ニュー速VIP及び製作速報のスレッド「( ^ω^)ブーンが遊戯王の世界で頂点を目指すようです」のまとめwikiです

TURN-13「Genocide-新たなデヴァイス その名は神聖(セイクリッド)」」

あたりに夕闇がさすころ、コウ、ミズキ、ヒートはようやく精霊村、ジェリーへと到着。
その村はまるで荒野に佇むオアシスのようであった。
町は花で溢れており、町の真ん中にはとても大きな風車がある。西洋のようなとても綺麗な町並みだった。

素敵な家や露店などが立ち並び、町には多くの人間……アーリーやモンスターの精霊が行きかっており、とても賑やかだった。

コウ「すごいな、普通にモンスターが暮らしてるぞ」

ミズキ「凶暴なやつと、人間と暮らせるやつがいるんですかね……」

ヒート「あ……着いた!?」

コウの腕で眠っていたヒートが目を覚ます。

ヒート「ご、ごめん。ボクつい気持ちよくて寝ちゃった……下ろして、コウキ」

コウはゆっくりと腕を下げヒートを地面へと下ろした

ヒート「だ、抱っこしてくれてあ、ありがとう……コウキ」

慌てた口調でヒートが礼を言う。

コウ「いや……どういたしまして」

ミズキ「熱い熱い、熱いですねぇ。それよりヒートさん。これからどこに行くのですか?」

ミズキが茶化しつつヒートに尋ねる。

ヒート「えっと、まずは食料を買いに行こう。それから今日はここで泊まる」

コウ「え? 戻らないのか?」

ヒート「うん、もう夜だから……さすがに夜の荒野は危ない」

ヒート「危ない精霊達がウヨウヨしているからね」

コウ「そうか、あいつら大丈夫かな」

ミズキ「クーさん達ですか? まあ非常食や水もまだそれなりにあったし大丈夫でしょう。今は僕達がこれからやることを考えましょう」

コウ「……ああ、そうだな。それじゃあヒート、案内してくれ」

ヒート「う、うん!」

一行はヒートに連れられてコウ達をある店へと向かう。
その間にいろいろな人や精霊とすれ違った。
アーリー……ここの世界の人間であるがその姿形は全く自分達とは違わない。

服でさえコウ達の世界で着ていてもなんら遜色ないものであった。
モンスターの精霊は露店を経営したり、人に連れられたり、一匹でボーッとしたりしているしている。
ハッピー・ラヴァー、薄幸の美少女、ドリアード、ワタポンなどいろいろな精霊を見かけた。

コウ「なぁヒート……あのモンスター達は大丈夫なのか?」

ヒート「うん、大丈夫。精霊にも種類があるんだ」

ヒート「凶暴で知能が低く、人を襲ったり戦いばかりにしか興味がないのが野性精霊(ハギオン)」

ヒート「で、町で人と共存したり、人に仕えて生活したりするのを従士精霊(ファミリア)」

ヒート「そしてあと一種類あるけど……あ、着いたよ」

話半ばでヒートがある小さな店の前で止まる。
看板があったがコウ達の読める文字ではなかった。

ヒート「龍の呪い雑貨店って読むんだよ」

ヒートが看板を見ていたコウにそう説明するとドアを開けて店の中へと入った。
連れられてコウとミズキも店の中へと入る。

「いらっしゃいませぇ」

そこにいたのはカース・オブ・ドラゴンだった。
どうやらこの精霊が店を営業しているようだ。
中は狭いうえに商品が多く並んでいるためゴチャゴチャしている。

それに加えて客が何人かいるのでさらに狭さ感じさせられた。
中は日が差しておらず薄暗くホコリっぽい。
怪しい雰囲気の店だった。

カース「おお、アーリーの使徒のヒート様ですか。今日は何のようです?」

ヒート「店長、保存のきく食料をどーっといっぱい頂戴!」

カース「またどこかへお仕事ですか? 大変ですなぁ」

カース・オブ・ドラゴンとヒートは顔見知りのようだった。

カース「それとそちらの方は……」

カース・オブ・ドラゴンがコウ達のほうを気にかける。

ヒート「あ、気づいた?」

カース「ええ、何となくわかりますね。ここの世界の人間じゃないんでしょう?」

カース「何か事情があるんですかい?」

ヒート「…………」

カース「まぁあたしは何も口を出しませんがね。ヒート様が何をしようとそれは自由です」

カース「おっと、それより食料でしたね。ちょっとお待ちくだせぇ」

カース・オブ・ドラゴンがフワフワと浮かびながら店の奥へと行く。

コウ「でもヒート、9人分となると相当な量になるんじゃないか? 俺達で持ち運べるかどうか……」

ヒート「ん、それは心配ないよ。カードにするから」

ミズキ「カード……ですか」

ヒート「うん、そう」

ヒート達が話をしていると奥からカース・オブ・ドラゴンが翼の上一枚のカードを乗せてフワフワと戻ってきた。

カース「こんなもんでどうですかねぇ?」

カース・オブ・ドラゴンがヒートにカードを手渡すとヒートはカードを弄り始めた。
空間に液晶の画面のようなものが表示されて、それをヒートはマジマジと見つめている。
一分ほど内容に目を通してヒートは液晶を閉じてカードをしまう。

ヒート「こんなもんかな……ありがとう。それじゃ後でお金は振り込んでおくからね」

カース「お買い上げありがとうございます。今後ともご贔屓によろしくお願いします」

コウ「(これが異世界での買い物……か)」

ミズキ「ヒートさん。こんなんじゃ荷物持ち入りませんでしたね」

ミズキがヒートにそう突っ込む。
だがヒートには違う目的があるらしかった。

ヒート「いや、君達には渡したいものがあるから……」

ヒート「店長、それともう一つ頼みがあるんだけど」

カース「どうぞ、何でも言ってくだせぇ」

ヒート「この二人のデュエルデヴァイスを作ってほしいんだけど」

コウ「デュエルデヴァイス?」

ヒート「そう、知ってるでしょ。ボクの持ってるこれだよ」

ヒートがポケットから、デュエルに使用した赤とオレンジのデヴァイスを取り出す。

コウ「それか……確かデュエルディスクに変化するんだっけ?」

ヒート「うん、持ち運びに便利だからね。その状態じゃ重いでしょ?」

コウ達は常に左手のデュエルディスクを着けていた。
軽い素材で出来てはいるが、さすがに長時間着けているとキツイ。

コウ「でもお金かかるんじゃないのか?」

カース「いえ、デュエリスト用デュエルデヴァイスの作成は無料サービスで行っておりますので」

すかさずカース・オブ・ドラゴンがそう付け加える。

コウ「なるほど、それじゃあ作ってもらおうかな。格好いいし」

ミズキ「あ、僕はいいですよ」

コウは作ってもらうことにしたのだがミズキは遠慮する。

コウ「何だよミズキ。作ってもらえばいいじゃないか」

ミズキ「いえ、その、まぁ。慣れてるほうがいいですからね。重いのくらいは我慢出来ます」

異世界の見知らぬ機械が嫌なのか、ミズキは作るのを拒んだ。

ヒート「……そう、わかった。じゃあコウキの分だけ作って、店長」

カース「わかりました。ではコウキ様、しばしお待ちを、今原料をお持ちしますので」

カース・オブ・ドラゴンがまたも店の中へ入っていく。
隣ではもう一人の店員であろう、デビルガイが他の客の相手をしていた。
かなり忙しそうであった。

カース「星の石(アストラルストーン)です、お持ちいたしました」

しばらくしてカース・オブ・ドラゴンが戻ってきた。
今度は小さな何かの結晶のようなものを二つ持ってきている。
カース・オブ・ドラゴンは5cmほどの大きさのその結晶をコウに手渡す。

コウ「これは……」

カース「あなたの手でその二つの結晶をくっ付けてくださいませ」

コウ「俺が? わかった」

コウが店長の言うとおりに赤と黒、二つ結晶を両手に持ちくっ付ける。
結晶はゆっくりと、二つの結晶の間に光を発生させながらくっついて一つの結晶になる。
そしてそれは光に包まれ、瞬く間にヒートが持っているのと同じ手のひらサイズの小型の機械、デヴァイスの形へと変化した。
色は結晶と同じ、赤と黒である。

コウ「これが……俺のデヴァイス?」

カース「そうです、コウキ様がそのデヴァイスのマスターになったのでございます」

カース「コウキ様、今デッキはお持ちですか? よかったらお出しくださいませ」

コウ「あぁ」

コウが腰に付けているウエストポーチからデッキケースを数個取り出す。
ウエストポーチは校舎の中にあったものをコウが持ってきていたのだった。

カース「それをそこに並べて、そしてデヴァイスのパスコードを言った後にデッキチャージと言ってくださいませ」

コウ「パスコード?」

カース「えぇ、デヴァイスが生まれた瞬間、あなたの中へと流れ込んで来たはずです。そのデヴァイスの名前が」

コウ「名前……」

ミズキ「…………」

コウが手に持つデヴァイスを見つめる。
そしてデヴァイスを前に突き出す。

コウ「俺のデヴァイスの名前……」

コウ「デヴァイスドライブ! セイクリッド! デッキチャージ!」

コウがそう言うとまたも瞬く間にデッキが消えてしまった。

コウ「あれ……消えた」

カース「それはあなたのデヴァイスの中へと保存されたのです。これでいつでもデュエルが行えます」

ミズキ「セイクリッド……聖なるもの、神聖などの意味ですか」

ヒート「コウキにぴったりの名前だね」

コウ「……あぁ」

ヒート「それじゃあ用も済んだし出ようか、店長またね」

カース「またよろしくお願いします、ヒート様」

カース・オブ・ドラゴンが深々と頭を下げる。
ヒート達は店を出た。

――それから店を出たコウ達がヒートに連れられて向かった先はある小さな家だった。
しばらく使われてない感じである。

ヒート「ここだよ、入って」

ヒートがドアを開けて二人を入れる。

コウ「ここは……」

ヒート「そう、ボクの家だよ。汚くてごめんね」

ここはヒートの家らしい。
部屋は二つほどだろうか……居間とキッチンのある部屋、それに寝室がある。
物は少なく、どこか閑散としている。

明かりも着いていなく、暗い。
ヒートが部屋の真ん中にある机に置いてある蝋燭とマッチを取り火を着けた。

コウ「お前の家か……ベッドが二つあるみたいだが誰かと暮らしていたのか?」

ヒート「ママと二人暮らしだったよ。まあちょっと前に引っ越しちゃったんだけどね」

ヒート「だからここは前の家。別荘のようなものだよ。急だったから今は水道とか止まっちゃってるけど……」

ミズキ「今日はここに泊まるんですね」

ヒート「うん」

ミズキ「そうですか……それじゃあ僕はちょっと出て来ます」

コウ「え? どこに行くんだ?」

ミズキ「いえ……まぁ野暮用ですよ。その内戻ってきますから」

そう言うとミズキはドアを開けて出て行った。

コウ「どうする? ヒート」

コウがヒートに尋ねる。
さすがに見知らぬ町で一人なのは危ない。

ヒート「まぁ町の中は大丈夫だと思うけど……」

コウ「あいつよく一人になりたがるしな、まぁその内帰ってくるだろう」

二人は放っておくことにした。

――そして今、部屋には二人っきりだった。

二人は二つのベッドに腰かけて向かいあうように座っている。

ヒート「ねえ、コウキ」

コウ「何だ?」

ヒート「コ、コウキがブラック・パラディンでボクを助けてくれた時、とても格好よかったよ」

そう言ったヒートの顔が少し赤くなる。

コウ「あぁ、あの時はお前を助けるのに必死だったからな」

ますますヒートの顔が赤くなる。
ヒートは感情が表に出やすい性格だった。

ヒート「……本当にありがとう。君がいてよかった」

コウ「いや、俺もお前がいてよかった」

ヒート「え……」

コウ「お前がいてくれなかったら俺達はこの世界でオタオタするばかりだったしな」

ヒート「……コウキ、ボクを恨んでないの?」

コウ「……だからそれはもういいって。本当にお前がいてよかったと思ってるよ、ありがとう」

ヒート「いやぁ……」

ヒートは照れて後ろ髪を撫でる。

コウ「ヒート、本当に俺達のほうについてよかったのか?」

ヒート「うん……入りたくて使徒に入ったわけじゃなかったし。そんなに好きじゃない」

ヒート「それにボクはコウキが好きだから……」

コウ「え?」

ヒート「い、いや、そうじゃなくて今はコウキ達のほうを守りたいからだよ、うん、今の間違い!」

ヒートが慌てて訂正する。
そして顔がさらに赤くなる、耳まで真っ赤だ。
自分でも赤いのがわかっているのか、慌てて顔を隠す。

ヒート「そ、それより暇でごめんね。ここにはテレビもないし……」

コウ「まぁそれどころじゃないしな……」

ヒート「いや、本当に暇でやる事ないよね」

コウ「話くらいは出来るだろう? 座るとこもあるし」

ヒート「うん、ベッドくらしかこの家にはないしね、ベッドしか」

意味深にヒートはベッド、ベッドと繰り返す。

ヒート「あ、ベッド二つしかないしどうしようか」

コウ「……誰か一人床で寝ないといけないな」

ヒート「で、でも……」

コウ「ん?」

ヒート「いや、何でもないよ……」

ヒートは何故か話をするたびにどんどん顔が赤くなっていった。

――今この空間には二人っきり

ヒート「(二人で一緒のベッドに寝れば大丈夫……なんて言えないよね……)」

ヒートの気持ちをよそにコウはミズキのことが心配になっていた。

コウ「やっぱりミズキが心配だな、俺探してくるよ」

ヒート「い、行かないで!」

ヒートがギュッと行こうとしたコウのジャケットの裾を握る。

コウ「え……」

ヒート「ボクを……一人にしないで」

自分の今までやってきたことを振り払ってまで自分達に尽くしてくれるヒート。
そしてその仲間達にも表立った態度としては出てないが、疎遠されている。
異世界への不安とバラバラになった気持ちから。

だけどコウだけは優しくしてくれるし助けてくれる。
ヒートの心の拠り所は今コウという存在にしかなかった。

コウ「あぁ、ごめんな。ミズキは……大丈夫だよな」

ヒート「…………」

ヒート「コウキ……コウ、そっち行っていい?」

コウ「ん、いいけど」

ヒートがコウの隣に座った。
しばらく沈黙が続く。

ヒート「こ、このベッドやわらかいんだよね。フカフカ」

ヒート「ほら、こんなに跳ねても大丈夫だよ!」

そう言ってヒートは座ったままお尻でトランポリンのように飛び跳ねる。

コウ「…………」

ヒート「ハハ、ハハハ……」

ヒート「や、やることもないしもう寝ようか?」

コウ「ん、そうだな。ミズキは床にゴロ寝させるか。団体行動を乱した罰だ」

ヒート「お風呂入りたいんだけどね……水道もガスも通ってないから」

ヒートがコウの隣から離れ、自分のベッドに着く

ヒート「それじゃあ、明かり消すよ。おやすみ」

コウ「ん、おやすみ」

そう言うとヒートはリモコンで部屋にある蝋燭を消す。
電気は現世のものと違いが全くなかった。
部屋が真っ暗になる……部屋が沈黙し、寝るモードになった。

ヒート「(おやすみコウ……)」

ヒート「(コウ……コウ……)」

今は夏だがヒートは薄い掛け布団をばっさりと頭から被る。
落ち着かないのか、もぞもぞと布団の中で体を捩じらせる。
その日、ヒートは一睡も出来なかった。

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