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146.【】2/9 - 13/04/26 00:23:13 - ID:RA9NTAFNBQ
それぞれが手にしたタルトを口に放り込めば、果たせるかな課室の一角から鈍い悲鳴が上がる。
「うぐっ!?」
振り返った皆の視線の先には、口元を押さえ長身を折り曲げて悶絶するドイツ人の姿。
――あ、やっぱり。
気の毒にと苦笑する者、遠慮なく爆笑する者。
反応は様々だったが、抱いた感想は薄情なことに概ね同じである。
お約束な人だなあと半ば呆れながらも、菓子を用意した人間は責任上笑ってばかりもいられない。
「大丈夫ですかぁ、ヒルシャーさん?」
「Danke...!」
愛の堕天使が差し出した水を受け取ったドイツ人が、咳き込みながら思わず母国語で礼を言う。
普段ほとんど訛のないイタリア語で話すヒルシャーだが、さすがにその余裕はないらしい。
手渡されたグラスの水を一気に飲み干し、男はいささか情ない表情で溜め息をつく。
どうやら辛いものは得意ではないようだ。
「………すごい味だな」
「いやあ、期待通りのいいリアクションでしたねえ」
あははーと悪気のない笑いで答えるプリシッラに、男は苦笑いである。
「次回があるなら、今度は当たり外れの無いものの方がありがたいんだが」
「それじゃあ、今度はお詫びに『ジオリッティ』で一番人気のチョコラータをご馳走しますよ」
100年以上の歴史を持つジェラテリア(アイスクリーム屋)の名前を出され、
ヒルシャーは顔をしかめた。
「それは僕よりもトリエラに食べさせてやってくれ。甘いものは苦手なんだ」
「担当官が好き嫌いしてちゃ駄目じゃないですか〜」
生真面目なドイツ人をからかいながらも次の休みには義体の少女たちに
アイスクリームを買ってくることを約束し、
その日の小休憩は大変和やかな雰囲気でお開きとなった。
――しかし、このささやかなレクリエーションが後日阿鼻叫喚を巻き起こそうとは、
この時は誰も予想しなかったのである。
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