《ぐぁっ…!!》
工場内に残る最後の一体、作業用を改造したMTをマシンガンの掃射で破壊する。
まったく、こんなMTで工場を占拠し続けれるワケが無い。命の無駄だ。
「…任務完了。レイン、機体の回収を頼む」
回線を開き、自分専属のオペレーターに連絡をする。「レイン…?」
返事が無い。いつもならすぐに応答するはずなのに、どういうことだ。
「おい、レイ―――」
『…彼らは、これからどうなるのでしょうか』
「彼ら?」
『レイヴン、アナタの腕のお陰で彼らは死にませんでした。ですが、今生き長らえたとしても一度企業に逆らった身、無事ではすまないでしょう』
この状況で「彼ら」と言う言葉が指すのは、ついさっき一掃した工場不法占拠者たちのことだろう。
「知らん、知りたくもないし知ることも出来ないだろう」
『ですが…』
「それとも、今殺しておいた方がいいか?」
『いえ、それは…!』
「レイン、これは仕事だ。俺達は企業の依頼を受け、達成する、ただそれだけだ」
『……そうですね。ですが…同じ人間として、同情を禁じえません』
「…同情なんて、人を惨めにするだけだ…」
『えっ…?』
「いや、なんでもない。速く機体を回収してくれ」
『……了解です。レイヴン、お疲れさま』
レイン・マイヤード、こいつがもしAC乗りだったとしたら、一週間もしない内に死ぬだろう。それも人殺しから来る罪の意識での自殺で。

帰宅してから一時間もしない内に仕事の依頼が来る。よくあることだ。
ボックスを開き、件名をスラスラと読みなるべく高額で楽そうな仕事を探す。
「依頼主、クレスト……連絡橋の破壊工作…」
パッと目についたメールを開き、内容を確認する。斜め読みですぐに次の仕事を決定した。

『レイヴン、爆弾設置ポイントは全部で八つです』
「了解した」
『それと…』
「?、なんだ」
『追加報酬の件なのですが…』
追加報酬の内容、それは連絡橋を通過する民間用モノレールの破壊。
『するつもり…ですか?』
「当たり前だ」
『……そうですか、そうでよね…』
コイツの顔は見たことはないが、明らかに今悲しい表情してるだろう。
よくこんなのでグローバル・コーテックスのオペレーターを努めれるものだ。一度、顔を見てみたい。
『あの、レイヴン…』
「ん?」
『今度、会うことは出来ませんか…?』
『今度、会うことは出来ませんか…?』
「…―――はぁ?」
バカかコイツ? 突拍子にも程があるぞ、大体会ってなんのメリットがある。
いや無い、メリット自体無い。少なくとも俺には無い。俺に今必要なのは金と情報だ、そんなものに時間を割いていられない。
「……なにが狙いだ?」
『えっ?』
「普通。…まぁ俺はお前以外オペレーターを知らないんだが、そんなことを言う奴は居ないと思うが」
『いえ……、たしかにグローバル・コーテックスと契約してるかと言って、コーテックスと人間が会うことは通常無いんですが。
ただ、会って話をしてみたかっただけというか……』
「………」
『…今のは忘れてください。ただの弾みです』
「…了解した」
今日のレインはよく喋る、これも仕事の範囲の内なのか。
――――どうでもいいことだか。

「――――レイン、残りの設置ポイントを教えてくれ!」
予想以上に敵が多い。素早く行動出来るようにACの装備を軽装にしたのは失敗だ。これじゃあ弾が持たない。
『待ってくださいっ』
「早くッ!!」
『っそこから20メートル先にある支柱、そのさらに40メートルの支柱です』
「了かっ―――」
MTのバズーカで機体が揺れる。
「くそ、このザコ共っ!!」
ミラージュめ、たかがこんな橋一本に戦力を投入しすぎたぞ。
『レイヴン、残り後一つです。急いで』
「わかってる、これで終わりだ!」
せかすレインを黙らして最後の一つを設置する。もう千発も有った弾がカラだ。残りはブレードしか残っていない。
『全爆弾の設置を確認……。回収ポイントまで逃げてください、回収を確認し次第爆破します!』
「了解した」
ミラージュもやっと諦めたのか部隊を退却させていく。しかし気掛かりだ、こんな民間移動用連絡橋を守るために普通ここまでするものか?
『…ポイントへの移動を確認、レイヴンお疲れさまです』
「思ったより機体の損傷が激しい、後でクライアントに文句のメールの一つでも送っておいてくれ」
『…分かりました、前向きに検討しておきます』
隣接するセクションに逃げ込み、俺は肺に溜まっていた空気を吐き出し騒ついていた心を落ち着かせる。
ピピッ ピピッ
「メール?」
ガレージの方ではなく機体に直接…。誰だ?
〔送り主・ユニオン〕

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