いろいろ書き直していたので投下遅れました orz

・主人公が♀です。
・ゑロはありません。
・精神的にキツイ表現があります。

以上です。苦手な方は読まないことをオススメします。






















ぱぱ、はろるどがいないの。
ねぇ、ぱぱ?
わたしのはろるどは…?
ごめんなさい、ぱぱ。
ちゃんといいこにするから、ぱぱのことだいすきだから。
おこらないで…おこらないで…!


いつの頃だろうか。
少女が言葉を凍らせたのは。
何も映らないガラス玉の瞳になったのは。
「これ以上は近づかない」
一人の男の声を少女は捕らえた。
ゆっくりと男を見据える。
父親と同じく、打つのだろうか。
父親と同様に、身体を玩具にするつもりなのか。
どっちでもいい。
早く終わってストレイドとLinkしたい。
それが彼女の唯一の我が儘だった。
「覚えていないか。まぁ、これをだな」
ゴソゴソと男は脇に抱えていた袋から何かを出した。
可愛いらしい猫のような犬のようなぬいぐるみ。
首輪つきケモグルミ。
大人気商品で子供なら誰でも欲しがるものだ。
といっても、品薄でクレイドルの上流階級しか買い求められない。
「貴様の趣味に合うかわからんのだが……むぅ、どうなんだ?」
男が少女に意見を求める。
少女は答えない。
何も、何一つ反応を示さない。
ただ、そこにいるだけ。
「すまない。私の顔を見るのも嫌か。今回の件、貴様は悪くない。カラードもそう判断した。許してくれとは言わん……」
男は申し訳なさそうに言うと少女を刺激しないようにそっと部屋を出た。
――ぱぱ、とおなじ
少ししたら鬼の形相で拳を振り上げ、無抵抗な身体を凌辱するつもりなのだろう。
諦めていた。
愛されること、好かれることなど得られないものだと。
だから、ご機嫌取りの醜悪な贈物を見てやることにした。
「……!」
首輪つきケモグルミの、首輪についていたメッセージカードに延々と謝罪の言葉が述べられている。
――うそ
そうやって父親に何度も裏切られて来た少女には、誠実に書き綴った文章もミミズが這ったような汚らしいものでしかない。
少女は首輪つきケモグルミを放り捨てた。
汚い、汚い、汚い。
少女を支配しているのは先入観からの嫌悪だった。

「どうだった?ふ、まともに喋れなかっただろうがな」
セレン・ヘイズは嘲笑うように言った。
オッツダルヴァは少し疲れたような声で言う。
「他もそうなのか?」
「もっと酷いな。部屋にも入れさせない」
セレンは少し表情を和らげる。
「利用するだけなら諦めろ。あいつは私でさえあまり信用していない」
「一人か」
怪訝そうにするセレンをオッツダルヴァは鷹のように鋭い目で見た。
「あれでは駄目だ……もう一度逢わせてくれ」
賭けをした。
これで変わらないなら振出に戻るだけだ。


「おい」
声をかける。
怒気を含めたような声に少女は震える。
オッツダルヴァはずかずかと少女の部屋に入る。
さっきと違う行動に戸惑う少女。
「貴様を嫌っているわけじゃ無い。傷つくだろうから、触れなかっただけだ」
そっと手を伸ばし少女の頬に触れる。
少女は頑なに目を閉じた。
「見たくないなら、それでいい。だが……」
少女の脆い身体を温かいものが包む。
それは全く未知の経験だった。
「あまり人を拒むな。本当に孤立するぞ」
嫌悪しか抱かないはずなのに。
何故、こんなに暖かくて心地よいのか。
訳も分からず少女は嗚咽をこぼした。
それにオッツダルヴァはほんの少しだけ困惑する。
女の泣き顔にはとても弱いらしい。
「泣いてもいい。笑ってもいい。貴様の好きなように生きろ。
もう、貴様を忌む奴はいない」
少女は口を動かす。
小さく、弱弱しい声で言った。
「…あた…たか、い」
「やっと声が聞けたな」
少女はゆっくりと目を開ける。
恐ろしくは無かった。
銀に青を溶かしたような髪色に少女は顔を埋めた。
安らぎだ。
少女は生まれて初めて安らぎを感じていた。

 ――オッツ…ダル、ヴァ
男はそう名乗った。
少女の手には投げ捨てたはずのぬいぐるみが在る。
 ――くびわつき、いっ…しょ
寝るときも、何をするときも一緒にありたい。
いつでもオッツダルヴァを思い出せる。
あの温もりも、心に響く低音の声も。
そして、何よりあの空の色が。
 ――ぱぱ、ちがう…すき
少女は人間を好きになった。
父親という獣ではなく、たった一人の男を。

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