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「勘弁してくれよ〜、今日雨降るだなんて聞いてねぇぞ!」

水城恭輔は、折り畳み傘の中でそう独りごちた。この雨では、ベランダの洗濯物はもう一度洗い直す羽目になるだろう。

「全く、ついてねぇよなぁ。流石に、今日の占いで最下位だっただけのことは…、ん?」

この豪雨に見舞われた原因を、今朝学校へ行く前に見た朝の情報番組に半ば無理やり帰着させていると、見知った少女の姿が目に飛び込んできた。

花崎香澄。恭輔の通う高校のクラスメートであり、実は、恭輔がほのかな想いを寄せる少女でもあった。

「あれ、花崎さん。雨宿り?」

恭輔は、内心ウキウキしながら、しかしそれを表に出さないように問いかけた。こんな所で意中の人と遭遇するなんて。駄菓子屋の前の道を帰り道に選んだ自分を誉めてやりたい。朝ご飯の時の茶柱の御利益だろうか。

「うん、雨降るなんて思ってなかったから、傘持って来なかったんだよね。」

香澄が、いかにもしくじったという声で応える。

困った顔も可愛いな。そんなことを考えていると、恭輔はふと、香澄が自転車通学である事を思い出した。

「花崎さん、家まで結構距離あるよね?大丈夫?雨止みそうにないけど。」

「それがさ、お母さんに迎えを頼もうと思ったんだけど、無理みたいでさ。あはは、困ったな。」

成る程、連絡手段がないのか。それならば、と、恭輔は自分の鞄の中をまさぐった。

『10円の価値は』完




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