注意事項
・ラストレイヴンの女体化ズベン×リムの話です。
・女体化とかそういうの苦手な人はヌルーおね。
 「だが安心しな、『天秤の爪と弾丸』をNGワードにすれば見えないぜ!」
・女ズベンがどうしても思い浮かばないウボァーって人は
 半角二次元の保管庫の26th826氏の女装ズベンとか参考にしてください
・顔つきとか服装は人それぞれこだわりがあるだろうから特に書かない事にしてます
 「お前なら妄想できるかもしれん。後は頼んだぞ、レイヴン!」
・ちょっち、つうか大分長くなった。スマン。「だが安心しな、『天秤n(ry

・主人公の性格とかアセンは人それぞれだと思うんで主人公役にジナイーダあててます
・主人公の役割はジナと隊長が二分してると思っててください
・なんで22人のレイヴンじゃなくて21人のレイヴンって事でひとつよろ
・設定は基本的にEG準拠。よって強化人間の描写も『一応』あるっちゃああるんでヨロ

・本当は続き(エピローグ、バトルシーン)があるんだけど長くなりすぎたし、
 この先はエロシーン無いんで切った。続きが読みたい奇特な人はリクエストしてね(´・ω・`)


某日、午前八時。それは、バーテックスが二十四時間後の総攻撃を宣言した時刻である。
運命の二十四時間がここから始まるのだ。
二十一人のレイヴンが最後の一人になるまで戦った二十四時間が。


小規模な武装勢力を率いるレイヴン、ズベン・L・ゲヌビはその時、
本拠を置くR11エリアの司令室で紅茶を飲んでいた。
彼女の率いる武装勢力は各地に存在する武装勢力と同じ。
特攻兵器により土地が荒廃し、食料の調達もままならない連中が流民と化し、
やがて武装して移動、現地徴発、平たく言うと略奪を繰り返す様になったものだ。

とは言え、彼らをただの山賊まがいと非難する資格を持つ者はいない。
彼らも生きる為に戦っているのだ。
持たざる者が持てる者に対し、戦っているのだ。誰が非難できよう。

「レイヴンによる新たなる秩序の創出…ねぇ」

確かにいい響きかもしれない。
現在君臨する統治機構であるアライアンスは都市部はともかく、
周縁部には充分な力を及ぼしてはいない。
壊滅した企業の連合体ゆえに体力に乏しく、
地方の人間を救う事は難しかった。

そんな中で、新たな秩序は掲げる組織が現れれば、
アライアンスに食べさせてもらっている連中はともかく、
アライアンスに何もしてもらえない人々は同調するに決まっている。

「残り二十四時間、か…参ったな〜、こりゃ」

宣言を聞き終わると、続いてアライアンスが自分達に
同調しない全レイヴンに懸賞金をかけたニュース、
負けじとバーテックスもアライアンス所属レイヴンに
懸賞金をかけたニュースが伝わってくる。

紅茶を啜るズベン。これは参った。
そう思っていると通信が入る。部下からだ。

「ズベンだ。どうした」
「姉御、聞いたかい! レイヴンを一人でも殺れば一攫千金だぜ!
 一番安いムームだって三万だぜ、三万!
 チャンス到来って奴だな、腕が鳴るぜ!」
「ああ、そうだな。だが迂闊には動けん。
 アライアンス、バーテックス双方の動きが読めないからな。
 だが読めたらヤルぞ。今日はオレもACでガンガン出る。
 きつい二十四時間になるからな、今はとにかく休んでおけ」
「あいよっ!」

それだけ言って通信が切れる。
ふぅ、と溜息をついてズベンは椅子に身体を預けた。

「呑気なもんだよ、ホント。私の気も知らないで」

小さく呟く。
彼女は、部下の前や戦場では一人称をオレで通していたが、
一人になった時などは私を使っていた。
元々は私しか使っていなかったのだが。

「私だって狙われるんだよ…」

とは言え、仕方ないと言えば仕方ない話だった。
彼女の組織は、基本的に同郷の仲間で構成されている。
半年前の特攻兵器の来襲。
あの時、彼女の故郷はこの地上から消えた。

完全に、何もかも消え去ったのだ。
故郷なき民。これほど惨めなものはない。
そんな彼らが、一攫千金を求め、
懸賞金に狂喜し刹那の夢を求めるのも仕方ない事だった。

暫くして、後ろでドアが開閉する音が聞こえた。
誰かが入ってくる。

「あ、リム。おはよ」
「…」

彼、リム・ファイヤーは答えない。
リムは寡黙な男である。必要な事以外は決して言わない。
数日前にズベンが自勢力に引き込んでからもそれは変わらなかった。
右頬についた大きな傷が、彼が歴戦の猛者である事を滲ませる。
特攻兵器出現直前のナービス紛争時にレイヴンになった男だというのに、
若さやそれに起因する甘さは欠片も見られなかった。

そんな彼を、しかしズベンは決して嫌っていなかった。

「聞いた? バーテックスの『アレ』。君の目的完遂も近いかもね」

コーヒーメーカーでコーヒーをいれているリムは、やはり答えない。
リムの目的は、全てのレイヴンの抹殺。
つまり、ズベンもその標的の一つである。
だが、ズベンは敢えて彼を引き込んだ。
気に入っていたし、他に理由もあった。

「これで生き残りのレイヴンが釈迦力になって殺し合うよ。
 嬉しくないの?」

返事が無い。いつもの事ではあるが。
やれやれ、とズベンが溜息をついた後になって、ようやくリムが口を開いた。

「…お前は」

低く抑えられた、鋭利な刃物の様な声。
眼光も怖ろしげで、鞭の如き鋭さを持っていた。
彼の怖ろしい視線とこの声が作り出す威圧感により、
ズベンの部下でも彼に積極的に話し掛けようという者はいなかった。

「お前は、嬉しいのか」

ズベンをリムの視線が射抜いた。
が、彼女は飄々とかわす。

「さーて、ね。ま、面倒な事になったとは思ってるよ」

ズベンがそう言い終わったのとほぼ同時に、彼女の正面の端末から音が鳴る。
画面を見れば、『MISSION UPDATE』とある。

「おっ、早速来たか…どれどれ……
 おーおー、アライアンスは一件、バーテックスに至っては二件か。
 やる気満々だね」
「依頼か」

彼女が依頼案件を読んでいる間に、リムが後ろに回り込んでいた。
少しびっくりしたが、いつもの事と言えばいつもの事だ。
依頼が対レイヴン戦なら、リムはズベン達を置いて
出て行ってそのレイヴンを始末し帰ってくる。
リムはそういう男だった。

自分勝手な行動を取るリムに対し部下からは不満の声が絶えないが、
ズベンはそれを黙殺している。
リムとの間に結んだ契約ゆえに。

「うん。でもレイヴン狩りは流石にまだ無いね。
 前線基地を突っついてみればアライアンスの戦術部隊が出てきそうだけど、
 流石にいくら君でも戦術部隊総出でお出迎えされたら無理でしょ」

ズベンの言葉に対しリムは無言。
腕がどうこうという話ではなかった。
リムのACバレットライフは瞬間火力を最も重視して組まれている。
そのアセンブルの関係上、弾の数は決して多くない。
それに撃った弾が全部当たるという事は無い。
AC戦はよくても二機までが限度だろう。

「ま、暫くは様子見だね」
「何処へ行く」

席を立ち、伸びをしながら出口へ向かうズベンにリムが声をかける。

「自分の部屋。今日は忙しくなりそうだから二度寝してくるよ。
 襲いたかったら襲ってもいいよ〜じゃーね〜ん」

ふらふらと手を振り去るズベン。
リム相手にこんな真似が出来るのは彼女ぐらいなものだった。

=====  ・・・  =====
「まさかな…ライウンがここまで早くリタイアするとは……だがプリンシバルも戦死か」

端末を操作しながらリム・ファイヤーが呟く。
現時刻十時二十八分。
情報が錯綜していたが、ズベンはそういうところに抜け目が無い。
情報屋からの情報はしっかり拾い上げる彼女は、世界情勢を正確に把握していた。
だからこそ、彼女の勢力は今まで生き残ってこれたとも言える。
そのズベンの端末を、リムは契約により自由に操作できる事になっていた。

現時点で、生き残りレイヴンは18人。
八時二十分、アライアンス戦術部隊がディルガン流通管理局を強襲、制圧。
バーテックス所属レイヴン、ライウンはエヴァンジェとの死闘の末戦死。
だが、十時十四分にアライアンス戦術部隊所属レイヴンのプリンシバルが
バーテックスの刺客によってベルザ高原で戦死。
他には独立勢力のグリーン・ホーンが同じく独立のジナイーダに撃破され死亡。

戦況自体は拮抗していた。
バーテックスは実力派レイヴンのライウンを失ったとは言え、
アライアンスもアーク時代の高位ランカーであるプリンシバルを失った。
また、アライアンスが管理局を制圧した他補給線を確保したが、
同時にバーテックスも当面必要な物資をホルデス採掘場にて確保。
互いに橋頭堡を得た以上、これから両者が攻勢に出るのは確実だった。

(グリーン・ホーンは下手に両軍の間に割って入ろうとして死んだ。
 今の所バーテックスもアライアンスも互いのレイヴンを潰すのに必死だ。
 暫くは放っておいても潰し合う、か…)

情報を読み取り、分析する。
やはり、この状況でレイヴン抹殺を進行させるには、
バーテックス、アライアンス両軍の意識が双方に向いている間に
独立勢力のレイヴンを潰しておくのが最善だった。

「レイヴンがいるせいで争いがまた広がる…やはりレイヴンなど不要な存在なのだ」

考えを口にし、リムは己の信念を再確認する。
最初、彼は父のピン・ファイヤーの仇討ちの為にレイヴンとなった。
しかし、特攻兵器襲来後はその考えを変えた。

互いに憎み合い、殺し合うレイヴン。
力を持つがゆえに野心を抱き、独立勢力を率いて暗躍するレイヴン。
そして今回の様な、レイヴンのせいで起きる争い。
彼は、レイヴンがいなくなれば平和になるとは言わないまでも、
レイヴンという存在を全て抹消すれば、少なくとも、
今よりはある程度マシな社会がやってくると考えていた。

だからこそ、動かねば。
アライアンス、バーテックスが互いに迂闊には動けな今こそ、
独立系レイヴンを減らす絶好の機会なのだ。

しかし、肝心のズベンがいまだ自室に引きこもっている。
確かに今は迂闊に動けない。が、リム自身は動きたいのだ。
仕方なく、リムはズベンの部屋に向かった。
彼女との契約――その条項の一つに、
ズベンの勢力を離れて行動する時は必ずズベン本人に通知する、
というものがあったのだ。

レイヴンは何者にも縛られない自由の体現者。
レイヴンは契約にのみ縛られる。
リムはレイヴンを否定する為に敢えてレイヴンであり続けているとは言え、
レイヴンはレイヴンだ。契約に縛られる事に変わりは無い。
彼はそのモラリティを失ってはいなかった。

=====  ・・・  =====
「リム・ファイヤーだ。入るぞ」

ドアをノックせず、ズベンの承諾の声も待たずリムがドアを開ける。

入ってみると、中ではズベンが寝台の上に寝転がっていた。
その姿は、あられもないとしか形容の仕様がない。

バスローブのまま寝たらしい彼女は寝相が悪かったのか
前がはだけ、胸がしっかりと見えてしまっていた。
流石に下にはショーツをはいていたが、上は完全に裸である。
何故か恐竜の形をしたぬいぐるみを抱いて寝ていた。

「んにゃー…? あ、リム〜?」
「そうだ」

それだけ言うとリムが寝台の横にあった椅子に座る。
動じないリムもリムだが、ズベンもズベンである。

「えへへ、襲いにきたの〜?」
「お前はそういう事しか頭に無いのか」
「ちぇー、面白くないのー」

言ってズベンが布団の上をゴロゴロ転がる。
脱力した様にも、誘惑している様にも見えた。
再びリムに向き直る。

「ね…しよ?」

甘える仔猫の様な声。
彼女の部下なら一発でやられて襲っているところだが、
それでもリムは動じない。
感情の大部分が、レイヴンに対する憎しみという感情以外のものが
彼からは抜け落ちている様にさえ見えた。

「これで何度目だ。俺はお前を抱く為に契約したのではない」
「十三回目だよん。ってやー、不吉〜」

その感情ゆえか、リムは席を立ち身を乗り出すと彼女の腕を掴んだ。

「貴様も俺にとっては抹殺すべきレイヴンの一人だ!
 …今ここでその首、捻り切ってやってもいいんだぞ」

大喝、という訳ではなかった。声量そのものは大した事は無い。
だが、怒りに震え、今にもズベンの首に手をかけそうなその鬼気は本物だった。
それでもズベンは怖がりすらしない。
諦観をたたえた、しかし物憂げな瞳がリムを見詰める。

「…『契約』、したでしょ。私は別にいいよ。君に今殺されても」

そう言いながら、ズベンは自分の左手を掴んでいる逆の手
――リムの左手――に、拘束されていない右手を伸ばす。
そしてその手を引っ張り、自分の首に当てた。

「私の命令はそこの端末に入ってる。
 それさえしてくれるなら、ここで何をしても、いいよ」

リムの動きが完全に止まった。
普段、リムはその鋭利な視線と怖ろしげな声で人を射竦ませる。
だが、今はリムが射竦められていた。
彼女の憂鬱そうな瞳が、彼を金縛りにあわせていた。

「――んっ」

ズベンが身を乗り出し、リムに口付けする。
そのまま彼を抱き抱え、布団の中に転がり込んだ。
リムはその動きにあらがえない。
何故か、拒絶できなかった。

どすん、と音が鳴る。だがそれだけだった。
一切の音が絶え、静寂がその場を支配する。
リムの目の前に、本当に文字通り目の前にズベンの顔があった。

あでやか、と言うべきだろうか。
こちらをじっと見詰める彼女の瞳は優しくもあり、
慈しむ様でもあり、そして悲しみに満ちていた。
まるで、捨てられた飼い犬の様に。

「私とどんな契約したか、覚えてる?」

ズベンが問う。
しばらくリムは言葉を返さなかった。
返せなかったのかもしれないし、返さなかったのかもしれない。
自分でも判らなかった。
が、静寂に堪らなくなり、口を開いてしまった。

「ズベン・L・ゲヌビの率いる勢力はレイヴン『リム・ファイヤー』に対し、
 その全力を持って補給や機体の整備を行う。
 又、ACガレージ等の場所やAC用機材も提供する。
 リム・ファイヤーはズベンの要請により行動するが、これを断る事を可能とする。
 又、情報等入手に関してはズベンと同等の特別権限を得る。
 リム・ファイヤーはズベンの勢力を離れて独自の行動を取る自由が認められる。
 但しその場合はズベンにその旨を通知しなければならない。
 その際に得た報酬の一部はズベンに納入する。
 又、ズベン及びその勢力に危害を及ぼす事を禁止する」

吐き出す様に一気に言う。
そこで何故かリムは口ごもった。
言うべきか言わないべきか、迷っている様にも見えた。
他の何かに躊躇している様にも見えた。

やがて、台詞が継がれる。

「…リム・ファイヤーはただ一度だけ、ズベンの命令に絶対服従する事を認める。
 その際、ズベンはリム・ファイヤーに対し相応の代価を支払う」


それが、リムがズベンと結んだ契約だった。

「その後には、命令に際しての例外事項が並んでいたな。
 リム・ファイヤーの自殺、とか」
「そ。いくら命令に絶対服従って言っても、
 そういう事言われたって困るでしょ? だから一応思いつく限り並べといたの」

あまりにもリムに対し都合の良すぎる契約だった。
だから最初はリムも疑った。と言うより、判断した。
ズベンの仕掛けた罠だ、と。
とは言えリムもいくつか弱みがあった。

まずACはレイヴンだけでは動かない。補給整備が必要だ。
又、リムは強化人間である。拒絶反応を抑える薬が必要だ。
それに、一人では情報収集もままならない。
情報が無ければレイヴンだって狩れないし、薬や補給整備なしでは出撃できない。
一匹狼のリムには欠けているものがあまりに多すぎた。

それに罠だとすれば余りに見え透いている。
罠なら罠でズベンの懸賞金なり彼女の勢力の溜め込んだ金を奪えばいい。
そう思って契約したのである。

「だがまさか本気とはな。お前は一体何を考えている」
「んー、何が〜?」

にやーっ、と悪戯っぽく笑うズベン。

「俺は、最終的にはお前を殺す。
 何故その俺と契約した。それに、あの契約は俺にとって都合が良すぎる」
「…」

ズベンは、すぐには答えない。
ただあの瞳のまま、リムを見詰め続けていた。
やがて、ゆっくりと口を開く。

「レイヴンとして、私をどう思う?」
「なに?」
「腕前。AC乗りとしての」
「三流だ」

あまりに正直なリムの答えに、ズベンがふきだした。
からからと笑っている。
本当に楽しそうに、笑っていた。

「ちょっとぐらいおだててくれたっていいのに〜」

あまりに愉快そうなズベンに、
今まで毒気を抜かれていたリムが苛立ちを覚える。
身体を起こし、詰問した。

「俺は理由を聞いてるんだ。何故俺と契約した」
「えー?」

するとまだ笑っているズベンがこちらに向き直る。

「もー、ほんとににぶいなぁ。理由はそれ。
 私がレイヴンとしては三流だから、それだけだよ」
「…?」

リムには意味が判らなかった。
ズベンが弱いから、と言いたいのだろう。
だが彼女が弱いからリムを引きこんだとすれば、契約内容が余りに杜撰だ。

「それに、君は私の好みだし。
 って言うか、私に似てるってところかな」

また、何を言っているか判らない。
気付いたら、また毒気を抜かれてしまっていた。

「ほら、そんな怖い顔してないで。ね?」

言いながら、折角起き上がっていたのにまた寝転がされた。
ズベンに組み敷かれる格好である。
寝転がされたその瞬間、有無を言う前にズベンが唇を合わせてきた。
どうやらこのまま『する』つもりらしい。リムは諦めた。
何故か、こういう時の彼女には逆らえない。

「んっ…」

ズベンの舌が入ってくる。
無意識ではなく意識的に、受け入れた。
絡み合う二枚の舌。
ズベンが情熱を注ぎ、リムがそれを受け入れる。

どれぐらいそうしていただろうか。
酸素不足なのか少しぼーっとした頃に、ようやくズベンが離れた。
彼女の唇とリムの唇の間に糸が引く。

「うふふ」

それが嬉しいのか、ズベンがまた笑う。
まるで悪戯する時の子供の様に、無邪気に。
そのまま彼女はリムの下半身まで移動。
慣れた手つきでズボンを脱がし、中からそれ取り出す。

「ちぇー、全然大きくなってないや。
 私のキスとか裸とか、もう慣れちゃった?」

リムは答えない。代わりに顔を背けた。
僅かに顔が赤いのが見て取れた。ズベンがにやっと笑う。

「ま、いーや。すぐ大きくしてあげるもん」

言って、奉仕を開始した。
先端を舐める。そのまま竿の全体を包みこむ様に舐めた後、
カリ首の裏を舌でなぞる。

ばれないようにはしているが、筋肉の緊張で
リムが反応しているのが判る。
いちいち何かするたびに反応が見えるから面白い。

再び先端まで戻る。手で袋を揉みしだきながら、
竿の先を咥えて派手に舐めまわした。
効果アリ。面白いぐらい反応する。
やがて、口の中の異物感が大きくなってくるのが感じられた。
一旦竿を抜くズベン。

「大きくなったー。か〜わいい」

茶化すな、と本来のリムなら言いたいところだった。
しかし現に息子が大きくなっている以上、大きい口を叩けるものでもない。

「それじゃ…っと」

ズベンがリムのそれを咥える。
ただ咥えただけではない。奥まで、根元まで咥えこむ。
リムの先端がズベンの喉に達した。
彼女の喉が絡みついてくる。思わず声をあげそうになった。

そのまま彼女は動き始めた。
リムのそれが口から離れそうになるまで戻り、
今度は喉の奥まで咥えこむ。
最初はゆっくりとだったが、そのピストン運動は段々と速度を増していく。

「――っ!」

リムが声にならない声をあげる。
懸命にこらえていたが、漏れ出てしまった。
気持ち良かった。
彼女が毎回してくるこの口淫はどこで覚えたのか、本当に上手かった。

「お前、そんな事をして苦しくないのか」

それを察されたくないからか、思わず台詞が口をついてでる。
ん、とばかりに途中でその行為をやめ、口を離すズベン。
少し名残惜しさを覚えるが、彼女は抜け目なく手で愛撫を続けながら口を開く。

「そりゃ苦しいに決まってるよ、喉の奥にもの突っ込んでるんだもん」
「では何故毎回頼まれもしないのにする」
「好きだから」

単純な答え。リムも反応に困る。

「これしてると、奉仕してるー、って気分になれるの。
 好きな人の役に立ててる、みたいな。
 苦しい分余計にそういうのが感じられるの。
 だから好き。もしかしたら私、Mなのかもね」

そう言って笑う彼女の笑顔には、どこか影が感じられた。
どう表現すべきかリムには判らなかったが――
例えるなら、新しい飼い主を探し媚を売る捨て犬の様な。

リムが答えないのを見て取ると、彼女は再び彼を咥えこんだ。
そして律動を再開する。

彼自身が彼女の喉に当たり、絡みついたそれが大きな快感を送り込んでくる。
当然、一度では終わらない。
何度も何度も、断続的に、速度を増しながら連続して快感の波が襲ってくる。
その波に翻弄され、半ば思考能力を失いながらリムは心のどこかで思考を続行していた。

――好き。そう、奴は好きと言った。何が? その行為が?
――それも言っていたが、好きな人、とも言っていた。その意図は? 真意は?
――この女は何故俺と交わる?
――身体が目的ではあるまい。男はその辺にごろごろしている。
――では何故?
――好き? そう、好きと言った。そうだ、この女は好きと言った。
――交わっている間だけだが、ズベンは何度も俺に言った。好きだと。愛してると。
――あれはその場での昂ぶった感情が言わせたものではないのか?
――心底俺が好きなのか? 本当に? 自分を殺そうとしているこの俺を?

『半ば思考能力を失』っているだけに、その思考は半分錯乱していた。
だが、錯乱しているだけに彼はその事に気付かない。
そして、ずいと彼女の頭を掴む。
熱心に奉仕していたズベンは顔を上げた。
「りぃみゅぅ?」とか言っている。リム、と言いたいのだろうか。
関係ない。そんな事は関係ない。
確かめてやる。本当にそうなのか確かめてやる。

「ゴフッ!?」

リムがズベンの頭を思い切り引き寄せた。
突然の事に一瞬ズベンが咳き込むが、一回だけ。
その顔からは、嘔吐感を必死にこらえているのが見受けられた

――上等だ。

リムがそのまま彼女の頭を動かす。
奥へ、手前へ、奥へ、手前へ。
彼女の事など何も考えず、ただ快感を求めて動かした。
気持ちいい。意識が遠く彼方へ吹き飛びそうだ。
脳内麻薬が分泌され、神経を昂ぶらせる。気持ちいい。最高だ。

ズベンは涙目になりながら懸命に堪えていた。
生理的に逃げようとしてしまうが、その反射的反応を強靭な意思で殺す。
リムは自分でも気付かない内に腰も動かしていた。
リムの腕でズベンの頭が動き、喉が彼に近付く。
そして同時に、リムが腰を動かした事でも喉が迫る。
彼女の喉にリムのそれがズンぶつかる。
一回だけでも吐きそうになる。それでもズベンは堪えた。

リムはそんな事には構わない。
ただ快感だけを求めて腕を、腰を振る。
やがて、限界が来た。

「受け止めろ…!」

小さく、本当に小さな声で、しかし叫ぶ。
ズベンの喉奥にリムのそれが突き当てられ、そして白濁液が撒かれた。
ズベンは必死にそれを受け止める。
ほぼ出し終わった時点で彼女の顔が急に険しくなった。
出し切ったと認識すると、ズベンは顔を引いて口に手を当て、咳き込む。
どうやら、気道に入ったらしい。

「ごほっ、ごほっ、けほっ…」

それでも彼女は吐かない。
リムの出した精液を一滴残さず全て飲み干した。

「ぁーもうびっくりしたー。いきなりプレイ変更するんだもん」

少し涙に濡れた目でリムを軽く睨む。
睨むと言っても敵意は無い。悪戯っぽい視線。
当のリムは少しばかりぼーっとしていた。

「でも嬉しかった」

その言葉で、リムは覚醒する。一瞬で。
嬉しかった?

「いっつも嫌々やってるみたいだったのに、
 こんなに求めてくるなんて思ってなかったもん。
 ちょっと苦しかったけど、嬉しかった」

何を言っている?
嬉しかった? 嬉しかったと言っているのか?
こいつ…まさか本気で?

「ね…ほら、見て」

そう言って、ズベンはリムの手を掴んで自らの秘所に導く。
ショーツの上からでもはっきり判った。
いや、むしろ布があるからこそ余計に感じられた。
濡れている。ぐっしょりと。

「さっきしてただけでこんなんになっちゃった。
 ね、いいでしょ?
 君が欲しいの。お願い」

濡れている? 興奮している?
奉仕し、その上無理矢理させられただけで?
欲しい? お願い?

「ねぇ、お願い。君が欲しい。
 じゃないとおかしくなっちゃいそうなの」

その言葉で、リムは思考を放棄した。

ズベンを押し倒す。
既にはだけているとは言え、バスローブが邪魔だった。
傍から見れば乱暴に、しかしリムは欲望に忠実にそれを剥ぎ取る。
レイヴンにしては珍しい、華奢な身体が露わになった。
形のいい双丘が、荒い呼吸と共に揺れている。

「あンっ」

その小山にむしゃぶりついた。左の方だ。右は手をやって激しく揉みしだく。
彼女が感じるか、そんな事はどうでもいい。
ただしたかった。気が狂うぐらい、したかった。
いや、もう狂っているのかもしれない。

「あっあっ」

そんな事、知った事か。
彼女の胸を舐め回し、吸い上げる。
乳首を噛むと、ズベンが甲高い声をあげた。快感に震える声。
サディスティックな衝動な駆られたリムが、
右手で乳首をねじる様にしながら強めに噛む。

「ああ…んッ…」

ズベンが身をよじる。だが拒否はしない。
その痛覚すら快感に変わっているのか、それとも痛がっているのか。むしろ両方か。
だがリムにしてみれば、彼女の反応が全てだった。

何かを聞きだす為に拷問するのではなく、ただ拷問する為だけに拷問する感覚。
そんな悪趣味な感覚に、しかし今のリムは背徳的な快感を覚えていた。

ひとしきり彼女の反応を楽しむと、胸への愛撫は続行しながら余った手を下へ伸ばす。
下へ、下へ。やがて、露がこぼれそうなまでに濡れたショーツに辿り着いた。
迷わず手を入れる。指を動かし愛撫を開始。

「あっ、あんっ、あっ」

彼女の喘ぎ声が一段と激しさを増した。
にやと笑ったリムが更に激しく指を動かす。
無論、胸の方の愛撫も忘れない。

「あっ、ダメ、あっ」

何が駄目なのか。そう心の中で問いを返していた。

「ねっ、リムっ、わたし、わたし、もうっ…!
 おねがい、リム、おねがい!」
「何が『お願い』なんだ?」

自分でも少し驚くほど、冷静に言葉を返していた。
それも、割と悪趣味な台詞を。
「お願い、欲しいのっ、あそこに、きみが欲しいのっ!」
「代名詞では判らんな」

ほぼ無意識の内に、意地の悪い事をしていた。
左手で彼女の陰核をつねる。

「あうっっっっっ!」

彼女が悲鳴を上げる。当たり前と言えば当たり前だ。

「ほら、何処に何が欲しいんだ。言ってみろ」

あまりと言えばあまりな言葉に、しかしズベンはやり返す術を持たない。
ただ、言われるがままに答えるだけだった。半狂乱になって。

「欲しいのっ、リムのおち○ちん、私のお○んこの中に欲しいのっ!」

その言葉を聞いて細く笑んだリムはズベンの身体を一旦離れる。
ショーツが邪魔だった。乱暴に脱がす。
ズベンも元より望む事だ。リムが脱がし易い様な体勢を取る。
極度の興奮状態のせいで、必ずしも上手くはいかなかったが。

ショーツがなくなれば、ズベンの身体は完全に生まれたままの状態である。
一糸まとわぬ姿がそこにあった。
だがその姿に浸る事もなく、リムがそれを彼女にあてがう。

いくぞ、の一言も無かった。無言で、そして無造作に突きこむ。

「はぁうっっ」

入れただけで軽くイったのか、ズベンが声をあげる。
だがリムには関係なかった。そのままピストン運動を開始する。

「ああっ、あうっ、あっ、あっ」

動きは最初から激しかった。
抜けそうになるまで戻り、限界まで突き入れる。
突き入れたら入口まで戻し、再び突く。
それだけの動作だったが、連続で、しかも高速で行われる。
リムはもとより、ズベンもすぐに追い詰められていった。

「リムっ、りむっ、好き、好きっ、大好きっ」

ズベンがうわごとの様にさえずる。
彼の名を呼び続け、そして好きとさえずり続けた。

やがて、限界がやってくる。

「あっ、ダメ、リム、ダメ、いっちゃう! いっちゃう!」

リムは答えずそのまま律動を続けた。彼自身、限界が近かった。

「ああ、いく、いくううぅぅぅぅぅぅぅ!」

ズベンが身体をねじって果て、その時の強烈な吸い付きでリムもまた、果てた。

「…ん」

目が醒める。ここは、どこだ。
頭を上げ、周囲を見回す。自分の部屋ではない。
きょろきょろしていると、華奢な体つきの女が視界に入った。

「あー。よーやく起きた」

その声で認識した。そうだ、ここはズベンの部屋だ。
確か自分はレイヴン狩りに出ようとしてここへ来た。
それで色々あって…ああ、そうか。
情けない。ズベンを犯した後そのまま寝てしまったのか。

「もー、ほんと、起こそうか悩んだんだからね?」

そう言いながら、彼女は椅子に座る。手には紅茶を入れたカップ。
彼女の好きな飲み物だ。

「コーヒー、いれる?」
「ん…ああ……すまん」

はいはい、とズベンが席を立ち、コーヒーメーカーのところまで歩く。

「仕事だよ、リム」

コーヒーをいれながら彼女が口を開いた。

「ジナイーダ、知ってるよね。
 もし君がまだレイヴン狩りを進めるなら、彼女を絶対倒さなきゃダメだね。
 今はアライアンスとバーテックスが勝手に潰し合ってくれるけど、
 レイヴンを全員殺すならいつかは倒さなきゃいけない。
 ジナイーダは現状最強の一角だ。
 それに、現状じゃアライアンスやバーテックスに手出しするよりも
 独立系のレイヴンを相手にした方がいいけど、ジナイーダは独立系だから、ね」

湯気の立つコーヒーカップをリムに渡すズベン。
リムはブラック派だから他に何かを渡す必要は無かった。

「ジナイーダをおびき寄せる手配をしておいたよ。
 あとは私の命令ひとつでポン、って状態。
 私としても勝てればジナイーダの賞金が入るし、
 君としてもレイヴンが減るしで利害は一致だ」

毒気を抜かれた様にリムが頷く。
何も台詞が出てこなかった。

「ちょっと休んだらシャワー浴びて、バレットライフの調整に入ってね。
 私もこれからサウスネイルの調整に行くから」

紅茶を飲み干し、ズベンは立つ。

「――んっ」

かがんで、リムにキスした。
えへへ、と笑うズベンと目を白黒させているリムと好対照である。

「じゃ、先ガレージ行ってるね。また後で〜」

それだけ言うと、彼女は風の様に去っていった。

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