手こずっているようだな、尻を貸そう

「おいおい、もうギブアップかよ?もうちょっと頑張ってくれねぇと後続に可哀想だぜ?」
ウィンは答えない。白濁液にまみれた身体を横たえ天井を虚ろな眼で見つめている。
「…ろ…い…ゆるして…くれ…」戦士の誇りも亡き人への想いも全ては一人の狂人に踏みにじられてしまった。
かくして彼女、ウィン・D・ファンションは死んだ。そこに横たわるのは魂の残滓と、ただ生温かいだけの肉の抜け殻。
「あーダメだこりゃ、もう壊れちまった…ったく何で俺はもっとモノを大切にできないのかねぇ…」
狂人は自嘲的な笑みを浮かべながら残りの哀れな獲物達の方に眼を向けようとした。だが彼の視界に移ったのは。
「っああッ!!」セレン・ヘイズの靴の底だった。一瞬視界が闇に包まれ何も分からなくなる。それでも彼は意識を手放さなかった。
何とかして飛びかけた意識を集中し直し床に踏ん張り、顔を上げる。すかさずそこに第二撃が飛び込んできた。
「ぶふぅっ」顔が切れたのだろう、夥しい量の血液が床を赤く染める。それでも尚狂人は冷静だった。赤くにじむ視界の内に勝機を探る。
銃が入った俺の服。いや、取り出す暇がねぇ。床に転がったレンチ。こいつも駄目だ。遠すぎる。
…人質。そうだ、こいつはいい。王の嬢ちゃんは…止めてくれるかわからねぇな。それにちぃと大きすぎる。えーと、『共犯』のコイツは…まぁいいか。
どっちにしろ最後の最後で止めちまった根性無しだ。

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