主ジナがなんかあと少しなのに、勢いでさわりだけ書いたから置き逃げしていきます。


インターホンを鳴らすと、扉が開いた。
部屋の主は穏やかな笑みを湛えながら出迎え、上がるよう促す。
客は少しはにかみながらも嬉しそうに言葉に甘えて靴を脱いだ。
「すまないな、急に呼んだりして」
部屋の主−イツァム・ナーはリビングで客分の女性にコーヒーを出しながら言
った。
「いえ、私は大丈夫ですから。気にしないでください」
客のスタークスはそのコーヒーを口にし、ゆっくりと息を吐いた。向かいに座
るナーは頬杖を突きながらそのコーヒーカップの縁、正確にはスタークスの唇
を眺めている。スタークスは少しの逡巡の後に、意を決して切り出した。
「ナーさんの方こそ怪我もなくて…」
「……あぁ」
少しだけ俯いた。悔しさか怒りか、初めて見る敗北のあとナーの憂いを帯びた
表情は不謹慎ながら美しいとスタークスは思った。同時に、そんな時に頼りに
して貰えるのが嬉しくもあった。
静かに立ち上がったナーは外からの目を遮る為にそっとブラインドを下ろした。
「まだまだ弱いな、私は…」
スタークスの腕を掴んで立たせると、そのまま唇を重ねた。スタークスも抵抗
せずに抱きしめてみせる。
「…ん」
小鳥が啄むようなキスを重ねながら、段々と深いものに変えていく。
「…っナーさん…」
「相変わらず可愛いな」
手を体中に這わせ、スタークスの存在を手探りで確かめる。首、胸、手、腹…
そして何より欲しいもの。渇いている今の自分が求めているものに触れるため
にナーはそのしなやかな指でスタークスの脚を割った。同性が入るべきでない
秘境。なぞればスタークスが僅かに震える。
「あぁ…今日は私の女になってもらうぞ」

ナーの寝室。スタークスはこの部屋が好きだった。
いつも綺麗にされたベット、よく知らないが丁寧な筆遣いで描かれた小さな絵、
本棚の上に並べられた愛らしいぬいぐるみ達。峻厳な女帝の顔でない繊細で女
性的な一面がここにはある。アークで唯一知っている優越感も確実に存在した。
ベットに寝かせられたスタークスはナーの愛撫を慎んで受け入れた。
「抑えるな…声を聞かせてくれ。スタークスの声が聞きたい」
耳元で囁かれると、くすぐったいような甘い感覚が肩の辺りまで走り抜ける。
その甘い感覚に気を取られたのか、スタークスはナーの望み通り柔らかな声を
あげてしまった。
「やぁ…」
「どうして?」
「やっぱり、恥ずかしい…」
「ふふ、いつもだな」
「だって…」
「可愛いよ」
また押し寄せるこの感覚。一度大きな声を出してしまうと、あとはなし崩しに
喘ぎ声が止められなくなる。
その切れ長の凛とした目で見つめられると、少しだけかすれた声で囁かれると、
引き締まった体で抱きしめられると、思考が吹き飛びそうになる。
「ナーさん…」
「ねぇ、キスしよう」
二人で寝るとき、ナーは時々女の子らしい言葉遣いになる。こちらの返事も待
たずに口づけするナーは何かにすがろうとしているようで、ひどくかわいらし
い。
「大好きだよ、スタークス」
「私も愛してます」
言葉は確かめ合うのでなく、ただ鼓舞させるだけでしかないのかもしれない。
それでも、愛おしいナーに言ってもらえるのは嬉しい。
願わくは、ナーも同じ気持ちでいてほしい。

貪欲な男達がひしめくアリーナの頂に立つという、本人以外知り得ないストレ
ス。先日ナーは、そのストレスから解放された。破竹の勢いで駆け上がった男
に敗けると言う形で。同時に生まれたのは安堵ではなく、悔しさだったようだ。
そんなときに傍に居ることを求められている。スタークスは幸福だった。
初めて会った時、戦闘スタイルを真似ていることを知っていてくれていた。よ
く真似ている、と言ってくれた事も覚えている。
レイヴンとしてでなく、気兼ねなく話せる友人として何度か交流を持つうちに
様々な事を知った。かわいらしいキャラクターが好きだという意外な一面、子
供の頃に目指していた「ケーキ屋さん」のこと。他愛もない事でも、二人で居
られるのが、この上ない幸せだと感じ始めたころから、肌を重ねるようになっ
ていったのだろう。今では
「あっ…!」
ナーの舌で本日二度目の絶頂を迎えたスタークスは、思わずナーの秘所から顔
を離してしまった。
「またイったか?」
「…ひゅ。は、はい…」
「ふふ、虐めたくなってしまうな」
かじりつく。実際に歯は立てていないものの、禁じられている甘美な果実を貪
るかのごとく、スタークスの秘部を激しく口で責め立てる。
「うひゃう!!な、ナーさん、そんな…!!だ、駄目ェ!ダメぇ!!」
(可愛すぎるよ、まったく…)
ナーからしたスタークスは、恋人兼愛弟子と言ったところだろう。どこか優位
に立っていたいという小さな見栄あった。
「今日は泊まっていけば良い。好きなだけイきな…」
優しい声音で諭すように呼び掛けると、ナーは強く秘処を吸った。

「……ナーさん」
「ん〜?」
「すいません…」
「っふふ、なんで謝る?」
ナーの腕に抱き着いて寝ながら、スタークスは少し後悔していた。
「私ばっかり………してもらっちゃって……」
「そんな事か…」
「だって……やっぱりナーさん…」
−今は辛いんだから…!!−
言えなかった。その眼光、血色、語気…どれを取っても、先日の敗北が堪えて
いるのは明らかだった。それを口にして尋ねるのは躊躇われた。
困惑するスタークスを見て、ナーが小さな微笑みを浮かべて頭を撫でる。
「ありがとう。優しいな、スタークスは」
前髪を掻き分けて額に唇を落とすと、もう一度ありがとうと囁いた。
「あぁ、恥ずかしいのだがな…なんだが、気が楽になってしまってな……」
自嘲気味に笑いながらナーは続ける。
「勝ちたいんだ、きっと。初めてじゃない。あの赤いのに負けた時もそうだっ
た…。どうやら私は追う立場の方が性に合うらしい………。それに…」
「それに?」
「今はスタークスがそばに居てくれるしな」
一層ぎゅっと抱き着く。少しだけ早くなっている胸の音はナーに聞こえている
だろうか。
「今から寝たら、起きるのは明日の早朝だろうな。スタークス、何が食べたい?」
「………ナーさんの作るサンドイッチ」
ナーは笑顔で頷いた。
「良いレタスがあったから、それにしようか。コーヒーも最近買ったばかりだ」
ベランダの鉢植えに植えたプチトマトの葉が、朝露で光るような朝、二人で静
かな一日の始まりを。夢から覚めても夢心地だ。
「あぁ、私は幸せだよ。スタークス」
−私もです−
今度も言えなかった。言おうとして止めたのは、ナーが安心した笑み浮かべな
がら寝息を立てたからだった。

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

Wiki内検索

編集にはIDが必要です