身体が熱い。だが、それは湯につかりすぎたためではない。
湯をあがってから髪が乾く程度には経たし、この浴衣という服はバスローブとは比べ物にならないほど薄く、
微かな風さえも生地越しに感じられるほどで、湯で火照った身体を十分に冷ましていた。
 浴場から部屋に戻ってシーツの上に腰を下ろして少し肌蹴た足を隠すために自らの太腿に触れたとき、
ウィン・D・ファンションは正確には身体の芯が熱いのだと気づいた。
 浴場でリンクスの姿を目にした時から、身体の奥底に燻る火種が宿ったのである。
戦場で見せるあの鬼神のような戦いぶりからは想像もつかないような繊細で幼げな面立ち。
湯で艶やかに濡れた髪と唇。まるで少年のように細く、しかし鍛えられ引き締まった胸板。
細く長く伸びた指先は心細げに腰に巻いたタオルを掴んでいて、
しかし、そのタオルの奥に微かに見えた陽根は、彼の繊細な少年の面立ちとは真逆の
戦場での荒々しい一面そのものの雄々しさだった。
 その光景を脳裏に再び映し出したとき、ウィン・D・ファンションの奥で燻っていたものが
炎を上げて彼女の情欲に延焼した。
 太腿にかけていた指が、浴衣をなおすどころかより肌蹴させて根元へと駆け上っていく。
「う、あぁ……っ」
太腿をなぞる自らの指先の感覚がぞくぞくと背筋を駆け上がって、唇から微かな嬌声となって漏れた。
脳裏に描いていた記憶の中のリンクスの指先が、自らの指先に投射される。
(これは、リンクスの指先……)
そう思った瞬間に、指先はまったく無意識にさらに太腿をなぞりあげて
茂みをかきわけ、陰部へと到達した。人差し指と中指が襞を一枚一枚かきわけて突き進む。
「うあぁっ! リンクス……!」
彼の名を呼び、ウィン・D・ファンションはシーツに身を伏して
自らの指先に乗り移ったリンクスの与える刺激に没頭することにした。
 もはや、身体の芯から発した情欲の熱は止めようがなかった。
「あぁっ、あああっ!」
シーツにうつ伏せになり、尻を突き上げ、両手を陰部へと伸ばして脳裏のリンクスの与える快楽を貪っている。
左手は彼の指になり、右手は彼の男根になり、ウィン・D・ファンションを苛んだ。
左手の人差し指と薬指が襞を押し広げあるいは味わうようにさすり、
中指が包皮をめくりあげて陰核を擦りあるいは押しつぶした。
 そしてリンクスの陽根と化した右の指先が、左手がめくりあげた襞をかいくぐって
彼女の奥底へ抽送する。
「あっ! あっ! あっ……!」
そのたびに嬌声をあげて、シーツに飛沫の染みができあがる。
 脳裏で描いたリンクスは執拗にウィン・D・ファンションを追い詰め、
それにあわせて両手の指先の激しさも増す。
やがて胎内でリンクスの男根が射精した幻を見たとき、彼女もまた絶頂を迎えた。

 「おい、貴様」
五感すべてがぼんやりと鈍っている中、その声を頭上から聞いた。
絶頂の後広がる倦怠感を振り払って仰向けになり瞼を開けると、霞スミカが自分を見下ろしている。
旅館の木目の天井と蛍光灯を背景に、短めの黒い髪、
きつくつり上がった茶色の瞳は、苛立ちと呆れが相半ばしている。
 急速に頭が冷めて冴えていくとともに顔から血の気が引いていくのを感じた。
「う、うわああぁぁっ!?」
飛び起き、肌蹴た浴衣をかき集めて霞スミカに向き直ってみると、
その背後にはリリウムもメイもエイ・プールもいるのが見えた。
「な、なぜ私の部屋にいる!」
霞スミカの右の眉が微かにつり上がった。明らかに、「呆れた」そんな表情だ。
「この人数で全員に個室をとれるわけないだろう。女子は全員、相部屋だ」
血の気の引いた顔が、今度は耳の隅まで隈なく真っ赤に染まっていく。
「それにしても」今度は霞スミカの口の端がつり上がった。
「男湯を覗いて、その妄想で悦ぶか、変態が」

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