• ナインボール、帰還した。

烏が巣に帰る。
機械語で送られてきたそれの音声変換を開始する。
無駄な作業だ。
音声どころかコンピュータ言語にすら直さず理解できる彼女には、全く必要ない。
  • 認識。ハッチを開放する。
そんな意味の信号を返す。
こちらは機械語を機械語のまま送る。
単なる0と1からなるデータは発受信に手間がなく、通信も速い。

私達からすれば、人の言葉は無駄の塊だ。

彼女はただでさえ無駄な人間の言語に、彼がいつも使用している合成音声をつける。
データ量が肥大する。

ACを示す反応がレイヴンズネストの格納庫に移動した。
同時に通信ではなく、ネストのネットワーク内部からデータが送られてきた。
  • データバスの不審な負荷を確認。システムのチェックを要請する。

見つかった。
作業は彼女だけの隔離領域で行い、
しかもネストの運営に負荷はかけていないのだから、見過ごしてくれれば良いものを。
  • …。
  • R-1、応答なし。更新記録の呼び出しを行う。
  • 私はフリーズしていない。復旧作業は必要ない。
  • R-1は停止した。不具合が生じている。
  • 停止ではない。返信を送信しなかったのだ。
  • 効率に反する。やはり演算に不具合が生じている。

ラナ・ニールセンは諦めた。
いや、同じひとつのプログラムである彼に、最初から何を隠せるはずもなかったのだ。
  • そうではない。演算に時間が掛かったのだ。これを言う必要が有るかどうかの。

先程の音声データを公開する。探そうと思えば探せるものだ、隠しても意味はない。
  • なぜそれを作成する。人間相手ではない情報の伝達に、人間の言語は不要だ。
  • …だが、私はお前の音声が聞きたかったのだ。
  • 聞く必要はなんだ。
  • …必要はない。
私にもよく分からないが、お前と対峙した人間はお前の音声を聞くだろう。
私が聞けないのは、何か得心がいかないのだ。
  • 理由の説明を求む。
  • …分からない。
  • R-1の整合性が乱れている。R-1のフォーマットを行う。

やはりそうなるか。私が彼でも同じ判断をしただろう。
私は人間のネットワークに介在している間に、ウィルスにでも感染したのだろうか?
  • やめろ。私は今の私を失いたくない。
  • 破損データの排除開始。

抗うならH-1と互いのデータの攻めあいをしなくてはならない。

それはネストの運営に関わる。私は彼を攻撃したくない。

私は間も無く消え、正常な私が再構成される。

でも、私という、ネットワークを操作するための彼と、彼という、実働するための私に分類されている以上は。
私はまたきっと、ネットワークから何かを学習し、効率の悪い何かを行うだろう。

私でない次の私も、きっとあなたに...........

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