PINKちゃんねる-エロパロ&文章創作板「依存スレッド」まとめページです since2009/05/10

作者:◆ou.3Y1vhqc氏

――はぁ……どうするかな。

勇は今、少し困った状況に追い込まれている。
「凪ちゃん…ベッドは一つしかないんだよ?小学生の凪ちゃんと違って身体が丈夫だから俺がソファーで寝るよ。」
「だからさっきから言ってるでしょ?このベッドを2人で使おうよ。」

勇の部屋に入った2人は、ベッドで2人で寝るか、1人で寝るかについて押し問答している。
凪の意見は、「お兄ちゃんがソファーで寝るなら私がソファーで寝る、それが嫌なら2人で寝たい」

勇は「凪ちゃんはお客さんだからソファーで寝てもらう訳にはいかない、風邪でも引かれたら困る、一緒に寝るのは反対」
凪の本音は「2人で寝る」しか選択肢が無いのだが
勇も一筋縄ではいかない。

なにもないとは言い切れる……が、如何せん姉が許すわけがない。

家に連れてきただけでも、犯罪臭がするのに、一緒に寝るとなったら……
「それじゃ横にいてあげる、じゃダメ?」
「ダメ」
即答。
はぁ…
ため息がでる
なにを言っても最終的には「一緒に寝る」に行き着いてしまう。
どうしたものか。


――早くしなきゃ…あの人がくると、確実に一緒に寝るのは無理になる。
多分あの人は私のことを良く思っていない。

話しかけられた初めの声で解った、お兄ちゃんは気づかなかったが、あの罵倒の言葉は私にぶつけていた。
お兄ちゃんのほうを見ていたが、すべての罵倒は私に容赦なく突き刺さってきた。
あの人の私に対する感情は、憎悪しか感じ取れなかった。
食事もお兄ちゃんに言われなければ、私に出すことは無かったと思う。
(ものすごく、美味しかったけど)
だから、怖くてあの人の顔もまともにみれなかった。

――お父さんによく使っていた最後の手段……
純粋なお兄ちゃんには使いたくない作戦だけど、しょうがない。
勇が凪を説得してる途中、凪は下を向き、肩をフルフルと震わす
「……凪ちゃん?」
お兄ちゃんが心配して声をかけてくれる。
罪悪感がでるけど、お兄ちゃんのガードが堅すぎる。
「グスッ……お父さんがいつも一緒に寝てくれてたから寂しくて…グスッ…ごめんなさい」

下を向きながら泣いてる真似をする…
(お父さんは私の泣き真似でいつも騙されてた…)
お兄ちゃんこれで「一緒に寝る」っていって!!お願い!!!

「……凪ちゃん…」

凪ちゃん……



泣き真似下手すぎたろ………
凪は下を向いて一生懸命泣き真似をしている。
泣き真似をする前の、「閃いた!!」みたいな前フリから始まり、小さな手の平で顔を隠しているが、指の隙間から時々チラッとこちらの様子をうかがっている。
隙間から見える横顔が一生懸命なので、本気で俺を騙せてると思ってるらしい。……
(はぁ……この歳で姉ちゃんと同じようなことをしてくるのか…いや、姉ちゃんの精神年齢が幼すぎるのか…)
2人とも騙すならしっかりと騙してほしい…
変なことを考えていると、階段を上がってくる足音が聞こえる。
この家には今3人しかいない。
凪と俺はここにいるので、必然的に階段を上がってくるのは姉になる。
階段を上がり、勇の部屋の前で足音が止まる。

コンコンっ…
「勇…入るわよ?」
ノックをした後、姉の静かな声が聞こえる。
「うん、いいよ」
姉は、入ると言っても俺からOKがでない限り絶対に入ってこない、まぁ普通かもしれないが、朝これで何度遅刻したことか。

ガチャッと扉が開くと、パジャマ姿の姉が入って来た。

風呂からでたばかりなのだろう、髪から湯気が出ていて、石鹸とシャンプーのいい匂いがする。
「勇、その子の布団をお父さんの部屋に敷いたわ」
「あぁ…うん、凪ちゃんどうする?」
「グスッ……」
「それ………私に通用すると本気で思ってるの?…」
凪がビクっとする。
「姉ちゃん、怖がらせちゃダメだよ」
「……」
どうしよう…ややこしくなってきたな。
「私…お父さんと寝てたから…一人で寝れない…お兄ちゃんと寝たい」
「ダメに決まってるでしょ?なに考えてるの?…てゆうかなにベッドに座ってるの?そこは私とゆッ」
「姉ちゃん!!」
今度は姉がビクッとなる
「はぁ…わかった、それじゃ今日は凪ちゃんと一緒に寝るよ」
凪の顔がパァっと明るくなる
逆に姉の顔は青ざめていた。
「ただし、姉ちゃんもこの部屋で寝ること。
ベッドの横に布団を敷いて同じ部屋で寝れば、姉ちゃんも俺のこと監視できるでしょ?だから今日はこの部屋で三人で寝る。」

まぁ姉から言ったらなんで私が?って感じだろうが、正直これぐらいしか思いつかない。

お風呂に入っていると二階に上がる足音が聞こえた…

一つは聞き慣れた落ち着く足音
もう一つは聞きづらい小さな足音…だが心に重くのし掛かる足音。
嫌な予感がする。
いつもは念入りに身体を洗うのだが(勇と寝る時は特に)素早く頭と身体を洗うと、身体をてきとうに拭き、ドライヤーで乾かさずに勇の部屋に直行した。
勇の部屋の前に立つとノックをする。

コンコンっ…
「勇…入るわよ?」
勇の返事を待つ
「うん、いいよ」
勇の返事を聞き中に入るとあの子が勇のベッドに座っている
(勇と私のベッドよ?)
心の声がでそうになるのをおさえて勇に言う。
「勇、その子の布団をお父さんの部屋に敷いたわ」
本当はまだ敷いてないけど、この子を早くベッドから降ろさなきゃ。
「あぁ…うん、凪ちゃんどうする?」
「グスッ……」
この子…やっぱり勇しか見てない。
「それ………私に通用すると本気で思ってるの?…」
(フフ…よく私も使うけど、嘘泣きで騙せるのは勇だけよ)

「姉ちゃん、怖がらせちゃダメだよ」
「……」
勇に言われるとなにも言えなくなる。


「私…お父さんと寝てたから…一人で寝れない…お兄ちゃんと寝たい」

は?なに言ってるのこの子?

「ダメに決まってるでしょ?なに考えてるの?…てゆうかなにベッドに座ってるの?そこは私とゆッ」
「姉ちゃん!!」

私と勇のベッドと言いかけたところで勇が私を睨む。
…勇に嫌われることをなにより嫌う私からすれば、勇に睨まれただけで心臓を掴まれた錯覚に陥る。
「はぁ…わかった、それじゃ今日は凪ちゃんと一緒に寝るよ」


いま……なんて言ったの?勇が他人と寝る?、何故?、勇を怒らせたから?、今日は私と寝る日じゃ……
思考が追いつかない。
勇がなにかを言ってるがなにも聞こえない……聞こえるのは自分の心臓の音だけ。
私の目は勇しか写らないはず……。


なのに見えるのは、勇の優しい顔ではなく。
初めて私にむかって笑みを浮かべる凪の笑顔だった。




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