ニュー速VIP及び製作速報のスレッド「( ^ω^)ブーンが遊戯王の世界で頂点を目指すようです」のまとめwikiです

「ここが最終プロ試験会場……」

第十三期生養成プロ試験会場と書かれた横断幕を見ていると、
不思議と遂にここまで来たという実感が沸いてきた。
デュエルアカデミアを卒業してからもう一月近くになる。
大好きな祖父のためにも私はプロにならなければ。
最終試験会場という響きに緊張しながら、
私はガチガチの体を軍隊の行進のようなテンポでゆっくりと進んだ。


「えっと、受付は……」

きょろきょろしていた私は、
丁度角から歩いてきた人に気づけずぶつかってしまった。

「わっ!す、すみません……」

「気をつけろ!……なんでガキがこんな所にいるんだ?」

「こ、子供じゃありません……私も受験しに来たんです」

私のコンプレックスの身長の事を言われ怒りたくなったが、
非は自分にあるので怒りをぐっとこらえた。

「こんなチビがか?」

「……!」

「やめてやれ、彼女が嫌がってるだろ?」

背後からの声。
振り向くと、背の大きめな男の人がいた。

「なんだオマエ、灘井財閥の息子、灘井芳三(なだいよしぞう)を知らないのか!?」

……灘井財閥と言えば、成金企業で有名なあの?
しかしドラ息子にひるむことなく、男の人はこう言い放った。

「だからどうした?お前が誰であろうと人が嫌がる事をしていい理由にはならない」

「ぶつかって来たのはこいつだぜ!?」

「……キミ、彼に謝ったか?」

「え、は、はい……」

「ならそれでいいだろう?骨が折れたわけでもあるまいし謝罪以上の何を期待している?」

「……チッ、覚えてろよ!」

いかにもな捨てゼリフを吐いて
彼は私たちの前から逃げるように立ち去った。

「久しぶりに母国に帰ってみたらとんでもない馬鹿に会うとは、やはり米国の認識が正しいのか……?」

「あ……ありがとうございます」

「当然の事をしただけだ、キミも受験生か?」

「はい」

「これも何かの縁かもな……俺は勅使河原刀西だ、キミは?」

「南方聖子です」

勅使河原「ははは、お互い変な名前だな」

南方「そうですね……久しぶりに帰ってきたってことは、帰国子女なんですか?」

勅使河原「ああ、その通りだ」

私たちが入口近くで和んでいたところを、
世話焼きな他の受験生が呼びかけてくれた。

「お前達何してんだ?早く行かないと受付終わっちまうぞ」

勅使河原「やばっ!」

南方「急がないと!」




何とか受付に間に合った私たちは係員に誘導され
大きな部屋で椅子に座って待つように、と言われた。
言われるまま部屋に入る私たち。
椅子の余りが離れた場所にしかなかったため、勅使河原くんとは離れざるを得なくなった。
さっき因縁をつけてきた彼もいる。
一触即発な予感がしたので目を合わさないようにした。

「よ−−こそ来訪者!私が試験官の一人、春夏秋冬直美だ」

(な、生のヒトトセさん……!?)

春夏秋冬直美。
『魔の十期生』の中で唯一合格したプロデュエリストにして
二年間でいろんな意味で女性プロデュエリストの代名詞になった人だ。

春夏秋冬「知っての通り諸君はアカデミア枠からプロデュエリストになる訳だが…」

プロデュエリストになる方法はいくつかある。
そのうちの一つであるアカデミア枠とは、知名度のあるデュエルアカデミア生徒とは違って
(悪い言い方をすると)地味な成績優秀者の受けるプロ試験だ。
そもそもプロには活動費などを援助してもらうためにスポンサーが必要になるのだが、
デュエルアカデミアを卒業したての生徒なんかにいきなりスポンサーがつくはずもない為、
スポンサーが見つかるまでプロデュエリスト協会に保護された状態でプロデュエリストとなる。


とはいえ、慈善事業ではない以上大量に保護をしていたら協会も潰れてしまう。
故に、一つのプロ試験会場から合格者はほんの少ししか出さないように通達されているのだ。

春夏秋冬「一次試験、二次試験を登ってきた君達はここで最終選考を受けてもらう」

春夏秋冬「この一週間、筆記と実技に+αして君達の中からプロデュエリスト界の洗礼を浴びる者を決めようと思う」

春夏秋冬「ここにいる者達は全てライバルだ、心するんだな」

春夏秋冬「十分休憩の後から一時限目を始める、それまでは自由行動を許可する……以上だ」



「ライバルか……」

「蹴落としてまでなるべきものかしら……?」

勝ち残りの椅子は少ししかないというのに、この手の場所には珍しい空気が流れた。
プロを目指す者の心がけができているという証拠だ。

南方(たぶん合格枠は一つ、がんばらなくっちゃ……)

そう思うと再び私に緊張が生まれた。
落ち着け自分の心に激励を掛けていた私の元に、春夏秋冬試験官が声を掛けてくれた。

春夏秋冬「どうした?ぎこちないな」

南方「あ……はい」

春夏秋冬「君は受験番号8番、南方聖子か」

春夏秋冬「資料ではラーイエロー卒業生受験者……イエロー生がここまで残るとは珍しいな」

南方「あ、あの……」

春夏秋冬「何だ?」

南方「その……ファンです、サインお願いできますか?」

南方「あなたを目指して私、プロになりに来ました!」

冗談ではなく、本気の一言だ。
彼女の姿は女性デュエリストの目標的な風習がある。
……ミーハーと言ってしまえばそれまでだが。

春夏秋冬「……ははははは」

南方「わ、笑わないでください!」

春夏秋冬「すまない、私なんかを目標にするとは冗談だと思ってな……私の悪評は聞いているだろう?」

彼女の悪評。
一切媚を売らないというスタンスをプロ就任会見で披露して以来、
彼女は前期生どころか一期生にすら敬語をまったく使っていないことを指しているのだろうか?
それとも……。

南方「悪評だなんてとんでもない、ヒトトセ試験官はかっこいいですよ」

春夏秋冬「世辞はいらないぞ、試験官である以上私は私的評価を欠片もしないからな」

春夏秋冬「……ただひとつ言える事は自分の力を出し切って頑張るんだ、いいな?」

南方「は、はい!」


(あ、あれ?さっきまでガチガチだったのに……)

彼女と話しているうちに私の緊張は自然とほぐれていた。
不思議なこともあるものだと思っていた私に、勅使河原君が声を掛けてきた。

勅使河原「ナオミ ヒトトセ……日本の意味不明な規制下にあった彼女も米国ではそれなりに有名だったな」

南方「勅使河原くん……?」

勅使河原「刀西でいい」

南方「……トセくん、それってどういうこと?」

勅使河原「米国のプロデュエリスト界ではこう囁かれている……プロの世界はたった一人の人間の為に存在すると」

南方「え!?」

勅使河原「……なんてな、うちの飲んだくれの父親から聞いた話だし嘘に決まってるさ」

南方「何だ、そうなの……」

勅使河原「まあこの手の話にありがちな酒の場で語られる『面白ければそれでいい』的な噂って奴だな」

勅使河原「おっと、もうこんな時間だ……一時限目の試験が始まるから席に行かないと」

南方「……」

トセくんは笑い飛ばしたが、聞いてしまった以上は万が一のことを懸念してしまう。
もしかしたら私の選択は間違っていたのだろうか?
しかし祖父のために私のできることはこれしかない以上、
今さらやめる訳にはいかない。私は合格しなければ……。



試験会場では筆記、実技、受講生同士によるデュエルの順で試験が毎日行われた。
実技で水の入った洗面器に顔を入れて息を止めろという珍妙な問題が出されたりもしたが、
私はなんとか全てにおいて合格点程度の成果を出した。



勅使河原「……あっという間に最終日だな」

南方「私たち、合格できるかな……?」

勅使河原「できるさ、信じない者に結果はついてこない以上な」

南方「……でもさ、トセくん」

勅使河原「何だ?」

南方「こういう台詞って普通昔からの顔なじみとかが言う言葉じゃない?」

勅使河原「南方、そういう第三者的目線はいらないぞ」

勅使河原「合格する事だけを考えよう……自作問題、作って来たか?」

南方「うん」

勅使河原「よしじゃあやるか、スーパーチャージの現在の裁定を答えよ」

南方「スーパーチャージ自身が場に伏せてあっても発動可能」

勅使河原「ユベル第二形態がデッキに戻った、現在の裁定でユベル第三形態を出す事はできるか否か」

南方「不可能」

勅使河原「やるな、じゃあこれならどうだ……通常魔法はメインフェイズでしか発動できない、YESかNOか?」

南方「NO……」


試験最終日。
ヤマがそこそこ当った筆記の時間は終わり、実技の時間だ。

「受講生の皆さん、よくここまで頑張って来ました……」

「あ……拝見してる皆様、私は西之柏戸(にしゆきかしと)と言います、プロデュエリスト九期生です」


西之「会場の皆さん、これで最後の試験となります……合否は勝敗とは関係ないので全力で戦うようにしてください」

西之「えー、本日の対戦相手の書かれたくじを引き1〜8番を引いた人はA会場、それ以外はB会場に行って下さい」

南方(3番……トセくんは何番だろう?)

勅使河原「俺は9番だ……最後まで試験で戦う事はなかったな」

勅使河原「プロの世界でまた会おう、なんちゃってな」

南方「うん……」


私は3番と書かれた数字の場所へ行った。
対戦相手は……。

南方「よろしくお願いします……」

灘井「よろしく……何だ、あの時のガキかよ」

南方「……」

この手のパターンの相場とはいえ、
初日にぶつかった彼が最後の相手とは……。
なんだか嫌な気分だ。

西之「こらこら君達、喧嘩しないように」

灘井「ふん、ボコボコにしてやる」

南方「……」

灘井「デュエル!」


           灘井芳三
           何物もがひれ伏す力


           南方聖子
           二面性の心



南方「私の先攻です……ドロー」

南方(うん、事故もしてない……いい手札)

南方「マンジュ・ゴッドを召喚します、その効果で高等儀式術を手札に……」

南方「えっと……カードを伏せます、ターン終了です」



灘井「俺のターン、ドロー!」

灘井「ライトロード・プリースト ジェニスを捨てソーラー・エクスチェンジ発動!カードを2枚ドロー!」


墓地へ
ライトロード・ビースト ウォルフ
魔導雑貨商人


灘井「ツイてるぜ!ライトロード・ビースト ウォルフを特殊召喚!」

南方「奈落の落とし穴を発動、ウォルフを除外します」

灘井「な……しゃ、シャインエンジェルを召喚、バトルだ!」

南方(攻撃力1400同士の戦闘でお互いのモンスターが破壊される……何が出てくるかな?)


春夏秋冬「今2ターン目って所か、あの子は儀式デッキかな?」

西之「監督する立場なのに持ち場を抜け出してくるなんて相変わらずですね、春夏秋冬試験官」

春夏秋冬「ここの監督は西之君か……」

西之「はい」

春夏秋冬「君は九期生なのに私にいつもいつも声を掛けてくるのはどういうつもりだ?」

西之「つれないですね、私は春夏秋冬さんと仲良くしたいだけですよ」

春夏秋冬「仲良くする道理はないだろう?……それと、あっちの会場は勅使河原君以外名のない者達だからどうせ見ても見なくても同じだ」

西之「まあそれはそうですけど……でも仲良くしたって別にいいじゃないですか」


灘井「シャインエンジェルの効果でAurkus, Lightsworn Druidを特殊召喚だ!」

Aurkus, Lightsworn Druid
効果モンスター
星3/光属性/獣戦士族/攻1200/守1800
自分フィールド上に表側表示で存在する限り、
「ライトロード」と名のついたモンスターは効果の対象にならない。
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、
自分のエンドフェイズ毎に、自分のデッキの上からカードを2枚墓地に送る。


灘井「こ、このモンスターは……?」

西之「こ……これは日本未発売カード!どうして君が!?」

灘井「金の力さえあれば何でもできんだよ!ダイレクトアタック……」

西之「待つんだ!日本未発売カードを一方的に使うなんて……」

灘井「…なら今回だけは攻撃しないでやる、それでいいだろ!?カードを2枚伏せてターンエンドだ!」


墓地へ
ライトロード・レイピア
ライトロード・ドラゴン グラゴニス



聖子
LP   :6800
モンスター:なし
魔法&罠 :なし
手札   :高等儀式術含め5枚

南方「私のターンです、ドロー」

南方「……センジュ・ゴッドを召喚します、その効果で仮面魔獣マスクド・ヘルレイザーを手札に加えます」

南方「儀式魔法発動、高等儀式術……デッキからメルキド四面獣と仮面呪術師カースド・ギュラを墓地に送ります」

南方「仮面魔獣マスクド・ヘルレイザーを儀式召喚、そしてセンジュ・ゴッドで戦闘します」

灘井「罠カード、ライトロード・バリア発動!攻撃を無効にする!」


墓地へ
大嵐
地砕き


南方(ライトロードだから予想はできたけど、やっぱり使われるとやりにくい……)

南方「……ヘルレイザーも攻撃します」

灘井「もう一度効果発動!」


墓地へ
聖なるバリア−ミラーフォース−
ジャスティス・ワールド


灘井「カードを2枚伏せてターン終了です」



LP   :8000
モンスター:Aurkus
魔法&罠 :ライトロード・バリア 伏せカード
手札   :3枚

灘井「俺のターン!Aurkusをリリース、ライトロード・エンジェル ケルビムをアドバンス召喚!」

灘井「ケルビムの効果発動!仮面魔獣と伏せカードを破壊……」


墓地へ
ライトロード・パラディン ジェイン
ライトロード・プリースト ジェニス
地割れ
ライトロード・パラディン ジェイン


南方「畳返し発動、ケルビムの効果は無効になり破壊です」

灘井「な……!?」

春夏秋冬(畳返しはノーコストだが局地的なカウンター罠、うまく使ってるな……)

灘井「くそっ、閃光のイリュージョン発動!墓地からグラゴニスを特殊召喚だ!」

灘井「グラゴニスの効果により攻撃力は1200ポイントアップ!仮面魔獣に攻撃!」

南方(元々の攻撃力は2000だから相打ちに……)

灘井「カードを伏せてターン終了だ!」



聖子
LP   :6800
モンスター:なし
魔法&罠 :伏せカード
手札   :2枚

南方「ドローします、伏せカードの闇の量産工場を発動して墓地の通常モンスター2体を手札に加えます」

灘井(俺の伏せカードは2枚目の閃光のイリュージョン、何を出そうとも……)

南方「大嵐発動、罠カードを全て破壊します」

灘井「な……」

南方「……メルキド四面獣召喚」

春夏秋冬(このまま攻撃……だとしたら単調すぎるな)

南方「戦線復活の代償発動、メルキド四面獣を墓地に送りヘルレイザーを特殊召喚します」


春夏秋冬「なるほど、彼女は仮面モンスターをうまく使ってるな……」

西之「きっとあのモンスター達が好きなんでしょう、知識技術は至らない所がありますけどやはり彼女で……」

春夏秋冬「いや……残念だが通達によると一人だけ決めろとの事だ」

春夏秋冬「勅使河原君が有力候補すぎて彼女では到底かなわない、彼女には悪いが……」

南方「センジュ・ゴッドでダイレクトアタック!」

灘井 LP8000→6600


……今思えばここでやめておくべきだった。
この最終選考会場で彼だけに『良心』がないという事実は明白だったのだから。


南方「マスクド・ヘルレイザーでダイレクトアタックです!」

灘井 LP6600→3400


灘井「残念だったな!冥府の使者ゴーズを特殊召喚!」


西之「ライトロードにゴーズ……!?彼は何を考えてるんだ!?」

春夏秋冬「彼はアマチュア崩れだからな、確か昔の大会で銀賞を取っていたはずだ」

春夏秋冬「このデッキに勝てるなら……彼女をどうするかはこのデュエル次第だな」


灘井「ゴーズの効果!カイエントークンを特殊召喚!」

南方「……伏せカードを出してターン終了します」




灘井
LP   :3400
モンスター:ゴーズ、カイエン
魔法&罠 :なし
手札   :2枚

灘井「俺のターン!ハネワタ召喚!」

灘井「おっと、手札からGuardian of Orderを特殊召喚!」


Guardian of Order
効果モンスター
星8/光属性/戦士族/攻2500/守1200
自分フィールド上に光属性モンスターが2体以上存在する場合、
このカードは手札から特殊召喚する事ができる。
「Guardian of Order」は自分のフィールド上に1枚しか表側表示で存在できない。


灘井「カイエントークンにハネワタをチューニング!」

南方(え…ゴーズじゃなくて?)

灘井「レベル8モンスター!Avenging Knight Parshathをシンクロ召喚!」


Avenging Knight Parshath
シンクロ・効果モンスター
星8/光属性/天使族/攻2600/守2100
チューナー+チューナー以外の光属性モンスター1体以上
1ターンに1度、相手フィールド上の
表側表示モンスター1体の表示形式を変更することができる。
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、
このカードの攻撃力が守備表示モンスターの守備力を超えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。


灘井「起動効果で仮面魔獣は守備表示になる!3体のモンスターで総攻撃!」

聖子 LP8000→7200→5900→3400

灘井「カードを伏せる!ターン終了だ!」



聖子
LP   :3400
モンスター:なし
魔法&罠 :伏せカード
手札   :仮面呪術師

南方「私のターンです、ドロー……罠オープン、凡人の施しにより二枚ドローします」


除外
仮面呪術師カースド・ギュラ


南方「死者蘇生を発動します、マスクド・ヘルレイザーを……」

灘井「させるか!激流葬発動!」


西之「な……!何て事を!」

春夏秋冬「もう茶々を入れるのも愚問だ、彼はそれでいいと思っている以上何を言っても無駄さ」


南方「……モンスターと伏せカードを出します、ターン終了です」


灘井
LP   :3400
モンスター:なし
魔法&罠 :なし
手札   :0枚

灘井「俺のターン!ライトロード・ウォリアー ガロス召喚!モンスターに攻撃!」

南方「暗黒のミミック LV1の効果によりカードを1枚ドローします」

灘井「チッ……ターン終了!」



聖子
LP   :3400
モンスター:なし
魔法&罠 :伏せカード
手札   :1枚


南方「ドローします……カップ・オブ・エース発動、表なので2枚ドローします」

南方(ドローカードの一枚、ジェルエンデュオは戦闘で破壊されないモンスター、今は耐えるしか……)

南方「モンスターを守備で出してターン終了です」


灘井
LP   :3400
モンスター:ガロス
魔法&罠 :
手札   :0枚


灘井「ドロー!そのモンスターが何かは知らないが消えろ!Ehren, Lightsworn Monkを場に出しバトルだ!」

灘井「ジェルエンデュオは戦闘では破壊され……!?」

灘井「Ehrenが攻撃したモンスターはデッキに戻る!ガロスで直接攻撃!」


Ehren, Lightsworn Monk
効果モンスター
星4/光属性/戦士族/攻1600/守1000
このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、
ダメージ計算を行わずそのモンスターをデッキに戻す。
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、
自分のエンドフェイズ毎に、自分のデッキの上からカードを3枚墓地に送る。


聖子 LP3400→1550


灘井「ターンエンド!」


墓地へ
ライトニング・ボルテックス
ライトロード・バリア
ジャスティス・ワールド
ライトロード・パラディン ジェイン
ライトロード・ハンター ライコウ

灘井「よし、ガロスの効果で2枚ドローだ!」


聖子
LP   :1550
モンスター:なし
魔法&罠 :伏せカード
手札   :2枚

南方「…ドローします」

南方「…モンスターを守備表示、ターン終了です」


灘井
LP   :3400
モンスター:ガロス、Ehren
魔法&罠 :なし
手札   :2枚


灘井「俺のターン!貪欲な壺を発動し2枚ドロー!」

デッキへ
冥府の使者ゴーズ
ライトロード・プリースト ジェニス
ライトロード・パラディン ジェイン
ライトロード・ドラゴン グラゴニス
魔導雑貨商人

灘井(チッ、こいつを引くとは……グラゴニスを戻したのが裏目に出たか……まあいい)

灘井「強制転移発動!Ehrenのコントロールを移す!」

南方「……クリッターのコントロールを渡します」

灘井「死者蘇生発動!俺の場に仮面魔獣を復活させる!これで終わりだ!マスクド・ヘルレイザーでEhrenを攻撃!」

南方「罠発動、和睦の使者により戦闘ダメージは無効となります」

灘井「……俺のターンは終了だ!」




聖子
LP   :1550
モンスター:Ehren
魔法&罠 :なし
手札   :2枚


南方「ドローします……光の護封剣発動、豊穣のアルテミスを召喚してクリッターに攻撃します」

南方「クリッターが墓地に送られたのでメルキド四面獣を手札に加えます、ターン終了です」


墓地へ
天魔神 ノーレラス
ダーク・バースト
天魔神 インヴィシル


聖子
LP   :1550
モンスター:Ehren、アルテミス
魔法&罠 :光の護封剣(0)
手札   :メルキド四面獣含め2枚
※エンドフェイズ時



灘井「俺のターン!封印の黄金櫃発動!裁きの龍を除外してターン終了!」

南方「私のターン…神秘の中華なべでEhrenの攻撃力分のライフを回復しターン終了です」

灘井「俺のターン!ターン終了!」

南方「私のターンはカードを伏せてターン終了です」



灘井
LP   :3400
モンスター:ガロス、ヘルレイザー
魔法&罠 :なし
手札   :3枚
その他:封印の黄金櫃(1)

灘井「俺のターン!裁きの龍が手札に加わるぜ!出でよ、裁きの龍!」

灘井「今度こそおしまいだ!ライフを1000払う事でこのカード以外のカードを全て破壊……」


南方「天罰発動、その効果を無効にし破壊します」


墓地へ
豊穣のアルテミス


灘井「……カウンター罠ばっか使いやがって!!!いい加減にしろ!!!」

南方「……」

畳返しと天罰を入れなければあの時の恐怖がぬぐえない。
自分の世界が否定されたあの時は、二度とあってはならない――。

灘井「そこまでして勝ちたいか!?」

南方「……ライトロードにゴーズとシンクロ召喚要素を入れるのは勝ちたいのとどう違うんですか?」

灘井「う、うるさい!!カードを伏せてターン終了だ!」



聖子
LP   :3150
モンスター:アルテミス
魔法&罠 :なし
手札   :メルキド四面獣含め2枚


南方「私のターン…」

ドローカード:成金ゴブリン

(私のカードは巨大化とメルキド四面獣…うう、この場面であのカードを引けるかな……?)

南方「成金ゴブリンを発動してカードを1枚ドローします…」

私は目をつぶり、祈るような気持ちでカードを引いた――。
……ドローカードに目をやった……仮面魔獣デス・ガーディウスが私の手には握られている!

南方(やった……このターンで……!)

南方「メルキド四面獣召喚、更に仮面魔獣デス・ガーディウスを特殊召喚します!」


灘井(次のターン、ドローすると見せかけて袖に仕込んだ裁きの龍をドローしてやる!)

灘井(その為にはこのターンをすり替えたこのカードで凌いで……)

灘井「罠カード、挑発を発動!お前はこのターン仮面魔獣しか攻撃対象に選択できない!」


南方「……」


挑発を使われたとなるとこのターンで勝負をつけるにはこの方法しかない。
だが、しもべに死ねという勝利など勝利なのか……?
そう考えていてその時――。

奪われた同胞を取り戻す為なら私は喜んでこの身を捧げましょう。

……そう仮面魔獣の声が聞こえたような気がした。


南方「……」

それが勝利のためだから?
否。奪われたものを取り戻すためだから。
彼は自ら犠牲になることを了承してくれたのだ――。


南方「巨大化を発動、マスクド・ヘルレイザーに装備します」

春夏秋冬(ふむ、なるほどな……仮面デッキ自体は極端に強い訳ではないが彼女はカードの使い方がうまい)

春夏秋冬(ここまで勝ち残ってきたのもその力があったからか……)



南方「デス・ガーディウスでマスクド・ヘルレイザーを攻撃!」

聖子 LP3150→50


灘井「何のつもりだ…?」

南方「デス・ガーディウスの効果発動……デッキより遺言の仮面を発動します!」

南方「このカードは通常魔法ですがガーディウスの効果によって場に出された時のみ装備カードとなります……ヘルレイザーに装備!」

南方「仮面魔獣は私の場に戻ります!」

灘井「なっ…何ぃ!?」

南方「これで終わりです…ライトロード・ウォリアー ガロスを攻撃、惨劇の残酷号!」


灘井 LP4400→0




灘井「う……嘘だ……俺が負けたなんて!」

南方「……ありがとうございました、仮面魔獣は返してもらいます」

灘井「くそっ!!」

悪態と共に彼はヘルレイザーのカードを投げ、走り去っていった。


春夏秋冬「……マナーがなってないな」

西之「ゴマスリのつもりなのか最後に挑発を使ってましたが、カードをすりかえる事までするなんて、やはり……ですね」

春夏秋冬「ゴーズなどエンターテイナーのテーマにそぐわないさ……さて、彼女の処遇をどうするか……」


南方「トセくん、どうだった?」

勅使河原「もちろん勝利さ、南方はどうだ?」

南方「あの人、灘井に勝ったよ」

勅使河原「おお、それは凄いな……7戦2敗ならまだまだ十分に可能性ありだ」

南方「大丈夫かな……?」

勅使河原「自分を信じろ」

南方「うん……」

刀西くんはそう言ってくれるが筆記テストの点数はギリギリ、実技は並程度。
……正直、そんな私が合格できるのかは疑問だ。


西之「えー、会場の皆さんにお知らせします」

春夏秋冬「一週間の試験結果は掲示板で明日発表される、心待ちにしてるんだな……解散!」


その夜、不安で私は眠れなかった。
私は刀西くんにメールを出して時間をつぶすことにした。

……出会ったばかりの彼を容易に受け入れている自分が不思議でたまらない。
彼と昔会ったことがあるのだろうか、それともユベルのように……?

(……アニメじゃあないしそんな訳ないか)


次の日。
試験会場の掲示板には合格者の名前が書かれた紙が貼られていた。
『合格者二名 勅使河原刀西 南方聖子』とその紙には書かれている。

南方「え……わ、私?」

勅使河原「俺もか……」

「やったな!」

「おめでとう!」

南方「あ、ありがとう……」

賛辞の声があっちこっちから聞こえる。
私がおたおたしているとその紙を見たとたん走り去る一つの影が見えた。

「今走ってったの灘井だぜ!散々威張っちゃって馬鹿みてー」

「あいつ嫌な奴だったし当然よね」

正直なところ、煮え切らない気分だ。
なぜ私が合格なのか問いたい。

南方「ごめん、私ちょっと試験官の所に行くね」

賛辞する人たちを押しのけ、私は西之試験官の所へ走った。



南方「西之試験官!」

次の言葉を出す前に私が来ることは予想済みと言わんばかりに西之試験官が口を開いた。

西之「……合否なら春夏秋冬さんが決めましたよ、まあ彼ではプロの世界に不適合なのは実技デュエルを見れば明白でしたけどね」

西之「貴女が合格なのは彼女が貴女を推薦してくれたからです、その行為を貴女は誇るべきでしょう」

南方「そうだったんですか……」

西之「気持ちの整理がつかないなら、春夏秋冬試験官に直接会って話をすべきですよ」

南方「はい……」

西之(……実は本当の事は半分しか話してませんけどね)





春夏秋冬(それにしても……あの子、ミナカタといったか……そしてヒジリコ……まさか?)

春夏秋冬「……西之君」

西之「はい?」

春夏秋冬「通達書には全責任を持つのであれば合格させても構わないと書いてあったよな?」

西之「ええそうです、まさか春夏秋冬試験官……」

春夏秋冬「彼女を私の事務所、イクテュスに所属させようと思う」

西之「私が推薦したのは普通合格ですよ、本気ですか?」

西之「特別合格の場合年間勝率がかなり高くないと貴女が責任を持って辞めなければ……」

春夏秋冬「ふん、望む所だな……あの狸にそう」

西之「狸?マイナーモンスターカード、タートル・狸ですか?」

春夏秋冬「……いや、何でもない」




西之(まあその事は彼女に言うべきではないでしょう、責任をあの年で背負うのは辛すぎる……)




春夏秋冬試験官のところには、どうやら先客がいたようだ。
私はこっそり聞き耳を立てることにした。

灘井「試験官、どういう事ですか!?」

春夏秋冬「どういう事とはどういう事だ?私は私の選考基準を満たした者を選んだつもりだったが」

灘井「自分は筆記、実技の点数共に勅使河原とトップを争いましたし、受講生同士のデュエルでも昨日以外は全勝ですよ!」

春夏秋冬「イエスマンが反旗を翻してはいけないな……」

灘井「…?」

春夏秋冬「君は私の前でだけ従順に振舞っておきながら結果が自身の意にそぐわなかったからこういう態度をとっている…そうだろう?」

灘井「な、何を…」

春夏秋冬「とぼけずとも、調べはついている……受講者のうちの数名が私の間者だったと言えば分かるかな?」

灘井「な、な…!?」

春夏秋冬「つまり君は点数稼ぎの為に平然と嘘をついたに等しい、そんな奴はゴマスリ人間と同じだ…」

春夏秋冬「ただでさえ例の一件があるのにそんなアホをプロデュエリストにする?帰って寝ろ!!!」

灘井「……俺の」

春夏秋冬「……?」

灘井「俺の一族を知ってるのか!?お前なんていつでも潰せるんだぞ!」

春夏秋冬「本性を出したか、潰せるものなら潰してみるとよい」

春夏秋冬「……と言いたい所だがな、正直潰されるのは困る……」

灘井「へっ、わかってるくせに……金を出せってんだろ?悪い奴だな」

春夏秋冬「……」

灘井「ふん、バカオヤジにねだりゃ金なんぞすぐ出してくれっからな、一千万円ぐらい会社の金をこっそり横流ししてくれるさ」

春夏秋冬「……」

灘井「どんな権利も金で買えるとはいいご時世だぜ」

春夏秋冬「……」

灘井「じゃあな」



南方(わっ、こっちに来る……!)

聞き耳を立てていた私は慌てて物陰に隠れた。
上機嫌で出てきた彼を見る限り、春夏秋冬試験管を買収しようとしたらしい。
私は春夏秋冬試験官に話をしに行った。

南方「ヒトトセ試験官、今の話……!」

春夏秋冬「……聞いていたのか」

南方「あんな事、許していいんですか!?」

春夏秋冬「安心しろ、私なりのやり方で彼を否定すればいいのさ」

南方「……え?」

春夏秋冬「……君は合格しているのは間違いない、それだけははっきりしておこう」

春夏秋冬「会見は明後日になる、一毛作市民ホールの私の控室に来るように……」

南方「は、はい……で、でも私じゃヒトトセ試験官の期待になんて答えられそうに……」

春夏秋冬「君は自分自身を過小評価している、眠っている真実を埋もれたままにするのは良くないぞ」

南方「え……?」

春夏秋冬「すまないが、電話する所がある……二日後に会おう」

そういって彼女は私を追い出した。
眠っている真実とは、いったい何のことなのか……?
今の私にはわからなかった。


春夏秋冬「ふむ、こういう場合は……」

春夏秋冬「……西風探偵事務所か?少し頼みたい事が……」



二日後。
一毛作市市民ホール。

「第十三回プロデュエリスト予備生選出試験、日本国からは八名がその資格を得ました…それでは入場致します」

南方(こんなにたくさんの人がいるなんて……)
ここがスポンサー獲得の重要なステップである以上仕方のないことだが、
大舞台すぎて、緊張で私の耳には何も入らない。
私がかろうじてやろうと意識できたことは、舞台の上手でこっそり見ていることだけだ。

「さあ続いては春夏秋冬直美の折り紙つき!勅使河原刀西君!」

勅使河原「勅使河原刀西です、和をテーマにしたデッキを使っています……よろしくお願い致します!」

「さて、最後の一人……」

続く言葉は会場に響かなかった。
なぜなら、言葉を言い切る前にヒトトセさんが司会の人からマイクを奪い取ったからだ。


「…春夏秋冬さん?」

春夏秋冬「あー、あー……何も言わずにこれを聞いて欲しい」

春夏秋冬「聞こえるか西水(すがい)、スイッチオンだ!」


西水「了解、スイッチオン!」


『……俺の』

『俺の一族を知ってるのか!?お前なんていつでも潰せるんだぞ!』


灘井「な!?」

南方「え!?」

当事者にも会場にもざわめきが起こった。
いつ録音したのかは知らないが一昨日のやり取りが流れたからだ。



職員「な、生放送ですよ!?今すぐ差し替え映像を…」

偉い人「待て、やらせろ!責任は俺が持つ!!」

職員「いくらアナタが彼女のファンだからってそういう事は……!」

偉い人「このまま差し替え映像を入れたら不正摘発を否定する事になる」

偉い人「プライバシーだ何だ誤魔化して悪い奴を守るのはもうこりごりだ!」

偉い人「悪が少しでも駆逐される事が俺の首ですむなら安すぎるぐらいだ!続けろ!!」



……春夏秋冬直美のもう一つの顔。
それはプロデュエリスト界のあらゆる不正を摘発する内部告発者。
彼女は誰に対しても妥協を許さず、
お前に好かれるために仕事をしているのではないと公言していて、
普通の人にできない生き方をしている。
それが彼女を魅力づけるもう一つの要素である。



灘井「な……!?何しやがる!?」

『どんな権利も金で買えるとはいいご時世だぜ』

春夏秋冬「私には嘘をつくなど耐えられなかった……」

春夏秋冬「某プロデュエリストの一件もある以上、これ以上利権絡みの汚職を起こす訳にはいかない……」

春夏秋冬「本当の合格者は南方聖子という女の子だ……だが私に逆らう選択肢などない、私はよちよち歩きの十期生でしかないのだから」

春夏秋冬「……以上、それでは入場してもらおう……灘井芳三だ」

灘井「な……出ていけるか!」

「これはスクープだ!」

そういって段の上を駆け上った記者が一人。
一人が上ったのを合図に、波ができたかのように下手に大量の人が集まった。

灘井「やめろっ!俺を写すな!写すんじゃない!!!」

「だが断る!激写!!」

「夕刊の一面は灘井財閥、家族ぐるみで会社の金を横領に決まりだ!!」

「皆様、お静かに!壇上を超えようとしないで下さい!」

灘井「約束が違うぞ!ヒトトセェーーーっっ!!」

春夏秋冬「……何の事だ?約束した覚えはない、私は沈黙していただけだ」

灘井「ふざけんなぁぁーーー!!」

春夏秋冬「ふざけてなどいない、君が勝手に自分の都合のいいように解釈しただけだ」

「お静まり下さい!お静まり下さい!」

司会者の声が虚しく響く。
会場は大混乱だ。

南方「ヒトトセ試験官……?」

春夏秋冬「女は嘘をつく生き物だ……そうだろう?」

そう言って、彼女は私にぱちりとウインクしてみせた。
はぐらかされてしまったが、きっとこれが『私なりのやり方』というやつなのだろう。

春夏秋冬「君が本当の合格者だ…さあ、胸を張って壇上に行くんだ」

南方「は、はい……」

春夏秋冬「どうやら君では輪を乱すだけのようだ、退場願おう」

彼女がぱちりと指を鳴らすと、騒ぎをどう静めるべきか対応に困っていた警備員達が下手の方へと彼を連れていった。

灘井「許さないぞ!!覚えてやがれ!!」

春夏秋冬「……やられ役の台詞だな、忘れておこう」

春夏秋冬「予定が狂ってしまった以上君が繰り上がり当選だ……さあ挨拶をするんだ」

南方「え……えっと、南方聖子です、せ、精一杯やります、よろしくお願いします」


会場に沈黙が流れた。
その空気を察して刀西くんが拍手をしてくれた。
場内に拍手の花が咲くのに時間はかからなかった。

勅使河原「……南方、よかったな」

春夏秋冬「……おめでとう!」

南方「は、はい!」



会見が終わっても、まだ心臓がドキドキしていてすぐには収まりそうにない。
私は遂にプロになったのだ――。

南方「私たちはプロになるのか…長い道のりだったなあ」

そう呟いた私に、春夏秋冬さんが異議を唱えた。

春夏秋冬「南方君、何か勘違いしていないか?」

南方「?」

春夏秋冬「プロになれるかは前期生によるデュエルの洗礼を浴びて決めるのだぞ」

彼女の言葉にしばらくは理解ができなかったが、刀西くんの言葉でその意味が分かった。

勅使河原「南方、つまり試験は終わっていないって訳だ」

南方「……ええええええええ!!??」


つづくけど丸藤杯編へ

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