いつもとは違う風味のSSにしてみました。
たぶん、次かそのあたりで完結するかと。
「Daylight-朝に光の冠を」の???の声が乙樽過ぎるのはどうでもいいことですね。

・主人公が♀です。
・PQが変態です。
・前の続きというより閑話な感じです。
・ゑロはありませんが、下品な表現があります。
・ベルリオーズが生存しています。
・今回はAMSから光が逆流しまくっています… orz
・ハロルドは音楽家のベルリオーズの作品の一つ「イタリアのハロルド」から。

以上です。苦手な方は読まないことをオススメします。




































「珍しいな」
メルツェルが意外そうに眉を上げテルミドールを見ていった。
「お前がそこまで心を砕く人間がいるとは」
「PQに預けたんだ…心配するに決まっているだろう」
PQと言えばORCA旅団の中でも屈指の変人である。
鎧土竜××××という虫をペットにして可愛がっている。
あのテルミドールが泣き目になって、殺虫剤を片手にPQの部屋に突っ込んだのはいい(?)思い出だ。
「…蟲ヲタクめ。彼女に悪戯したらクラニアム送りにしてやる…!」
「多分、それは無いと思うぞ」
メルツェルが少しだけ言うか言うまいか悩む。
テルミドールの目は続きを促しているように見える。
仕方なく、語るメルツェル。
「お前のアンサングの脚部で自慰していたからな」

『た、堪りません…ぁ、は…き、れい…ですねぇ』
などと言いながらアンサングの逆関節脚をおかずにシコシコしたらしい。
ACで発情する変態は前代未聞だろう。
気持ち悪いを通り越して殺意を抱くテルミドール。
ORCA旅団には変人は多いが、変態は少ない。
そう、PQは数少ない変態だった。
それも筋金入りの変態。
「メルツェル、私のメインブースターが」
テルミドールはバタリと気を失う。
ロマンチストが現実逃避するくらいダメージがあったらしい。
「こ、こら!クレイドル03行きの旅客機に乗ってから気を失えーー!」
メルツェルの叫びはある映画よろしく虚空に消えた。

一人の少女が人工的に作られた窓から空を見た。
見えるはずがないソレを捜す。
「今頃は快適な空の旅をしているんでしょうね」
後ろで一緒に空を眺めていたPQが少し羨ましそうに言った。
快適どころか混乱状態である。
『わ、私のアンサングがァァぁっ!』
と叫ぶ旅団長とか
『助けてください!テルミドールを助けてください!』
と泣き喚く副旅団長などで旅客機内は混沌としていた。
「おるすばん」
そんな事を知る由もなく少女は首輪つきケモグルミを抱きながら、テルミドールの言い付けを忠実に守っている。
最近は彼女の対人恐怖症も改善されつつあり、触ったり不用意に近づかなければそれなりに会話が出来るようになっていた。
セレン・ヘイズはこの事に関してはオッツダルヴァを評価している。
「気になっていたのですが…その首のガーゼは」
少女の白い首筋に貼られた物にPQは疑問を抱いた。
とても違和感がある。
「かまれた」
誰にとは聞かなくとも分かる。
幸いにも傷はAMS接続部分とは反対だ。
理性を無くした獣でもそれぐらいはわかっていたらしい。
「ち…のむ」
「旅団長の嗜好は理解できませんね」
少女は首を横に振る。
「オッツダルヴァ」
彼女を愛してくれるのはマクシミリアン・テルミドールではない。
一人の男、オッツダルヴァだ。
「さびし、い」
あの男の温もりを思い出し縋りたくなる。
「直ぐに帰ってきますよ」
ただの慰めでしかないのだが、少女にそこまで意を汲み取る力は無い。
分からないということはある意味で幸せなことだ。

一人には広すぎる病室に頁をめくる音と美しい交響曲が満ちている。
初老の男性が本からふと顔を上げた。
「マクシミリアン、それにメルツェルか…」
微笑む男性の顔は限りなく優しい。
「先の声明は聴かせてもらった」
テルミドールは気恥ずかしそうにそっぽを向いた。
「ベルリオーズ、これからはあなたの安全は保障出来ません」
メルツェルは直立不動で言う。
「まぁ、そうだろうな。このご時世だ…覚悟は出来ている」
ふぅっと溜息をつくと、ベルリオーズは天を仰いだ。
「彼女は元気か?」
「…精神的にはまだまだですね」
テルミドールが言うと、ちらりとベルリオーズが見る。
「あの男が生きているなら私は彼を殺していた。
今更、父親面するつもりはないんだが、困ったものだ」
「逢わない、のですか?」
恐る恐るテルミドールはきいた。
ベルリオーズは先程の優顔とは反対に厳しい顔をした。
「遭ってどうなる?最初からやり直せ無い。もう、得られんのだ。
当たり前の幸せも安らかな時間も」
一度だけ彼女に遇ったことがある。
遠目だが、自分に似ている顔立ちにベルリオーズは胸を揺さぶられた。
リンクス戦争がもっと穏便に行われれば手放すこともなかった。
――日常を失う。それが私に与えられた罰だ。
毎日、願っていたこと。
それを本人に話す機会は遥か昔に失われた。
「……マクシミリアン」
ベルリオーズが静かに言う。
「我々という存在は“道”に反している気がしてならない」
人間は未だ幼すぎると彼は嘆いた。
人類を殺しすぎた男の告白であった。

「オッツダルヴァ」
少女が弾んだ声でテルミドールに抱き着いた。
「いちばん……すごい?」
「あぁ…旅団長。有り得無いですよ!彼女、いつも一番なんです」
以前、カラードから持ってきた人生ゲームを二人でしていたらしい。
どうやら、留守番中はなにも無かったようだ。
「PQ、どさくさに紛れてヨロモグ持ってくるな…」
「おじちゃんは嫌いでも、彼女は気に入ってくれましたよ」
ヨロモグーと言いながら少女はPQの鎧土竜××××を愛でている。
「首輪つきケモグルミのほうが何十倍も可愛いだろ!?そんなの触っちゃいけません!」
テルミドールは慌てて少女から鎧土竜××××を引き離そうとする。
蟲好きなPQのお気に入りのアニメのワンシーンが目の前で繰り広げられている。
「ウフフ、蟲に魅入られている…ですか」
やはりPQは変態だった。
完全に蚊帳の外のメルツェルは次の算段を考える。
――そろそろ、王手か
疲弊を隠せないORCA旅団。
不安定な足場に怯える空に逃げた人々。
そして……
「反抗的な山猫の牙を抜いてやるだけか」
終わりが近かった。
戦乱も、このささやかな幸せも。
永遠など無い。
全て、いつかは終わる。

「ハロルド」
暗い闇の中、ベルリオーズが呟く。
もう二度と呼ばれることのない一人の子供の名前。
「私の…娘」
肩が震える。
怒りや悲しみ、憎しみ……悔やむ気持ちで居た堪れない。
だが、首輪が外れない。
老いすぎた山猫に抗う力は残っていなかった。
「Amen amen gospel amen. Amen amen gospel amen.」
ベルリオーズは歌う。
「So I scare it. So I scare it.」
広すぎる部屋に低音の声が響く。
「Order can see. Now one can see.」
手には黒いハンドガンが握られている。
「All is fantasy. All is fantasy.」
歌い終わった後、一発の銃声が部屋を埋め尽くし…しばらくして寂静が訪れた。

このページへのコメント

Ygux4d Thanks for sharing, this is a fantastic blog article.Thanks Again.

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Posted by watch for this 2013年12月19日(木) 20:13:27 返信

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