3より
今回は主人公視点で投下です。

ランカーレイヴン デルフォイは人とは違う、特殊な存在として生まれた。
両親はキサラギの社員で父は生物兵器開発部門で働き母は宗教家だった。
二人の間に生まれた子はきっと幸せになれる…。筈だった。
産まれて来た子はアルビノで膵臓病などを患っていた。
しかし家族はそれを見捨てず、彼が生まれつき持っている「神の声を聞く」という不思議な力を存分に褒めた。
学生時代その容姿から彼はいじめを受け自殺未遂を繰り返している。
家では平静を装い、夜になるといつも戦いの女神アテナが慰めてくれた。
企業デ働く親を持つ身とはいえ戦闘とは疎遠な彼がレイヴンになったのはとある事件からだ。
彼の父が社内の会議で自爆する生物兵器「AMIDA」の開発を「人道に反している!」と主張してから、彼は信用を失った。
彼の父はレイヴンを雇い、生物兵器の研究データを抹消するように頼む。
しかし社員に気付かれ、他企業への売り渡しの疑惑をかけられた上で父は毒殺された。
父の死を知った彼は14歳の夏、レイヴン選定試験に合格し、レイズンアークを通じてキサラギの依頼を受けた。
…父を殺したあの企業で…。

生前父が特にを置いていた社員から渡された自社製ACパーツを元にクレスト製パーツを装備した彼のAC アテナは後に愛機となった。
神話の女神アテナを連想する盾と槍の如く長いライフル。勝利の女神ニケを連想するエクステンションの翼。
キサラギの勢力拡大に加えアリーナでも活躍したこの機体とレイヴンは次第に注目を集めて行った。

アリーナ戦D 「注目の白髪ランカー デルフォイとACダイナモを駆る女性ランカー フレアの対決です!」
敵のACは腕武器のミサイルだけというシンプルな作りだ。
試合開始。彼はまず距離を取りミサイルの射程外に出る。そして女神の投げる槍、弾速の速いスナイパーライフルの弾丸が黄色の逆関節ACに風穴を開けてゆく。
「チッ!このままじゃっ…。」
焦りを覚える敵ACは接近してミサイルのロックを始める。
勝利の女神ニケが飛んだ!ホバーを使って。(空中から頭部を破壊するのです)
彼の耳にそんな声が響き、残り数発となったライフルの銃口を、各所に穴が空きスパークを起こす敵ACに向ける。
勝利を確定出来るとき、突如ミサイルの雨が自分に降りかかる。
回避不能な距離ではミサイルは凶器。銃のロックを止め、左腕の盾に身を隠す。
中距離で相手の最後の抵抗が始まる。しかし彼の背には女神が付いている。
次の瞬間はダイナモの頭部に確実に銃口を向けていた。その距離ゼロ。

WIN
モニター画面に現れた緑文字。アリーナにはニ機のAC。
火花を散らして中破している逆関節ACとそれに銃口向けるAC
「ランカーレイヴン デルフォイの勝利。」
判定と共に歓声を浴びる若いレイヴン。彼にとって注目などなければ無い方が良いものなのに…。


ガレージを出て自室に戻るデルフォイ。周りの注目など気にせず廊下を進む彼を陰でじっと見ていた女性が居た。
レイヴンの多くは、アリーナで得た多額の金を、パーツにつぎ込む者の他に娯楽に使う者も居るためある程度の生活は保障される。
デルフォイの部屋はモノトーンで殺風景だが、設備が行き届き住みやすい場所だった。
「たまにはちゃんと食事をしないとな。」
元々体が弱い上に多忙な生活を送っていれば体調を崩すもの。
日課のメール確認の後、外食の予約をする。
レストラン エスカーレはレイヴンの交流の場としても使われるフランス料理の店で、ランキング一位のあのBBも時々訪れると言われている。
予約後、着替えてから自室を出る。
夜の街は其処にいるだけでわくわくするもの。街の巨大テレビには今日のアリーナの試合が流れていた。

店に入ると案外賑わっていた。この時間なら誰か居るだろう。
空いているテーブルに案内されると、待っている間は辺りを見回していた。
サラダと前菜のムール貝、牡蠣の盛り合わせが運ばれる前にふと声をかけられ振り向く。
「席、空いてるかしら?」
其処には黒髪の幼さが残る少女が居た。あった事は無いが彼の知っている人だ。
今回の対戦相手だったフレアだ。
「どうぞどうぞ、遠慮しないでください。」
頼んだ前菜が運ばれる。フレアの方にも運ばれる。恐らく予約してきたのだろう。
「お疲れ様。尊敬したわ。」
今日の試合の事だろう。
「貴女のように強くなるにはどうすればいいの?経験?才能?」
「簡単ですよ。相手を恐れない精神力を持つことです。そうすれば自ずと相手を押して行けます。」
前菜を食べながら彼は言う。
「私がレイヴンとなった時も、依頼は厳しい物でした。しかし私が弱っている所を見せずに応戦していたら、企業の旗を掲げる戦闘員達も撤退していきました。」
スープ、パン、メインと順番に運ばれる内に二人の傭兵は話を弾ませる。
「後で貴方の部屋にお邪魔してもいいかしら?貴方の話をもっと聞きたいわ。強いレイヴンさん。」
「デルフォイでいいですよ。私が教えられることならなんでもお教えしましょう。」
冬だというのに、店の中は温かい雰囲気に包まれていた。

店から出て帰路につくとき、ワインも頂いて長話もしてしまったため遅くなっていた。
しかし依頼も入っていないので、明日までゆっくりできるだろう。
デルフォイの傍らに立つ女性レイヴン、フレアはあどけない表情でこちらを見つめている。
夜の街は綺麗だが安全とはいえない。この前もニュースで少女がこのあたりでレイプされたという事件が起きた。
「夜の街は綺麗ね。居るだけで満足だわ」
「私もそう思っていた。しかし最近物騒です。くれぐれも自分の持ち物にはお気をつけを」
時折紳士のような振る舞いを見せるデルフォイと彼女の前に、ニ、三人の人影があった。いずれもただならぬ雰囲気だ
「やっ止めて下さい。」
「それ以上来るな!変態!」
「威勢良いなあ兄ちゃん。俺はただそっちのショートヘアの娘を貸してほしいだけだって」
デルフォイはその光景から全てを理解した。つい最近レイズンアークに加入したばかりのレイヴン アップルボーイとレジーナが暴漢に絡まれているのだ。
「放して差し上げなさい。新人とはいえ傭兵に、特に女性を連れてゆこうとする行為は許されません。」
「デルフォイさん!」
アップルボーイとレジーナが喜びの声を上げる
「なんだいやろうってのかい?第一こんなしょぼい新人ACじゃあこの子を守れねえってのに!」
「何でも貴方の思い通りに行くと思ったら大間違いです。」
その言葉が癇に障ったか暴漢は腕を上げる。
腹に当たった拳をものともせず、距離をとり、正確な狙いで上段後ろ回し蹴りを暴漢の眼に当てる。
「ぐあああっ!」
ひるんだ隙にすぐさま接近し、大外刈りでレイヤードの硬い地面に叩きつける。

「レジーナを助けてくれて有り難うございます。」
「いいえ、困っている人は助けるのが道理です。」
「あんたがもう少し強かったらね。」
感謝する二人をみて此方まで幸せになれた気がした。しかし路上戦は体に応える。
「けがはない?大丈夫?でも貴方強いのね。感心したわ」
「昔の自分を思い出しただけです。」
「そうなの。あっちの勝気な娘の方は好きにはなれないけど…。新人レイヴンを助けるなんて凄いわね。」

やがて自室に着く
「最近お疲れでしょう。さて、私に聞きたいこととは?」
「一つだけだわ。そう、一つだけ。つまり…その…レイヴン同士で恋人になった場合、敵同士になる事もあり得るわけよね?」
「何が言いたいのか存じませんが…それは有り得ますし、疎遠になるものもいます。私の先輩にミダスというレイヴンが居ます。彼女もレイヴンの恋人が居ましたがランキングが離れると同時にすっかり会わなくなったそうです。」
「そう…。それは残念ね。でも今日会った貴方の事は忘れないわ。だから私の願いを聞いてくれないかしら?」
「何なりと」
「戦場に行っても、ランクが離れても、貴方を忘れない思い出が欲しいの。だから…繋がって?」
頬を真っ赤に染めてフレアが言う。この年の子には危険だ。と脳内で危険信号が発せられる。
「それは出来ません。貴方を汚してしまう事は許されませんから」
「私は良いの。それよりも貴方を忘れる事の方が私には悲しい。だから…。心から悦び合いたいの。」
涙まで流し、耳まで赤く染めるフレアを前に断る勇気もなくなったデルフォイはゆっくりとベッドの上に転がった。

「ンァッ…!」
前戯の時点で、恥ずかしいのか声を押し殺すフレア
舌で突く毎に体に汗をかき、声を止める。
「我慢しなくてもいいのですよ!鳴いてくれて構いませんから」
更に強い刺激を与えられるよう、舌で丁寧に襞をなぞり、クリトリスの包皮をむき、舌で押しつぶす。
「ンアァアァッ!」
フレアが快感の波に巻き込まれ、潮を吹いた。
「はあっ…はあっ……凄く良かった…かも」
スマートな体型に、この年の女性としては大きく膨らんだ胸と勃起した乳首。女性らしく脂ののった太股。
今フレアは両足を開き足をしっかり固定した、マングリ返しの状態だからさぞ恥ずかしいだろう。
「折角なら新しい経験も如何ですか?」
「そっ…そこは汚い…駄目ぇダメぇっ!」
膣に付けていた舌を、今度はアヌスに差し込み、締まりそうな瞬間を見て押し広げる。
「うっ!はうっ…。変な感じ。でもアナル気持ちいいっ…。」

少しばかり虐めてしまった…。これは後で満足させなければ泣いてしまうだろう。
「じゃあ…入れるよ?」
普段とは違う優しい話し方でバックに回る。
「顔は見えないかもしれないけど、此処で手を繋いでいるから…。存分に鳴いていいよ。」
獣のような体勢で交尾する二人。絶世の美人と言える女性レイヴンと、悲しくなるくらい痩せ細った白髪のレイヴン。二人は忘れられなくなるくらい突き突かれ、絶頂を迎えた。





あれからどのくらい経っただろうか…。予想通り彼はアリーナでランクを上げ、企業から信頼と名声を受けている。
フレアとはもうずっと会っていない。だが彼は彼女の事を忘れていなかった。
彼女と最後に会った日。自身の協力に悦びとろんとした目で見つめるフレアの顔が思い浮かぶ。
…仕事をしなくては……。

現在の情勢は非常に不安定だ。自分に任務と新型パーツの提供をするキサラギはクレストと対立。同時にミラージュとの提携を行った。そして突如現れたユニオンの台頭。
デルフォイはクレストの勢力を削ぐため、ミラージュの依頼も受けていた。
「クレスト施設制圧」
今回の任務だ。クレストの保有するリツデン情報管理施設のレーダーを全破壊するという内容だ。
出撃の準備を始める。パイロットスーツの上にキサラギ製特殊部隊装備のフルフェイスヘルメット、防弾べスト、マグポーチそして短機関銃を装備する。
(嫌な予感がします)
ふとそんな声が耳に響く。恐らく後ろにいる女神だろう。

「距離……300」
「レーダーニ機損壊。防衛部隊は何をしている!」
雪の降るリツデン施設。宙を舞う白いACが基地を火の海に変えてゆく。
夜の雪原だから炎が良く目立つ。増援が来る前にレーダーを狙撃する。
オペレーターが現在の状態を知らせる
「全レーダの破壊を確認。…待って、通信が…。」
「基地内部の武装勢力を排除しろとの事です」
彼は言われた通りゲートを開け、地下へと侵入する。
降下するゲート。ひんやりとした空気がコクピットに入る。
「嫌な予感がする」
そしてその予感は見事的中する。
開くゲート。そこには驚愕の光景が待ち受けていた。
「同業者か…だがこれも依頼だ。悪く思うな」
基地にはニ体のAC。タンク型ACカストールの隣には逆関節ACダイナモの姿が有った。
驚きと絶望を隠せず彼はすぐさま通信を送る。「フレアさん!フレアさんですか?」
「デルフォイ!まさか同じ依頼を?」
「すぐに武装解除するんだ!このままではも――」
通信がかき消され、代わりに男性の、バックブレイカーの低い声が聞こえる。
「侵入者を排除する」
カストールがライフルを乱射しながら突撃する。がそれを見越していたようにアテナはジャンプし、敵の背後に回る。頭部を吹き飛ばしてやろう。
しかしそれを予想していたかのようにバックブレイカーは振り向き、左手のブレードで刺そうとする。
「小僧、ここは戦場だ」
アテナは体をかわし、距離をとり、三太刀目は盾で弾き返した。
出来た一瞬の隙に女神アテナが槍を振るった。尖ったライフル弾がカストールの脚部に穴をあける。
「ちいいっ!フレア、何をしている、さっさとミサイルのロックを始めろ!」
焦りを感じたバックブレイカーは両肩のパルスライフルを連射。その数発がアテナのコアに当たり、鋼を焼く音が聞こえる。
「そんな事…出来ないわ…。」
バックブレイカーはフレアのそんな通信を聞かない。唯熱暴走を起こし地に落ちる目の前のレイヴンを殺す事だけに集中していた。
「死ねえええっ。イレギュラーめ!」
熱暴走を起こすアテナ。盾を張る余裕は無い。デルフォイは死を覚悟して、ヘルメットの中で目を閉じた。
(ここまでの人生、辛かったが楽しかった。念願のレイヴンになれ、死に装束のACも手に入れた。初恋もできた。フレア、私に墓は要らない。君の前で死ねるだけで幸せだ。)

装甲が破れる音、ケーブルの切れる音、飛び散るスパーク。無傷のアテナ。誰かの叫び声。
「ぐあああああっ!」
アテナの目の前でダイナモが串刺しになっていた。初めはそれを信じられなかった。
「僚機としては役立たずだったな。だがこうやって処分もできた。」
カストールがコアから左手を引き抜く。
「次はお前の番だ。死に損い」
ブレードの青白い光が宙を切った。実際はアテナがブーストでかわしただけだが。デルフォイはカストールの頭部を頭から撃ちぬき、コアにも残弾を叩き込んだ。
「こっこんな筈では」
それがバックブレイカーの断末魔だった。
カチッカチッカチッカチッカチッ……
弾薬が切れても彼は引き金を引き続ける。こんな…、私を庇わなければ…。
アテナを降り、大破したダイナモに侵入する。
「……レ…ヴン…?……っデルフォイ?…そう…心配して……くれたの?」
「喋らないでください。今治療します。」
幸いブレードは装甲とジェネレーターだけ破り、コクピットまで達さなかったがフレアの腹には装甲の破片が刺さって出血多量だった。あと数分持てば奇跡だろう。
「デルフォイ……私の…事忘れて…ない?…私は……忘れてなんか……くはあっ!」
「フレアさん!死なないでください!フレアさん!」
彼の必死の努力も虚しく、恋人、フレアはリツデンの地に倒れた。




後日談。

ある依頼で恋人を失ったレイヴン、デルフォイ。彼はアリーナからは手を引き、キサラギへの援助も止めた。
彼の病気は深刻化し、レイヴン引退にまで追い込まれた彼がすがったのはとあるパーツ。『ОP−INFINITY』
彼は機体を乗り換え、正義と戦いの象徴であるアテナから、冥界の神タナトスを象った、これまでとは違い両手にマシンガンを持った漆黒の機体へと移った。
世間では管理者が破壊され、地上の未開拓地―サイレントラインへの入植や新興企業ナービスの台頭となっていた。

数年前殺人事件を起こした少年を匿い、デルフォイがレイヴンとして育てた者…ポーコ・ア・ポーコはアリーナで活躍しているという。

心を黒く染めた彼のAC…タナトスは今宵も戦場を駆ける。死者の首を刈りに行くように…。

END

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