クトゥルフ神話TRPGやろうずWiki

「……やっぱり人は悪意には打ち勝てないのね……」

白い洋服の彼女は退屈そうに本棚から読み飽きた本を取り出すと、パラパラをページを捲ってはまた元の場所に戻してしまう。

彼が解放されたあの日以来、私は広場の部屋に出る事すらなくなってしまった。
いや…正確には「出られなくなった」のかもしれない…。


全ては順調かに見えた。
噴水の水はもう一頑張りで浄化が完了する。
誰かが紫の住人に誠意を見せれば、彼らはきっとこの狭苦しい世界から抜け出せただろう。

それなのに……運命は残酷で、正直だった。


昔の中国の人は言いました
『人の性は悪なり、その善なるものは偽なり』

人は生まれながらにして悪意を内包しているわ。
そしてそれが抑えきれなくなった時、人は人ではなくなる……

私は彼がこれ以上人として道を誤らない様に、この小さな部屋の中から見守る事しかもう出来ない。
アレに見つかったら私は邪魔な存在として消されてしまうかもしれないから。

けれど……その日までは私は貴方を見つめ続けているわ。
それが私の生まれてきた意味だから……
【BADEND】

後悔が尽きないことが自分にとって不思議でならない。そこまで生に執着するような人間性、なかった気がする。
思い出がめまぐるしく背中の方へ流れていく。それはまるで車の中から眺める景色のようで、懐かしい気持ちになった。

皆を心配するあまり真っ先に暗闇へ飛び出していったあの子はどうなったのだろう？
無機物に愛を告げてしまった医者先生はあのまま「友人」を助け出したのだろうか？
記憶をもぎ取られてなお星に希望を託そうとする彼女はその思いを果たせただろうか？
きっと何かを失くしてまでも前へ進もうとする彼は、今も俺達を待っていてくれるのだろうか？

あんなに奇妙な空間にいたのに心の内がほんのり暖まっていった気がしてならない。そしてそれは彼らの存在があってこそだった。
おかしいなあ、彼らとは初対面だし性格上の接点があるわけでもなかったのに。
どうしてこんなに悔しいんだろう？

遅くなりましたが、皆様お疲れ様でした。
シナリオは改変したものということでしたが、心理状態を表す部屋だったり途中でPCの一人が発狂気味になっちゃったりしてドキドキが止まらねえ！って感じで楽しむことができました。
KPの翠初音さんには以前私がKPをした卓に参加して頂いてて、その時もBADに近いEND起こしてたので内心土下座がしたくてたまりませんでした。
PLの皆様も、これまたPC設定の掘り下げやら個性が色濃くて、一連のRPを見学席で見ていたいくらいでした。蓄音機との結婚が個人的に忘れられません。
今度こそ真相に迫れる良いエンドを目指して、どこかの卓に突撃するかもしれません。
その時はまた一緒に遊んでくださると嬉しいです。
重ね重ね、楽しいセッションをありがとうございました！

……何だかとても長い夢を見ていた様な気がする。
しかし、夢の中で抱えていた蓄音機が今、自分の傍にあると言うのは紛れもない事実で
それがあの出来事は現実だった、と言う事を嫌でも突きつけてくる。
だが、手の中に微かに残る自分とは違う温もりの主は見当たらない
彼女も、ちゃんと自分の家へ戻る事が出来たのだろうか？

いや…それよりも夢野くんや宇津野くん、一ノ瀬さんは──……？

………途中からの記憶があやふやになっている。
絶えず聞こえてきていた声が、はっきりと、明瞭に聞こえた時点で
自分の思考は何処かへ飛んでいった様な、そんな感覚だった。
それ以前に自分は気でも触れてしまっていたのではないだろうか？
あの様な空間へ押し込められてしまったせいで頭の螺子が外れてしまったのではないだろうか？

自問自答をしてみても答え等出る筈がなく
ただ、彼らの無事を願う事しか出来なかった。

──────

その後、確かに手を繋いで共に脱出した筈のもう一人の人間
レイラ・ノーレッジとコンタクトを取る事を試みた。
相手は大学教授で、名前を検索に掛ければ容易に勤め先を知る事が出来たのは幸いで。
彼女からも同時期に、職場へ連絡が届いたのには驚いた。

……しかし、やはりあの時の状態と代わりはないようで、自分の心が軋む音がした。
彼女の記憶を、心を、完全には取り戻せなかった事を悔やむ。
だからこそ今、自分が出来る事は定期的に彼女と星を見上げる事位だろう。
それが医者として、一人の人間としての務めだと…そう考えた。


それから直ぐに星見へと赴く事にした。
知り合いから良い場所を聞いただけあって、そこから見える星空は
都会であっても比較的綺麗に見えた……心洗われる様な感覚すらあった。

…………そう、自分は何故だかあの空間から抜け出した後
無性に物騒な事を考える様になってしまった。
新聞を配達に来た人間を、道端で擦れ違う人間を、診察に来る人間を…
──兎に角誰でも良い、その命を無性に奪いたくなっている自分がいた。
今も自分の手は誰かの命を求めている。
……ただ、医者だという事が、自分の理性を保たせている様に思えた。



ふ、と隣にいる彼女へ視線を向け、様子を伺う
相変わらず星空を眺めて楽しそうにしている…姿、は………


………

……

…


──嗚呼……彼女の白い首元が晒されて暗闇によく映えている…
その首に手を掛けて少し力を入れるだけで、いとも簡単に折れてしまいそうな程華奢な首だ

そうやって彼女を衝動的な殺意の目で見てしまうと思考はその事ばかりを考えてしまう
…自分の心にある白を飲み込む様に…自分の心がドス黒い悪意に蝕まれていった。
急激に呼吸が荒くなり、心の臓が早鐘を打ち、自分の手が彼女の命を求めて小刻みに震える──


「………───ッ…！」

しかし、星を見ながら無邪気に笑う彼女が声をかけてくると、ハッと理性を取り戻す。
彼女が声を掛けてくれなかったら……そう考えると身の毛がよだつ思いで、心の中で密かに感謝した。
…そして自分がまた、衝動的な思考をしてしまう前に話の矛先を変える事にした。

「……ああ、そうだ。あの時の蓄音機、持ってきているんですよ」

大きめの手提げ袋に入れていた蓄音機を平らな場所へと置きながら
ラッパの部分を軽く撫でてまるで恋人を見る様に、愛しげに蓄音機を見据える
まるで長年連れ添った様なその蓄音機に、予めセットしておいたレコードを確認しながらゆっくりと針を落とした

プツ、プツ、と少しのノイズの後に心地良いテノールが静寂の中で響き渡る。
本来ならば全員揃って聴ければ、と思い購入した物だ。
それでも、他の三人は名前を検索して見ても連絡先や情報すら得る事が出来なかった。
彼らから連絡が来る事すら、なかった。

「…───全員で、一緒に星を、見たかったですね……」

そう、ぽつりと呟いた声は蓄音機から流れる声に遮られ、彼女に届いたかはわからない。
しかしそれ以上口を開く事はせず、ずっと星空を見上げる。


──星の煌きを反射していた蓄音機は何処か物悲しく、ただ静寂を支配する夜空にトスカを奏でていた。

どうも、PLのゆたでございます。
まずはKPの翠初音様、及び同卓して下さった
遁走紳士様、igu様、ゆるさわ様、もにか様にはこの場を借りて深く感謝を。本当に有難う御座いました！

そして今回は平に、平に申し訳ありませんでしたァ！orz
非常に重要な立ち位置にも関わらず判断ミスやダイスの出目諸々の所為であんな事になるとは…
しかもおめおめと生き残ってしまってとても心苦しく思います(´・ω・｀)
ただ、BADENDではありましたが三日間とても楽しかったです！
後味の悪い結末もクトゥルフの醍醐味、そう思いつつ
次はこの様な惨劇を起こさぬ様、RPや推理力などなど精進して行きたいと思います。

それでは何れ別卓で出会える事、そして今後の皆様のCoCライフ発展を祈りつつ私からの後日談は締めとさせて頂きます。
何時かの機会にまた、お逢い致しましょう！

…本当にこれでいいのかしら？…そう、何かが語り掛けてくる。
「…私は、星を見たいだけ。…星を、見たかっただけ…」
言い訳をしてみた。…だが、心の曇りは、徐々に彼女を狂わせる。
「…包丁……キラキラしていて…綺麗。…あの銀色のキラキラした…何かに似てる…」
その時、或る追憶に包まれた。
『…誰が一番蝕まれている…それは誰にもわからない。
しかし…自覚はあるのであろう？ 疑惑はあるのだろう？
ならば勇気を持ち、己の鼓動を……そやつの鼓動を銀の杭で止めてみせよ。
帰りたいのなら、覚悟を決め息の根を止めてみせよ

さすれば、道は開ける。
勇気ある決断を。』
…そう。この一文が、彼女を大きく突き動かした。罪な幼さが、彼女をさらに狂わせる…。
「…あの時、苦しんでいる人に…この…キラキラした何かを刺せれば…誰も…死なずに済んだ？」
…駄目！と、自分の中の…記憶の片隅から声がした…気がする。…しかし彼女は止まらない。
「…困っている人を…助ける？そのために…この…キラキラしたものを…使うの？」
…包丁を握り、呟く。…無邪気に嗤う。そして彼女は、『星を見に行く』ための準備を始めた…。
手始めに、星を見る約束をしていた、或るお医者様に…連絡を取ろうと試み始めた。
…彼女は、…心の奥底では、後悔していたのかもしれない。…あの、出来事の
『本質を見極められなかった』ことに。そして…
犠牲になった、あの三人とも…彼女は、『星を見たかった』のかもしれない。
そして包丁を鞄に…詰め込んだ。

お医者様こと…深道　透…に連絡がついたのは、そのあとすぐの事だった。
お互い、大学教授、医者と、連絡が取りやすい立場にあったのは、僥倖だっただろう。
それから…星を見に行った。…後三人とは、全く連絡が取れない。…何があったのかは…想像するしかない。
「綺麗…。…キラキラしてる…」
…星の輝きが、彼女と、彼を照らす。…鞄に仕込んだ包丁の輝きとは違う…穏やかな光。
そんな輝きを眺め、…ふと、顔を彼に向ける。…
……
…
蝕まれていた人は彼だっただろう。…レイラは、ある程度…察していた。…彼を…楽にしてあげようか。
無邪気な悪意が、彼女を包む…だが、…彼女は手を止めた。…何故だか、自分の中の、僅かな引っ掛かりを感じたからである。
…そして、笑顔で声をかける。
「…星、綺麗…ね。」
何故か、…多少、彼が動揺した気がした、…何故だろう？…それは、レイラには分からなかった。
…そして…自分が、…無意識に、包丁に手を掛けている事に気が付いてしまった。幸い…気づかれなかったようだが。
「（…何故だか…分からないけど…これは…駄目なこと…。）」彼女は、包丁から手を放すと…声を掛けられた。

「……ああ、そうだ。あの時の蓄音機、持ってきているんですよ」
と、深道さんが…蓄音機を取り出し、曲を流し始める。
彼は、蓄音機を愛しそうに眺め…レコードから流れる音に、耳を傾けていた。
…彼は、どことなく寂しそうだった。……星の光が、レコードを照らす。
「…皆で聞きたかった…ね。」
…と、レイラは声にならない声を漏らす。…聞こえていたかは定かではないが…それに合わせるように、
…深道さんが…何かを呟いたように見えた。
しかし、その言葉は…レイラに届くことなく、レコードの音と混じり、夜の星空へと消えて行った。
辺りは星の灯りと、そして…レコードの音色だけに包まれてゆく。
…無邪気に彼女は流れ星に願う。『あの時の皆で、…星を見られますように。』
叶う筈もない祈りが、夜の帳に消えてゆく。
…星は何も語らない。

三日間、本当にお疲れ様でした！
BADENDとなってしまいましたが…それでも楽しかったです。
やはり、自分の集中力、リアルINT、RP力のなさがその原因になっていることは、今後の課題…となりますね。
なにより、大局に集中しすぎて、今現時点での危機に気付かなかったのが、本当に痛かったです…
こんな駄目PLと卓を囲んでいただいた、KP様、PL様方には、本当に感謝しております…！
また、いずれ卓を囲むときがあれば、その時はまた遊びましょう〜。

皆が黒い部屋を調査している間に僕は紫の人と交渉して、なんとか噴水を綺麗にした。
色々なパーツはなくなっちゃったけど、噴水の水を飲むと元に戻ったからびっくりしたなあ。
あとはみんなが戻ってきて、皆で噴水の水を飲むだけなのに・・・誰も帰ってこない。
ハッピーターンさんや、ガンダムさんとも話したけれど、何故か悲しそうな顔をするだけだった。
みんな、どうしたのかな。やっとここから出られるかもしれないのに、何故誰も戻ってこないのかな？
みんな・・・僕はみんなと、元の世界へ戻りたい。
ノーレッジさんの覚悟が、僕を突き動かしたから、そう強く思えるようになった。
緑の人にボコボコにされても、紫の扉で手足や顔を切られても、僕は・・・頑張ったよ？
みんな・・・戻ってきてよ。誰か・・・戻ってきてよ・・・寂しいよ・・・。
あ、黒い部屋から誰かがくる・・・あれは・・・あ・・・れ・・・・は・・・・

色々反省点はありました。
初のオカルトキャラとはいえＲＰを模索するあまり、グッドエンドへの模索が疎かになっていたのかもしれません。
もうちょっとこうしていれば、もうちょっと注意していれば等、悔やんでも悔やみきれません。
ＰＬの皆様のお力になれなかったこと、ゲストでありながら翠初音さんの卓でバッドエンドという結果を出して
しまったことを深くお詫び申し上げます。
この卓の経験を生かし、これからも精進したいと思います。