2月10日 火曜日
昼ごろに奴に起こされる。奴が私に酒臭いと抜かすので罰として
夜にベッドの側でたっぷりと説教してやった。
近頃は一緒に寝てくれなくなり寂しい思いをさせられていたので
当然の処置だ。途中で奴は眠ってしまったがこれは僥倖とでも言うべきこと
だろう。おかげで今夜はよく眠れそうだ。…愛しているぞ、貴様

2月15日 日曜日
最悪の一日だった。あのメイとかいう雌猫が図々しくも家まで押し掛けてきて
私から奴を連れ去っていった。
「約束でしょ?ミッションが終わったら一緒にデートするって」
雌猫は笑みを浮かべて奴の腕を引っ張って行った。
何故だ。何故貴様も笑っている。そいつはいつ敵に回るかわからない
GAのリンクスだ。私も貴様もいつ殺されるかわからないのに。
なのに、何故、私を見捨てて、そいつと(この先の部分はインクが
ぶちまけられ判読不能)

3月5日 月曜日
頼んでいた品が届いた。電子ロックがついた頑丈な首輪。
そうだな、悪いのはお前ではない。私達の絆を引き裂こうとする無粋
な連中と歪んだ世界だ。だからこそ私はお前の意志を無視してでもお前を守らなければならない。
この方法をお前は望まないだろう。だがわかってほしい。

お前を愛してる、離したくないから…

※若干鬱グロ中尉

3月8日 木曜日
奴の寝顔を見つめて一日が終わった。日頃から見慣れた顔の筈だが、
やはり愛おしい。奴は「女と勘違いされる」と嫌っていたが…
何はともあれ、これで奴は完全に私のものだ。両足と左腕が吹き飛ば
されていては最早傭兵稼業は不可能だ。カラードからは登録削除の
勧告が届いた。企業からの見舞いもゼロ。あの淫売の雌猫も協同作戦中に処分した。これで奴は歪んだ世界からやっと解放された。
「もう大丈夫だ…私がずっと側にいてやる」
これまで稼いだ金と私の資産を処分すれば相当な額が残る。
どこか静かな所で…死ぬまで守ってやろう。それが私の出した「答え」だ。

3月9日
奴が目を覚ました。自分の姿にひどくショックを受けていたがすぐに
「メイは…一緒に居たメイは…生きていますか?」と尋ねた。
メイ?あの女はもういない。AAの暴走でネクストごと吹き飛んだのだから。
もっともお前が奴をかばってコジマキャノンの直撃を受けた直後だったがな。
そう伝えようとした瞬間、病室の扉が開いた。
「セレンさん!彼が生きてるって本当ですか!」ああ本当にしつこい女だ、まさか生き残るとは。
だが少なくとも無事では無いようだ。左足が完全に無くなり、右手も肩の当たりから根こそぎ持って行かれている。
「…メイ!」奴が必死に起き上がろうとする。だがじたばたと空しくもがくだけ。
「…!あなた、それ…」メイは松葉杖を突きながらよたよたと歩く。何とかベッドまで辿り着いた。
「…あ…うあぁ…」メイは目から大粒の涙を流した。奴の白衣に灰色の染みが広がる。やめろ。私の彼を汚すな。
「メイ…すまない。君を守れなかった。」奴が残った右腕でメイに手を伸ばす。やめろ。お前には私がいるだろう。
「うわあぁっ!ごめんなさいっごめんなさいっ!私がっ、私がぁっ!」畜生、煩い。私は至極不機嫌に会話を聞いていた。
雌猫はローディが迎えに来るまでずっと奴と手を繋いでいた。奴も手を離さなかった。
…そうか、お前は私を試しているのか。偉くなったものだな、私をテストするとは。
少し仕返しをしてやろう。私の存在の大きさが改めて実感できるように。


6月9日
私が奴の前から姿を消して今日で丁度三ヶ月になる。私からの振り込みは一切無し、奴の個人口座も解約済み。
少し酷な気もするがこれで奴も私のありがたみが骨身に染みてわかっただろう。
今頃は病院を放り出されて路の隅で捨て猫のように縮こまっているかもしれない。
そんな奴を私は優しく抱き上げてやる。暖かいミルクを飲ませて体中を綺麗に洗ってふかふかの毛布で包んでやろう。
そしてもう二度と離れないようにあの首輪を付けてやる。奴は私と一緒に居られるなら喜んでその贈り物を受け取るに違いない。
ああ、愛している。私はお前を世界で一番愛している。

6月10日
畜生、畜生、畜生!あの雌猫が!!私が奴に近づく事すら許さないのか!
「彼を見捨てた上に財産まで持ち逃げして…今更どういうつもり!?彼には会わせない。早く消えて」
ふざけるな、奴は私の物だ!早くそこをどけ!!
「…彼、泣いてた。先生に捨てられた、こんな風になった自分が悪いんだって。自分の口座が解約されたって
わかった時もあなたを恨む言葉でさえ一言も言わなかった!」
そうだ、奴もちゃんと私の事をわかっている。邪魔なのはお前だ、消えろ!
だが雌猫は私を睨み付けながらいけしゃあしゃあと言ってのけた。
「…もう彼にあなたはいらないわ。私がいるから。」
        …何 だ と ?
懐から短銃を取り出すよりも先に雌猫が私の額に狙いを定めていた。
「私が彼を守る。彼とずっと一緒にいるの。あなたには指一本触れさせないわ。」
壁に背中を支えられながらも雌猫の銃は正確に私を捉えている。薄く笑みを浮かべながら奴は続ける。…狂っている、この女は。
「彼も言ってくれたもの。君を支える、一緒に生きようって。だから私も…応えなくちゃいけないの。」
…そうか、お前はこの狂人に囚われているのか。だからそんな事を無理矢理言わされたのだな。
すまんな、今はお前を助け出せそうに無い。だが待っていてくれすぐに、すぐに、必ず、助け出してやる。
その時が来たらもう絶対にお前を離さない。

11月27日
十何年振りにシリエジオに搭乗した。どうやら勘は鈍ってはいないようだ。
何しろリンクス戦争時代の代物なので起動するかも知れなかったが、何カ所かを既存のミラージュ社製に換装すると
立派に蘇った。ORCA旅団の目的等どうでも良い。クレイドルが何機落ちようと私の知った事ではない。
ただ奴とあの雌猫、メイ・グリーンフィールドは完璧な連携で今やオッタルヴァ、ホワイト・グリント以上の
実質上最強のリンクスと目されるまでになった。
私がクレイドルを落とし続ければ企業連は必ず奴らを私にぶつけてくる。それこそが私の望みだ。
もうすぐだ。お前を救い出すまで…楽しみにしていろよ、貴様。

このページへのコメント

久しぶりにまた読んだがやっぱり良いものだな

先生が病んでいるのは

0
Posted by ロスヴァイセ 2015年11月27日(金) 16:32:43 返信

ある程度はAIで、AIの処理速度を超える部分を首輪つきが自分でやってるんじゃない?リンクスだからある程度脳波制御できそうだし。

0
Posted by 首輪なし 2015年07月15日(水) 17:01:36 返信

五体不満足で傭兵が出来ないのに最高の傭兵になったのか?
義手義足とか

1
Posted by 通りすがり 2013年04月23日(火) 20:09:35 返信

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