「刺激的にやろうぜ」
「黙れ!」

その声で目を覚ました。セレン…私の先輩にあたる優秀なリンクス。
クラニアムのミッションの前に、何処からかやってきて協力を申し出た…

そうだ、私は何故生きてる?私達は彼女の育てたリンクスと、逆脚の機体に…

「…その声!」
「よぉ、ブラス・メイデンもお目覚めか」

声、あの逆脚だ。
状況の把握より先に激昂しかけ、それにより状況を把握した。
殴りかかることすら出来ないのだ。私達はなべて拘束され、首輪で繋がれていた。

「あなたは、私達をどうするつもりですか」

ウォルコット家の少女が尋ねる。
ならばセレンはそれを尋ねなかったようだ。私も尋ねる気は起こらない。
女性を4人集めて一人の男が生殺与奪を決めるなら、まず良いことは起こらない。

(待て、4人?もう一人の少女は誰だ。それに首輪付きは…)

「安心しな、嬢ちゃん。俺はこういうのにさしたる興味はないんだ。
不足を補う程度にしかやらないさ。それに趣味で言えばどちらかというと…」

男がこちらを向く。
顔の筋肉が一瞬痙攣を起こしたのが分かる。

(…いやだ)

どんなAFにもネクストにも感じたことのない情が滲み出てくる。
これは何だ。すごく不愉快でそら寒い。

企業に属さないから、ミッションを知らせなかった男の顔が浮かんだ。

あのとき、5機のネクストが全滅したのを自覚したとき、彼に関しては安堵した。
連れてこなくて良かった。
彼が破壊されるのを一生見ることがなくて良かったと。

「そう怯えるなよ、ブラス。痛くしやしないさ。初めてでもないだろう?」
「喋るな。汚らわしい」

有り得ない。
なのに虚ろに笑って膝で進む男から、縛られた足首と後ろ手を使って距離をとる。

半ば自由のきく足で蹴りあげるなり頭で突くなり幾らでも反撃は思い付くのに、
あの男のことがちらついては逃げてしまう。

「あっ」

急にブーストを切って自由落下するような浮遊感。
私は広いベッドからずり落ち、頭を打った。

「おい、やめろ!」

セレン、私のことは構うな。
そう言おうとして、言えない。何故だ。どうしてこんな時にロイのことでいっぱいなんだ。

痛みで思うように動かない私の上に、狂人が覆い被さってきた。

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