「私が後だ」
また?何で?
「それは…そういうものだ!」
毎晩のやりとり。
相変わらず加減を知らない彼女は毎日の日課をこう解釈している。
夕食→風呂→第1R→仮眠→第2R→就寝
因みに、仮眠がある理由は大概の場合横で眠る彼女が起き出して
「やらないか?」
の一言を放つ事による。

今は風呂前。
話題は、どちらが先にシャワーを浴びるか。
毎晩彼女は後にシャワーを浴びている。
そこに「できるだけ汗の臭いを残したくない」と言う乙女らしい気遣いが芽生えているのをレイヴンは知らない。
それだけではない。ACのオイルの匂いはいつも服だけではなく髪にも付着し、念入りに洗う必要があった。
彼女は寝ている間、不快を与えたくないのだ。
困った事に、彼女は睡眠中、無意識の内に彼の胸元に頭をこすりつけてしまう。その時に漂う匂いを気にした

「お前を不快にさせたくはない…」
善くも悪くも乙女らしくなって来た。人間味を帯びる程、彼女は純粋になっていく。


なあ?
「む?」
たまには俺も長風呂したい…?
「…」

確かに、風呂は何度も急かしている。というのも、その後の事が待ちきれないのだ。
何だかんだで風呂は通過点に過ぎない。
彼女の望みはその後にある。
快感と、幸せ。
あの激しくて切ない瞬間。
それが、彼の風呂の間待ち遠しくて仕方がないのだ。よって急かしてしまう。
時々、
「何を私は考えてるんだ…」
と我に帰る事がある。しかし、その度に、
「これも…アリだな…」
と自ら合点してしまう。

話が少し変わったが、要するに両方長風呂したいのだ。しかし、先に入った方は早くあがらねばならない。
彼女も少し、悪い気がした。

「そうだな…」
さほど考えずとも案は浮かんだ。

「お…前さえよければ…」

「一緒に入れば…いい…」
珍しく声がうわずっていた。

「…今更裸がどうのこうの…じゃないだろ?…もっと凄い事してるんだし…」
それはそうだが…?
「ベッドじゃいつも…そのまま…寝てるだろう?」
…アンタがいいなら…
「そうか!ならすぐに行くぞ!」
脱衣場に押される様にレイヴンとジナイーダは向かう。

彼女の誤算は、風呂場でもベッドでも…………である。

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