PINKちゃんねる-エロパロ&文章創作板「依存スレッド」まとめページです since2009/05/10

作者:◆ou.3Y1vhqc氏

――寝てしまった……

携帯の時計を見るともう3時だ。
0時ごろから記憶が無い…
計算すると三時間、2人の行動を見逃したことになる。

ふと上に視線をむけると、いつの間にか豆電球の光が消えている…
だか、窓から射す月明かりの光が、部屋の中を照しているので、薄暗くてもある程度見えている。

音を立てず上半身だけ起きあがると、ベッドに目をむける。…
「勇?」
「…ウ…ン…」
(かわいい…)
携帯の液晶の光を勇にむけると眉間にシワがよる
少し眩しそうに顔を隠してしまった。

微笑ましい…
(お母さんが手を出すのも……唇触るぐらいなら…)
と考えるが頭を振り邪念を振り払う。
(勇のトラウマになるわ!!それだけはダメよ…)

悪魔と天使が頭の中で戦っていると、横に凪がいないことに気がついた。
「…?」
あれ?どこに行ったのかしら
トイレにしては遅いし多分一人ではトイレまでいけない。

ふと勇のお腹あたりに目をむけると布団越しに膨れ上がってることに気づく。

勇の布団を少し下げてみる……

「………」

パチッ

なにも言わず立ち上がり電気をつける。
「う…う〜ん…なんだよ姉ちゃん…眩しいな…」
「その子なにしてるの……」
「はぁ?………おわ!!」
勇もビックリしている、てことは勇も気づかなかったのか…
「zzZ」
凪は気持ち良さそうに勇の服に頭を突っ込み寝ている…そりゃ気持ちいいだろうね。
「凪ちゃん……どこに頭突っ込んでんの?」
「んえ?」
凪は変な声をあげて勇のシャツから頭をだす。
「寝ぼけてたの?服の中に頭突っ込んでたからビックリしたよ」
勇は笑いながら話してるが、私は顔がひきつりっぱなしだ。
私でも躊躇することをサラッとする…これが子供の特権だ。
勇が拒まないと解っているのだろう…なんの迷いもなく、勇の腕に抱きつく。

「……やっぱり布団は別々にするべきね」
「いや、もう大丈夫だろ、凪ちゃんも大丈夫だよね?」
「うん、もうちゃんと寝る」
「そう、それじゃ早く寝なさい」
(今日だけの我慢よ、私頑張れ!!)

また電気を消し布団に入る。
ふぅ……早く朝になってほしい。


――起きたのは朝の七時。

凪はまだ寝ているが姉はすでにおきている。
「姉ちゃん…目の下クマ凄いよ?寝てないの?」
「うん…見張らなきゃ…」
「俺そんなに信用ない?」
「勇じゃなくて……」
よくわからないが、あまり信用されてないようだ…少しショックだな。
「まぁ、いいや。朝ご飯食べようか?」
「うん、今から作ってくるね。」
(少しふらついている…大丈夫かな?)
凪を見るとニヤニヤしながら寝ている。
お父さんの夢を見てるのか、「お父さん」と言う寝言が聞こえる。

俺も葬式の後2ヶ月は父の夢をみた。

夢の内容は決まって同じだった。
父、俺、姉で手を繋ぎ、公園を散歩している。
楽しいが最後に父がいなくなる。
だから葬式の後の半年間、眠れない日が続いた。
寝たら寝ただけ父との別れがまっている。
それがなにより辛かった。

――窓の外を眺めていると、凪が眠たそうにおきてきた。

「よく眠れた?」
「うん、お父さんと寝てるみたいだった」
「ものすごく幸せそうな顔してたよ?なんの夢見てたの?」
「う〜ん…わかんない…」
まぁ夢なんてそんなもんか。

今日は学校が休みなので私服に着替える。
凪ちゃんは来たときと同じ服なので着替える必要はない。
勇の部屋を出て、2人で一階のリビングに行く。
テーブルを見ると朝の食卓定番と言ったおかずが並んでいる。
「凪ちゃん、おはよう」
エプロンをはずしながら、姉が凪に挨拶をする。
「…おはようございます」
凪も眠たそうに挨拶をする。
テーブルの椅子に腰をかけると俺の横は凪、前に姉が来る。
昨日みたいに凪と姉に挟まれることは無かった。

朝飯を食べ終わり、ソファーに座ると凪もくっついてくる。
もうすぐ凪ともお別れだ、少しは凪のお父さんみたいに出来ただろうか…。

「……勇」
姉が急かすように言ってくる…。
「わかってるよ、凪ちゃん……携帯持ってるよね?」
「……」
意味が解ったのだろう、俺の手を離してうなだれる。
「家族の人……心配してるよ?迎えに来てもらおうよ」
「……」
「……凪ちゃん…あなたには帰る場所があるでしょ?」
「帰っても誰も私に興味がないもん…」
「心配しない親なんていないよ、」
「……嫌」
ふぅどうしたもんか……警察に電話すれば一番早いのだが。

「……凪ちゃん、あなたいい加減にしなさいよ…」

泣きそうになる凪に言い放つ。

「ずっとここにいるつもり?あなた一人の為に家族の人が探し回ってるかもしれないのに」
なぜか姉も俺のほうをチラチラみながら泣きそうになっている。
「私のことを見つけてくれたのはお兄ちゃんだけ…お母さんが探してくれるわけがない…」
「だから逃げるの?ずっと逃げ回ってるの?」

「……」

姉の発した言葉から凪は喋らなくなってしまった。

「……凪ちゃん、携帯かしてくれる?」
凪の頭を撫でながら問いかけるとなにも言わずポケットから携帯をだす。
携帯を開けると電源を切っているため画面が真っ暗だ。
「お母さんに電話するよ?」

もう無理だと解ったのか小さくコクッと頷く。
凪の携帯から母親に電話をしようとすると姉に止められる。
「勇より女の私のほうが相手を混乱させずにすむから、私が電話するわ。」
「うん、そうだね、お願い。」
凪の携帯を姉に渡す

「凪ちゃん、こっちにおいで。」
凪に向かって手招きをするが近寄ってこない。

あんまり言いたくないが仕方ない。

「……凪ちゃん、俺もお父さんいないんだよ?」

「……え!?お兄ちゃんもお父さんいないの?」
ビックリしたような顔をむけてくる。
「うん、お母さんもお父さんもいない、家族はお姉ちゃんだけなんだ」
「なんでお兄ちゃん元気なの?……寂しくないの?」
「俺も始めは逃げてばっかりだったんだ。寂しいし、時々会いたくなる。でもねお父さんと約束したんだ、家族を守るって。」
凪の目を見て話すと凪も下を向かず話を聞いてくれている。
「凪ちゃんも俺みたいに逃げちゃダメだよ?寂しかったらお母さんに言いたいことを言えばいいよ、ちゃんと聞いてくれるはずだから。」
「……わかった、頑張ってみる…」
「うん、頑張ってね、応援してるからね」
先ほどの落ち込んだ顔よりやや晴れた顔をしている。

唯一の理解者を亡くせば誰だって逃げたくなる。
ましてや小学生…辛いって言葉じゃ足りないだろう。


「お兄ちゃん………抱っこして。」
「うん、おいで」
凪を膝の上に乗せ頭を撫でると俺の肩に顔を埋めてくる。

「○○駅にいきましょう、迎えに来てくれるって。」
姉が電話を終えて、戻ってきた。
「それじゃ、凪ちゃん、いこうか?」
「うん!!」
家から駅につくまで凪ちゃんは俺の手を離さなかった。


――駅につくと、ベンチに座り車で来るらしい迎えを待つ。
大手会社のご令嬢を一日預かったのだ…なに言われるかわからない…
「……大丈夫よ、勇はなにも悪いことしてないでしょ?親御さんもわかってくれるわよ。」
顔にでてたのか姉に慰められた。

三人で雑談していると。
少し遠目に一台真っ黒の車がむかってくる。
「あっ!あれだ!!」
凪が立ち上がり黒い車にむかって指をさす。

「うっわ……」
小さな駅にふさわしくない車が到着する。
ガチャッと助手席から女性が降りてくる。
「凪!!!」
「お母さん…」
その女性は凪に近づくや否や凪を力一杯抱きしめる。
「痛いよ、お母さん…」

「バカ!!ものすごく心配したのよ!?もうあなたしかいないの…だからいなくならないで……」
「うん…お母さんごめんなさい……」

やっぱり子を心配しない親なんていない。これならもう大丈夫だろう。
凪と母親を眺めていると、母親が姉に顔をむける。
「本当にありがとうございます!!なんて御礼をいったらいいか……。」
「いいえ、警察のほうに電話をしようと思ったのですが事情が少しわからなかったので…携帯を持ってることにも今朝気づきまして電話をするのが遅れました」

姉が頭を深々と下げる。慌ててそれに続く。
「いいえ、あなたみたいな人に凪を見つけてもらわなきゃ…今頃どうなっていたか……」
「そう言っていただけると有り難いです。」
「なにか御礼をさせて頂きたいのですが…」
「いいえ、お気持ちだけで結構です。これから用事があるので。」

母親と姉の押し問答が続く。
その間に凪との別れをすませよう…

「凪ちゃん…身体に気をつけるんだよ?」
「…うん、わかった」
「よし、それじゃ握手ね。」
手を出すと凪も手を握ってくれる。
もの凄く疲れた一日だったが。なんだかんだで楽しい一日だった。
凪の目には涙が溜まっている。
「お兄ちゃん………しゃがんで」
凪の言われた通りにしゃがむ。
「目瞑って手を出して…」
「変なイタズラしないでよ?」
笑いながら目を瞑る。
「………お父さんにもしたことないから……」
え?と聞き返すと唇に暖かい感触が触れるのが感じられた。
驚いて目を開けると凪の頬は真っ赤だ。
母親は背中をむけていたので気づかなかったが、姉には見られた。姉の顔も違う意味で真っ赤だ。


――あの子、勇にキスをした……
自分の顔が怒りで熱くなるのがわかる。
ふざけるな!!私の勇なのに!!母親が来たんだからさっさと帰ればいいのに。
母親との押し問答もさすがに疲れた。
「勇…帰るわよ?用事があるでしょ?」
「用事なんかあったっけ?」
「(私と寝る約束よ!!)忘れたの?早く帰りましょ。それでは、娘さんとお幸せに」
勇を無理矢理に立たせて歩き出す。
「ちょっ、姉ちゃん、あっそれじゃ凪ちゃん元気でね!!!」
「うん!お兄ちゃん電話するね!!」

ピタッと歩くのを止める。
「電話?…番号をしってるの?」
「ん?昨日の夜中に番号を教えてって言うから教えたよ」

私の不覚だ……やっぱり寝なきゃよかった……早く家に帰らなきゃ……。
休みの日をもっと有効に使わなきゃ。
2人のために。

母親の最後の御礼を軽く無視して家にむかう。

自宅に帰る途中、もう凪のことは頭になく、勇とどう過ごすかしか頭になかった。



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