最終更新: izon_matome 2009年05月11日(月) 19:33:23履歴
作者:◆ou.3Y1vhqc氏
――私の犯した罪は計り知れないほど大きく、絶対に消せない…
家族を失った私は自暴自棄になり、死のうと何度刃物を手にしたか……
しかし死ねなかった…
もう一度勇と話がしたい…勇に触れたい…私の感情は高まるばかりだった…
いくら家に電話しても麻奈美が切ってしまう…
勇の携帯番号を知らないので家電に頼るしかなかった。
――そして会いに来てしまった。
…しかし家には誰もいないようだ…私は落胆したが何故か少しホッとしていた。
勇に会えば私はまた昔の罪を繰り返すんじゃないかと考えてしまったからだ。
「ふぅ……しょうがないわね……帰るしかな……い…」
後ろを振り返り家を離れようと一歩踏み出すと小さく聞こえる懐かしい声………勇?…
私の前に勇がいる…話しかけなければ。
麻奈美が私に気づいた…その顔は嫌悪感一色だ……
勇は私を見ればどんな顔するだろう…怖い…
――勇が姉の異変に気がつき、姉の目線を追って私を見る……久しぶりの勇の顔……ドキッとした。
その顔は拒絶でも喜びでもなかった。
「おかえりなさい。」なぜこんな言葉がでたのかわからない……ただ…勇の声が聞きたかった…
「ただ…い…ま。」
当たり前のように返してくれた…嬉しい。
勇の久しぶりの声は私の耳を通り抜け身体全体に染み渡る。
私の子……。
私の勇……。
一年前と比べてまた一段と若い頃の父に似てきた。
今でも私の旦那はあの人以外は考えられない、私にはあの人しかいなかったからだ。
私とあなたの間に出来た2人の子供…
麻奈美が産まれた時は2人で抱き合って喜んだ…麻奈美は私と父平等に甘えた…。初めての子供、可愛くて仕方なかった…それから三年後…勇が産まれた。
この時もあなたは男の子が産まれたって物凄く喜んでくれた。
でも勇は私にしか懐かず、あなたを困らせたわね。
それが成長して行くにつれ母親から父親に移行する…
私に甘えることは無くなり、なにかあればあの人に話した…。
学校のこと、友達のこと、悩み。
すべて私に報告していたのに…
初めは年頃だからしょうがない、と諦めていた。
――小学3年生の時4人で祭りに行った帰り、勇は父におんぶをねだった、私がしてあげると言った時、勇の「お父さんがいい」と言う言葉に私の心にある何かが弾けた…
この時初めて勇に必要とされたいと強く思った。
――「それじゃ、またご飯作りに来てね、お母さん。」
「えぇ、私はいつでもいいわよ?たまには電話してきてね」
母の料理をごちそうになり母を玄関の外まで送り届ける。
「勇、ありがとうね…私、拒絶されるかと思ってたから…」
「もういいよ…姉ちゃんにも言っとくから。」
「ありがとう…それじゃ、またね」
手を振り母を見送るが名残惜しそうな母の顔が脳裏に焼き付く…
「もう帰った……?」
玄関の扉から姉が顔を出す。
「あぁ…もう帰ったよ…また料理作ってくれるってさ。」
「……風邪ひくから早く家に入って。」
「うん…」
姉の言うとおりに家に入ると、姉に抱きしめられた。
「姉ちゃん、痛いよ…」
「少しだけ…少しだけこうさせて…」
「……(どうしよう…)」
「それじゃ、もう遅いから勇の部屋にいきましょ」
まだ8時だが仕方ない、これ以上伸ばしたら本気で切れそうだ。
姉と二階に上がり、俺の部屋に向かう。「……やっぱり私の部屋で寝よう。」
「は?なんで?姉ちゃんのベッド狭いじゃん。」
「いいのよ、いきましょ。」
いきなりなんなんだ?
姉に連れられ姉部屋に入る。
あまり姉の部屋には入らないので少しドキドキするが、部屋は昔とそんなに変わっていない。
年頃の女性の部屋にすれば、少し落ち着いてる気がする。
「勇…寒い…」
俺が部屋を見渡している間姉は一切俺の横を動かなかった。
「うん、それじゃ寝よっか?」
姉のベッドに俺が先に入ると。後から姉がベッドに入ってくる。
「……やっぱりちょっと狭いね」
「うん…」
小さいシングルベッドに大人2人が寝るとやっぱり窮屈だ…姉の身体が背中にピタリとくっついている。
「やっぱり俺の部屋に行こうか…」
「ここでいいよ…暖かいからこっちのほうが寝やすい…」
「……」
こんなんで寝れるのだろうか……
「勇、こっち向いて」
「え…なんで?」
「勇の顔が見たいから…こっち向いてよ…」
「……」
なにも言わず振り返ると、姉と俺の顔がスレスレの位置にあるのがわかる…
「ははっ、ちょっと恥ずかしいね。」
「うん、ちょっとね、でも勇と一緒に寝ると落ち着くわ…」
「そだね、もう寝よっか?」
「うん…」
寝れるかわからないが早く寝てしまおう…。
―――――――――――――――――――――――――
「……」
「……」
「勇…寝た…?」
「……zzZ」
「ごめんね…お姉ちゃん弱くて…少ししたらまた頑張るからね……」
「…zzZ」
「……チュッ……おやすみ…」
「!?……zzZ………(姉ちゃん…)」
この日を境に一週間に一度だった約束が4日に一度になった。
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――私の犯した罪は計り知れないほど大きく、絶対に消せない…
家族を失った私は自暴自棄になり、死のうと何度刃物を手にしたか……
しかし死ねなかった…
もう一度勇と話がしたい…勇に触れたい…私の感情は高まるばかりだった…
いくら家に電話しても麻奈美が切ってしまう…
勇の携帯番号を知らないので家電に頼るしかなかった。
――そして会いに来てしまった。
…しかし家には誰もいないようだ…私は落胆したが何故か少しホッとしていた。
勇に会えば私はまた昔の罪を繰り返すんじゃないかと考えてしまったからだ。
「ふぅ……しょうがないわね……帰るしかな……い…」
後ろを振り返り家を離れようと一歩踏み出すと小さく聞こえる懐かしい声………勇?…
私の前に勇がいる…話しかけなければ。
麻奈美が私に気づいた…その顔は嫌悪感一色だ……
勇は私を見ればどんな顔するだろう…怖い…
――勇が姉の異変に気がつき、姉の目線を追って私を見る……久しぶりの勇の顔……ドキッとした。
その顔は拒絶でも喜びでもなかった。
「おかえりなさい。」なぜこんな言葉がでたのかわからない……ただ…勇の声が聞きたかった…
「ただ…い…ま。」
当たり前のように返してくれた…嬉しい。
勇の久しぶりの声は私の耳を通り抜け身体全体に染み渡る。
私の子……。
私の勇……。
一年前と比べてまた一段と若い頃の父に似てきた。
今でも私の旦那はあの人以外は考えられない、私にはあの人しかいなかったからだ。
私とあなたの間に出来た2人の子供…
麻奈美が産まれた時は2人で抱き合って喜んだ…麻奈美は私と父平等に甘えた…。初めての子供、可愛くて仕方なかった…それから三年後…勇が産まれた。
この時もあなたは男の子が産まれたって物凄く喜んでくれた。
でも勇は私にしか懐かず、あなたを困らせたわね。
それが成長して行くにつれ母親から父親に移行する…
私に甘えることは無くなり、なにかあればあの人に話した…。
学校のこと、友達のこと、悩み。
すべて私に報告していたのに…
初めは年頃だからしょうがない、と諦めていた。
――小学3年生の時4人で祭りに行った帰り、勇は父におんぶをねだった、私がしてあげると言った時、勇の「お父さんがいい」と言う言葉に私の心にある何かが弾けた…
この時初めて勇に必要とされたいと強く思った。
――「それじゃ、またご飯作りに来てね、お母さん。」
「えぇ、私はいつでもいいわよ?たまには電話してきてね」
母の料理をごちそうになり母を玄関の外まで送り届ける。
「勇、ありがとうね…私、拒絶されるかと思ってたから…」
「もういいよ…姉ちゃんにも言っとくから。」
「ありがとう…それじゃ、またね」
手を振り母を見送るが名残惜しそうな母の顔が脳裏に焼き付く…
「もう帰った……?」
玄関の扉から姉が顔を出す。
「あぁ…もう帰ったよ…また料理作ってくれるってさ。」
「……風邪ひくから早く家に入って。」
「うん…」
姉の言うとおりに家に入ると、姉に抱きしめられた。
「姉ちゃん、痛いよ…」
「少しだけ…少しだけこうさせて…」
「……(どうしよう…)」
「それじゃ、もう遅いから勇の部屋にいきましょ」
まだ8時だが仕方ない、これ以上伸ばしたら本気で切れそうだ。
姉と二階に上がり、俺の部屋に向かう。「……やっぱり私の部屋で寝よう。」
「は?なんで?姉ちゃんのベッド狭いじゃん。」
「いいのよ、いきましょ。」
いきなりなんなんだ?
姉に連れられ姉部屋に入る。
あまり姉の部屋には入らないので少しドキドキするが、部屋は昔とそんなに変わっていない。
年頃の女性の部屋にすれば、少し落ち着いてる気がする。
「勇…寒い…」
俺が部屋を見渡している間姉は一切俺の横を動かなかった。
「うん、それじゃ寝よっか?」
姉のベッドに俺が先に入ると。後から姉がベッドに入ってくる。
「……やっぱりちょっと狭いね」
「うん…」
小さいシングルベッドに大人2人が寝るとやっぱり窮屈だ…姉の身体が背中にピタリとくっついている。
「やっぱり俺の部屋に行こうか…」
「ここでいいよ…暖かいからこっちのほうが寝やすい…」
「……」
こんなんで寝れるのだろうか……
「勇、こっち向いて」
「え…なんで?」
「勇の顔が見たいから…こっち向いてよ…」
「……」
なにも言わず振り返ると、姉と俺の顔がスレスレの位置にあるのがわかる…
「ははっ、ちょっと恥ずかしいね。」
「うん、ちょっとね、でも勇と一緒に寝ると落ち着くわ…」
「そだね、もう寝よっか?」
「うん…」
寝れるかわからないが早く寝てしまおう…。
―――――――――――――――――――――――――
「……」
「……」
「勇…寝た…?」
「……zzZ」
「ごめんね…お姉ちゃん弱くて…少ししたらまた頑張るからね……」
「…zzZ」
「……チュッ……おやすみ…」
「!?……zzZ………(姉ちゃん…)」
この日を境に一週間に一度だった約束が4日に一度になった。
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