PINKちゃんねる-エロパロ&文章創作板「依存スレッド」まとめページです since2009/05/10

作者:◆ou.3Y1vhqc氏

――なんとかタクシーでお母さんのマンションにたどり着いたのはいいが、母の部屋まで行っていいのか、勇に電話をして出てきてもらうか迷っていた。

ここまで勇を迎えにきたんだ…勇からすれば迷惑に違いない。
ただ待ってることは出来なかった…もし勇が母と暮らし、私達の家に帰ってこなかったら私は一人になる……そうなれば私は父に会いに行くだろう…一人は耐えられない。

「……勇にメールしよう…」

もし電話で拒否されたら立ち直れない…勇の声で否定されたら……
そう思い携帯を取り出すとマンションから見覚えある人が小走りで出てきた…




「勇…と…お母さん」
手繋いでる…楽しそう…

「……あっ」

勇が私に気づく…その顔はどこか怒っていて、寂しく、私を哀れんでるような顔に見えた…

「麻奈美!!」
お母さんも私に気づいたようだ、名前を呼びながら私に駆け寄ってくる…

もう私はなにも持っていない…勇からお母さんを遠ざける術がなにもない……

母にお願いしよう……心から言えばわかってくれるはず…

私は地面に座り母頭を下げる…
「お母さん…お願いですから…勇を盗らないでください…私は勇しかいないんです…」

母がなにか言ってるが頭がクラクラして聞こえない、まだ勇を連れていこうとしてる?お願いしなきゃ…
「お願いします…勇は盗らないでください…家も返すから…」

これでダメなら……



――『姉ちゃん違うでしょ…?』


あれ…勇の…声…?


『姉ちゃんは強くて…』


わたしは勇がいなきゃ……


『優しくて…』


勇のほうが……


『憧れで……』


勇が私に憧れ…



私は勇…の…お姉ちゃん…。

勇が私の名前を呼んだ……立たなきゃ…

……ドサッ……



……え?

……勇?

……なんで寝て…ッ!!

「勇!!」
勇を助けなきゃ…
「足が…」
動かない…
母が勇に駆け寄っていくのが見える…

「うぅ…ぁ…(お母さん!!勇を助けて!!)」
声がでない…

「(勇!!まって!!すぐにっ!!)」
視界がぐにゃぐにゃになっている…。
なのに勇の姿ははっきりと見える…


――「はぁ、はぁ…ゆ…う…」

やっとでた言葉…あまりにも小さく弱々しい声は勇に届くはずがない。

動かない足をズルズルと引きずり、柵に手を掛け無理矢理に足を進める…

「もう少し…もう少しで…」
勇の顔が見える…

母が携帯で電話をしている…救急車を呼ぶのだろう。
「はぁ…はぁ…ゆう…もう大丈夫だ…か…」



――勇?なんで笑ってるの……



そんなに苦しそうに笑わないで……


―――――――――――――ここは?――――――――――――

目を覚ますと真っ白の部屋にいた。
真っ先に視界に入ったのは蛍光灯……
身体には布団が掛けられている…
少し重たいが、上半身を持ち上げて座る。

「ここどこだろ…?」
周りを見渡すが部屋の中にはなにもない…
ふと腕に違和感を感じて腕を見る。
なにか刺さってる…
「点滴……病院?」

そうだっ私風邪引いてたんだ…でも誰が病院まで…
周りを見渡すが誰もいない。

「…勇がここまで連れてきてくれたんだ…」

やっぱり勇に迷惑かけた…
たしかあの夜勇を迎えに行って…それから…頭がクラクラして…勇が…


「え……勇…?」
たしか勇が倒れて…助けに行かなきゃって…

「ッ!?勇!!」

思い出した…確か勇も救急車で運ばれたはず!!
「今から、いくからね…勇ッ」
ベッドから降りようとすると点滴に繋がれてることを思い出す…
「……こんな物ッ!!」




「なにやってるの!?やめなさい!!麻奈美!!」
点滴の管を掴み、引き抜こうとすると母が扉から入ってきた。

「お母さん…?」

「あんたね…まず自分の身体を治しなさい。」


「お母さん……勇は?」

「勇は……今検査中よ…」
お母さんの顔が一瞬にして曇る…

「お母さん…勇なにかの病気なの?吐血するなんて……」

「わからないわ…ただ病気だとするとあまり軽い病気ではないでしょうね…」

「もしかして…お父さんと……」

「麻奈美!!!」
母の大きな声にビクッとなる。

「でかい声だしてごめんなさい…今は麻奈ちゃんも身体を休めなさい。」

「勇に会いたい…」

「すぐに会えるわ…それまでに身体を治しなさい…勇に笑われるわよ?」
母が手を振り出ていく。
私はそれをふり返す訳でもなく、ただ母の後ろ姿を見ていた…

「勇……」

勇もお父さんと同じようにいなくなるの?
私はどうすれば……

――「私のなにが気に食わないのよ…役立たず。」

熱で思うように動かない自分の体を睨みつけ言い放つ。

しょうがないので上半身をベッドに戻す。
布団を肩まで掛け、目を瞑る……





――お姉ちゃん…




「……勇」

目を開けようが瞑ってようが、勇のことが頭から離れない…


――ふぅ……麻奈美も勇の事になると周りが見えなくなるわね……
「周りじゃなくて…自分が見えないのか…」

やはり麻奈美は私と同じ過ちを犯した…
私は勇をこの手で縛り付け
麻奈美は自分を傷つけて勇の性格を逆手に取った…
なぜこうも悪いところだけ似てくるのだろうか…

「私もバカだな…勇の事になると周りが見えなくなる…」

ふぅっとため息を吐き袖を捲り上げる…
勇の診察中、自分を抱きしめる形で腕を必死に握ってた…結果皮膚に爪が食い込んで血が出てしまった…

「後で消毒してもらわなきゃ…」
服に血が付くが仕方がない…

さっき麻奈美に言われた、もしあの人と同じ癌なら……


嫌な汗が一気に吹き出す。


「絶対にダメよ!勇はまだ若いもの!!ガンなんかになってたまるものですか!!」

そう自分に言い聞かせないと、まともに立っていられない…。




あなたお願い…勇を連れていかないで……。


―――――――――――――夢を見た――――――――――――

父と2人で散歩している夢…

なぜか懐かしいとは感じなかった…
死んだ父が出てきても当たり前のように接していた…。

昔は夕方まで遊んでいると父が迎えにきてくれた…帰り道に手を繋ぎ夕焼けの河原道を2人で歩いて帰った…

あの時の俺はまだ四年生だった…
だが夢の俺は現代の年代の姿形をしていた。

「勇、ちょっと疲れたか?」
父が優しく話しかけてくる。

「うん…ちょっとだけね…なんか眠たい…」

「よし、おんぶしてやろう!」

「いや、この歳で恥ずかしいよ…」
さすがに高校生でおんぶは恥ずかしい…。

「あほか、子供は親に甘えるのが仕事だ早く乗れ!!」
父が俺の前に座り手を後ろにする。

「俺…昔と違うけどおんぶなんてできるの?」

「子供担げない父親がどこにいるんだ!さっさと乗れ!」

「はぁ、わかったよ」
しかたなく父親の背中に乗る。

「おっ?なかなか重いな…健康に育ってる証拠だな。」

「足プルプルしてんじゃん…」

「ははっ大丈夫だよ」
――俺は成長したはずだ。
なのに父の背中は子供の頃に見たあの時とまったく変わっていなかった。


――「あれ?見てよ、お姉ちゃんとお母さんだ…」
100メートルほど先に母と姉が立っている…
「おーいっ!!」

手を振ると母と姉も手を振り返えしてきた…
「ははっ…さっ早く帰ろっ!!」

「……」

「お父さん?」

「んじゃっここでお別れだな…」
父の手が俺の太ももから離れていく…

「は?…なんで?」

「なんでって、わかるだろ?」

「わからないよ!!帰る家は一緒でしょ!?家族なんだから!!」

本当はわかってる。

「唯一無二の家族だ…だが行く場所は違う…勇はまだやらなきゃいけないことが山ほどあるだろ?」

「お父さんと一緒にしたいことが山ほどあるんだ!!」

「それを麻奈美と一緒にしてあげてくれ…」

「お父さんに聞いてほしい相談がいっぱいあるんだ!!」

「それをお母さんに聞かせてあげてくれ…」

「まだお父さんに甘えたい!!」

「疲れたら2人に甘えればいい…その代わりいざとなったら勇が2人を守るんだぞ。」

「まってよ!!お父さん!!」

「ずっと見守ってるからな……愛してるぞバカ息子。」






「お父さんっ!!!」



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