僕の妹!? 第51話

僕の妹!? 第51話


第51話 宣戦布告!

僕はいつの間にか夏希とあやめ達にクラスの隅へと追いやられていた。
そして退路を断ちながら迫ってくる。
周りにいるクラスメート達のうち、ある者はなぜか「何で船橋が良い目合ってんだ〜!」とどす黒い嫉妬の波を放ちつつも傍観。
ある者は「わ〜、お昼のドロドロサスペンスみた〜い」と鬼気迫るシーンなのにもかかわらず、野次馬的視線で傍観。
またある者は「おっおっ、とうとう追い込まれたか?船橋……」とニタニタ笑いながらも傍観。
つまり、クラスの人間は誰一人とも靖弘に味方してくれなかった。
もちろん別に僕は彼女らに何かしたわけではない。
それははっきり言えるのだが、どうも彼女らは僕の言動に不審な点を感じるらしくちょっとやそっとのことで解放してくれそうにない。
むしろ、何で僕がこんな目に合ってるのか誰かに教えてほしいくらいだ。
「そっそんな怖い顔するなよ、詩織とは何もしてないってば!!」
「ガラガラガラッ!!」
突然教室の扉が開いた。
ぼちぼち担任がやってくる時間だ、普段はあまり存在感のない担任こと大洗先生だがこういう時には感謝する。
この何故か追い込まれている状況を打破してくれるだろう、と期待を胸に扉の方を見ると……担任の大洗先生ではなく、一人の女子生徒が立っている。
隣のクラスにいるはずの二宮詩織だった。
………………
…………
……

「靖弘くんっ!!」
詩織は一時静まり返った教室内で僕の名前を呼んだ。
まさかの当事者登場に僕は心底驚いた。
ところが夏希達にはある一点が気に障ったようである。
「やすひろ……くん?いつの間に下の名前で呼ぶようになったの?(夏希)」
「おかしいよね?軽井沢旅行の時までは確か“船橋君”だったはず……(あやめ)」
「やっぱりあの後何かあったんだ……(すみれ)」
それは僕にとって逆効果だった。
「詩織、漫研の課題制作で登校した時は別に何も無かったって証言してくれ!詩織だけが証人なんだ!!」
僕の無実を証明するには詩織に弁護を求めた方が良い、そう思った僕は力いっぱい扉のところに立っている詩織に向かって叫んだ。
「分かりました」
と詩織は一言言って、僕の方に向かって歩いて来る。
詩織の了承の一言に僕はほっとした。
「さぁ……聞かせてもらいましょうか、あなたの証言を……(夏希)」
いつになく夏希の声は低く重々しい、まとっているオーラが違うのを感じる。
そしてやっぱり怖い、僕には何で夏希がここまで怒るのかは見当がつかない。
やがて詩織は僕のすぐ近くまで来た。
そこで夏希やあやめ達の方に体の向きを変えて、証言をしてくれるのかと思っていたのだがそのままの方向で僕にさらに接近してきた。
夏希の表情がさらに険しくなり、僕は詩織の証言がどうして始まらないのか気になった。
詩織は一度深呼吸してから話し始めた。
「軽井沢旅行のあとに靖弘くんと学校に集まったのは、漫研で出された夏休みの課題を仕上げるためでした。ただ、部長の説明がいい加減でどんなものを作れば良いのか分からず、二人で集まってイラストを描きました」
「詩織の言う通りだよ、別にやましいことはしてない」
付け足すように自分で言う。
「靖弘君との共同作業のおかげで課題は早く片付き助かりました」
「……共同作業?(夏希)」
夏希は詩織の言葉からあげ足を取ろうとしているのか、なぜか詩織の口から出てくる言葉に文句をつけている。
「とにかく!!靖弘君は無実です、許してあげてください!」
詩織が最後の言葉を告げると、教室内に静寂が訪れる。
どれくらいの時間が過ぎたか分からないが、あやめが口を開き
「そうだよね……、やっぱりやっちゃんはそんなことしないと思ってた」
「夏希さん、私達の勘違いだったんだよ。やっちゃんに謝ろう?」
すみれもあやめの意見に賛同し、夏希にやめようと問う。
再び沈黙が続きやがて夏希も
「靖弘、疑ってごめん!」
と謝ってきた。
「良いよ、謝らなくても。無実が証明されたらそれで……」
本当にそれだけで僕の気は済んだ。
逆に自分もしっかりしないと怖い目に遭うんだと、しっかり心に刻んだ。
あの時の夏希の周りには得体の知れない、負の空気と言ったところかそんなものが渦巻いていて、夏希の全身から怒りが空気を伝ってきた。
もうあんな修羅場は経験したくない。

先ほどから何も喋っていない詩織は夏希とあやめ達の関係を考えていた。
今日の反応からして、三人とも靖弘のことが好きなのは確実となった。
つまり、自分の敵であり三人もそれぞれライバルであるはずなのだが、どうやら三人の間には当人も気づいているかどうか分からないが共闘関係が成立しているかのように見えた。
つまり、靖弘をめぐる戦いは詩織に対して三人の連合軍と言った構図だ。
戦況はかなり不利だと感じた。
ただ、共闘関係は恐らく長続きはしないだろう。
もしかしたらお互いに靖弘が好きだということは伝えておらず、このまま共闘関係に突入したのかもしれない。
いやその方が自然だ、つまりそれが判明してしまえば向こうが勝手に分解してくれる可能性もある。
だがこれはまず、自分が靖弘のことが好きだと明確な意思表示をしなければ、相手は自分を敵とすら見てくれないかもしれないと思った。
もちろん、今回の騒動で敵として認めた可能性も大いにあるが、正々堂々自分としては闘って行きたいためにはっきりさせなければ気が済まないのだ。
なので夏希たちの共闘関係を崩すのは後回し、自分は夏希たち連合軍に言わば宣戦布告することに決めた。
この方が後ろめたい思いをしないで戦えると考えた結果の詩織の選択だった。

一方、あやめ達や夏希は薄々思っていたお互いが靖弘のことが好きだということに、改めて気付かされた。
詩織はともかくお互いはライバルだと言う意識が少し芽生えたのだ。
だが恋のライバルという関係依然にもともとは姉妹、友人と言う間柄。
相反する二つの立場にそれぞれ困惑していた。
見事に詩織の思惑通り事態は進んでいたのだ。
同時に詩織に対しての警戒が薄れていたこともあったのだろう。
三人は完璧に油断していた。

「但し、私が証明したのは今までの靖弘君との関係についてです」
みんなに聞こえるようにわざと大きな声で詩織は言った。
「これからの関係については保証しませんよ」
そう言って僕に近づき頬にキス。
背後でHR開始のチャイムが鳴るなかでのことであった。


あとがき

詩織の大胆告白で終わりました今回、いかがでしたでしょうか?
だいぶ詩織に“勇気”が備わってきました。
彼女は登場当初こそ内気な娘でしたが、今はだいぶ成長してきました。
私も彼女のハッピーエンドも考えたりしています。
ですが今のところは……まだまだですね(笑)
この話を書いた当時は私は気分絶好調で、自分が好きな部分だとこんなにも筆が進むのかと改めて感じられました。
これからは4人の争いがより激しくなっていきます。
私も書くのがとても楽しく感じている部分です、ってかこういうが書きたくて始めたラブコメなのです。
さて次回は時系列の関係上、少し時間を戻して番外編の更新です。
今日更新して急に気付きました。
急ハンドルな方向転換ですがお許し下さい。

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2009年02月28日(土) 22:12:54 Modified by kq800




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