僕の妹!? 第52話

僕の妹!? 第52話


第52話 戦争勃発!!

「キーンコーンカーンコーン!!」
チャイムが午前の授業が終わり、昼休みが始まったことを告げる。
僕はいつも以上にクタクタになっていた。
理由はというと……
詩織の最後の爆弾発言のせいだろう……、僕は夏希とあやめ達に三交代制でずっと監視されていたのだ。
おかげでずっと気を緩められず、昼休みまで来てしまったのだ。
トイレに行くにも入口まで三人のうち、一人がガードマンのようについて来るのだ。
クラスのみんなには変な目で見られるし、これを毎日されたらこっちはたまったもんじゃない。
そんな環境の中、僕はずっと詩織のことを考えていた。
実を言うと遠からず詩織から何かあると確信はしていた。
夏希から詩織に注意してろと警告されていたし、これで女の子から好意を持たれるのは4回目だし大体のことは想像出来たのだ。
詩織は最初に出会った時から現在に至るまで一貫して引っ込み思案というイメージが染みついていた。
そんな彼女に公衆の面前でキスをするなどという心拍数が極端に上がりそうなことをしたということも驚いた。
例え詩織が引っ込み思案な性格でなくても相当勇気のいる行動だったに違いない。
どうして彼女はそこまでしてキスをしたのか?
それが僕には不明だった。
あやめは遊園地デートの最後のお礼の代わり、夏希は軽井沢旅行の卓球大会優勝のお礼と何か理由をつけてしてきた、がすみれは盆踊りの時に理由を明かさずにキスして詩織に至っては学校の、しかも朝のHR前でクラスメートが一番集まる時間を狙ってみんなの前でキス……、うーんだんだん方法が大胆になってきている。
これは一体なぜなのだろう?
「やっちゃん!一緒に弁当食べよっ!」
すみれの元気な声が僕の思考を遮った。
夏休みに入る前の昼休みと言えば、浩介・葵・夏希のグループに転校してきたあやめ達を加えたメンバーで食べるのが通常だった。
だがしかし、浩介と葵は自分たちの世界に入ってしまっているのかやって来ず、夏希とあやめ達しかいなかった。
つまり、今までの状況と何ら変わりないのである。
僕としてはこれ以上このメンバーで監視されるのは辛いのだが、それを言うと僕の身がどうなるか分からないし空気が悪くなるので……。
「あ、ああ……」
としか言えなかったのだ。
昼食の時間は平和で明るい話が飛び交っているのが普通なのだが、何分今朝あんなことが起きたのだ。
三人とも黙々と食べ続け会話は一切なし、空気が重い。
こんな居心地の悪い昼食は初めてだった。

その後、五時間目まで午前中と同じく監視体制が続き現在は六時間目。
教壇の前には夏希の姿があった。
本来ならその場所にいるはずの教師は、教室の隅に椅子を置いて様子を見ている。
なんの授業かというとLHR、学級委員の夏希が先頭に立ちいろいろ決めることを出して、それを司会をしながら記録をとるという器用な有能っぷりを見せていた。
今日の主な議題は黒板に夏希の字でデカデカと書いてあり、「神風祭のクラスの出し物について」とある。
神風祭とは我が神湊高校の文化祭にあたる行事のことだ。
入学前の中三の時に見に行ったが、今の普段の雰囲気からは想像出来ないほどに活気のある学園祭だった。
ようは大半の生徒は勉強よりも祭り事を好む傾向にあるということだ。
それほどレベルの高くない公立高校の典型的な例である。
「はい、それじゃあ最初に候補を聞きますんで今お配りしている藁半紙に、今回の神風祭で是非自分のクラスでやりたい出し物を書いて下さい。食品販売の場合は抽選もあり、何を売りたいのかも明記して下さい」
夏希が藁半紙を最前列の生徒に配りながら、事務的に仕事を進めていく。
僕は高校になっての初めての文化祭だからといって、別に意気高揚や興奮をしているわけでもないので、適当に駄菓子屋と書いて出した。
集められた藁半紙を夏希がもう一人の学級委員の吉行からもらい、出された案を書いたり同じ案なら正の字を書いていく。
結果は以下のとおり、お化け屋敷7・喫茶店3・写真館1・焼きそば屋3・たこ焼き屋1・広島風お好み焼き1・駄菓子屋2・休憩所16・占い屋6となった。
“写真館”は恐らく吉行なのが分かるが、“広島風お好み焼き”は一体誰だろう?
わざわざ“広島風”とつけるところからよっぽどのこだわりがあるんだろうか?
“休憩所”と言うのはやる気のない連中だろう、特に用意する必要もないので積極的でない連中が多く票を入れたみたいである。
「一番多いのは休憩所みたいだけど……、やる気のない案は上の人が許さないので却下します。多数決をとってお化け屋敷でいいですか?」
夏希が意見をまとめる。
「オッケー!(貴文)」
「張り切っちゃうよ!!(浩介)」
「内装とか頑張るよ!(あやめ・すみれ)」
男子が多いお化け屋敷派の主要メンバーは賛成し、他の希望の人も反対はしないらしい。
多数派の休憩所派はやる気のない連中なだけに反論する気も起きないらしい。
かくいう僕も絶対に駄菓子屋じゃないとダメなどと頑なな姿勢を見せるつもりもなく、決まったならそれに従おうと賛成した。
ただ、漫研と図書委員の掛け持ちなのでクラスに貢献はあまり出来ないかもしれないが……。
こうしてすんなりと開催まで一か月に控えた神風祭の出し物は、順調にお化け屋敷に決まった。

そのあと、買いだし・内装・衣装・宣伝広報や店番当番などを、夏希が素晴らしい手腕を発揮してテキパキと決めていき、上手く一時間で文化祭関連のことを全部片付けてしまった。
やっぱり夏希は有能だなぁ……。
帰りのHRも終わり、僕は帰り支度をし始めた。
「はぁ〜、いい仕事した〜」
夏希が両腕を目一杯伸ばし若干あくびを交えながら言う。
「さすが夏希だね、延びることなく文化祭の出し物決めた……」
「みんなが協力してくれたから早く決められたんだよ。諏訪くんや善知鳥くん辺りが暴れだしたら手をつけられないよ……」
夏希の口から出てきた二人の男子は、どこのクラスにも大抵いる不良風味の子。
体が大きくて隣クラスのそれっぽい子とツルんでいるのもよく見るし、近寄りがたい。
僕はあまり関わりたくなく自分から避けているので会話をしたことはない。
自分の見たところ夏希の言ってることに対しては概ね賛成だ。
とにかく威圧感がある人たちなのだ。
「そう言えばヤス?」
夏希が話題転換をしてきた、あまり話し続けたい話題じゃなかったんだろう。
「何?」
「ちょっとお化け屋敷に入ってリサーチしてこない?出し物に決まったんだし……」
「夏希は早速やる気だなぁ……、オッケー付き合うよ……」
「私たちも行く〜!(あやめ・すみれ)」
「俺も……発案者だし……(浩介)」」
「じゃあとりあえず遊園地へ(夏希)」


あとがき

言っていることが二転三転してしまい申し訳ありませんが、番外編更新はこの次にします。
さて今回の更新で何編か発表になりました、“文化祭準備編”です。
“準備”と付いている訳ですから当然“文化祭本番編”もあります。
今私が執筆しているところはその文化祭本番編なのです。
ちなみに体育祭はやりません、スポーツ大会と被ってしまうからです。
現在は番外編そのじゅうにの執筆作業中です。
次回予告ですが“遊園地”に行きます、もちろん“百景島”ではありません、お楽しみに……。

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2009年03月07日(土) 22:18:50 Modified by kq800




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