「良い顔じゃないか」
俺はカラードネイルに向けて言い放つ。
とろんと惚けた目は潤み、体を火照らせて下半身をもじもじと蠢かせている。
息は既に荒く、乳首は硬く大きく勃起して寝間着の乳頭部を持ち上げている。
思ったよりもなお良い効き目だ。流石はアリーナ随一の変態、ギムレットの特注品。
「何が…間違えただ…今すぐ私の前から…失せろ…っ」
「期待している癖に何をほざく」
もう少し身悶えるカラードネイルを観察していたかったのだが、余りにも劣情を誘うこの姿に我慢が効かなくなってきた。
俺は欲望に身を任せてベッドに乗り込む。
「んあっ!?」
服の上から胸を掴んだだけでこの反応、ギムレット様々である。
俺はカラードネイルに顔を近付けると、半開きの口に舌をねじ込んだ。
「んっ…あ、やめ…あぅ…っ」
一年前は舌なぞ入れられる状況では無かったが、この有り様なら舌を噛まれる心配は無い。
卑猥な水音を立てながら唾液に塗れた粘膜が絡み合う。
「噛まないんだな?やはり本当はしてほしいんじゃないか?」
俺は唇を離すと、服を脱がしにかかる。
ボタンを一つ一つ外すと、熱でうっすらと赤みがかった艶めかしい白い体が外気に晒されていく。
パイロットスーツの下には基本的に下着は付けないため、パジャマに着替えさせた時にも下着は着けさせられなかった。
まぁ、仮に替えの下着があってもわざわざ着させはしないが。
「相変わらずいやらしい体をしているな」
「うるさ…ひゃんっ!」
言葉を待たずして乳首を引っ掻くと、ビクリと体を大きく震わせる。
秘部はもう準備万端と言わんばかりに濡れそぼっており、滴り落ちた汁が純白のベッドシーツに染みを作っていた。
俺は焦らすように陰唇の周りを指で円を描くようになぞると、カラードネイルの反応を見る。
「っ…んっ、うぅ…」
もはや拒絶の言葉を言う気力も無いか。実に良い傾向だ。
耐えるのも辛そうなカラードネイルとは反対に、笑いがこみ上げてくる。
そろそろ、イかせてやるか──俺は極度の興奮で痛いほどに肥大した肉芽を指で抓み上げ、ゆっくりと包皮を剥く。
「ふぁっ…」
剥き出しになったクリトリスを親指と人差し指で転がす。
指を少し動かす度に悩ましげな声を上げるカラードネイルの陰核を、俺は一気に押し潰した。
「っ────!!!!」
声を出すことすら叶わずに、カラードネイルが快楽の波に呑まれる。
絶頂と共に、秘部から音を立てて潮が噴き出された。

視界のあちこちで火花が散った。脳の思考回路が焼き切られたように何も考えられなくなる。
体を突き抜ける快楽と開放感。
先ほどまでの滅茶苦茶な痛みの代わりに、痺れるような感覚が私の体に付きまとう。
自分の意思で動かない体が、犬のような四つん這いの体勢になすがままに変えられた。
「そら、行くぞ」
「やっ…あっ!あぁっ!!」
後背から男根を突き入れられる。大き過ぎるソレは、洪水のように蜜が溢れ出す膣にすんなりと入っていき、私の内側で繰り返し暴れ回った。
その度に私は発情期の獣のように声を上げた。
既に理性は殆ど残ってはいなかった。肉欲を求める本能が私の思考を支配する。
「人払いは済ませてある。気にせず乱れろ」
ゼロが私に囁きかける。それは催眠術かなにかのように私の脳内にすんなり入っていった。
それを契機に、自然と腰が動き始める。
「あっ!おかしくなるっ!!なにか!またなにかくるぅぅ!」
まただ。堕ちる、とか、頭が真っ白になる、とか、それは正にこういう事を言うのだろう。
私が白目を剥いた情けない姿で快楽に溺れた事を確認すると、ヤツはまた体勢を変える。
「まだ終わらせんぞ」
正常位、と言うのだろうか。
押し倒されたような形で脚を広げさせられると、ヤツは私の脚の間にソレを潜り込ませる。
肉がぶつかり合う音、粘液がかき混ぜられる水音、欲望のままに喘ぐ声、それらが混ざり合って一室に響いた。
すぐに例の感覚が近付き、私は腰を浮かした。
だが、突然ヤツの腰の動きが止まる。
「今、腰を浮かしたな?俺にイかされる事を期待したな?」
ゼロが私の顔をニヤつきながら覗き込む。
「カラードネイル。お前は俺にどうしてほしい?」
これで私の最後の尊厳を打ち砕くつもりか。
誰がこんなヤツの言いなりになるものか。三十分も前の私ならば、そう言って一蹴できたに違いない。
だが、今の私の体は我慢しようが無い程に熱く、淫らになっていた。
「さ…」
口が小さく開く。途端に、残る塵ほど理性が──最後の砦が吹き飛んだ。
「さっさと…動け…」
蚊の鳴くような小さな私の声をゼロは無視する。聞こえないふりだ。
じれったい。
「聞こえないのか?さっさと動けと言っている…!」
気付けば、叫んでいた。
既にプライドもなにもあったものでは無かった。
ゼロは愉快そうに笑うと、ピストンを再開させる。
「あっ!あっ!ああぁぁっ──」
狂ったように喘ぎながら、全身が快感に満たされる感覚を感じる。開きっぱなしの口の端から涎が滴り落ちていた。
私は―――家族を殺されて、復讐に生きて、誰とも慣れ合わずに一人で戦ってきた。
それなのに、肝心の時にこれだ。挙げ句の果てに、人の体温を感じた安心感すらあるときている。
ふざけた話だ。
私が一人で生きることになった原因は全部コイツにあるというのに。
孤独から逃れた安心感、それが今コイツに対して感じる感情の正体なんだろう。
コイツがいなければ最初からこんな風な生き方にはならなかった筈なのに。
ゼロの男根が私の中で脈打った。
最も忌まわしい、最低最悪の事の筈なのに、不思議と拒む気持ちが消えていた。
「…来い、ゼロ」
ゼロの欲望が、解き放たれた。

俺は今、パソコンの画面と睨めっこしている。
先程まで俺は一冊の本を読んでいた。精神病だとか、そんなような事に関する知識が収められた本だ。
何故俺が突然こんな物を読み始めたのか。簡単だ。この中に一つ、気になる記述があったからに他ならない。
「ストックホルム症候群」
犯罪被害者が犯人と一時的に時間や場所を共有する事によって、過度の同情や好意等の特別な依存感情を抱くこと。
カラードネイルとのアリーナでの試合から数週間が経ったのだが、
何故か試合の日、つまりは二度目のレイプからと言うものヤツは突然大人しくなった。
不気味なほどに、罠か何かと勘ぐりたくなるほどに。
一体何が起こったのか、と内心警戒していたところ、この記述を見つけたと言うわけだ。
本当にこれなのか?いや、まさか。
そして、独自に調べ上げたカラードネイルのメールアドレスを見つめながら、俺から何か言うべきか否かとずっと考えているわけだ。
世のレイヴン達はEXアリーナの開催だの何だので沸き立っているというのに。
そもそも、俺はサディストに属する人間であり、
カラードネイルに目を付けたのも、屈辱に身を震わせる復讐鬼を手篭めにしてやろうとかそう言った事を狙っていたからだ。
ヤツの怪我は遅くても一週間以内に治るとの事だ。
もう間違い無く治っているはずだ。
すぐに再戦を申し込むか、私の住所を調べ上げて凶器を持って殴り込むかのどちらかだと思ったのだが、
ここ最近のカラードネイルは俺の予想の範疇を全く越えていた。
これでまた罠に掛けて陵辱する計画もパアだ。
そんな事を考えていると、パソコンが突然アラームを鳴らした。
何事だ、と画面に目をやる。
「新着メール:一件」
まさか、と思い表示をクリックする。

送信者:カラードネイル
題名:EXアリーナ
私と組んでもらいたい。
今日の十八時、アリーナに来い。

簡潔かつ明瞭な内容のそれに、俺は驚愕せざるを得なかった。
きっと俺は柄にもなく鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていたに違いない。
時計を見る。短針は既に十六時を指していた。
俺はハンガーに掛けられたコートを羽織ると、急ぎ足で家を出る。
カラードネイルが本当に俺と組む事を望んでいるかは分からない。
あるいは、当初の予想通りに罠なのかもしれない。だが、俺はアリーナへ向かう事に決めた。
行ってみなければ何も分からないのだから──

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