を抑える。
「何発入ってるんだろうな? その銃に弾は。」
両手で銃を構え、タスクに向ける兵士を気にもせずに、タスクは真剣な顔で兵士に向かった。
「全部俺に向けて撃てよ、よけてやるぜ。 運試しにはいい機会だしな。」
「な、何を言っているの! 相手はプロの軍人なのよ!! 馬鹿な真似はやめなさい!!」
必死に叫ぶレオナ。
元軍人のレオナにとって、目の前にいる兵士がプロ中のプロであることは明確だった。
運動があまり得意ではないタスクがこの後一発の銃弾で絶命してもおかしくは無い。
あまりにも分の悪い賭けをしようとするタスクを、レオナはどうしても止めたかった。
「(でも、クスハの居場所を言うわけにはいかない……私が、私が何とかしなければ……)」
自分が軍人だったことをタスクに知られても、タスクの命を救うほうが大事。
レオナにとっては当然の選択だった。
「逃げなさい! タスク君!! ここは……」
「逃げられるかよ!! お前を……お前をおいて行けるか!!」
「震えてるじゃない! 無理をしないでいきなさい!!」
「でも、俺は、俺は! お前を守りたいんだ!!」
タスクが叫んだその時だった。
タスクに向けられていた兵士の銃が。
床に落ちた。
「あ、あぁぁぁっ! あああああぁぁぁぁ!!!!!」
そして兵士が頭を抑えてうずくまる。
「いや、いやぁぁぁぁっ!!!」
その顔を隠していたヘルメットを取り、床に放り投げる。
黒く長い美しい髪が宙に舞い、美しい女性の顔が苦痛にゆがんでいた。
「…ラド……ゼオ……ラト……」
ぶつぶつと呟く女性に、タスクは肩を抑えながら近づいた。
「タスク君! 離れなさい!! 危険よ!!」
レオナの静止も聞かず、タスクは女性に話しかけた。
「おい、あんた……大丈夫か?」
「あぁ、私は……私は……」

教室の中に銃声が響き一人倒れる。
頭を抱えうずくまる黒髪の少女や肩に怪我をしたバンダナを巻いた少年。
そして、金髪の元軍人の少女が銃声をした方を振り向いた。
そこには、三人のうちの誰かを狙っていたであろうライフルを構えたまま倒れている
軍人の姿があった。
「ぎりぎりセーフってところなんだな、これが。」
その軍人の背後から狙撃した赤髪の男。
「レオナ=ガーシュタインにタスク=シングウジか、まぁ一人おまけもつきそうだな。」
そんなことを良いながらズボンのポケットから小さな通信機を取り出しスイッチを入れる。
「あぁ、残り二人の無事…まぁ、無事だな。 確認した、外が落ち着いたら合流するぜ。」
男が話しながら教室のカーテンを開けると、外ではティターンズのMSと戦っている
三体のロボットが見えた。
「(ほかの二体は知らないけど、あの機体は…グルンガスト参式。)」
背面の羽のような部分を飛ばし、武器として扱っている氷をイメージさせる機体。
大きな羽と弓と剣を持ち、天使をイメージさせる機体。
その二体には見覚えが無かったが、レオナがクスハから聞かされていた『Gシリーズ三号機』
グルンガスト参式と思われる機体が学園の窓の外で戦っていた。
「すげぇなぁ、あれがグルンガストか…って、お兄さん誰?」
タスクがもっともな意見を赤髪の男に聞いた。
その側には自分の名前を思い出している黒髪の少女もいる。
「ん? 俺は『アクセル=アルマー』あんたたち二人を助けに来たんだが
 …ま、一人増えてもかまわんか。」
「あの、でも、私は……」
「そーゆー事に関しては実は俺も経験者なんだな、これが。
 俺達について来ても良いが、どうする?」
少女にやさしく話すアクセルにレオナが口を挟む。
「ちょっと、『あんたたち二人を助けに来た』なんて言葉。 私たちが信じると思っているの?」
「でも、助けてもらったのは事実じゃねーか?」
「それが、この人たちの手段だったらどうするの?」
「これが、本当に助けてくれる人だったらどーすんだよ?」
その言葉にレオナが固まる。
「この人は悪いやつに見えねーし、仮にこの人が悪人だったら、俺達もう死んでるぜ、きっと」
「それは…そうだけど…」
タスクの言葉に反論できない自分がいる。
タスクを守っているつもりだった自分が否定されている。
レオナはその後の言葉を紡げなかった。
「ありがたい事言ってくれるね、説得の手間が省けるぜ。」

「おっそいじゃないの!! 何してたのよ、まったく」
タスクとレオナ、そしてオウカと名乗った女性を連れたアクセルが集合場所といっていた保健室に入ると同時に、一人の小さな少女がかぶっていた帽子を叩きつけてからアクセルに詰め寄る。
「小さくて悪かったわね!」
いや、それに反論するなよ。
「ちょっと、ティス。初対面の人もいるんだからもっと落ち着いてよ」
「うん、イメージ…良くないと思う…」
側にいた同年代くらいの少年と少女に説得され
「ん……えっと、ごめんなさい、取り乱しました」
ぺこりと可愛く頭を下げ帽子を拾った。
「しっかし、帽子かぶってると男の子みたいだな、ティスは」
「るっさい! へんそーよ、へんそー」
「ラリアーとピニスはいつもと同じ格好じゃないか」
「……で? レオナとタスクはわかるけど、その娘だれよ? 浮気相手?」
アクセルのツッコミを無視して、話がオウカの事となる。
見た目は幼い少女であるティスがレオナたちよりも年上のアクセルに対してタメ口なのはすこし妙な光景だった。
「ちょっと、今度は『幼い』ってどーゆーことよ!!」
だから、こっちに反論するな。
「私は…『オウカ=ナギサ』ティターンズの軍人だったみたいです。」
「みたいですって、見たまんま軍人じゃないの?」
「記憶喪失みたいなんだな、これが」
「へー。アホセルみたいなものって事ね」
「その呼び方は止めろと言ったろうが、この貧乳」
達人同士が相打つと、その場は緊張に包まれるという。
今がまさにそうだった。
先に動けばやられる。
アクセルとティスの間の空気が変わっていき……
「アクセル隊長。現在、学園の周りの期待はすべて行動不能。  アンジュルグ ファービュラリス グルンガスト参式の三体無事帰還しました。」
突然部屋に入ってきた『ないすばでぃ』な女性によって、その場の空気は平穏へと戻った。
だが、身体のラインを強調する衣装がそこらの貧乳幼子とは違う女性らしさを見るものに与えている。
平穏な空気はどこかピンク色だった。
「言うに事欠いて、『貧乳幼子』って……。 ちょっと!! エキドナ!!」
ティスが今入ってきた女性、エキドナに対して指を突きつけながら叫ぶ。
「はい、どのような用件でしょう? ティス」
「用件はその馬鹿でかい胸によ!!」
「はい、私のバストサイズは……」
「あ〜!! いいわよ!! 聞きたくも無いわ!!」
「では、私の胸にどのような用事が?」
「そうよ、きっとそうよ! さえた頭脳でビビッと推理 バシッと的中よ!」
ティスがちょっと変な性格になる。
いや、あの性格分けもどうかと思うが。
「取ったわね? エキドナ」
「もうしわけありません。言葉の意味が良くわかりません」
「意味は良いわよ! とにかくすごい自身だって事が伝われば…って、違うわよ!! 私のバストを取ったんでしょう?」
それはギャグで言っているのか?
いや、言ってねーな、コイツの場合。
「そうよ、きっと私達のバストへ行くべき栄養を吸い取っているのよ……」
何気にピニスが巻き込まれてますが。
「そんな事は…無いと思うよ…ティス」
「大体、僕達がアクセルさんやレモンさんと会う前からエキドナさんっって…」
『ええ乳してたし』といった意味のセルフを恥ずかしくて飲み込むラリアー。
「かえせー! 私のバストかえせー!!」
むんずっと、エキドナの胸を鷲づかみにし、グニグニと揉みはじめるティス。
「そのような命令をされても、私には対処するすべはありません」
「冷静にゆーなぁ!」
無表情に答えるエキドナにティスが声を荒げる。
『昔はあの態度に俺も腹も立ったがな……』
アクセルがなんとなくそう思う横で、オウカが何かを思い出そうとしていた。
『……から、胸に栄養が行きすぎ……だよ……』
『……の、話はしないでよ!!』
『……落ち着いて、二人……だから……』
何かを思い出せそうでティスとエキドナのやり取りを見続ようとした所に、一人の女性が入ってきた。
いや、入ってこようとドアに身を隠して部屋を覗き込んでいた。
「えっと、レオナ…リオ…何か、上着欲しいんだけど…」
入ってきたのはクスハ=ミズハ。
この現状に完全に固まっていた4人だったが、クスハが来たことにより石化が解ける。
「あ、クスハ? 貴女何をしてたの? 無事だったの?」
「服って、まさか……そんな……」
「ち、ちがうの、えっと、説明したいんだけど……上着を……きゃ!!」
ずでん! と、転び。
ぷるん! と、揺れた。
胸が。
「ちょ……その格好、どうしたのよ」
レオナが言うのもわかる。
今のクスハの格好は水着といっても良いほどに肌を露出していた。
ぶっちゃけDFCスーツだし。
「グルンガスト参式のエンジンの出力調整に…この格好が良いって…ヴィレッタさんが…」
恥ずかしげにに身体を隠すクスハに近づくひとつの影。
「……お前もか」
「え?」
「おーまーえーもかー!!」
わけもわからず、クスハは目を血走らせたティスに襲われた。
「ちょ…やめて…はふん…あぁ…」
その後、オルハリコニウム製の金属バットで殴られるまで、ティスは暴走をしていた。

「なんだか……むちゃくちゃだな……もう」
ごろんっとタスクはベッドに横になった。
結局、タスク達は学園から戦艦に乗って脱出することになった。
それぞれに部屋を与えられ、目的地までの二週間は個人の好きに過ごせる事になっていた。
三日もあれば環境に慣れるのか、タスクは読み散らかした本の中でため息をついた。
コンコン
ふいに、部屋をノックする音。
友人のどっちかだろうと思い生返事を返したタスクの前に現れたのは。
「お休み中の所…失礼します」
オウカ=ナギサだった。
「は、いや、こちらこそ何のお構いもしませんで」
つい、床に正座をしてオウカを迎えてしまう。
「すみません、お休み中の所を」
先ほどまでシャワーでも浴びてたのか、緑の黒髪からシャンプーのいい香りがしてくる。
タスクに促されるままクッションの上に正座すると、覚悟を決めタスクに話し始めた。
「タスクさん、私にお礼をさせてください」
「……は?」
『お礼って言ってもシャワー浴びた後みたいだしイヤまさかそんなでもオウカさん美人だしスタイルもいいしあでもエキドナさんもすげぇスタイルよかったけどじゃなくてオウカさんが俺にお礼って俺一体なんかしたっけか?まさかどっきりの企画で罰ゲームで俺を誘惑してとかそーゆーのかもしれないし……』
「先ほど、レモンさんという方に私の身体を検査してもらいました。
 薬物や暗示で私の記憶が変えられ、貴方たちを抹殺するように調整をされていました。」
「な…あぁ…えと……」
「あなたが私の前に立たなかったら、私の…ほんの一部ですが、私の記憶が戻らなければ……私は心の無い兵士のままか、死んでいたでしょう。」
うつむいて話をしていたオウカが顔を上げ、タスクと目が合う。
引き込まれるような美しい瞳からは、彼女の頬を濡らす涙が流れる。
恐怖によって声を震わせている姿にタスクは、オウカから目をそらす事が出来なかった。
「タスクさんが、私を救ってくださったのです。 私の命の恩人なのです」
「いや、そんなつもりは……」
「でも、事実ですから。 さぁ、私に何か出来ることはありませんか?」
身体をタスクのほうに寄せ、顔を覗き込むように尋ねる。
「ちょっ、いきなりそんなこと言われても……」
『えちぃ事してください』などと言ったら、ここの女性陣に何をされるかわからない。
特にレオナにこんな所を見られた日には、明日の朝日が拝めないかもしれない。
「遠慮はしないで下さい。あら?」
ふと、タスクの周りに多くの本が散らばっているのが見えた。
「そうですね。では、お掃除をしましょう。部屋が片付けばすっきりしますものね」
と、一冊の本を手に取る。
ぱらり、と表紙を隠していたカバーが外れ。
白い液体に汚された和服美人の表紙が見えた。
「げ! それは、その……」
うろたえるタスクを無視しし、ぱらぱらと本の中身を確認するオウカ。
男性器を女性の身体のあちこちで刺激し、身体のいろいろな場所を白濁液で汚していく。
そのような内容だった。
たまたま借りたままだった本がカバンに入っていただけだったのだが、
タスクのお気に入りの本でもあった。
過去に一度レオナにこういった本の所持がバレ、頬が真っ赤になるほどの強さで叩かれた事をなんとなく思い出す。
「タスクさん」
静かな、静かではっきりとした声で話しかけられる。
「は、はい!」
「この様な行為がお好みですか?」
「あ、いや、その……」
しどろもどろになって、思考が混乱する。
「ハッキリなさい!! 好きなのですか? 嫌いなのですか!」
「好きです、大好きです!!」
『って、言っちまったよ……なに言ってるんだよ、俺』
「そうですか、では…」
タスクには見えなかったが、今のオウカの表情はやさしく微笑んでいた。
その表情を見たのは。
部屋を覗いていたレオナ=ガーシュタインだった。

好きって言った……。タスク君がオウカに好きって……。
私が、慣れない生活で疲れているだろうタスク君を元気付けようと部屋の前に立った時だった。
『ハッキリなさい!! 好きなのですか? 嫌いなのですか!』
部屋からオウカ=ナギサの声が聞こえてきた。
続いてタスク君の『好きです、大好きです!!』
その言葉の後に、オウカはタスク君の隣に座り、頬にキスをしていた。
ちゅっ ちゅっ
震えながらもタスク君はオウカを受けれている。
次第にオウカの手がタスク君の身体をまさぐり始め、胸やお腹や背中や脚や……
『オウカ!! そこは……』
そんな否定もお構いなく、オウカの手が男の人自身のある場所へと伸びる。
『タスクさんも私を感じてください……』
上着のボタンをはずし、大きな胸があらわになる。
悔しいけど、私より大きく形がいい。
タスク君の手がその胸に手を伸ばすと同時に、私の手が私自身の胸を触っていた。
タスク君が下から救い上げるように揉むと、私も同じ様に胸を救い上げるように揉む。
オウカの乳首が刺激されれば、私も同じ様に乳首を刺激する。
何度かその行為を続けていくうちに、私自身がタスク君に抱かれている錯覚に落ちる。
「もっと…そこ…もっとつよく……」
私の声なんてもちろん聞こえない。
どれだけ私が願っても、私の望む所を刺激してはくれない。
当たり前の事実が、私を惨めにしていった。
『本によりますと、この次は……こうですね?』
オウカはタスク君のズボンのジッパーを下ろし、熱く硬くなった男性器を外に出す。
そして自分の右手指に唾液を満遍なくつけると、男性器を握り上下に刺激し始めた。
私も同じ様に指を舐め始めたけど、握るべき存在は私の側には無い。
さながらそこにタスク君の男性器があると思い込みながら何も無い空間で手を上下させる。
その行為と同時にタスク君のうめき声が聞こえ、さながら私がタスク君を感じさせている……。
そんな気がしてうれしかった。
『オウカ……』
『はい、感じてください、私を』
私を感じて欲しい。
オウカではなく私を。
私ならもっと……。
一瞬そう思ったけど、嘘。
だって、私はタスク君に何もしてやれてない。
オウカとの行為を見ながら、あさましく、いやらしく、無様に、淫らな行為をしてるだけ。
くやしくて、かなしくて、せつなくて、涙した。
涙が流れると同時に、私の秘所が濡れはじめた。
タスク君がオウカの秘所を弄る前に、私は自分の秘所に手を触れていた。
我慢できない、欲しい。
くちゅくちゅと、オウカの手で刺激されているタスク君の男性器……それが欲しいのではない。
いつも愛用のバイブレーターが欲しい。
口を、喉を、舌を、ほほを刺激して欲しい。
タスク君を見てるより、バイブレーターの刺激を思い出したことで私が高まっていく。
好きなのはタスク君なのに。
欲しいのは……性的快楽を得るために求めてるのは、無機質な機械。
嫌だ…イヤだ…いやだ……
でも、イってしまう。
よだれまみれになった口に指を突き入れ、ショーツの上から秘所を刺激する。
うっすらと涙目でタスク君を見ようとするけど、ぼやけてよく見えなくなっている。
『だめだ、もう』
『いいですよ、達して下さい。タスクさん。私の手で達して下さい。』
ギリッ
悔しくて、つい、指を噛んでしまう。
血の味が口に広がり、その味に慣れたころ。
『うあっ、うぁあぁぁぁぁあぁぁ!!』
タスク君がイッた。
精液が床に落ちる音を聞きながら、せめてその味を想像しながら。
私はイッた。
声を抑えながら。
泣き出したい気持ちを抑えながら。
『タスクさん。これからは毎日お相手させてください。せめてもの恩返しです。』
『恩』なんて……私はタスク君を『愛』してるのに……。
でも、明日もこの時間に私はここに来る。
バイブレーターを懐に忍ばせて。

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