最終更新:ID:+Xwrtkf4FQ 2007年11月02日(金) 15:32:35履歴
コウ「俺からだ! ドロー!」
コウ「俺はサファイア・ドラゴンを召喚! ターンエンド!」
ガゼル「(ただの1900バニラか)俺のターン、ドロー」
ガゼル「……これは運がいい。俺は手札抹殺を発動、手札を全て捨ててカードを5枚ドロー」
コウ「俺も5枚ドローだ」
ガゼル「俺は融合発動。手札の幻獣王ガゼルとバフォメットを融合。有翼幻獣キマイラを融合召喚」
《幻獣王ガゼル/Gazelle the King of Mythical Beasts》
通常モンスター
星4/地属性/獣族/攻1500/守1200
走るスピードが速すぎて、姿が幻のように見える獣。
《バフォメット/Berfomet》
効果モンスター
星5/闇属性/悪魔族/攻1400/守1800
このカードが召喚(反転召喚)に成功した時、
「幻獣王ガゼル」をデッキから1枚手札に加える事ができる。
《有翼幻獣キマイラ/Chimera the Flying Mythical Beast》
融合・効果モンスター
星6/風属性/獣族/攻2100/守1800
「幻獣王ガゼル」+「バフォメット」
このカードが破壊された時、墓地にある「バフォメット」か
「幻獣王ガゼル」のどちらか1枚をフィールドに特殊召喚する事ができる。
(表側攻撃表示か表側守備表示のみ)
コウ「(2100なら倒せないことはない……)」
ガゼル「さらに俺の墓地には幻獣クロスウィングが3枚ある」
《幻獣クロスウィング/Phantom Beast Cross-Wing》
効果モンスター
星4/光属性/獣戦士族/攻1300/守1300
このカードが墓地に存在する限り、
フィールド上に存在する「幻獣」と名の付いた
モンスターの攻撃力は300ポントアップする。
ガゼル「よってキマイラの攻撃力は3000だ!」
コウ「(さっきの手札抹殺で全て落ちたのか……)」
ガゼル「キマイラでサファイア・ドラゴンを攻撃だ。幻獣衝撃粉砕(キマイラ・インパクト・ダッシュ)!」
コウ LP8000→6900「ぐはぁ!」
コウ「(体にダメージが……これが異世界のデュエルか!)」
ガゼル「は、これくらいの攻撃ごときで苦しそうだな。俺はカードを1枚セットしてターンエンドだ」
コウ
LP :6900
手札 :5枚
モンスター:なし
魔法or罠 :なし
伏せカード:なし
ガゼル
LP :8000
手札 :1枚
モンスター:キマイラ
魔法or罠 :なし
伏せカード:1枚
コウ「(だが体に直接ダメージのいくデュエルは俺だって初めてじゃない! いける!)俺のターン! ドロー!」
コウ「俺は召喚師のスキルを発動! デッキから真紅眼の黒竜を手札へ!」
《召喚師のスキル/Summoner's Art》
通常魔法
自分のデッキからレベル5以上の通常モンスターカード1枚を選択して手札に加える。
コウ「そして俺は融合を発動! 手札からメテオ・ドラゴンと真紅眼の黒竜を融合する! メテオ・ブラック・ドラゴンを融合召喚!」
コウ「メテオ・ブラック・ドラゴンの攻撃力は3500! メテオ・ブラックでキマイラを攻撃! メテオ・ダイブ!」
ガゼル「その前のメインフェイズ終了時に威嚇する咆哮! 攻撃は出来ない!」
コウ「防がれたか、ターンエンドだ!」
ガゼル「俺のターン! ドロー!」
ガゼル「3500……それくらいなんともないわぁ! 俺は野性解放を発動! キマイラの攻撃力を1800上げる!」
《野性解放/Wild Nature's Release》
通常魔法
フィールド上に表側表示で存在する獣族・獣戦士族モンスター1体の攻撃力は、
そのモンスターの守備力の数値分だけアップする。
エンドフェイズ時そのモンスターを破壊する。
コウ「野性解放か……」
ガゼル「これでキマイラの攻撃力は4800。キマイラでメテオ・ブラック・ドラゴンを攻撃! 幻獣衝撃粉砕(キマイラ・インパクト・ダッシ
ュ)!」
コウ LP6900→5600「うぅっ! だが野性解放を使ったモンスターはエンドフェイズに破壊される……」
ガゼル「確かにそうだ。エンドフェイズにキマイラは破壊、だがキマイラの効果発動」
ガゼル「墓地から幻獣王ガゼルを特殊召喚する、ターンエンドだ」
コウ
LP :5600
手札 :3枚
モンスター:なし
魔法or罠 :なし
伏せカード:なし
ガゼル
LP :8000
手札 :1枚
モンスター:ガゼル
魔法or罠 :なし
伏せカード:なし
コウ「(そうか……キマイラは破壊時に融合素材のどちらかを墓地から特殊召喚出来る)」
コウ「(ガゼルの攻撃力は2400……どうする?)俺のターン! ドロー!」
コウ「俺はモンスターをセット! ターンエンド!」
ガゼル「俺のターン、ドロー!」
ガゼル「俺は手札から融合回収(フュージョン・リカバリー)を発動。墓地のバフォメットと融合を回収」
《融合回収(フュージョン・リカバリー)/Fusion Recovery》
通常魔法
自分の墓地に存在する「融合」魔法カード1枚と、
融合に使用した融合素材モンスター1体を手札に加える。
ガゼル「さらに手札から融合を発動もう一度有翼幻獣キマイラを融合召喚だ!」
ガゼル「キマイラで裏守備を攻撃!」
コウ「裏守備はイリュージョン・シープ、破壊だ」
ガゼル「そして俺は速攻魔法、融合解除を発動! 墓地からガゼルとバフォメットを特殊召喚!」
《融合解除/De-Fusion》
速攻魔法
フィールド上の融合モンスター1体を融合デッキに戻す。
さらに、融合デッキに戻したこのモンスターの融合召喚に使用した
融合素材モンスター一組が自分の墓地に揃っていれば、
この一組を自分のフィールド上に特殊召喚する事ができる。
ガゼル「二体でダイレクトアタック!」
コウ LP5600→1800「うぅっ!」
バフォメットとガゼルの直接攻撃がコウに決まる。
コウのライフはあとわずか……しかもコウの体力もかなり限界に近づいていた。
ヒート「コウキ! やっぱり助けなきゃ……!」
ヒートがカードを構えてコウに近づこうとする。
ガゼル「おっとそこの赤髪の人間の女! デュエル中の手出しは無用だぜ!」
コウ「その通りだ……ヒート。まだデュエルは終わってねぇ」
ヒート「でも、負けたら殺されちゃう……」
ヒート「コウキ、コウキが死んじゃう!」
コウ「心配するな、俺は絶対に勝つ。こんなとこで死んでたまるか!」
ガゼル「威勢がいいな……諦めの悪さだけは褒めてやろう。だが次で終わらせてやる、ターンエンドだ!」
コウ
LP :1800
手札 :3枚
モンスター:なし
魔法or罠 :なし
伏せカード:なし
ガゼル
LP :8000
手札 :1枚
モンスター:ガゼル
魔法or罠 :なし
伏せカード:なし
不思議とコウに死の恐怖はなかった、今の手札で勝ちが確定しているわけでもない。
それにコウが何より心配なのはヒートだった。
今一番苦しんでいるのはヒートだとコウは思っているのだ。
今までの味方を裏切り、そして自分達の中にも疑念を抱いているものがいる。
そんな板ばさみな中でそれでもヒートはめげずに自分達を元の世界に帰そうとしている。
すごく辛い道を選んだ強いヒートにコウは感謝し、そして少しでも助けてあげたいと思った。
自分がここで死んでヒートも悲しませたくない、だから絶対に負けたくないとコウは強く思っていた。
ミズキ「(コウ君、頑張ってください。このエールでの最初の試練を乗り切ることが出来れば君は……)」
コウ「(ヒートを悲しませたくはないからな、そうなったら死んでも死に切れねえ!)俺のターン! ドロー!」
つ融合
コウ「来た! 俺は融合発動! 手札のブラック・マジシャンとバスター・ブレイダーを融合!」
コウ「こいつでお前を倒す! 超魔導剣士−ブラック・パラディンを融合召喚!」
ガゼル「パラディン……攻撃力2900だと!」
コウ「パラディンは墓地のドラゴン族の数だけさらに攻撃力を上げる! 墓地のドラゴン族は4枚、よって攻撃力4900!」
コウ「いくぜ! ブラック・パラディンでガゼルを攻撃! レイジ・オブ・ワイバーン!」
ガゼル LP8000→5500「うぐぅ! 強烈な一撃だ……!」
コウ「俺はカードを1枚セットしてターンエンド!」
ガゼル「(攻撃力4900とは……正攻法で俺のデッキでは敵わない)俺のターン、ドロー!」
つおろかな埋葬
ガゼル「(こいつで凌ぐしかない……)俺はおろかな埋葬を発動、デッキからダンディライオンを墓地へ」
《ダンディライオン/Dandelion》
効果モンスター(制限カード)
星3/地属性/植物族/攻 300/守 300
このカードが墓地へ送られた時、自分フィールド上に「綿毛トークン」
(植物族・風・星1・攻/守0)を2体守備表示で特殊召喚する。
このトークンは特殊召喚されたターン、生け贄召喚のための生け贄にはできない。
ガゼル「墓地へ送られたことによりダンディライオン効果発動、綿毛トークン二体を守備表示で特殊召喚。バフォメットを守備表示に変更
してターンエンドだ」
コウ「俺のターン! ドロー!」
コウ「一つ言っておくぜ、お前は今のプレイングさえなかったらもう少しで生き延びられた」
ガゼル「なんだと!? そんなバカな……!」
コウ LP1800→800「いくぜ! 俺はライフを1000払い魔法カード、拡散する波動を発動!」
《拡散する波動/Diffusion Wave-Motion》
通常魔法
1000ライフポイントを払う。
自分フィールド上のレベル7以上の魔法使い族モンスター1体を選択する。
このターン、選択したモンスターのみが攻撃可能になり、
相手モンスター全てに1回ずつ攻撃する。
この攻撃で破壊した効果モンスターの効果は発動しない。
コウ「いけ! ブラック・パラディンで攻撃!」
ガゼル「だが全体攻撃をしようとまだ終わりはしない!」
コウ「いや、これで終わりだガゼル! 俺は攻撃時に罠カード、ストライク・ショットを発動!」
コウ「エンドフェイズまでブラック・パラディンの攻撃力は700アップ、さらに貫通能力を得る!」
ガゼル「何!?」
《ストライク・ショット/Strike Slash》
通常罠
自分フィールド上のモンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。
ターン終了時までそのモンスターの攻撃力は700ポイントアップする。
そのモンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、
このカードの攻撃力が守備表示モンスターの守備力を超えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
コウ「とどめだ! ブラック・パラディンで全てのモンスターを攻撃! オールレンジ・セイクリッドブラスト!」
パラディンの剣から魔力が拡散し、ガゼルの全てのモンスターを襲った。
ガゼル LP5500→0「ぬぅおぉぉぉおぉぉぉぉ!!」
コウ「ハァ、ハァ……勝った」
ガゼル「くそぅ……こうなったら直接てめぇを殺してやる!」
ガゼルがディスクを閉まうとコウに飛びかかり襲い掛かる。
コウ「うわぁ!」
ヒート「コウキ危ない! 精霊召喚! コマンド・ナイト!」
ヒートはコマンド・ナイトを精霊召喚する。
召喚されたコマンド・ナイトは無言のまま鞘から剣を抜き、ガゼルへと上段からその剣を振るう。
ガゼル「ぐがぁ!」
コマンド・ナイトの斬りでガゼルの左腕が切断される。
ガゼルは叫び声を上げた。
ガゼル「ぐぅ……」
ヒート「よし、コマンド・ナイト! そのまま叩き切れ!」
ヒート「(今はヒータには頼れない。恐らくボクの魔力が持たないだろう。だからがんばって! コマンド・ナイト)」
コマンド・ナイトはガゼルの左から胴体を払おうと剣を振り払う。
だがそれはガゼルの残った左手で止められてしまう。
コマンド・ナイトは思いっきり力を入れて止めた左手ごと斬ろうとしたが爪に剣を捕まれて全く動かない。
ガゼル「甘いんだよぉ。さっきは不意打ちをくらっちまったがこんな貧弱な精霊ごとき腕一本でぶち殺せるわ!」
ガゼルはコマンド・ナイトを振り払うと、コマンド・ナイトはしりもちをついてバランスをくずす。
ガゼルは隙を見て倒れているコマンド・ナイトに飛び掛った。
だがコマンド・ナイトもすぐさま立ち上がり、顔面に横払いで剣を振るう。
しかしそれは止められてしまった、ガゼルは顔に向かってくる剣を口で止める。
つまり歯で止めているのだった。
ヒート「くっ! 力が強い!」
ガゼル「死ね、虫ケラ!」
ガゼルの左手の爪をコマンド・ナイトの胴体をえぐる。
コマンド・ナイトは鎧を纏っているが、ガゼルの爪はそれをいとも容易く貫通している。
ガゼルの爪は既にコマンド・ナイトに刺さっており、血が噴出している。
ヒート「あぁっ! 痛ッ!」
コウ「ヒート!」
ミズキ「ヒートさん!」
精霊がダメージを受けたことによりヒート自身にも痛みが走る。
ガゼル「こいつをぶっ殺したら次はお前達だ。だがその前にこの精霊をじわじわといたぶらせてもらうぜ! 俺様の右腕のお返しだ!」
ガゼルは爪を抜くと顔に向かって左手をビュンと振り払う。
コマンド・ナイトの顔に五本の爪あとがついている。
ヒート「うわぁあぁぁぁぁ!!」
ヒートにもそれは伝わり苦しんでいる。
その様子を恐怖の面持ちで見ていたコウはハッと気づく。
コウ「(そうだ、このままじゃヒートが! ヒートじゃこいつには敵わない!)」
コウ「(俺が……俺がやるしないのか。だけど精霊なんて俺に出せるのか?)」
ミズキ「コウ君!」
コウ「!!」
突然ミズキがコウに呼びかける。
ミズキ「あなたがヒートさんを助けるのです、精霊を出すのです」
コウ「でも……どうやって。俺にはわからない!」
ミズキ「ヒートさんと同じ方法でいいのです。あなたもいつもモンスターを召喚しているでしょう」
コウ「俺は出来ない……!」
ミズキ「いいえ出来ます! さぁ、あなたの一番信頼しているカードを出してください!」
コウ「(俺の信頼しているカード……)」
コウはデッキからカードを1枚取り出す。
それはコウの切り札、超魔導剣士−ブラック・パラディンのカードだった。
ミズキ「やはりそれですね。さぁ召喚してください!」
コウ「……わかった。精霊召喚! 超魔導剣士−ブラック・パラディン!」
コウがヒートと同じようなやり方でそう叫ぶ、だがブラック・パラディンは出てこない。
コウ「やっぱり無理じゃないか……! くっ! 俺には出来ない!」
ミズキ「いいえ出来ます! 自分を信じてください!」
ミズキ「この世界で……いえ、あなた方の世界だろうと思いがあれば出来ないことはありません!」
ミズキ「信じてください。絶対に疑わずに、精霊は出せると!」
コウ「…………」
ヒート「きゃあぁぁぁあ!」
コウ「ヒート!」
ヒートが叫ぶ、そして体が耐え切れずについにコマンド・ナイトは精霊の状態から解除してしまう。
ガゼル「さて、次はコマンド・ナイトのマスターらしいあの赤髪の人間の女を殺す!」
ガゼルがそう言うとゆっくりとヒートに歩み寄る。
ヒート「(このままじゃやられる! こうなったら一か八かヒータを出すしかない)」
ヒート「(ボクとヒータの相性はいい、ボクの精霊召喚での最強の組み合わせだ)」
ヒート「(ほんの十秒だけでいい、ヒータを精霊召喚して攻撃することさえ出来れば!)」
ヒートはヒータのカードを手に持った。
ヒート「精霊召喚! 憑依装着−ヒータ!」
ヒータの精霊が召喚される。
ガゼル「こいつ……まだ精霊を出せるのか!」
ヒート「この一撃にかける! 燃え尽きろ! ソーサリー・エネルージュ!」
ヒータが杖を振るい、そこから炎が噴出す。
炎がガゼルの体を包んだ。
数秒ほどガゼルをヒータの炎が包み、ガゼルはもがき苦しむ。
そしてヒータの精霊状態が解け、ヒートはうつぶせに倒れる。
ヒート「ハァ……ハァ、倒せた……」
ヒートが精霊を解除したことにより炎が消える。
だがそこにはまだガゼルは健在だった。
黒コゲではあるがまだしっかりと二つの足で立っている。
ヒート「あ……」
ガゼル「甘めぇんだよ女ぁ! 魔力が少しだけ足りなかったようだな! 俺はこの程度の炎じゃくたばらねえよ!」
だがガゼルもダメージを受けている様子、足元がフラフラとしている。
だがヒートはもう精霊を出せない、このままガゼルに近づかれて倒されるだろう。
ガゼル「よくもここまでくらわしてくれたな。今度こそ……死ね!」
ヒート「(終わった……ボクはもう精霊を出せない)」
ヒート「コウキ! ミズキ! 逃げてぇ!」
ヒートがそう二人に叫ぶ。
コウ「ヒート!?」
ミズキ「…………」
ヒート「ガゼルはもはや走ることは出来ない! ボクだけが犠牲になれば大丈夫だから……」
ヒート「死ぬのは……ボクだけでいい」
ガゼル「(この状態じゃあのガキ二人は取り逃しちまうか……まぁいい、今日はこいつだけでも喰おう)」
ガゼルがゆっくりと、ゆっくりとヒートに歩み寄っている。
ミズキ「コウ君! ヒートさんを置いて逃げるのですか!?」
ミズキがコウのほうに向かって叫ぶ。
コウ「それでも……俺にはどうしようもない」
ミズキ「ヒートさんがどうなってもいいんですか?」
コウ「嫌だ! 俺はヒートを死なせたくない!」
ミズキ「だったら!」
コウ「でも精霊なんて出ないんだ! 俺はどうしたらいいかわからない!」
ミズキ「いえ、出来ます! もっとシンプルに考えてください」
ミズキ「もう精霊召喚はしなくてもいいです。今あなたに何が出来るか、ヒートさんを助けるには何が必要か」
ミズキ「強く真っ直ぐな思いを持って今はそれだけを考えてください!」
コウ「(ヒートを……助ける)」
コウ「(そう、俺はあいつを、ガゼルを倒したい! そのために必要なものは……)」
「(いい加減目ぇ覚ませよ、マスター)」
コウ「(何だ!? 誰だ、俺に話しかけるのは)」
「(お前が今欲しいものは何だ?)」
コウ(俺が……俺が欲しいのは)」
コウ「(そう、俺が欲しいのは力、ヒートをあいつから守るための力)」
「(そうか……それがマスター、てめぇの想いか。あいつを守りたいのか)」
「(ならば俺を解き放て! マスター……いや、コウ!)」
コウ「俺に力を! 精霊召喚! 超魔導剣士−ブラック・パラディン!」
ヒートの前にはもうガゼルがいる。
ガゼル「さて……まずは頭からえぐりとってやろうかぁ!」
ヒート「(ごめん、みんな。後は皆でがんばって……)」
ガゼルがヒートの顔へ向かって左手を振るう。
死ぬ覚悟を決めたヒートは目を瞑っていた。
だがガゼルの左手をヒートに触れることなく何かに止められる。
ガゼル「うがあぁぁぁあぁぁぁ! き、貴様ぁ! それは!」
コウ「すまない、待たせたな。ヒート」
その言葉を聞いたヒートは瞑っていた目を開く。
ヒート「コ……コウキ」
コウ「お前だけに、一人で何もかも背負わせたりはしない」
コウ「俺も頑張るから……だから自分だけ死ねばいいなんて二度と言わないでくれ」
コウ「俺も皆を、ヒートを守る。絶対に諦めるな、ヒート」
ヒート「う、うん……」
ヒートはそういうとホロリと涙を流す。
コウはブラック・パラディンの精霊を召喚することが出来たのだった、想いの力によって。
パラディンは右手に持つ大剣でガゼルの攻撃を受け止めていた。
コウ「覚悟はいいか、ガゼル」
ガゼル「う……ぐっ!」
ガゼル「(何だこいつは……すさまじい魔力を感じる。今の手負いの俺ではとても敵わない!)」
ガゼル「(ここは逃げるしかねぇ!)」
ガゼルは後ろを向いて逃げ出そうとする。
コウ「逃がさねぇ! いけ!」
パラディンはガゼルに向かって走り追いつくと、自分の身長ほどであろう大剣の柄でガゼルの足を引っ掛けて転ばせる。
ガゼルは転ぶがすぐさまあおむけに立ち上がりパラディンに飛び掛った。
ガゼル「うがあぁぁぁぁあぁぁ!」
パラディン「(これがマスター、てめぇのことはずっと見ていた。だが話すのは初めてだな)」
武器となったブラック・パラディンがコウの心の中へと話しかける。
コウ「(あぁ……頼む、戦ってくれ)」
パラディン「(いいだろう……だがこの俺を従えるからにはてめぇが負けるのは絶対に許さねぇ!)」
パラディン「(てめぇがこれからどんな野郎にも絶対に負けねぇと誓うなら。いいだろう、存分に暴れさせてもらう!)」
コウ「あぁ、俺はもう迷わないぜブラック・パラディン。お前と俺の力で絶対に勝つ!」
コウがパラディンとの対話を終えると、パラディンは大剣をガゼルに向けて構える。
パラディン「終わりにしようぜ……」
パラディンがそう呟くと大剣が魔力を帯びる。
コウ「いけぇ! セイクリッド・エリシオン!」
コウがそう叫ぶとブラック・パラディンはガゼルへ大剣を右下段から左上段振るう。
大剣がガゼルの体を真っ二つにした。
そしてガゼルは命を失ったために光の粒子となって散る。
コウ「ハァ……ハァ……解除だ。戻れブラック・パラディン」
コウがそう言うとブラック・パラディンがカードへと戻った。
ミズキ「(……驚きました。もう精霊召喚が出来てしまうとは)」
ミズキ「(正直予想以上でした。僕が思った以上にコウ君には『これ』が相応しい)」
ミズキ「コウ君! 大丈夫でしたか!?」
コウ「あぁ、少し集中して疲れたがどうってことはない」
ミズキ「やりましたね、あなたがヒートさんを助けたのですよ」
コウ「お前のおかげだ、お前がああ言ってくれなかったら」
ミズキ「いいえ、紛れもなくあなたの力です。あなたの思いの強さがあの精霊召喚を成功させたのです」
コウ「ああ、ヒート、大丈夫か?」
ヒートは仰向けで寝そべっていた。
ヒート「う、うん……でも、ちょっと……」
コウ「どうした?」
ヒート「体に力が入らなくて、ボク立てそうにないよ……」
コウ「そうか、そういうことなら」
コウがヒートのところへ歩み寄ると膝裏と肩の裏へと手を入れて抱っこする。
ヒート「コ、コウキ!?」
コウ「このままいくぞ、さすがに歩けないだろう」
ヒート「でででででも、コウキも疲れてるんじゃ……」
抱っこされているヒートの顔が真っ赤になっている。
それに加えてかなり動揺しているようだ。
コウ「お前ほどじゃないさ。窮屈じゃないか?」
ヒート「い、いや全然! ボク重くない!?」
コウ「いや、大丈夫だ。じゃあいくぞ、ミズキ」
ミズキ「はいはい。でもいいんですかねぇ……クーさんに言いつけますよ」
コウ「それだけは勘弁してくれ……」
ヒート「(コウキ、格好よかったよ)」
ヒート「(ボクは一人じゃないんだ……コウキもいるし、皆だっている)」
ヒート「(皆を選んでよかった……よ……)」
コウの腕の中のヒートがそう心の中で呟く。
そしてヒートは抱っこしているコウの胸に頭を預け、安心して眠りについた。
つづく
コウ「俺はサファイア・ドラゴンを召喚! ターンエンド!」
ガゼル「(ただの1900バニラか)俺のターン、ドロー」
ガゼル「……これは運がいい。俺は手札抹殺を発動、手札を全て捨ててカードを5枚ドロー」
コウ「俺も5枚ドローだ」
ガゼル「俺は融合発動。手札の幻獣王ガゼルとバフォメットを融合。有翼幻獣キマイラを融合召喚」
《幻獣王ガゼル/Gazelle the King of Mythical Beasts》
通常モンスター
星4/地属性/獣族/攻1500/守1200
走るスピードが速すぎて、姿が幻のように見える獣。
《バフォメット/Berfomet》
効果モンスター
星5/闇属性/悪魔族/攻1400/守1800
このカードが召喚(反転召喚)に成功した時、
「幻獣王ガゼル」をデッキから1枚手札に加える事ができる。
《有翼幻獣キマイラ/Chimera the Flying Mythical Beast》
融合・効果モンスター
星6/風属性/獣族/攻2100/守1800
「幻獣王ガゼル」+「バフォメット」
このカードが破壊された時、墓地にある「バフォメット」か
「幻獣王ガゼル」のどちらか1枚をフィールドに特殊召喚する事ができる。
(表側攻撃表示か表側守備表示のみ)
コウ「(2100なら倒せないことはない……)」
ガゼル「さらに俺の墓地には幻獣クロスウィングが3枚ある」
《幻獣クロスウィング/Phantom Beast Cross-Wing》
効果モンスター
星4/光属性/獣戦士族/攻1300/守1300
このカードが墓地に存在する限り、
フィールド上に存在する「幻獣」と名の付いた
モンスターの攻撃力は300ポントアップする。
ガゼル「よってキマイラの攻撃力は3000だ!」
コウ「(さっきの手札抹殺で全て落ちたのか……)」
ガゼル「キマイラでサファイア・ドラゴンを攻撃だ。幻獣衝撃粉砕(キマイラ・インパクト・ダッシュ)!」
コウ LP8000→6900「ぐはぁ!」
コウ「(体にダメージが……これが異世界のデュエルか!)」
ガゼル「は、これくらいの攻撃ごときで苦しそうだな。俺はカードを1枚セットしてターンエンドだ」
コウ
LP :6900
手札 :5枚
モンスター:なし
魔法or罠 :なし
伏せカード:なし
ガゼル
LP :8000
手札 :1枚
モンスター:キマイラ
魔法or罠 :なし
伏せカード:1枚
コウ「(だが体に直接ダメージのいくデュエルは俺だって初めてじゃない! いける!)俺のターン! ドロー!」
コウ「俺は召喚師のスキルを発動! デッキから真紅眼の黒竜を手札へ!」
《召喚師のスキル/Summoner's Art》
通常魔法
自分のデッキからレベル5以上の通常モンスターカード1枚を選択して手札に加える。
コウ「そして俺は融合を発動! 手札からメテオ・ドラゴンと真紅眼の黒竜を融合する! メテオ・ブラック・ドラゴンを融合召喚!」
コウ「メテオ・ブラック・ドラゴンの攻撃力は3500! メテオ・ブラックでキマイラを攻撃! メテオ・ダイブ!」
ガゼル「その前のメインフェイズ終了時に威嚇する咆哮! 攻撃は出来ない!」
コウ「防がれたか、ターンエンドだ!」
ガゼル「俺のターン! ドロー!」
ガゼル「3500……それくらいなんともないわぁ! 俺は野性解放を発動! キマイラの攻撃力を1800上げる!」
《野性解放/Wild Nature's Release》
通常魔法
フィールド上に表側表示で存在する獣族・獣戦士族モンスター1体の攻撃力は、
そのモンスターの守備力の数値分だけアップする。
エンドフェイズ時そのモンスターを破壊する。
コウ「野性解放か……」
ガゼル「これでキマイラの攻撃力は4800。キマイラでメテオ・ブラック・ドラゴンを攻撃! 幻獣衝撃粉砕(キマイラ・インパクト・ダッシ
ュ)!」
コウ LP6900→5600「うぅっ! だが野性解放を使ったモンスターはエンドフェイズに破壊される……」
ガゼル「確かにそうだ。エンドフェイズにキマイラは破壊、だがキマイラの効果発動」
ガゼル「墓地から幻獣王ガゼルを特殊召喚する、ターンエンドだ」
コウ
LP :5600
手札 :3枚
モンスター:なし
魔法or罠 :なし
伏せカード:なし
ガゼル
LP :8000
手札 :1枚
モンスター:ガゼル
魔法or罠 :なし
伏せカード:なし
コウ「(そうか……キマイラは破壊時に融合素材のどちらかを墓地から特殊召喚出来る)」
コウ「(ガゼルの攻撃力は2400……どうする?)俺のターン! ドロー!」
コウ「俺はモンスターをセット! ターンエンド!」
ガゼル「俺のターン、ドロー!」
ガゼル「俺は手札から融合回収(フュージョン・リカバリー)を発動。墓地のバフォメットと融合を回収」
《融合回収(フュージョン・リカバリー)/Fusion Recovery》
通常魔法
自分の墓地に存在する「融合」魔法カード1枚と、
融合に使用した融合素材モンスター1体を手札に加える。
ガゼル「さらに手札から融合を発動もう一度有翼幻獣キマイラを融合召喚だ!」
ガゼル「キマイラで裏守備を攻撃!」
コウ「裏守備はイリュージョン・シープ、破壊だ」
ガゼル「そして俺は速攻魔法、融合解除を発動! 墓地からガゼルとバフォメットを特殊召喚!」
《融合解除/De-Fusion》
速攻魔法
フィールド上の融合モンスター1体を融合デッキに戻す。
さらに、融合デッキに戻したこのモンスターの融合召喚に使用した
融合素材モンスター一組が自分の墓地に揃っていれば、
この一組を自分のフィールド上に特殊召喚する事ができる。
ガゼル「二体でダイレクトアタック!」
コウ LP5600→1800「うぅっ!」
バフォメットとガゼルの直接攻撃がコウに決まる。
コウのライフはあとわずか……しかもコウの体力もかなり限界に近づいていた。
ヒート「コウキ! やっぱり助けなきゃ……!」
ヒートがカードを構えてコウに近づこうとする。
ガゼル「おっとそこの赤髪の人間の女! デュエル中の手出しは無用だぜ!」
コウ「その通りだ……ヒート。まだデュエルは終わってねぇ」
ヒート「でも、負けたら殺されちゃう……」
ヒート「コウキ、コウキが死んじゃう!」
コウ「心配するな、俺は絶対に勝つ。こんなとこで死んでたまるか!」
ガゼル「威勢がいいな……諦めの悪さだけは褒めてやろう。だが次で終わらせてやる、ターンエンドだ!」
コウ
LP :1800
手札 :3枚
モンスター:なし
魔法or罠 :なし
伏せカード:なし
ガゼル
LP :8000
手札 :1枚
モンスター:ガゼル
魔法or罠 :なし
伏せカード:なし
不思議とコウに死の恐怖はなかった、今の手札で勝ちが確定しているわけでもない。
それにコウが何より心配なのはヒートだった。
今一番苦しんでいるのはヒートだとコウは思っているのだ。
今までの味方を裏切り、そして自分達の中にも疑念を抱いているものがいる。
そんな板ばさみな中でそれでもヒートはめげずに自分達を元の世界に帰そうとしている。
すごく辛い道を選んだ強いヒートにコウは感謝し、そして少しでも助けてあげたいと思った。
自分がここで死んでヒートも悲しませたくない、だから絶対に負けたくないとコウは強く思っていた。
ミズキ「(コウ君、頑張ってください。このエールでの最初の試練を乗り切ることが出来れば君は……)」
コウ「(ヒートを悲しませたくはないからな、そうなったら死んでも死に切れねえ!)俺のターン! ドロー!」
つ融合
コウ「来た! 俺は融合発動! 手札のブラック・マジシャンとバスター・ブレイダーを融合!」
コウ「こいつでお前を倒す! 超魔導剣士−ブラック・パラディンを融合召喚!」
ガゼル「パラディン……攻撃力2900だと!」
コウ「パラディンは墓地のドラゴン族の数だけさらに攻撃力を上げる! 墓地のドラゴン族は4枚、よって攻撃力4900!」
コウ「いくぜ! ブラック・パラディンでガゼルを攻撃! レイジ・オブ・ワイバーン!」
ガゼル LP8000→5500「うぐぅ! 強烈な一撃だ……!」
コウ「俺はカードを1枚セットしてターンエンド!」
ガゼル「(攻撃力4900とは……正攻法で俺のデッキでは敵わない)俺のターン、ドロー!」
つおろかな埋葬
ガゼル「(こいつで凌ぐしかない……)俺はおろかな埋葬を発動、デッキからダンディライオンを墓地へ」
《ダンディライオン/Dandelion》
効果モンスター(制限カード)
星3/地属性/植物族/攻 300/守 300
このカードが墓地へ送られた時、自分フィールド上に「綿毛トークン」
(植物族・風・星1・攻/守0)を2体守備表示で特殊召喚する。
このトークンは特殊召喚されたターン、生け贄召喚のための生け贄にはできない。
ガゼル「墓地へ送られたことによりダンディライオン効果発動、綿毛トークン二体を守備表示で特殊召喚。バフォメットを守備表示に変更
してターンエンドだ」
コウ「俺のターン! ドロー!」
コウ「一つ言っておくぜ、お前は今のプレイングさえなかったらもう少しで生き延びられた」
ガゼル「なんだと!? そんなバカな……!」
コウ LP1800→800「いくぜ! 俺はライフを1000払い魔法カード、拡散する波動を発動!」
《拡散する波動/Diffusion Wave-Motion》
通常魔法
1000ライフポイントを払う。
自分フィールド上のレベル7以上の魔法使い族モンスター1体を選択する。
このターン、選択したモンスターのみが攻撃可能になり、
相手モンスター全てに1回ずつ攻撃する。
この攻撃で破壊した効果モンスターの効果は発動しない。
コウ「いけ! ブラック・パラディンで攻撃!」
ガゼル「だが全体攻撃をしようとまだ終わりはしない!」
コウ「いや、これで終わりだガゼル! 俺は攻撃時に罠カード、ストライク・ショットを発動!」
コウ「エンドフェイズまでブラック・パラディンの攻撃力は700アップ、さらに貫通能力を得る!」
ガゼル「何!?」
《ストライク・ショット/Strike Slash》
通常罠
自分フィールド上のモンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。
ターン終了時までそのモンスターの攻撃力は700ポイントアップする。
そのモンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、
このカードの攻撃力が守備表示モンスターの守備力を超えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
コウ「とどめだ! ブラック・パラディンで全てのモンスターを攻撃! オールレンジ・セイクリッドブラスト!」
パラディンの剣から魔力が拡散し、ガゼルの全てのモンスターを襲った。
ガゼル LP5500→0「ぬぅおぉぉぉおぉぉぉぉ!!」
コウ「ハァ、ハァ……勝った」
ガゼル「くそぅ……こうなったら直接てめぇを殺してやる!」
ガゼルがディスクを閉まうとコウに飛びかかり襲い掛かる。
コウ「うわぁ!」
ヒート「コウキ危ない! 精霊召喚! コマンド・ナイト!」
ヒートはコマンド・ナイトを精霊召喚する。
召喚されたコマンド・ナイトは無言のまま鞘から剣を抜き、ガゼルへと上段からその剣を振るう。
ガゼル「ぐがぁ!」
コマンド・ナイトの斬りでガゼルの左腕が切断される。
ガゼルは叫び声を上げた。
ガゼル「ぐぅ……」
ヒート「よし、コマンド・ナイト! そのまま叩き切れ!」
ヒート「(今はヒータには頼れない。恐らくボクの魔力が持たないだろう。だからがんばって! コマンド・ナイト)」
コマンド・ナイトはガゼルの左から胴体を払おうと剣を振り払う。
だがそれはガゼルの残った左手で止められてしまう。
コマンド・ナイトは思いっきり力を入れて止めた左手ごと斬ろうとしたが爪に剣を捕まれて全く動かない。
ガゼル「甘いんだよぉ。さっきは不意打ちをくらっちまったがこんな貧弱な精霊ごとき腕一本でぶち殺せるわ!」
ガゼルはコマンド・ナイトを振り払うと、コマンド・ナイトはしりもちをついてバランスをくずす。
ガゼルは隙を見て倒れているコマンド・ナイトに飛び掛った。
だがコマンド・ナイトもすぐさま立ち上がり、顔面に横払いで剣を振るう。
しかしそれは止められてしまった、ガゼルは顔に向かってくる剣を口で止める。
つまり歯で止めているのだった。
ヒート「くっ! 力が強い!」
ガゼル「死ね、虫ケラ!」
ガゼルの左手の爪をコマンド・ナイトの胴体をえぐる。
コマンド・ナイトは鎧を纏っているが、ガゼルの爪はそれをいとも容易く貫通している。
ガゼルの爪は既にコマンド・ナイトに刺さっており、血が噴出している。
ヒート「あぁっ! 痛ッ!」
コウ「ヒート!」
ミズキ「ヒートさん!」
精霊がダメージを受けたことによりヒート自身にも痛みが走る。
ガゼル「こいつをぶっ殺したら次はお前達だ。だがその前にこの精霊をじわじわといたぶらせてもらうぜ! 俺様の右腕のお返しだ!」
ガゼルは爪を抜くと顔に向かって左手をビュンと振り払う。
コマンド・ナイトの顔に五本の爪あとがついている。
ヒート「うわぁあぁぁぁぁ!!」
ヒートにもそれは伝わり苦しんでいる。
その様子を恐怖の面持ちで見ていたコウはハッと気づく。
コウ「(そうだ、このままじゃヒートが! ヒートじゃこいつには敵わない!)」
コウ「(俺が……俺がやるしないのか。だけど精霊なんて俺に出せるのか?)」
ミズキ「コウ君!」
コウ「!!」
突然ミズキがコウに呼びかける。
ミズキ「あなたがヒートさんを助けるのです、精霊を出すのです」
コウ「でも……どうやって。俺にはわからない!」
ミズキ「ヒートさんと同じ方法でいいのです。あなたもいつもモンスターを召喚しているでしょう」
コウ「俺は出来ない……!」
ミズキ「いいえ出来ます! さぁ、あなたの一番信頼しているカードを出してください!」
コウ「(俺の信頼しているカード……)」
コウはデッキからカードを1枚取り出す。
それはコウの切り札、超魔導剣士−ブラック・パラディンのカードだった。
ミズキ「やはりそれですね。さぁ召喚してください!」
コウ「……わかった。精霊召喚! 超魔導剣士−ブラック・パラディン!」
コウがヒートと同じようなやり方でそう叫ぶ、だがブラック・パラディンは出てこない。
コウ「やっぱり無理じゃないか……! くっ! 俺には出来ない!」
ミズキ「いいえ出来ます! 自分を信じてください!」
ミズキ「この世界で……いえ、あなた方の世界だろうと思いがあれば出来ないことはありません!」
ミズキ「信じてください。絶対に疑わずに、精霊は出せると!」
コウ「…………」
ヒート「きゃあぁぁぁあ!」
コウ「ヒート!」
ヒートが叫ぶ、そして体が耐え切れずについにコマンド・ナイトは精霊の状態から解除してしまう。
ガゼル「さて、次はコマンド・ナイトのマスターらしいあの赤髪の人間の女を殺す!」
ガゼルがそう言うとゆっくりとヒートに歩み寄る。
ヒート「(このままじゃやられる! こうなったら一か八かヒータを出すしかない)」
ヒート「(ボクとヒータの相性はいい、ボクの精霊召喚での最強の組み合わせだ)」
ヒート「(ほんの十秒だけでいい、ヒータを精霊召喚して攻撃することさえ出来れば!)」
ヒートはヒータのカードを手に持った。
ヒート「精霊召喚! 憑依装着−ヒータ!」
ヒータの精霊が召喚される。
ガゼル「こいつ……まだ精霊を出せるのか!」
ヒート「この一撃にかける! 燃え尽きろ! ソーサリー・エネルージュ!」
ヒータが杖を振るい、そこから炎が噴出す。
炎がガゼルの体を包んだ。
数秒ほどガゼルをヒータの炎が包み、ガゼルはもがき苦しむ。
そしてヒータの精霊状態が解け、ヒートはうつぶせに倒れる。
ヒート「ハァ……ハァ、倒せた……」
ヒートが精霊を解除したことにより炎が消える。
だがそこにはまだガゼルは健在だった。
黒コゲではあるがまだしっかりと二つの足で立っている。
ヒート「あ……」
ガゼル「甘めぇんだよ女ぁ! 魔力が少しだけ足りなかったようだな! 俺はこの程度の炎じゃくたばらねえよ!」
だがガゼルもダメージを受けている様子、足元がフラフラとしている。
だがヒートはもう精霊を出せない、このままガゼルに近づかれて倒されるだろう。
ガゼル「よくもここまでくらわしてくれたな。今度こそ……死ね!」
ヒート「(終わった……ボクはもう精霊を出せない)」
ヒート「コウキ! ミズキ! 逃げてぇ!」
ヒートがそう二人に叫ぶ。
コウ「ヒート!?」
ミズキ「…………」
ヒート「ガゼルはもはや走ることは出来ない! ボクだけが犠牲になれば大丈夫だから……」
ヒート「死ぬのは……ボクだけでいい」
ガゼル「(この状態じゃあのガキ二人は取り逃しちまうか……まぁいい、今日はこいつだけでも喰おう)」
ガゼルがゆっくりと、ゆっくりとヒートに歩み寄っている。
ミズキ「コウ君! ヒートさんを置いて逃げるのですか!?」
ミズキがコウのほうに向かって叫ぶ。
コウ「それでも……俺にはどうしようもない」
ミズキ「ヒートさんがどうなってもいいんですか?」
コウ「嫌だ! 俺はヒートを死なせたくない!」
ミズキ「だったら!」
コウ「でも精霊なんて出ないんだ! 俺はどうしたらいいかわからない!」
ミズキ「いえ、出来ます! もっとシンプルに考えてください」
ミズキ「もう精霊召喚はしなくてもいいです。今あなたに何が出来るか、ヒートさんを助けるには何が必要か」
ミズキ「強く真っ直ぐな思いを持って今はそれだけを考えてください!」
コウ「(ヒートを……助ける)」
コウ「(そう、俺はあいつを、ガゼルを倒したい! そのために必要なものは……)」
「(いい加減目ぇ覚ませよ、マスター)」
コウ「(何だ!? 誰だ、俺に話しかけるのは)」
「(お前が今欲しいものは何だ?)」
コウ(俺が……俺が欲しいのは)」
コウ「(そう、俺が欲しいのは力、ヒートをあいつから守るための力)」
「(そうか……それがマスター、てめぇの想いか。あいつを守りたいのか)」
「(ならば俺を解き放て! マスター……いや、コウ!)」
コウ「俺に力を! 精霊召喚! 超魔導剣士−ブラック・パラディン!」
ヒートの前にはもうガゼルがいる。
ガゼル「さて……まずは頭からえぐりとってやろうかぁ!」
ヒート「(ごめん、みんな。後は皆でがんばって……)」
ガゼルがヒートの顔へ向かって左手を振るう。
死ぬ覚悟を決めたヒートは目を瞑っていた。
だがガゼルの左手をヒートに触れることなく何かに止められる。
ガゼル「うがあぁぁぁあぁぁぁ! き、貴様ぁ! それは!」
コウ「すまない、待たせたな。ヒート」
その言葉を聞いたヒートは瞑っていた目を開く。
ヒート「コ……コウキ」
コウ「お前だけに、一人で何もかも背負わせたりはしない」
コウ「俺も頑張るから……だから自分だけ死ねばいいなんて二度と言わないでくれ」
コウ「俺も皆を、ヒートを守る。絶対に諦めるな、ヒート」
ヒート「う、うん……」
ヒートはそういうとホロリと涙を流す。
コウはブラック・パラディンの精霊を召喚することが出来たのだった、想いの力によって。
パラディンは右手に持つ大剣でガゼルの攻撃を受け止めていた。
コウ「覚悟はいいか、ガゼル」
ガゼル「う……ぐっ!」
ガゼル「(何だこいつは……すさまじい魔力を感じる。今の手負いの俺ではとても敵わない!)」
ガゼル「(ここは逃げるしかねぇ!)」
ガゼルは後ろを向いて逃げ出そうとする。
コウ「逃がさねぇ! いけ!」
パラディンはガゼルに向かって走り追いつくと、自分の身長ほどであろう大剣の柄でガゼルの足を引っ掛けて転ばせる。
ガゼルは転ぶがすぐさまあおむけに立ち上がりパラディンに飛び掛った。
ガゼル「うがあぁぁぁぁあぁぁ!」
パラディン「(これがマスター、てめぇのことはずっと見ていた。だが話すのは初めてだな)」
武器となったブラック・パラディンがコウの心の中へと話しかける。
コウ「(あぁ……頼む、戦ってくれ)」
パラディン「(いいだろう……だがこの俺を従えるからにはてめぇが負けるのは絶対に許さねぇ!)」
パラディン「(てめぇがこれからどんな野郎にも絶対に負けねぇと誓うなら。いいだろう、存分に暴れさせてもらう!)」
コウ「あぁ、俺はもう迷わないぜブラック・パラディン。お前と俺の力で絶対に勝つ!」
コウがパラディンとの対話を終えると、パラディンは大剣をガゼルに向けて構える。
パラディン「終わりにしようぜ……」
パラディンがそう呟くと大剣が魔力を帯びる。
コウ「いけぇ! セイクリッド・エリシオン!」
コウがそう叫ぶとブラック・パラディンはガゼルへ大剣を右下段から左上段振るう。
大剣がガゼルの体を真っ二つにした。
そしてガゼルは命を失ったために光の粒子となって散る。
コウ「ハァ……ハァ……解除だ。戻れブラック・パラディン」
コウがそう言うとブラック・パラディンがカードへと戻った。
ミズキ「(……驚きました。もう精霊召喚が出来てしまうとは)」
ミズキ「(正直予想以上でした。僕が思った以上にコウ君には『これ』が相応しい)」
ミズキ「コウ君! 大丈夫でしたか!?」
コウ「あぁ、少し集中して疲れたがどうってことはない」
ミズキ「やりましたね、あなたがヒートさんを助けたのですよ」
コウ「お前のおかげだ、お前がああ言ってくれなかったら」
ミズキ「いいえ、紛れもなくあなたの力です。あなたの思いの強さがあの精霊召喚を成功させたのです」
コウ「ああ、ヒート、大丈夫か?」
ヒートは仰向けで寝そべっていた。
ヒート「う、うん……でも、ちょっと……」
コウ「どうした?」
ヒート「体に力が入らなくて、ボク立てそうにないよ……」
コウ「そうか、そういうことなら」
コウがヒートのところへ歩み寄ると膝裏と肩の裏へと手を入れて抱っこする。
ヒート「コ、コウキ!?」
コウ「このままいくぞ、さすがに歩けないだろう」
ヒート「でででででも、コウキも疲れてるんじゃ……」
抱っこされているヒートの顔が真っ赤になっている。
それに加えてかなり動揺しているようだ。
コウ「お前ほどじゃないさ。窮屈じゃないか?」
ヒート「い、いや全然! ボク重くない!?」
コウ「いや、大丈夫だ。じゃあいくぞ、ミズキ」
ミズキ「はいはい。でもいいんですかねぇ……クーさんに言いつけますよ」
コウ「それだけは勘弁してくれ……」
ヒート「(コウキ、格好よかったよ)」
ヒート「(ボクは一人じゃないんだ……コウキもいるし、皆だっている)」
ヒート「(皆を選んでよかった……よ……)」
コウの腕の中のヒートがそう心の中で呟く。
そしてヒートは抱っこしているコウの胸に頭を預け、安心して眠りについた。
つづく
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